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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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110404_004936.jpg最近流行りのまどまぎが観てみたいのですが夜中にやっているんですね・・・。
曲が梶浦様らしいので、観てみたいんです。
っていうか、サウンドトラック出してっ。
聴いた事ないけど、100%買うのでっ(おぃ)。
とりあえず、漫画は揃えてますよ(ぐっ!)
好きな展開ですわー、っていうか、きゅうべぇってなんなんでしょう???
宇宙人???
魔法少女がフォールダウン的なことになって魔女になっているんだろうな、とは読み始めてすぐに思ったんですが、ちょっと予測不能な事が起こり過ぎてて面白い作品ですなぁ・・・。
みんな好きですが、マミさん。
ほむらちゃんも、とても好きですー。
上条君が、許せないのですがっ。

閑話休題。
90話~まだまだ続く、魔界編。そろそろ七夕イベントです。トビィお兄様、間に合わなくて残念・・・。
DESでは、七夕が最重要なのですよ。
夕食→テンザ登場→ロシファ登場 まで行きたいなぁ。
91話~トビィ参戦・・・まで到達したいなぁ・・・。
92話~マビル再登場。トモマビの一部再生編。
93話~ロシファ死亡
94話~混乱戦
95話~アーサー達参戦、全集結
96話~ラストバトル開始
どこかで外伝入れておきたいなぁ・・・。


↓こっから4月10日分。
魔法少女アサギは青をパーソナルカラーとしたサーベルが武器の魔法少女です。
http://shindanmaker.com/87846 
・・・そういうわけで、描いてみよう。
サーベルかぁ・・・。
asagiにしたら黄緑になったんですけど、青になりましたぁ・・・。
ちなみに背後本名だと
肌色をパーソナルカラーとした手裏剣が武器の魔法少女です。
は、肌色ー!?(吐血)

 魔法少女マビルは緑をパーソナルカラーとした竹槍が武器の魔法少女です。 http://shindanmaker.com/87846 

・・・。竹やり・・・。

アサギが一番まともな様子です。

 魔法少女奈留は白をパーソナルカラーとしたステッキが武器の魔法少女です。
http://shindanmaker.com/87846 

ふむ、まともだ・・・。
 描いてみようかな。
アサギと奈留で。

アサギとハイが出掛けている最中。
魔王リュウは水辺でのんびりと休憩中、魔王ミラボーは以前として勇者達の状況把握に下卑た笑いを轟かせ。
そしてもう一人、魔王アレクは腹心のスリザを呼び出し言付けを頼むと、自室の転送陣から消えていた。
魔王アレク、不在。
別に大した事ではない、時間さえあえばアレクは出掛けて行く。
頭を垂れたまま、数分。
一人きり、静まり返った室内で知らずスリザは溜息を吐いていた。
ふっ、と消えてしまったアレクの姿を追うように、残像を思い浮かべながら唇を噛締める。
微かに笑みを浮かべていたアレク、それは最愛の恋人に出会えるからだった。
行き先は恋人、ロシファの元であることなど周知の事実。
スリザはようやく顔を上げた、踵を返してアレクの室内を出ると持っている鍵で施錠する。
アレク以外に所有しているのは、スリザたった一人だ、騎士団長が代々預かっている魔王の間の鍵である。
紅玉が施された古めかしくもうっとりとする光を放つ、鍵をスリザは徐に首から下げる。
チェーンがついているので肌身離さず、入浴中も睡眠中も所持していた。
施錠し、深く一礼すると眉を吊り上げて大股で歩き出す。
女だてらに、血族ゆえ騎士団長を任されているスリザ、決して気を抜くことはない。
ふと、楽しそうな笑い声に廊下から下を覗き込めば女官と下っ端の騎士が和気藹々と数人で会話している。
頬染めている女官、おそらく誰かに気があるのだろう。
思わずスリザはふ、っと口元を緩める。

・・・羨ましい事・・・

本音だった。
アレクが幼い頃から、仕えて来たスリザ。
年上のスリザは、幼いアレクを弟の様に、それでいて敬いながら共に居た。
美童のアレク、人形の様に綺麗な主君。
肌とて髪とて、スリザよりも女らしく感じられた、か弱き魔王。
だが、時が経つにつれて魔王アレクは男らしさを垣間見せるようになる。
憂いを帯びた表情、しかし筋肉とて目立ちはしないが十分につき、背丈もスリザを超えていた。
護りの対象は、羨望の対象へと。
スリザが恐れ多くも恋心を抱くことになるのは、必然である。
けれどもアレクには恋人が居た、麗しいエルフの姫君だった。
それこそ、お姫様。
ごつごつとした自分の掌とは違い、柔らかな手と身体、流れるような髪の似合いの二人。

「お傍でこうして成長を見届け、お役に立つだけで幸せなのだ。本来ならばこうして会話すら出来ないだろうに」

ぼそ、と呟いたスリザは眉を再び吊り上げると歩き出した、だが。

「何者だ!」

歩き出したように見せかけ、腰の剣を二刀同時に引き抜くと後方の影を確実に捕らえ喉元に剣を突きつける。
喉元と刃の隙間は、ない。
僅かな振動、呼吸をすれば皮膚が切れるだろうそんな間隔である。
スリザは鋭い眼光で、先程から自分を尾行していた相手に声を荒げていた。

「何用だ、アイセル。部屋を出た当たりから貴様の気配を感じていたが・・・、アレク様に何か用でも?」

喉元に剣先を当てられているアイセルは、苦笑いである。
唇を動かせば、振動で喉が振るえ確実に、切れる。
しかし、解っていながらスリザは全く微動だせずに剣を離す気は全くなかった。
先程の自分の小言を聞かれていたら、困るという思考回路が働いたのかスリザは睨みをきかせたまま。
見詰め合う二人、諦めて折れたアイセルが口を開く。
皮膚が切れ、微かに血が剣に滲み始めるがアイセルは顔を歪めることなく真正面からスリザを捕らえる。
アイセルの血液を見ても、冷めた瞳のスリザは剣を変わらず構えたままだった。

「辛いんでしょ、アレク様を見るの」

しかし、そのアイセルの意外な言葉に思わず張り詰めた糸が緩んでしまう。
それをアイセルが見逃すわけもなく、己の強固な手甲で剣を両側に弾くとそのままに宙返り、するりとスリザの背後に下りたアイセルはスリザの首筋に右手を押し付ける。
形勢逆転、スリザは舌打ちし両の肘をアイセル目掛けて素早くたたき出す。
だが、アイセルの左腕でがっしりとスリザの身体は腕ごと抱き締められた、途中で身動きが出来なくなる。
再度舌打ち、まさかこのような失態をする羽目になるとは。

「俺、スリザちゃんを傷つけるつもりはないから。ただ、聞いて欲しい」
「この羽交い絞め行為が既に私を傷つけているんだが」

不貞腐れたようなスリザの声に、アイセルは苦笑いだ。

「ごめん、でも、たまには誰かに頼りなよ。こうして誰かに支えられなよ。スリザちゃんは一人で気を張るほど、強くないよ。頼ってもたれかかる相手、出来れば今みたく俺であって欲しいんだけど」
「私は私だ、大体偉そうに先程から何を上司に説教たれているのだ?」
「・・・辛そうなスリザちゃんを、見ていたくないんだ。アレク様のことで、悩む姿を見ていたくないんだ」

アイセルの声は、切なく、悲痛。
表情とて真剣そのものだが、生憎スリザはどういう心痛な表情でアイセルが語っているかなど知らない。

「喧しい。私がいつ、どこでアレク様の事で悩んだと? 勝手なことを言わせておけば・・・」

鼻で笑い、スリザは渾身の一撃でアイセルを腕を振り払おうとした。
先程から、アイセルの体温が非常にくすぐったいのだ、不愉快だった。
しかし、腕は更にきつくなる。
思わずスリザは小さく呻いた、苦しすぎるほどの抱擁と、先程から耳元にかかる息で背筋が寒くなる。
もがいた、が、びくともしないアイセルの抱擁に正直、スリザはプライドに傷をつけられた。
男に羽交い絞めにされるなど、思ってもいなかったことで。
血の気が失せていくのが、スリザにもわかる。
おまけに、相手は自分の部下だった、見下していた部下なのだ。

「もはや、私の力も限界・・・そろそろ隊長交代の時期か」
「そんなわけないでしょ、男と女の違い。俺にだってこれくらい出来るよ、惚れた女一人組み敷けない様じゃやってられないからね」

自嘲気味のスリザに、アイセルが無常な言葉を投げかける。
女ながら、隊長の座に就任してから、長い。
が、結婚すらしていないスリザには当然跡継ぎなど存在せず、養子をもらうべきだとも話が浮上していた。
しかし、そこまでの高年齢ではなくまだ、十分現役でいられるだろう。
アイセルに組み敷かれたのが、余程ショックだったのだろう。
思わず右脚を動かしアイセルの足を踏み潰そうとしたが、アイセルの右腕によってスリザの脚は封じ込められる。
びくともしない、我武者羅に動いてもどうにもならない。
力任せに行っては駄目だと、頭ではわかっているが焦燥感にかられてスリザは力任せに身体を動かす。
屈辱だ、こんな間抜け面の部下にいいように扱われるなんて。
悔しさに、涙が溢れそうになった、惨めで仕方がない。
何度も、男を打ち負かしてきた、そのたびに優越感に浸れた。

「しょーがないなぁ、スリザちゃんは本当に強情なんだから・・・無理だって、言っているのに」

呆れたような、アイセルの声が耳元で聴こえたかと思えば眩暈。
冷たい背中は、硬くて痛い。
それが床であると認識できたのは数分後だった、床に押し倒されていた。
一気に身体中の血液が逆流する、沸騰する、赤面する。

「本当に、いい加減にしないと殺」

震える声が途切れた、精一杯の抵抗が掻き消された。
アイセルの唇が、スリザの言葉を掻き消した。
かっと瞳を見開く、引き攣り、以後硬直。
悔しさで思わず瞳を閉じた、まさかこんな状態で男と口付けなどと。
手馴れているのだろう、スリザの身体が跳ね上がろうとも、アイセルは痛めつけないように最低限の力でスリザを押さえつけている。
口付けとて、慣れていると思った。
と言っても、スリザは男と口付けを交わしたことなどない。
ファンクラブの少女達とは何度か、軽く口付けをしたりもしているのだが・・・。
入ってきた舌の感覚に、背筋がざわめく、呼吸が出来なくて苦しそうに顔を歪める。

「スリザちゃん・・・」

一瞬、アイセルが名を呼んだ。
その隙に思い切り呼吸をしたが、直ぐに再び塞がれた。
抵抗する力がなくなり、強張っていたスリザの身体がゆっくりと床へと。
どうしてよいやら解らず、なすがままのスリザからアイセルが離れたのは数分後の事だった。
スリザの唇から零れる唾液を、そっとアイセルは拭いとる。
どちらのものなのか、解らない。
むせ返るスリザを、暫くそのままアイセルは見つめていたがぎこちなく腕を伸ばすと抱き締めて身体を起こす。

「ごめん。まさか廊下でこんなことする気はなかったんだけど・・・。
でもね、スリザちゃん。スリザちゃんがアレク様を見てきたように、俺もスリザちゃんを見てきたんだよ。愛して、るんだ、スリザのこと、愛しているんだ!」

耳元でそれだけ叫ぶように告げたアイセル、そのまま立ち上がると走り出す。
一瞬、弾かれたように顔を上げたスリザが見たアイセルは。
耳を真っ赤にし、悲痛そうに泣きそうな迷子の子供のような表情で。
目を合わせることなく、俊足のアイセルはするり、と廊下から庭へと滑り落ちるように。

「・・・何を・・・」

馬鹿なことを、と呟いたスリザ。
一人残されたスリザは、気だるく起き上がると自身の唇を押さえる。
力任せに唇を擦った、嗚咽した。
ケガラワシイ!
舌の感覚が残っている、吐き出そうと指を口に突っ込んだが、吐けない。
惨めな自分に、圧し掛かるプライドの塊。
低く、泣き声を噛み殺しながら蹲っている自分の姿を誰にも見られたくない、見られては生きていけない。
その時だった、アイセルの声が響いたのは。

『スリザちゃんがアレク様を見てきたように、俺もスリザちゃんを見てきたんだよ。愛して、るんだ、スリザのこと、愛しているんだ!』

スリザは、擦って腫れた唇に恐る恐る再び指をあてた。
そっと、瞳を閉じればそこだけ、熱い。
摩擦のせいだ、と思った。
が、鼓動が速くなった、切なくなった。

「・・・アイセル? 」

気の迷いだ、年下の格下の男だ。
常時おどけてばかりいる、嫌悪感の対象だ。
自分がアレクを見ていた感情と同じならば、それは崇高の対象。

「私はアレク様と口付けをしたいなどと、思わないっ・・・!」

見ているだけで、十分だ、満ち足りた幸福だ。

”でも、それはおそらく恋ではないのですよ”

「!?っ」

床に転がっている自身の剣を即座に構えた、今の声は誰の声だ?
高い、少女の声だった、聴いた事があるようなないような・・・。
誰かに見られていたのか? 慌ててスリザは立ち上がると気配を探して瞳を走らせる。
が。
・・・誰もいなかった。
スリザの殺気を完治し数人の衛兵が走ってきたところだが、他に逃げ去る影などない。

「どうされました、スリザ隊長! 剣を構えるなどと」
「・・・問題ない、多少違和感を感じ探っていたところだ。持ち場にもどれ」
「はっ!」

緊張した面持ちで、けれども平常心を忘れずにスリザは颯爽と衛兵に声をかけた。
再び静まり返った廊下、スリザは一人軽い溜息を吐く。
平素と違った雰囲気ではなかったか、緊張し声が震えていなかったか。
嫌な汗が突如噴出した、スリザは疲れ切ってずるずると壁にもたれかかる。
震え出した身体を、腕で必死に押さえ込む。
寒くはない、これは何の感覚か。

「これから・・・アイセルにどんな顔をして会えばよいのか・・・」

解らない、恋愛ごとは、疎い。
異性に告白されたのも初めてだった、そんな日が来ると思ってはいなかった。
アイセルの視線の先には常に少女がいた気がする、レースの似合う可愛らしい少女たちが。
何故、自分なのか検討がつかない、それ以前にからかわれたのだろうかとも思った。
ギリリ、と唇を噛締めるが、アイセルのあの表情が。
床に押し付けられた際のあの、アイセルの表情が。
男らしくて、胸が高鳴った・・・気がした。

「ち、違う! 誰が、誰が!」

身体を竦めて、膝に顔を埋めたスリザ。

『愛してるよスリザ』

声が、聴こえた。

その頃、アイセルは自分の表情を誰にも見られないようにして足早に城内を徘徊していた。
いつもお茶らけている自分がこんな辛気臭い顔をしていては、誰かに突っ込まれる。
途中の水鏡を覗こうともしたが、舌打ちしてやめた。
今の表情、情けないことこの上ない。
スリザの姿を見つけて、声をかけようと追っていた、アレクの部屋から出てきたスリザが酷く寂しそうで儚げで。
魔王アレクに嫉妬した、あんな表情にさせるアレクに苛立った。
同時にスリザのその色気に欲情し、結果が先程のあれだ。
美しい、孤高の女性。
身体つきは筋肉質で確かに女性らしくはない、それでも鍛え抜かれた女豹の様にしなやかなで美麗なスリザ。
アイセルは先程アサギと出合った庭の噴水に頭を突っ込む、瞳を何度か瞬き。
ひんやりした水温が、アイセルの紅潮した頬を冷やす。
甘い、スリザの唇は。

「・・・っ! 何やってんだ、俺っ」

波の立つ水面に映った自分の顔、何時もと変わりはない・・・筈だ。
両手で頬を力任せに叩く、いつもの自分に戻る為に。
喉もとの切れた傷口に水をあてた、ヒリヒリと染み渡る痛みに顔を大袈裟に歪める。

「いってー・・・」

思わず、大声を発したアイセル。
よし、良い調子だ、いつもの自分に戻ってきた。
この、大袈裟な立ち振る舞いが自分だ、ここでの、自分だ。
水滴が、地面に染み込んで行く。
アイセルはそっと噴水を離れると拭くものを探して思案、何処かで借りられなかったか。

「何やってんの、お前」

丁度良い、足音と声に嬉しそうに振り返ったアイセルだった。
呆れた口調、声で解った友人のサイゴンだ。
最も望ましい相手だった、自分の強運に感謝すらしたくなる。
芝居がかった口調で語りつつ、ふぅ、っと大袈裟な溜息一つ両手を広げる。

「何か布はないだろうかね、サイゴン君」
「何があったんだよ・・・」

懐を探りながら訝しげに、サイゴンは首を傾げた。

「いやー、スリザちゃんにさ、ちょっと攻撃を喰らったんだよね。見ろよ、この喉元」

サイゴンに近寄ると上向きになり喉元をサイゴンに見せ付ける、ぱっくりと開いた傷口。
痛々しげにサイゴンは目をそらすと、げんなりと布を差し出した。
そのまま、くるり、と首に巻きつけ縛り付ける。

「ごっふ! 苦しんだけどーっ」
「我慢しろ、俺傷口見るの苦手だって知ってるだろ」

こんの、一流剣士が何を傷口程度でぐだぐだとっ、と突っ込みたくなったが止めておいた。
多少緩めた布、不恰好ではあるが傷口は見えなくなった。
赤の千鳥柄、あぁ、こういうお洒落もいいな、と呟きながら水面で姿を映すアイセル。
傷も隠せた、立派なカモフラージュだ、サイゴンしか傷について知る者は居ない。

「ったく、スリザ隊長にちょっかい出すからこういうことになるんだろ? 見境ないお前の女好き、どうにかしろよ」
「やだなぁ、相手はこれでも選んでいるつもりだよ、サイゴン君」
「女なら誰でも良いくせに」
「はっはっは、若いなぁサイゴン君。それだから未だに童貞なんだよ、うん」
「・・・貴様、その布返せ」

喚きながらサイゴンは無造作に剣を引き抜いて切りかかる、爆笑しながらアイセルはそれを手甲で受け止めた。
喧嘩友達だ、気の知れた二人だった。
けれど、サイゴンにすらまさかスリザに強引に口付けしました、とは言えなかった。
今日のことは、二人以外誰も知らなくてもいい。
アイセルは、そう思いながら楽々とサイゴンの剣を避けつつそのまま移動していく。

「そういえば、ホーチミンは? 一緒じゃないとは珍しいね」
「逃走中だ」
「あ、そっ」

すっかり辺りが暗くなった頃、アサギを背負ったハイはようやく城に帰宅する。
ぐっすりと寝込んだアサギ、起きない。
アサギの部屋へ向かう、寝かせる為に。
その途中で、ハイはリュウに遭遇した。
城内には暗くなると様々な場所に設置されている蝋燭や油種に火を灯す係りが徘徊している、擦れ違いざまに挨拶する者達の中にリュウが混じっていたのだ。
無論、リュウはついてきた。
背のアサギを覗き込みながら、リュウは小声で訊ねる。

「アサギ、寝ちゃったぐ?」
「あぁ、見れば解るだろう、疲れたんだ起こすなよ? 食事前には起こそうとは思っているが・・・」

今日のハイの機嫌は最高潮だ、誰にも邪魔されず二人きりだったのだから。
ついつい、思い出すと顔が崩れてしまう。
不本意だが柔らかなアサギの首筋にも唇を這わせたりとか、柔らかな肌をこうして実感していたりとか。
そんなハイの様子を見ながら、リュウはリュウで、ほくそ笑む。
何かあったに違いない、二人きりでいられただけにしては、ハイの表情が・・・気味悪すぎる。
”あの例の薬”が効いたのだろうか? 効果を発揮したのならば二人は男女の間柄に?
リュウはたまに立ち止まり、再びハイの後をつけたり、前に進んだり、反対側にくるり、と移動しながらついていく。
普段ならばハイはこれで切れそうだが、鼻歌交じりで上機嫌のまま、気にも留めていない。
身体全体が弾んでいる、スキップしているのだろうか。
決定的だ、絶対に何かあった! それが何か知りたいっ!
リュウは、必死にアサギを凝視した、着衣の乱れがないか、その他諸々。
アサギの首筋のキスマークが、リュウの角度からでは見えないのが残念だ、いや、幸運なのか?
ハイの鼻歌が忌々しくなってきたリュウ、特にアサギには何もおかしなところがないようだ。
だが、あの薬は実はリュウが調合したものであり、性能に自信があった。
わざわざ緊急で調合したのに、失敗したぐーか?
ぶつぶつ、小声で呟くリュウには全く気にも留めず。
アサギの部屋の前に到着したハイは、ドアを丁重に開き背からするり、とお姫様抱っこへと。
その瞬間、僅かコンマ数秒。

「お、おおおおおお! 成功なのだー!」

リュウは見逃さなかった、成功だった、そう、見えたのだ無数の紅い点・・・キスマークが。
思わず跳ね上がって歓喜に打ち震えたリュウを、不思議そうに一瞬見たハイだが、アサギをベッドに横たわらせると幸せそうにじっと見つめ続ける。
ハイが、せめてキスマークに気付いていればよかったのだが。
床に座り込み、満足そうに見つめているハイの傍ら、リュウが踊り狂っている。
すきっぷ、すきっぷ、たーん、たーん、じゃんぷじゃんぷ、フィニーシュ!
踊りながらハイの横にすとん、と座り込んだリュウ、にたぁ、と顔だけハイに向けて笑う。
悪寒、さすがのハイもこれには硬直した。
言葉を詰まらせたハイに、地底の底から来るような低い高笑いを発するリュウ。

「くくくくく・・・ははははは・・・あーっはっはっはっはっは!! ・・・だぐ!」
「お前、大丈夫か?」

今までで一番魔王らしい笑い方をした、リュウ。
だが、冷めた瞳でハイはリュウを一瞥。
おかまいなしに、リュウはハイの肩に手を置くとしんみりと微笑む。

「大人になったねぇ」

首を傾げたハイに追い討ちをかけるように、リュウは肘でハイをつつく。

「う~ん、ハイったらぁ、この、お・ま・せ・さ・ん☆ だぐ!」

背筋を伝う、嫌な汗。
リュウの笑みは、恐ろしい、とにかく、恐ろしい。
ハイの危険メーターがようやく発動した、が、もう遅い。
すく、っと立ち上がったリュウに思わずハイは身構えたが、へろへろと力なく腕を振りながら部屋を出て行くリュウ。
沈黙。
暫しハイは身構えていたが、気配はない。

「暇人め・・・何か生き甲斐を見つければいいのに、この私の様に」

つい先日までハイも同じだったような気がするが、自分は棚に上げておいてこれだ。

「? ハイ・・・さ、ま?」

先程のリュウの高笑いでアサギの目が覚めたらしい。
目を擦りながら気がつけばアサギが上半身を起こしていた、慌てて構えを解いたハイ。
寝ぼけているらしいアサギ、不思議そうに部屋を見渡している。

「寝ていたのでな、アサギの部屋に運んでおいたところだが。腹は空いていないか? 食堂にでも行こうか?」
「・・・食堂。食堂! あ、お城の中の魔族達が集まる食堂ですね」

昨日、皆と会話していた際にアサギは城内に非常に興味を示したがそのうちの食堂にならば直ぐに行けそうだったので、提案したハイ。
早速二人は部屋を出る、目指すは食堂。
ハイは今まで一人で食事か、リュウが勝手に押しかけてきて二人で何かしら食べていたので食堂へ行った事はない。
馴れ合いなどしなくてもよかったので、行く必要がなかったのだが今日からは別だ。
アサギが気になる場所へは何処へでも連れて行く、それがハイの使命感。
ところが、ハイは部屋を出て数歩で脚を止めた。

「はて、困った。食堂の位置が解らぬ・・・」

平素、城内を徘徊しないハイにとって、位置関係が把握できていない。
ともかく、誰かに会えばどうにかなるだろうと正面玄関を目指した、それくらいならばハイとて解る。
行く途中、都合よくアイセルにサイゴン、ホーチミンの三人に遭遇。
思わず表情を明るくしたハイと、お辞儀をしたアサギ、それに姿勢を正した三人。
案の定サイゴンはホーチミンにべったりと腕を掴まれている、逃亡出来なかったらしい。

「あれ? ハイ様どうされました? 夕食のお時間では?」
「うむ、アサギが色んな場所を見学したいと言っていたのでな。今日は食堂へ行こうと思ってな」

怪訝なサイゴンは無視し、ホーチミンが小首傾げて聴いてみればそんな返答だ。
あぁ、なるほどと納得した三人、苦笑いするホーチミンは、ちらりとアサギを見つめる。
本当にこの子にべったりなんだ、と。
普通に判断するならば勇者に城内を案内しているわけで、非常事態な気もするが・・・。
五人は一路、食堂を目指した。

「ですが、食堂は逆方向ですよ?」

サイゴンの問いに、アイセルとホーチミンは解りきった答えに肩を竦める。
素直にハイは包み隠さず答えていた。

「迷子になっていたんだ」
「そ、そうでしたか。申し訳ありません」

ハイが城内に疎いことなど、周知の事実、聞いてはいけないことを訊いてしまったとサイゴンは軽く青褪める。
だが、ハイは特に不愉快そうにはしていなかった。
アサギと手を繋ぎ大人しく前を歩く三人についていく、言い訳しないところがハイらしかった。
今までは恐ろしく近寄りがたかったが、ハイもなかなかに付き合いやすい人物だったらしい。

「楽しいですよ、食堂は」
「そうか、ならば良い」

振り返ったホーチミン、にっこりとアサギに微笑むとアサギもにっこり、と笑う。
その、刹那。
びくり、とホーチミンが引き攣り立ち止まる。

「? どうした、ミン?」
「・・・なんでも、ない」

サイゴンが腕を引っ張る、アイセルが立ち止まり振り返った。
が、ホーチミンは静かに微笑むと歩き出した。
何事もなかったかのように、するり、と。
だが、アサギの首筋に何やら紅い点が見えた。
虫に刺されたわけではないだろう、無数に存在した・・・気がした。
となると、それはもはや原因が一つしかなく。
もう一度、ちらりとアサギを盗み見るが見えない。
ハイと楽しそうに会話をしている、特に不自然な様子はない。
歯痒くて、確かめたくて、うずうずしているホーチミンに、思わずサイゴンは眉を潜めた。

「トイレなら行って来いよ、男用なら直ぐそこに・・・ぐっ」

思い切り脚を踏まれたサイゴン、低く呻く。
ようやく食堂に到着した五人、重たそうなオリーブドラブの扉を開けば良い香りが漂い始める。
騒がしい中、大勢の魔族達が既に夕食を摂っていた。
物珍しそうにアサギは周囲を物色、目を輝かせている様子にハイも大満足である。
ホーチミンが説明を始める、大人しく聴くハイとアサギ。
食堂は大混雑だ、利用者は特に選ばない、城で働いている者は勿論商人の魔族やら、町からわざわざ食べに来ている者・・・様々である。
お値段は下町に比べれば高いが、料理長の腕は間違いなく上手さは魔族一である。
昨夜アサギが食べた物も、本日の昼食もここの料理長プロデュースである。
サイゴン、ホーチミン、アサギ、ハイ、アイセル、という順番で並んで一列に歩く。

「ここでトレイを取るのよ。それで、好きなものを好きなだけ乗せてね。勘定は最後だから・・・あ、今日はハイ様の奢りってことで」

ちゃっかりと精算はハイ任せ、上司に無礼な、とサイゴンは思ったがハイは全く気にしていない様子なのでありがたく甘えることにする。
ペールピンクのトレイをホーチミンに渡されて、アサギは嬉しそうに笑う。
釣られて笑う、ホーチミン。
さて、この並び方、実は故意である。
サイゴンはともかくとして、ホーチミンはアサギの首筋に非常に興味があった。
ハイはアイセルに本日昼間のお小言というか、文句を言いたかった、アサギとは離れたくなかった。
・・・となった場合、この並びになったわけで。
じぃ、不自然にアサギに魅入るホーチミンだが、生憎見えない。

「・・・おい」

その後方ではアサギに気を使いつつも”本日のおススメメニュー”を一心不乱に見ていたアイセルに低くハイが声をかけていた。
飛び上がる勢いでハイを見たアイセル、引き攣った笑みを浮かべる。
まさかこんな場所で昼間の続きを開始するつもりなのか!? 睨みを利かせるハイに乾いた笑い声を出すしかないアイセルだが・・・。
一瞬鋭く睨みを利かせるとハイは、それ以後アイセルを無視。
それどころではないらしい、アサギが最優先なのだろうある意味アイセルはアサギに助けられた。

「ハイ様、これに食べたいものを乗せるのだそうです」
「おぉ、そうか、アサギは賢いな! どれどれ」

アサギにトレイを手渡され、上機嫌。
でれっでれのハイである。

「私が居た場所でも、こういう雰囲気のところがありました。ついつい、食べ過ぎてしまうんですよね」
「あらそうなの、ふふふ、一杯食べましょうね。デザートも充実しているわよ?」
「わぁー!」

女ではないが、女のようなホーチミンにすっかり気を赦しているアサギ、それがハイには多少不服だが、女なら仕方がないな、と。
気がつけ、ハイ、ホーチミンは男だ。
スムーズには進まない、夕食時で大混雑、しかし会話が出来て面白い。
ホーチミンは必死にアサギの首筋を見ようとしている、気付かずにアサギは嬉しそうにハイやホーチミンと会話を愉しんだ。
遠くのほうまで続く行列、アサギは身を乗り出して躍る胸を押し殺すことなく。
お味噌汁は流石にないだろう、こんなに飲んでいないのは産まれて初めてである。
あればいいな、と思いつつ歩くが、当然、なかった。
落胆したがそれでも自分が手にしたものは美味しそうである、ハイに勘定を任せてサイゴンは席を取りに行った。
ハイの存在に慌てて主任が飛んで来たが、雰囲気を味わいたいからと別席を辞退。
六人テーブルに、五人は着席する。
ハイとアサギの向かいに三人が座れば、いただきます、の挨拶と共に食べ始めた。
アイセルは毎晩のことながら大ジョッキのビールを片手にまずは、景気づけ。
黙々と食べ始めるサイゴンを横目で軽く見つつ、ホーチミンの視線は真正面のアサギに一点集中。

「あら、そのパスタ。私も迷ったの・・・少し貰ってもいいかしら、アサギちゃん」
「あ、はい! どうぞ」

目ざとくアサギの持ってきた料理に目を光らせたホーチミン、もっとも取るのに時間がかかりそうなパスタで勝負に出る。
くるくる、とフォークとスプーンで取りながらホーチミンはにこやかにアサギに笑いかける。

「ツナがたっぷりで、とっても美味しいです!」
「今日のパスタは皆美味しそうだったものね、このスープツナパスタと迷ったのがこれよ。アサギちゃんも食べてみて? 柚子胡椒とベーコンのフィットチーネよ」
「わぁ、嬉しいです!」

身を乗り出すホーチミンだが、やはり見えない。
舌打ち。
もどかしさ、大爆発である。

「ど、どれアサギ。私のも食べてみると良いぞ!」

ハイは自分のピザを進める、蟹と海老を惜しげもなくあしらったサラダ仕立てのマヨネーズピザのようだ。
アサギとハイの会話を眺めつつ、パスタを頬張りつつホーチミンはじと目で首筋を睨みつけたまま。
ガリガリ、ガリガリ・・・。
隣で野菜スティックを齧っているサイゴンのこの音が、苛立ちを倍増。

「うふふ・・・まだデザートまで時間はあるものね・・・何があったのか、おねーさん、知りたいわ・・・うふふ・・・」

おにーさんだろ、とソラマメのポタージュを飲みながら、サイゴンが突っ込みを入れる。


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これでいいや
魔法少女多摩子はオリーブドラブをパーソナルカラーとしたコルセスカが武器の魔法少女です。
まこ 2011/04/25(Mon)13:30:42 編集
流行りのあれか
一度も見ていない(真顔
てっきりプリキュアの後釜だと思っていたよ…
というか、本編滞ってないか?(鬼
綾鷹 2011/04/25(Mon)23:35:12 編集
流行のアレです
私も最初朝の番組だと・・・。
違ったんだね☆

魔法少女たまこ、頑張って描くぞー!
まこ 2011/04/26(Tue)19:18:48 編集
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