別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
×
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次⇒買い物してから、七夕イベントで、ロシファ登場。
~トビィ参戦・・・まで到達したいなぁ・・・。
~マビル再登場。トモマビの一部再生編。
~ロシファ死亡
~混乱戦
~アーサー達参戦、全集結
~ラストバトル開始
目指せ、110完結。
イラストは友人様。
ちとキスマークが違うキスマークですが。
※電話で「アサギの首にキスマークがあって、ホーチミンとアイセルがびっくりしてるイラスト」と言っただけだったからこうなりました。
6月7日。
数日前、フェイスブックでギルザの背後君に遭遇。
驚いた!
というわけで、お友達登録なのです~★
凄い!
探したい人が居て登録したんだけど、見つからない・・・。
あと、高校の友達が私を見つけてくれました、ありがとう(号泣)。
誰を探しているかというと、小学校の時にアメリカに行った友達を探しているのです。
あと、ネロの勇者君(えぇ)。
クレオの勇者君でもいいんですが。(意味不)
誰もいないっ(号泣)!
全く絵を描く時間がないのに、キャラ紹介うんぬんとか言った責任をとる為に考えました。
「よし、あれをデジカメでとってのっけよう」←ぴくしぶに。
7月から彼氏がトヨタと一緒で土日仕事の木金休みになるので、土日が暇になる模様。
この機に一気に目指せ最終回、第一章(ごごごごごごおごぉぉぉぉぉぉ)!
↓こっから6月13日。
アサギとデート料金⇒【基本料】1時間 9億1000万円/一日(12時間)91億円【オプション】カラオケ 1曲3万円/コスプレ 1着5円/H 無料でやり放題 http://shindanmaker.com/128819
さすがアサギ、高すぎる(爆笑)。
無料でやり放題が気になりますが、基本料金さえ払えばOKってことですね。
トランシス、ベルーガ、トビィ辺りなら払いそうですが(払えません)。
メモ。
外伝1 ⇒ 4章、アサギの誕生日後に挿入
外伝2 ⇒ 一章で挿入したいトコロ(転載するだけなので楽)
外伝3 ⇒ 完了
外伝4 ⇒ 完了
外伝5 ⇒ 一章で? (転載するだけなので楽)
外伝6 ⇒ 一章で?
外伝7 ⇒ 一章で?
外伝8 ⇒ 完了
5~7・・・どうしよう・・・。
~トビィ参戦・・・まで到達したいなぁ・・・。
~マビル再登場。トモマビの一部再生編。
~ロシファ死亡
~混乱戦
~アーサー達参戦、全集結
~ラストバトル開始
目指せ、110完結。
イラストは友人様。
ちとキスマークが違うキスマークですが。
※電話で「アサギの首にキスマークがあって、ホーチミンとアイセルがびっくりしてるイラスト」と言っただけだったからこうなりました。
6月7日。
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あと、高校の友達が私を見つけてくれました、ありがとう(号泣)。
誰を探しているかというと、小学校の時にアメリカに行った友達を探しているのです。
あと、ネロの勇者君(えぇ)。
クレオの勇者君でもいいんですが。(意味不)
誰もいないっ(号泣)!
全く絵を描く時間がないのに、キャラ紹介うんぬんとか言った責任をとる為に考えました。
「よし、あれをデジカメでとってのっけよう」←ぴくしぶに。
7月から彼氏がトヨタと一緒で土日仕事の木金休みになるので、土日が暇になる模様。
この機に一気に目指せ最終回、第一章(ごごごごごごおごぉぉぉぉぉぉ)!
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メモ。
外伝1 ⇒ 4章、アサギの誕生日後に挿入
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外伝3 ⇒ 完了
外伝4 ⇒ 完了
外伝5 ⇒ 一章で? (転載するだけなので楽)
外伝6 ⇒ 一章で?
外伝7 ⇒ 一章で?
外伝8 ⇒ 完了
5~7・・・どうしよう・・・。
「何? 反乱分子だと?」
「えぇ。ハイの忠実な部下が、離反する模様に御座います。上手く使えないかと」
「テンザ、だったか? ・・・思案してみよう。良く知らせてくれたなぁ、エーア。そなたは本当に良く働く」
「これもミラボー様の御蔭で御座いますもの、当然です」
「ひゃはは、そなたはテンザの様に裏切りはしないだろうな?」
「無論で御座います」
闇の中。
エーアは直様ミラボーにテンザとハイの状況を伝えていた、二人きりの他言無用の会話である。
くぐもった声で下卑た含み笑いで、エーアが自分を裏切れない事など百も承知だが、愉快でミラボーは冗談交じりに呟いていた。
万が一エーアが裏切る可能性があるとすれば、それはミラボーが瀕死に陥り魔力が遮断された場合だけだ。
それ以外、有り得ない。
拾物の綺麗な人形である、反抗など出来るわけがなかった。
「まぁ、テンザが他の勇者を殺してくれれば願ってもない事だが・・・。上手くロシファ殺しの汚名を着せられないか、そちらを思案してみようか」
「そうですね、ミラボー様の手を煩わせるわけにもいきませんし」
外は晴天。
けれどもこの日魔界で二つの勢力が、陽の当たらない場所で活発に蠢き始めていた。
昨夜と同じ様に五人で朝食を摂ったアサギ達は、アイセルに見送られて城を出る。
城から街へ行く手段は様々だが、小型のドラゴンで出向くのが最も速い。
ハイが城を出る際に使った、あれである。
「もしくは、ミノタウロス車かキマイラ車ね。アサギちゃん、何がいいかしら?」
「・・・あの、なんですかそれ?」
引き攣った表情のアサギ、サイゴンとホーチミンが顔を見合わせる。
「知らない?」
「ごめんなさい、ちょっと解らないです・・・」
ホーチミンが指差した方向に、停留所があった。
タクシーみたいなものだろうというのはわかるのだが、原動力がミノタウロスとキマイラの早い話馬車である。
馬が引っ張るか、魔物が引っ張るか、ということだろう。
「・・・」
絶句。
誤って遭遇しようものならば、攻撃を仕掛けてしまいそうな容姿をしている。
見ればキマイラは興味深そうにアサギを見つめていた、人間の香りを感じ取り餌と間違えているのではないかと思っても仕方がない。
「ドラゴン最速だけど高いのよねー・・・。ハイ様、出してくださる?」
「あぁ、構わないが」
「じゃ、ドラゴンね」
今日の代金は全てハイが支払うことになるのだろう、サイゴンは一人静かに溜息を吐いた。
「あーでも、ドラゴンだとみんな一緒に乗れないのよねー・・・。つまんないかしら。となると、キマイラよね」
別に移動手段くらい、どうでもいいのに・・・と出発前から落胆しているサイゴンを尻目にホーチミンは一人キマイラ乗り場に歩き出していた。
慣れた手付きで乗車手続きをしたホーチミン、早速乗り込む。
キマイラ三頭が車を引き、高度は低いが宙に浮いて疾走する。
「わぁ、凄い!」
未来の乗り物を彷彿とさせるキマイラ車、森の中を駆け抜けながらアサギは瞳を輝かせていた。
乗り心地は悪くはない、クッションが柔らかく振動を吸収してくれる。
屋根もついているので、雨天でも安心だ。
四人乗れば精一杯のその車の中、久し振りの買い物らしいホーチミンは胸が躍っていた。
「私の行きつけのお店でいいかしら?」
「はい、お願いします」
「昼食もおススメのお店でいいかしら?」
「はい、楽しみです」
にっこにっこと始終笑顔のホーチミン、高級店ばかりに向かう気なんだろうなぁ、と気の毒そうにサイゴンはハイを盗み見るがおそらく魔王にとって金銭など感覚がないだろう。
触らぬ神に祟りなし、である。
今日一日はサイゴンは物言わずについて歩くしか、道は残されていなかった。
街に到着すれば案の定ホーチミンは、真っ先に高級宝石店へ直行である。
普段ならば、外から眺める店だが今日は一味違う。
胸を張って入店、ここぞとばかりに眺め始める。
当然、アサギも目を見張った。
眩いばかりの装飾品に、感嘆の声を上げずにはいられない。
「わぁ、綺麗!」
「これなんかアサギちゃんにどうかしら? 素敵なデザインよ? いかが? ハイ様」
「ふむ、似合うな、よし、買おう」
「あ、ついでにこれもください」
アサギに似合いそうな物をハイに勧めて、どさくさに紛れて会計時に自分の物を買う・・・。
凄い手捌きだった。
こんな調子で数店、まわっていく。
昨夜から周到に用意されていたのだろう、ホーチミンは迷うことなく店へ店へと渡り歩く。
店に入るたびに増えていく荷物、抱えているのは無論サイゴン一人だった。
「おぃ! おぃ、ミン、止まれ!」
「ぇ? ・・・あ、ほら、アサギちゃん。これなんだけどね、これからの季節魔界は肌を痛める日光が強いのよ。それで、これをこうやって肌に塗ると和らぐの。ほら、香りも良いでしょう? カモミールが主成分なの」
UVクリームのようなものだろう、喚くサイゴンを無視して自分が欲しいものばかりをアサギに勧めていくホーチミンである。
荷物で徐々にサイゴンの姿は隠されていった、辛うじて現在、顔が荷物から覗いている。
「ねぇ、ハイ様。アサギちゃんの白くて柔らかな皮膚が日光で痛めつけられるのは困るでしょう?」
「おぉ、それは一大事。買わねばな」
「これくださーい、あ、も1個追加ね」
昼食も一級料理店である、おまけに窓際テラスの最も良い席を予約してあったらしく、ついでにコース料理まで予約してあった様で、上機嫌でホーチミンは食べ始めた。
アサギと一緒なので笑顔の耐えないハイだが、流石にアサギも首を傾げ始める。
待遇、良すぎないだろうか、と。
「午後からはぁ、水着買いましょう」
「水着ですか?」
「えぇ、この時期ね、湖で魔族は水浴びするの」
「・・・ち、地球とあんまり変わらない生活してるんですね・・・」
思ったより庶民的な魔族である、雲丹たっぷりのパスタに舌鼓をうちつつ、ホーチミンは余裕の笑み。
「ねぇ、ハイ様。アサギちゃんにはどんな水着が似合うかしら」
「水着? どのようなものだ?」
水着など初耳のハイ、軽く首を傾げる。
「あら、ハイ様は初めて? じゃあ、みんなで選ばないとね」
「うむ、よく解らないが・・・アサギなら何でも似合うから店のものを買い占めないとな」
流石に引き攣った笑顔のアサギとサイゴンだが、ホーチミンはコロコロと愉快そうに笑ったまま。
ハイはいたって大真面目である、ステーキを頬張りながら満足そうに頷いた。
「・・・ミン! ちょっと来いっ」
「うー。まだ食べてないのよ、白身魚のポアレ」
へこへこと頭を下げながら、不満たらたらのホーチミンの腕を引っ張り上げ席から外れるサイゴンとホーチミン。
手を振りながら優雅に食事を続けているハイと、困惑気味のアサギを残して二人は物陰へ。
「おいっ、調子に乗るな」
珍しく声を張り上げたサイゴン、微かにホーチミンは目を開いたがすぐに唇を尖らせた。
「なぁにぃ、いいじゃない。サイゴン、何も買ってくれないんだもん」
「どーして俺がお前に買ってやらねばならんのだっ! ・・・じゃないだろ、よく考えてみろっ」
髪を指に巻きつけながらきょとん、とホーチミンは小首傾げる。
確かに、可愛いのだが男だ。
着飾ったホーチミンは確かに擦れ違ってきた同年代の女達より美しかったかもしれない、だが男だ。
大きく息を吸い込むサイゴン、がっくりと壁にもたれかかり。
「ハイ様の財力、ミンは計算違いだ」
「ふぇ?」
汗を拭きつつ語るサイゴン、非常に嫌な予感が途中からしてきていた。
「アレク様は解る、ここの魔王だ。だが、ハイ様は異世界からの訪問者だぞ? 魔王と呼ばれてはいるが給料など貰ってないだろう!? 魔王=金持ち、という定義は成り立たない」
つまり、いつしか金は尽きて自分の支払いに廻ってきそうだと、サイゴンは主張したかった。
「!? な、なんですって!?」
すっとんきょうな声を上げたのはホーチミンだ、確かにサイゴンの言う通りかもしれない。
2星ハンニバルならば魔王として君臨していたハイは栄華を極めていただろう、だがここは4星クレオ。
わなわなと震え始めるホーチミン、もっと早くにそれを伝えてほしかったとサイゴンを鋭く睨み。
「・・・ここの支払い、大丈夫よね・・・? 」
「知るか。最悪、魔王アレク様へのツケになって、スリザ隊長に発覚されて大目玉だぞ」
「い、いやああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!」
がったーん! と盛大にテーブルに倒れたホーチミン、慌てて店員がすっとんでくるが、彼を跳ね飛ばす。
スリザの名が出た瞬間、悪寒が走った。
そんな失態、知られた日には半殺しだ。
ハイを紐扱いしていたことも、厳しく罰せられるだろう。
減給は必須、寧ろクビかもしれない。
「じょ、冗談じゃないわよ!? 払えるわけないでしょお、ここ×4人分なんてっ」
「自分で巻いた種だ、なんとかしろよ」
「あーん、助けてよサイゴンっ」
「知らんっ」
ぎゅむ、と抱きついてきたホーチミンを、必死でサイゴンは剥がし続けた。
「でもでも、水着は欲しいのっ。今年の新作、すっごく可愛いのっ。ピンクのふりふりなの、ビキニでパレオなのっ」
身振り手振り、説明する。
そうなのだ、ホーチミン、水着が欲しかったのだ。
「男物の海水パンツでいーだろうがっ」
「嫌よっ! サイゴンは他の男に私の胸の二つの神々しい二つの突起が見られてもいいっていうの!?」
「神々しい!?」
思わず吹き出したサイゴン、よよよ、と倒れこんですすり泣くホーチミン。
「女物のビキニだと、男の大事なモノがくっきりと目立つと思うんだが。海水パンツにTシャツでも羽織れよ」
冷静なサイゴン。
「だからパレオがあるんでしょー!? 私のこの腰のすらりとしたラインを強調するにはビキニよ、ビキニっ」
腰をくねらせるホーチミンだが、サイゴンは頭を抱えたままだ。
「くだらない・・・。さっさと食べて帰るぞ」
「やー、やー! 絶対水着は買うのっ。私、アサギちゃんときゃぴきゃぴちゃぷちゃぷ、水遊びするんだからっ」
必死に駄々をこねるホーチミン、気持ちは若干解る。
これまで、水遊びなどしていなかったホーチミンだ。
女の友達がいなかったので、遠くから眺めるか涼む為に脚を湖に浸すくらいだった。
サイゴンも、相手にしていなかったのでデート気分で水浴びなど過去にはない。
しかし、今年はアサギがいる。
ホーチミンの脳内では、楽しい華やかな水遊び計画が進行しているのだろう。
「なら、早く言え。・・・男だって」
「・・・言ったら、アサギちゃん、私のこと軽蔑するかもしれないから」
「でも、嘘はいけないと思うが」
コツン、とホーチミンの額を小突いてサイゴンは腕を引く。
「ほら、戻るぞ。とりあえず、買い物は禁止」
「水着は、買う。・・・自分で買うわ」
小声で静かに呟いたホーチミンを、軽くサイゴンは見つめる。
はしゃいでいるのだろう、嬉しいから。
それは、解る。
幼馴染だから、滅多に自分以外には我儘言わないホーチミンをサイゴンは知っている。
華やかなホーチミンだが、影で悪口を言われている事もサイゴンは知っている。
女性の影口対象には、もってこいの人物だ。
項垂れたままのホーチミンの手を握り歩くサイゴン、幼い頃はいつもこうだった。
何時からか、女装に目覚めたホーチミンだが幼少は元気に飛びまわる普通の男の子だった筈だ。
「サイゴン様、ホーチミン様、おかえりなさい」
にこやかに微笑んで出迎えたアサギ、ハイと共に食事を終えているようだ。
ぎこちなく微笑み返すホーチミンは、優雅に着席すると残りの食事に手をつける。
「ごめんなさいね、すぐ食べるから」
「ゆっくりで構わないのです。ここの紅茶、とっても美味しいです」
「お口にあったかしら? 良かった」
素直なアサギに、胸が痛む。
何処で言うべきか、いつ言うべきか。
すでに、ホーチミンの口内の高級食材は、味気なく。
戸惑い気味にアサギに返事を返し、若干手が震えていた。
「さぁ、水着とやらを買いに行かねばな」
上機嫌のハイだ、今更変更は出来ない。
食事後徐に立ち上がり、荷物を抱えていくサイゴンは軽くホーチミンの頭部を撫でる。
沈黙のホーチミン、足取り重く、水着の店へ。
「あの、ハイ様? お金たくさんあるんですか?」
店を出て、立ち止まったアサギは軽く振り返ると見上げてそう呟いた。
流石に通貨を知らなくとも、朝から買い物三昧、更に今の店の様子では金額が気になるのは必然である。
耳を澄まして、サイゴンも聞き入った。
「ミラボーが以前くれた宝石があるから、大丈夫だが。・・・おそらくな?」
おそらく、が恐ろしいが辛うじて次の店まで持てば良い。
胸を撫で下ろしたホーチミンと、サイゴンだった。
暫し歩き、ホーチミンに案内された場所は、当然女性の魔族で賑わっており入りにくい空気満載で流石にサイゴンは引いてしまう。
「俺、外で待ってるから」
言い終わったサイゴン、すでに荷物を地面に下ろして花壇に座り込み動く気配なしである。
「あら、残念。ハイ様、行きましょ」
「うむ、さぁ、どれどれ・・・」
アサギの手を引いてハイは店内へ、見送ったサイゴンは欠伸一つ瞳を閉じた。
疲労感、120%。
女の買い物は、長い。
サイゴンには苦痛以外の何ものでもなかった、買い物が嫌いなわけではないが長すぎるのだ。
軽く睡眠態勢である、うとうと、と。
そこへ。
「きゃー!? ハイ様!?」
「ちょ!? ハイ様!?」
悲鳴が上がった店内、何事かとサイゴンは渋々ながらに、荷物を抱えて店内へ。
一応魔王である、何かあっては一大事だ。
「ミン! アサギ様! ハイ様! 何が・・・」
入店して最初に目にしたもの。
ハイが、盛大に床にひっくり返り、鼻血を噴き出していた光景だった。
水着の刺激が強過ぎた、というかアサギが着ているところでも大方想像したのだろう。
「け、けしからん格好だなっ! アサギ、私はその純白のあれなぞが良いと思うのだがっ」
カっ! と充血した瞳で垂直に起き上がったハイ、真正面のハイレグ気味のビキニを堂々と指差す。
何だ、このエロおっさん・・・、無気力で倒れそうになったサイゴンだが決死の覚悟で脚を堪えて身体を支え。
サイドは紐だ、確かにアサギに似合うだろうがその年齢が着るものではない。
シンプルだからこそ、最も身体のラインによって似合うか似合わないかが決まる水着だった。
「ハイ様、下着は白の純粋系が好みなのね・・・」
勝手に分析するホーチミンの隣、アサギは引き攣った笑顔を浮かべている。
「あの・・・私、あれはちょっと・・・。もう少し大人になってからで・・・。あ、あそこの水色の大きなフリルのがいいです・・・」
確かに遠慮したくなるだろう、アサギはビキニではなくチューブトップの大きなリボンが胸元についた水着を指していた。
リボンにフリル、アンダーにも大きなフリルがほどこされており可愛らしい。
「そ、そうか、し、仕方ないな。あ、アサギはどれも似合うから困ってしまうなぁ、はははははっは!」
声のトーンが下がったハイ、解り易い。
ホーチミンは自分が選んでいたものをそっと購入すると、アサギの選択した水着とホーチミンの見立ての”可愛らしい”水着とをアサギに合わせて買い物の続きである。
鼻血で店の隅においやられているハイはさておき、サイゴンは再び小さく欠伸をしながら店の外に出て買い物終了まで一眠りだ。
やがて、出てきたアサギの手に袋、表情はそこはかとなく嬉しそうに。
自分好みの水着が買えたのだろう、間違ってもあの白のビキニではないだろう。
「さて、帰りますか」
立ち上がったサイゴン、大人しく頷いたホーチミンに小さく溜息を吐くと帰路へ。
揺られて城に舞い戻った四人は、そこで別れる。
仲良く手を繋いで帰っていくハイとアサギを、ぼんやりと見つめながら大量の荷物に埋もれてホーチミンは一言も発しない。
「・・・言ってないのか」
「・・・」
無表情で立ち尽くしているホーチミンだ、けれど。
遠くから、声が。
「・・・チミン様! ホーチミン様!」
城から飛び出すように出てきたアサギ、慌てて追いかけてくるハイ。
手を振りながら懸命にかけよっていくるアサギ、思わずサイゴンも目を丸くする。
息を切らせて目の前に駆けてきたアサギ、深くお辞儀を。
「今日は、ありがとうございました! とっても面白かったです。それで、水遊びはいつ行くんですか?」
お礼を、言いに。
そして、次の約束をする為に。
曇りのない瞳で、真っ正直にアサギは笑顔で問う。
「・・・えぇと・・・。ハイ様にも聞いてみないとね?」
「アイセル様や、リュウ様も一緒にどうでしょう? きっと楽しいですよ!」
「そうね、大勢のほうが楽しいものね」
「はい! じゃあ、また決めましょうね」
「・・・うん」
アサギとは裏腹に、ホーチミンは腕の仲の水着を握り締める。
流石に、男と着替えなどアサギはしたくないだろうし。
気持ちは十分女だが、身体つきがアサギとは全く異なる。
「また、お城で会えますか?」
「会えるわ、ちゃんと居るし、会いに行くわ」
「じゃあ、おやすみなさい!」
手を振る。
友達にしてきたように、普通に手を振る。
つられて、ホーチミンも手を振った。
迎えに来たハイに連れられて、アサギは帰っていくが、再び振り向いて手を振った。
「・・・いい子だぞ。早く、言えよミン」
「う・・・ん・・・」
無気力に手を振り替えしながら。
ホーチミンは、足元に転がる本日の戦利品たちに埋もれながら。
暫し、その場に立ち尽くしていた。
後悔した。
もっと早くに自分の性別を伝えるべきであったと、後悔した。
もしくは、水遊びに行きたいなどというべきではなかった、と後悔した。
アサギの笑顔が、痛い。
楽しかった、今日は楽しかった。
服の趣味も、似ていたから笑いながら共に買い物が出来た。
互いに選んで、話をして。
「私・・・どうして男なの?」
呟いたホーチミンの言葉、サイゴンが隣で空を見上げる。
紅く染まり始めた空、何処かひどく、物悲しい。
美しい、空だったが。
「私・・・マドリードみたいな女性になりたかった」
「姉さんか」
「あの人は本当に気高くて美しかった」
「無茶もしてたがな」
亡くなったサイゴンの姉・マドリード。
夜半前の美しい空は、遠くて儚くて、マドリードを思い出す。
「帰ろう、ミン」
「・・・」
項垂れて、足取り重くホーチミンはサイゴンに腕を引かれて歩く。
いつしか、夜の帳へと。
部屋に転がり、入浴を済ませたアサギはふと、窓際へと駆け寄る。
懸命に、空を見ていたところへハイの登場だ。
爪先で何かを探すように上空を見ているアサギ、不思議そうに首を傾げる。
「どうした、アサギ?」
「七夕、って知ってますか?」
「ん?」
水着に引き続き、知らない単語である。
微かに微笑みアサギはハイを手招き、一緒に並んで空を見上げる。
「私の住んでいるところにある、えーっと昔話というか行事というかなんですけど」
「ほぅ、聞かせてくれないか?」
虫の声、熱が残る空気の中にも風。
「私が間違えて居なければ、今日は七夕で。七夕は一年に一度、彦星と織姫という恋人が再会出来る日なのです」
「一年に一度?」
「はい。優秀な牛使いの彦星に、優秀な機織の織姫でしたが、二人は恋仲になると自分達の仕事をほったらかしにしてしまいました。怒った神様が二人を引き離したのです。恋に溺れて、やるべきことを忘れてしまった二人への罰なのです。年に一度、天の川でカササギの導きで二人は逢えるのですよ」
「悲惨な話だな・・・私は耐えられん」
即答。
苦笑いしたアサギだが、ハイは真剣だ。
「いつか。二人は赦されて一緒に居られる日が来ると思うのです。それまで、我慢です」
―――いつか。二人は赦されて。一緒に居られる日が。・・・来ると―――
唇を、動かす。
アサギ? とハイの呼びかけにも応えず。
アサギは静かに夜空を見上げていた。
4星クレオの魔界イヴァンでは、天の川が見られなかった。
地球とは位置が違うのだろう、見えなくて当然かもしれなかった。
けれども、アサギは。
何度でも繰り返す。
「いつか、ゆるされて、いっしょに」
何度も、繰り返していた・・・”言葉”を。
ハイと二人、静かに何を語るでもなく、夜空を見上げ続ける。
一度、流れ星。
「えぇ。ハイの忠実な部下が、離反する模様に御座います。上手く使えないかと」
「テンザ、だったか? ・・・思案してみよう。良く知らせてくれたなぁ、エーア。そなたは本当に良く働く」
「これもミラボー様の御蔭で御座いますもの、当然です」
「ひゃはは、そなたはテンザの様に裏切りはしないだろうな?」
「無論で御座います」
闇の中。
エーアは直様ミラボーにテンザとハイの状況を伝えていた、二人きりの他言無用の会話である。
くぐもった声で下卑た含み笑いで、エーアが自分を裏切れない事など百も承知だが、愉快でミラボーは冗談交じりに呟いていた。
万が一エーアが裏切る可能性があるとすれば、それはミラボーが瀕死に陥り魔力が遮断された場合だけだ。
それ以外、有り得ない。
拾物の綺麗な人形である、反抗など出来るわけがなかった。
「まぁ、テンザが他の勇者を殺してくれれば願ってもない事だが・・・。上手くロシファ殺しの汚名を着せられないか、そちらを思案してみようか」
「そうですね、ミラボー様の手を煩わせるわけにもいきませんし」
外は晴天。
けれどもこの日魔界で二つの勢力が、陽の当たらない場所で活発に蠢き始めていた。
昨夜と同じ様に五人で朝食を摂ったアサギ達は、アイセルに見送られて城を出る。
城から街へ行く手段は様々だが、小型のドラゴンで出向くのが最も速い。
ハイが城を出る際に使った、あれである。
「もしくは、ミノタウロス車かキマイラ車ね。アサギちゃん、何がいいかしら?」
「・・・あの、なんですかそれ?」
引き攣った表情のアサギ、サイゴンとホーチミンが顔を見合わせる。
「知らない?」
「ごめんなさい、ちょっと解らないです・・・」
ホーチミンが指差した方向に、停留所があった。
タクシーみたいなものだろうというのはわかるのだが、原動力がミノタウロスとキマイラの早い話馬車である。
馬が引っ張るか、魔物が引っ張るか、ということだろう。
「・・・」
絶句。
誤って遭遇しようものならば、攻撃を仕掛けてしまいそうな容姿をしている。
見ればキマイラは興味深そうにアサギを見つめていた、人間の香りを感じ取り餌と間違えているのではないかと思っても仕方がない。
「ドラゴン最速だけど高いのよねー・・・。ハイ様、出してくださる?」
「あぁ、構わないが」
「じゃ、ドラゴンね」
今日の代金は全てハイが支払うことになるのだろう、サイゴンは一人静かに溜息を吐いた。
「あーでも、ドラゴンだとみんな一緒に乗れないのよねー・・・。つまんないかしら。となると、キマイラよね」
別に移動手段くらい、どうでもいいのに・・・と出発前から落胆しているサイゴンを尻目にホーチミンは一人キマイラ乗り場に歩き出していた。
慣れた手付きで乗車手続きをしたホーチミン、早速乗り込む。
キマイラ三頭が車を引き、高度は低いが宙に浮いて疾走する。
「わぁ、凄い!」
未来の乗り物を彷彿とさせるキマイラ車、森の中を駆け抜けながらアサギは瞳を輝かせていた。
乗り心地は悪くはない、クッションが柔らかく振動を吸収してくれる。
屋根もついているので、雨天でも安心だ。
四人乗れば精一杯のその車の中、久し振りの買い物らしいホーチミンは胸が躍っていた。
「私の行きつけのお店でいいかしら?」
「はい、お願いします」
「昼食もおススメのお店でいいかしら?」
「はい、楽しみです」
にっこにっこと始終笑顔のホーチミン、高級店ばかりに向かう気なんだろうなぁ、と気の毒そうにサイゴンはハイを盗み見るがおそらく魔王にとって金銭など感覚がないだろう。
触らぬ神に祟りなし、である。
今日一日はサイゴンは物言わずについて歩くしか、道は残されていなかった。
街に到着すれば案の定ホーチミンは、真っ先に高級宝石店へ直行である。
普段ならば、外から眺める店だが今日は一味違う。
胸を張って入店、ここぞとばかりに眺め始める。
当然、アサギも目を見張った。
眩いばかりの装飾品に、感嘆の声を上げずにはいられない。
「わぁ、綺麗!」
「これなんかアサギちゃんにどうかしら? 素敵なデザインよ? いかが? ハイ様」
「ふむ、似合うな、よし、買おう」
「あ、ついでにこれもください」
アサギに似合いそうな物をハイに勧めて、どさくさに紛れて会計時に自分の物を買う・・・。
凄い手捌きだった。
こんな調子で数店、まわっていく。
昨夜から周到に用意されていたのだろう、ホーチミンは迷うことなく店へ店へと渡り歩く。
店に入るたびに増えていく荷物、抱えているのは無論サイゴン一人だった。
「おぃ! おぃ、ミン、止まれ!」
「ぇ? ・・・あ、ほら、アサギちゃん。これなんだけどね、これからの季節魔界は肌を痛める日光が強いのよ。それで、これをこうやって肌に塗ると和らぐの。ほら、香りも良いでしょう? カモミールが主成分なの」
UVクリームのようなものだろう、喚くサイゴンを無視して自分が欲しいものばかりをアサギに勧めていくホーチミンである。
荷物で徐々にサイゴンの姿は隠されていった、辛うじて現在、顔が荷物から覗いている。
「ねぇ、ハイ様。アサギちゃんの白くて柔らかな皮膚が日光で痛めつけられるのは困るでしょう?」
「おぉ、それは一大事。買わねばな」
「これくださーい、あ、も1個追加ね」
昼食も一級料理店である、おまけに窓際テラスの最も良い席を予約してあったらしく、ついでにコース料理まで予約してあった様で、上機嫌でホーチミンは食べ始めた。
アサギと一緒なので笑顔の耐えないハイだが、流石にアサギも首を傾げ始める。
待遇、良すぎないだろうか、と。
「午後からはぁ、水着買いましょう」
「水着ですか?」
「えぇ、この時期ね、湖で魔族は水浴びするの」
「・・・ち、地球とあんまり変わらない生活してるんですね・・・」
思ったより庶民的な魔族である、雲丹たっぷりのパスタに舌鼓をうちつつ、ホーチミンは余裕の笑み。
「ねぇ、ハイ様。アサギちゃんにはどんな水着が似合うかしら」
「水着? どのようなものだ?」
水着など初耳のハイ、軽く首を傾げる。
「あら、ハイ様は初めて? じゃあ、みんなで選ばないとね」
「うむ、よく解らないが・・・アサギなら何でも似合うから店のものを買い占めないとな」
流石に引き攣った笑顔のアサギとサイゴンだが、ホーチミンはコロコロと愉快そうに笑ったまま。
ハイはいたって大真面目である、ステーキを頬張りながら満足そうに頷いた。
「・・・ミン! ちょっと来いっ」
「うー。まだ食べてないのよ、白身魚のポアレ」
へこへこと頭を下げながら、不満たらたらのホーチミンの腕を引っ張り上げ席から外れるサイゴンとホーチミン。
手を振りながら優雅に食事を続けているハイと、困惑気味のアサギを残して二人は物陰へ。
「おいっ、調子に乗るな」
珍しく声を張り上げたサイゴン、微かにホーチミンは目を開いたがすぐに唇を尖らせた。
「なぁにぃ、いいじゃない。サイゴン、何も買ってくれないんだもん」
「どーして俺がお前に買ってやらねばならんのだっ! ・・・じゃないだろ、よく考えてみろっ」
髪を指に巻きつけながらきょとん、とホーチミンは小首傾げる。
確かに、可愛いのだが男だ。
着飾ったホーチミンは確かに擦れ違ってきた同年代の女達より美しかったかもしれない、だが男だ。
大きく息を吸い込むサイゴン、がっくりと壁にもたれかかり。
「ハイ様の財力、ミンは計算違いだ」
「ふぇ?」
汗を拭きつつ語るサイゴン、非常に嫌な予感が途中からしてきていた。
「アレク様は解る、ここの魔王だ。だが、ハイ様は異世界からの訪問者だぞ? 魔王と呼ばれてはいるが給料など貰ってないだろう!? 魔王=金持ち、という定義は成り立たない」
つまり、いつしか金は尽きて自分の支払いに廻ってきそうだと、サイゴンは主張したかった。
「!? な、なんですって!?」
すっとんきょうな声を上げたのはホーチミンだ、確かにサイゴンの言う通りかもしれない。
2星ハンニバルならば魔王として君臨していたハイは栄華を極めていただろう、だがここは4星クレオ。
わなわなと震え始めるホーチミン、もっと早くにそれを伝えてほしかったとサイゴンを鋭く睨み。
「・・・ここの支払い、大丈夫よね・・・? 」
「知るか。最悪、魔王アレク様へのツケになって、スリザ隊長に発覚されて大目玉だぞ」
「い、いやああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!」
がったーん! と盛大にテーブルに倒れたホーチミン、慌てて店員がすっとんでくるが、彼を跳ね飛ばす。
スリザの名が出た瞬間、悪寒が走った。
そんな失態、知られた日には半殺しだ。
ハイを紐扱いしていたことも、厳しく罰せられるだろう。
減給は必須、寧ろクビかもしれない。
「じょ、冗談じゃないわよ!? 払えるわけないでしょお、ここ×4人分なんてっ」
「自分で巻いた種だ、なんとかしろよ」
「あーん、助けてよサイゴンっ」
「知らんっ」
ぎゅむ、と抱きついてきたホーチミンを、必死でサイゴンは剥がし続けた。
「でもでも、水着は欲しいのっ。今年の新作、すっごく可愛いのっ。ピンクのふりふりなの、ビキニでパレオなのっ」
身振り手振り、説明する。
そうなのだ、ホーチミン、水着が欲しかったのだ。
「男物の海水パンツでいーだろうがっ」
「嫌よっ! サイゴンは他の男に私の胸の二つの神々しい二つの突起が見られてもいいっていうの!?」
「神々しい!?」
思わず吹き出したサイゴン、よよよ、と倒れこんですすり泣くホーチミン。
「女物のビキニだと、男の大事なモノがくっきりと目立つと思うんだが。海水パンツにTシャツでも羽織れよ」
冷静なサイゴン。
「だからパレオがあるんでしょー!? 私のこの腰のすらりとしたラインを強調するにはビキニよ、ビキニっ」
腰をくねらせるホーチミンだが、サイゴンは頭を抱えたままだ。
「くだらない・・・。さっさと食べて帰るぞ」
「やー、やー! 絶対水着は買うのっ。私、アサギちゃんときゃぴきゃぴちゃぷちゃぷ、水遊びするんだからっ」
必死に駄々をこねるホーチミン、気持ちは若干解る。
これまで、水遊びなどしていなかったホーチミンだ。
女の友達がいなかったので、遠くから眺めるか涼む為に脚を湖に浸すくらいだった。
サイゴンも、相手にしていなかったのでデート気分で水浴びなど過去にはない。
しかし、今年はアサギがいる。
ホーチミンの脳内では、楽しい華やかな水遊び計画が進行しているのだろう。
「なら、早く言え。・・・男だって」
「・・・言ったら、アサギちゃん、私のこと軽蔑するかもしれないから」
「でも、嘘はいけないと思うが」
コツン、とホーチミンの額を小突いてサイゴンは腕を引く。
「ほら、戻るぞ。とりあえず、買い物は禁止」
「水着は、買う。・・・自分で買うわ」
小声で静かに呟いたホーチミンを、軽くサイゴンは見つめる。
はしゃいでいるのだろう、嬉しいから。
それは、解る。
幼馴染だから、滅多に自分以外には我儘言わないホーチミンをサイゴンは知っている。
華やかなホーチミンだが、影で悪口を言われている事もサイゴンは知っている。
女性の影口対象には、もってこいの人物だ。
項垂れたままのホーチミンの手を握り歩くサイゴン、幼い頃はいつもこうだった。
何時からか、女装に目覚めたホーチミンだが幼少は元気に飛びまわる普通の男の子だった筈だ。
「サイゴン様、ホーチミン様、おかえりなさい」
にこやかに微笑んで出迎えたアサギ、ハイと共に食事を終えているようだ。
ぎこちなく微笑み返すホーチミンは、優雅に着席すると残りの食事に手をつける。
「ごめんなさいね、すぐ食べるから」
「ゆっくりで構わないのです。ここの紅茶、とっても美味しいです」
「お口にあったかしら? 良かった」
素直なアサギに、胸が痛む。
何処で言うべきか、いつ言うべきか。
すでに、ホーチミンの口内の高級食材は、味気なく。
戸惑い気味にアサギに返事を返し、若干手が震えていた。
「さぁ、水着とやらを買いに行かねばな」
上機嫌のハイだ、今更変更は出来ない。
食事後徐に立ち上がり、荷物を抱えていくサイゴンは軽くホーチミンの頭部を撫でる。
沈黙のホーチミン、足取り重く、水着の店へ。
「あの、ハイ様? お金たくさんあるんですか?」
店を出て、立ち止まったアサギは軽く振り返ると見上げてそう呟いた。
流石に通貨を知らなくとも、朝から買い物三昧、更に今の店の様子では金額が気になるのは必然である。
耳を澄まして、サイゴンも聞き入った。
「ミラボーが以前くれた宝石があるから、大丈夫だが。・・・おそらくな?」
おそらく、が恐ろしいが辛うじて次の店まで持てば良い。
胸を撫で下ろしたホーチミンと、サイゴンだった。
暫し歩き、ホーチミンに案内された場所は、当然女性の魔族で賑わっており入りにくい空気満載で流石にサイゴンは引いてしまう。
「俺、外で待ってるから」
言い終わったサイゴン、すでに荷物を地面に下ろして花壇に座り込み動く気配なしである。
「あら、残念。ハイ様、行きましょ」
「うむ、さぁ、どれどれ・・・」
アサギの手を引いてハイは店内へ、見送ったサイゴンは欠伸一つ瞳を閉じた。
疲労感、120%。
女の買い物は、長い。
サイゴンには苦痛以外の何ものでもなかった、買い物が嫌いなわけではないが長すぎるのだ。
軽く睡眠態勢である、うとうと、と。
そこへ。
「きゃー!? ハイ様!?」
「ちょ!? ハイ様!?」
悲鳴が上がった店内、何事かとサイゴンは渋々ながらに、荷物を抱えて店内へ。
一応魔王である、何かあっては一大事だ。
「ミン! アサギ様! ハイ様! 何が・・・」
入店して最初に目にしたもの。
ハイが、盛大に床にひっくり返り、鼻血を噴き出していた光景だった。
水着の刺激が強過ぎた、というかアサギが着ているところでも大方想像したのだろう。
「け、けしからん格好だなっ! アサギ、私はその純白のあれなぞが良いと思うのだがっ」
カっ! と充血した瞳で垂直に起き上がったハイ、真正面のハイレグ気味のビキニを堂々と指差す。
何だ、このエロおっさん・・・、無気力で倒れそうになったサイゴンだが決死の覚悟で脚を堪えて身体を支え。
サイドは紐だ、確かにアサギに似合うだろうがその年齢が着るものではない。
シンプルだからこそ、最も身体のラインによって似合うか似合わないかが決まる水着だった。
「ハイ様、下着は白の純粋系が好みなのね・・・」
勝手に分析するホーチミンの隣、アサギは引き攣った笑顔を浮かべている。
「あの・・・私、あれはちょっと・・・。もう少し大人になってからで・・・。あ、あそこの水色の大きなフリルのがいいです・・・」
確かに遠慮したくなるだろう、アサギはビキニではなくチューブトップの大きなリボンが胸元についた水着を指していた。
リボンにフリル、アンダーにも大きなフリルがほどこされており可愛らしい。
「そ、そうか、し、仕方ないな。あ、アサギはどれも似合うから困ってしまうなぁ、はははははっは!」
声のトーンが下がったハイ、解り易い。
ホーチミンは自分が選んでいたものをそっと購入すると、アサギの選択した水着とホーチミンの見立ての”可愛らしい”水着とをアサギに合わせて買い物の続きである。
鼻血で店の隅においやられているハイはさておき、サイゴンは再び小さく欠伸をしながら店の外に出て買い物終了まで一眠りだ。
やがて、出てきたアサギの手に袋、表情はそこはかとなく嬉しそうに。
自分好みの水着が買えたのだろう、間違ってもあの白のビキニではないだろう。
「さて、帰りますか」
立ち上がったサイゴン、大人しく頷いたホーチミンに小さく溜息を吐くと帰路へ。
揺られて城に舞い戻った四人は、そこで別れる。
仲良く手を繋いで帰っていくハイとアサギを、ぼんやりと見つめながら大量の荷物に埋もれてホーチミンは一言も発しない。
「・・・言ってないのか」
「・・・」
無表情で立ち尽くしているホーチミンだ、けれど。
遠くから、声が。
「・・・チミン様! ホーチミン様!」
城から飛び出すように出てきたアサギ、慌てて追いかけてくるハイ。
手を振りながら懸命にかけよっていくるアサギ、思わずサイゴンも目を丸くする。
息を切らせて目の前に駆けてきたアサギ、深くお辞儀を。
「今日は、ありがとうございました! とっても面白かったです。それで、水遊びはいつ行くんですか?」
お礼を、言いに。
そして、次の約束をする為に。
曇りのない瞳で、真っ正直にアサギは笑顔で問う。
「・・・えぇと・・・。ハイ様にも聞いてみないとね?」
「アイセル様や、リュウ様も一緒にどうでしょう? きっと楽しいですよ!」
「そうね、大勢のほうが楽しいものね」
「はい! じゃあ、また決めましょうね」
「・・・うん」
アサギとは裏腹に、ホーチミンは腕の仲の水着を握り締める。
流石に、男と着替えなどアサギはしたくないだろうし。
気持ちは十分女だが、身体つきがアサギとは全く異なる。
「また、お城で会えますか?」
「会えるわ、ちゃんと居るし、会いに行くわ」
「じゃあ、おやすみなさい!」
手を振る。
友達にしてきたように、普通に手を振る。
つられて、ホーチミンも手を振った。
迎えに来たハイに連れられて、アサギは帰っていくが、再び振り向いて手を振った。
「・・・いい子だぞ。早く、言えよミン」
「う・・・ん・・・」
無気力に手を振り替えしながら。
ホーチミンは、足元に転がる本日の戦利品たちに埋もれながら。
暫し、その場に立ち尽くしていた。
後悔した。
もっと早くに自分の性別を伝えるべきであったと、後悔した。
もしくは、水遊びに行きたいなどというべきではなかった、と後悔した。
アサギの笑顔が、痛い。
楽しかった、今日は楽しかった。
服の趣味も、似ていたから笑いながら共に買い物が出来た。
互いに選んで、話をして。
「私・・・どうして男なの?」
呟いたホーチミンの言葉、サイゴンが隣で空を見上げる。
紅く染まり始めた空、何処かひどく、物悲しい。
美しい、空だったが。
「私・・・マドリードみたいな女性になりたかった」
「姉さんか」
「あの人は本当に気高くて美しかった」
「無茶もしてたがな」
亡くなったサイゴンの姉・マドリード。
夜半前の美しい空は、遠くて儚くて、マドリードを思い出す。
「帰ろう、ミン」
「・・・」
項垂れて、足取り重くホーチミンはサイゴンに腕を引かれて歩く。
いつしか、夜の帳へと。
部屋に転がり、入浴を済ませたアサギはふと、窓際へと駆け寄る。
懸命に、空を見ていたところへハイの登場だ。
爪先で何かを探すように上空を見ているアサギ、不思議そうに首を傾げる。
「どうした、アサギ?」
「七夕、って知ってますか?」
「ん?」
水着に引き続き、知らない単語である。
微かに微笑みアサギはハイを手招き、一緒に並んで空を見上げる。
「私の住んでいるところにある、えーっと昔話というか行事というかなんですけど」
「ほぅ、聞かせてくれないか?」
虫の声、熱が残る空気の中にも風。
「私が間違えて居なければ、今日は七夕で。七夕は一年に一度、彦星と織姫という恋人が再会出来る日なのです」
「一年に一度?」
「はい。優秀な牛使いの彦星に、優秀な機織の織姫でしたが、二人は恋仲になると自分達の仕事をほったらかしにしてしまいました。怒った神様が二人を引き離したのです。恋に溺れて、やるべきことを忘れてしまった二人への罰なのです。年に一度、天の川でカササギの導きで二人は逢えるのですよ」
「悲惨な話だな・・・私は耐えられん」
即答。
苦笑いしたアサギだが、ハイは真剣だ。
「いつか。二人は赦されて一緒に居られる日が来ると思うのです。それまで、我慢です」
―――いつか。二人は赦されて。一緒に居られる日が。・・・来ると―――
唇を、動かす。
アサギ? とハイの呼びかけにも応えず。
アサギは静かに夜空を見上げていた。
4星クレオの魔界イヴァンでは、天の川が見られなかった。
地球とは位置が違うのだろう、見えなくて当然かもしれなかった。
けれども、アサギは。
何度でも繰り返す。
「いつか、ゆるされて、いっしょに」
何度も、繰り返していた・・・”言葉”を。
ハイと二人、静かに何を語るでもなく、夜空を見上げ続ける。
一度、流れ星。
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