別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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ひいいい、五月が終わる←
映画を観る。四人はジュースを購入し、定番だがポップコーンも購入した。ケンイチはユキのジュースも持ち運ぶが、ミノルは照れくさくそんなことをしない。別にアサギは気にしていないが、ユキはほくそ笑んでいた。
自分の彼氏のほうが、ランクが上だと。
そんな素振りを見せずに席に着き、ジュースを飲みながら他愛のない会話をする。館内が暗くなり、スクリーンに映像が映し出された。感動物らしいアニメ映画を観始める。
「よかったね! 凄く感動したっ」
「アサギ、泣いてたね」
ハンカチで涙を拭きながら、ゴミ箱に空になったポップコーンの入れ物を捨てるアサギに、ケンイチがやんわりと話し掛けた。実はミノルも微妙に涙を浮かべていたのだが、必死に堪え、二人の後ろにつく。
「思ったよりよかった」
「あそこでさ、主人公が飛んだのがかっこよかったなぁ」
少し遅い昼食をとるため、館内にあるファーストフードを食べに行く。和気藹々と会話をしている三人を他所に、ユキは一人浮かない顔だった。朝、アサギが言った言葉を思い出していた。
『おはよう、ユキ。服ね、昨日までは赤のチェックのワンピースにしていたのだけど、さっき変えてみたんだ。寒くて』
寒くて。この言葉の意味を理解していなかった、映画館が寒かったのだ。映画に集中したかったのだが、急激に下がった気温にそれどころではなく、それどころではなかった。隣のケンイチの上着を借りたいと、恨めしそうに眺めていたのだがそんなこと知る筈もないケンイチは食い入る様に映画を観ていた。
……彼氏なら、彼女の異変に気付いて欲しいな。
ぼそ、っと呟いたユキ。今ですら、自分を放っておいてケンイチはアサギにミノルと夢中で会話している。
チリリ、と胸が痛む。朝は、あんなに愉快でたまらなかったのに今はどうしたことだろうか。
「アサギちゃんが、違う服を着ていればよかったのに」
無意識の内にそう呟いた、そうしたら、一緒に「映画館寒かったねー」なんて会話が出来ただろうに。腕を擦りながら、忌々しそうにユキは三人を見つめる。不意に立ち止まり振り返ったアサギがこちらへやって来た。
「ユキ、大丈夫? 寒かったよね、あったかいの食べようか」
「うん、寒かった。映画館って冷えすぎだよね」
切り替えし、笑う。アサギが手を差し出したので、その手を握った。立ち止まって待っているミノルとケンイチに向かって歩く、彼氏のケンイチではなく、親友のアサギと手を繋いで歩く。
気付いてくれるのは、アサギだった。ケンイチは悪くない、まだ小学生だ、そこまで気がまわらなくて当然だろう。アサギの手を握りながらその暖かさに安堵した。
のだが。
「何食う? 女子って普段何食べてんの? 俺ラーメン食べたい」
「私もラーメン食べたいな」
「そっか、寒かったもんな映画館。アサギ、大丈夫か?」
「うん、私は平気だよ。でも、温かいもので落ち着きたいかな。ラーメン好きだし」
「へぇ、意外……じゃラーメンな」
ミノルが、アサギを気遣った。目の前で繰り広げられる会話に嫉妬した、鈍臭そうなミノルの台詞に大きく瞳を開いたユキは、そっとアサギの手を離す。不思議そうに一瞬自分を見たアサギに、引き攣った笑みを浮かべてしまった。
アサギは何も悪くない、ミノルも悪くない、別にケンイチが悪いわけではない。
けれど、その中でどうしても自分だけが空回りしている気がした。そもそも、デートでラーメンというのも気に入らなかった。確かに寒いし妥当なのだがクレープなど可愛い物が食べたかった。
ラーメンを啜りながら、映画の会話を楽しむ三人を横目で見ながら溜息を吐く。自分で計画したのに、ここまでつまらないものになるとは思いもしなかった。ラーメンの汁に浮かぶ油を見つめながら、憂鬱な気分になったユキは、唇を噛み締める。
ケンイチが、少し嫌いになった。思ったより子供っぽかった、と。……小学生なので仕方がない、少女漫画のように行くはずもない。
ミノルを、少し見直した。だが、何もそこでアサギの彼氏ぶりを発揮しなくても良いのにと、疎ましくも思った。
アサギが、案の定嫌いになった。何をしていても、すぐに溶け込んで今ですらケンイチと愉しそうに会話している。それは私の彼氏なの、話さないでと思う自分になど気付いてくれない愚鈍な親友。いや、狡猾な。
……ユキは気付かない、その四人でいるから愉しいのだと思っている三人の気持ちになど、気がつかない。自分の事しか考えていなかったユキは、皆がどう思っているのかなど知らない。
ケンイチはただ、嬉しかった。大人しいユキが映画に誘ってくれたことが、恥ずかしがりやなので親友であるアサギを呼んだことも可愛くて好きだと思っていた。何より、二人きりだと緊張してしまうがミノルもいるので普通にはしゃぐことが出来て気が楽だった。ユキのことが、また好きになっていた。
ミノルはただ、照れていた。自分では誘えないので、アサギと共にいる機会を作ってくれたユキに感謝した。映画を観ながら泣くアサギがとても可愛らしかったし、彼氏という立場で隣に座れたことも歯痒いくらいに嬉しかった。
アサギはただ、幸せだった。大好きな親友と、彼氏と共に居られたのだから。
ユキに感謝していた三人の気持ちなど、知らない本人はラーメンを残した。
キィィィ、カトン……。
賑わうフードコートに、何か音が響く。テーブルに爪を立て、ユキは唇を噛み締めたまま陰鬱な瞳で三人を見つめた。
自分の彼氏のほうが、ランクが上だと。
そんな素振りを見せずに席に着き、ジュースを飲みながら他愛のない会話をする。館内が暗くなり、スクリーンに映像が映し出された。感動物らしいアニメ映画を観始める。
「よかったね! 凄く感動したっ」
「アサギ、泣いてたね」
ハンカチで涙を拭きながら、ゴミ箱に空になったポップコーンの入れ物を捨てるアサギに、ケンイチがやんわりと話し掛けた。実はミノルも微妙に涙を浮かべていたのだが、必死に堪え、二人の後ろにつく。
「思ったよりよかった」
「あそこでさ、主人公が飛んだのがかっこよかったなぁ」
少し遅い昼食をとるため、館内にあるファーストフードを食べに行く。和気藹々と会話をしている三人を他所に、ユキは一人浮かない顔だった。朝、アサギが言った言葉を思い出していた。
『おはよう、ユキ。服ね、昨日までは赤のチェックのワンピースにしていたのだけど、さっき変えてみたんだ。寒くて』
寒くて。この言葉の意味を理解していなかった、映画館が寒かったのだ。映画に集中したかったのだが、急激に下がった気温にそれどころではなく、それどころではなかった。隣のケンイチの上着を借りたいと、恨めしそうに眺めていたのだがそんなこと知る筈もないケンイチは食い入る様に映画を観ていた。
……彼氏なら、彼女の異変に気付いて欲しいな。
ぼそ、っと呟いたユキ。今ですら、自分を放っておいてケンイチはアサギにミノルと夢中で会話している。
チリリ、と胸が痛む。朝は、あんなに愉快でたまらなかったのに今はどうしたことだろうか。
「アサギちゃんが、違う服を着ていればよかったのに」
無意識の内にそう呟いた、そうしたら、一緒に「映画館寒かったねー」なんて会話が出来ただろうに。腕を擦りながら、忌々しそうにユキは三人を見つめる。不意に立ち止まり振り返ったアサギがこちらへやって来た。
「ユキ、大丈夫? 寒かったよね、あったかいの食べようか」
「うん、寒かった。映画館って冷えすぎだよね」
切り替えし、笑う。アサギが手を差し出したので、その手を握った。立ち止まって待っているミノルとケンイチに向かって歩く、彼氏のケンイチではなく、親友のアサギと手を繋いで歩く。
気付いてくれるのは、アサギだった。ケンイチは悪くない、まだ小学生だ、そこまで気がまわらなくて当然だろう。アサギの手を握りながらその暖かさに安堵した。
のだが。
「何食う? 女子って普段何食べてんの? 俺ラーメン食べたい」
「私もラーメン食べたいな」
「そっか、寒かったもんな映画館。アサギ、大丈夫か?」
「うん、私は平気だよ。でも、温かいもので落ち着きたいかな。ラーメン好きだし」
「へぇ、意外……じゃラーメンな」
ミノルが、アサギを気遣った。目の前で繰り広げられる会話に嫉妬した、鈍臭そうなミノルの台詞に大きく瞳を開いたユキは、そっとアサギの手を離す。不思議そうに一瞬自分を見たアサギに、引き攣った笑みを浮かべてしまった。
アサギは何も悪くない、ミノルも悪くない、別にケンイチが悪いわけではない。
けれど、その中でどうしても自分だけが空回りしている気がした。そもそも、デートでラーメンというのも気に入らなかった。確かに寒いし妥当なのだがクレープなど可愛い物が食べたかった。
ラーメンを啜りながら、映画の会話を楽しむ三人を横目で見ながら溜息を吐く。自分で計画したのに、ここまでつまらないものになるとは思いもしなかった。ラーメンの汁に浮かぶ油を見つめながら、憂鬱な気分になったユキは、唇を噛み締める。
ケンイチが、少し嫌いになった。思ったより子供っぽかった、と。……小学生なので仕方がない、少女漫画のように行くはずもない。
ミノルを、少し見直した。だが、何もそこでアサギの彼氏ぶりを発揮しなくても良いのにと、疎ましくも思った。
アサギが、案の定嫌いになった。何をしていても、すぐに溶け込んで今ですらケンイチと愉しそうに会話している。それは私の彼氏なの、話さないでと思う自分になど気付いてくれない愚鈍な親友。いや、狡猾な。
……ユキは気付かない、その四人でいるから愉しいのだと思っている三人の気持ちになど、気がつかない。自分の事しか考えていなかったユキは、皆がどう思っているのかなど知らない。
ケンイチはただ、嬉しかった。大人しいユキが映画に誘ってくれたことが、恥ずかしがりやなので親友であるアサギを呼んだことも可愛くて好きだと思っていた。何より、二人きりだと緊張してしまうがミノルもいるので普通にはしゃぐことが出来て気が楽だった。ユキのことが、また好きになっていた。
ミノルはただ、照れていた。自分では誘えないので、アサギと共にいる機会を作ってくれたユキに感謝した。映画を観ながら泣くアサギがとても可愛らしかったし、彼氏という立場で隣に座れたことも歯痒いくらいに嬉しかった。
アサギはただ、幸せだった。大好きな親友と、彼氏と共に居られたのだから。
ユキに感謝していた三人の気持ちなど、知らない本人はラーメンを残した。
キィィィ、カトン……。
賑わうフードコートに、何か音が響く。テーブルに爪を立て、ユキは唇を噛み締めたまま陰鬱な瞳で三人を見つめた。
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