別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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クレロから話を聴く
夏休み終了。ハイ、リュウに会いに行く
トビィの過去を知る
⇒ 助けに行く、看病する
ミノル崩壊
トモハル激怒
アサギ、5星マクディを見つける
映っている二人を見つめながら、皆言葉を失った。ようやく絞り出した声は、クレロのものだった。
「そんな、筈は……どういう、ことだ」
誰も、応じる事など出来ない。沈黙が気まずく広がるだけである、頭を抱えてクレロがふらりと覚束無い足取りで球体に触れた。
「過去を、変えてしまった」
「は!?」
クレロの一言に、後ろにいた者達が一斉に悲鳴に近い声を上げる。項垂れているクレロを見る限り、冗談ではなさそうだった。もとよりこの緊迫した状況下で、冗談を言えるような男ではなかったが。
「あれは、今のトビィではない。過去のトビィだ、現在のトビィは今竜に乗って飛行している」
「……つまりアサギ様は”過去”を球体に映し出し、更にその過去へと”時間を越えて戻った”ということですか?」
「そういうことだな」
調子を取り戻したのか、淡々と告げるクレロに皆が唖然と大口を開ける。口元に手を当て思案している姿に、不安を覚えないわけがない。だが、想像に反してクレロは冷静だった。急に脳内が冴えてきたのだ、これが”正しい現在”であると認識した。
「アサギが過去を変えたのは事実だ、だが、間違いではない。これで合っている」
「……まさか」
ソレルが、不気味なものでも見るかのように、球体に映る二人を見つめる。畏怖の念が大半を占めるその視線に、皆も同調した。それだけのことを、やってのけたのだ。
「察したか、ソレル。現在から過去へと、アサギが飛ぶ……それこそが正常な未来だ。現在竜に乗っているトビィも、過去にあぁしてアサギに救われているのだろう。それで納得がいく、トビィはアサギが地球から召喚される前に『会っている』という事実が。つまり、もしアサギが過去へ救いに行っていないのならば、トビィは現在存在していない。
過去は確かに変えた、だが、誤りではなくそれが通常の流れなのだろう」
全員が、震えながらアサギを見つめる。ただの勇者ではなかったのか、一体何者なのか。
ソレルが代表し一歩前に進み出ると、クレロに語りかける。意を決し、大きく深呼吸をして。
「クレロ様、そろそろ教えてくださいませ。勇者アサギ様は何者ですか? ただの勇者ではないのでしょう、貴方が常に見張っている少女です。今も、不可解なことを成し遂げました。
その球体を作動させられるのは”神”ただ一人の筈です」
皆が、クレロの口から真実を語られることを願い、待った。口内に溜まった唾液を飲み込む音が、あちらこちらで響く。緊張は、極限状態だった。
「……解っていたら苦労はしない、現時点で憶測だが言える事は。
破壊の姫君、という邪教徒に祀り上げられることになる運命を持つ少女であるということ。
とはいえ、この球体を作動させたということは……”過去において神だった者の転生した姿”なのだろうか。それ以外では考えられない、神以外に許されない権限だ。反応したということは、アサギに何か要因があることは間違いないのだが……」
球体にもたれ、俯いたクレロに皆が口を紡ぐ。知らず身体が震えた、厄介な人物を連れてきたものだと、勇者の石を呪った。ただの異界の少女ならばよかった、だが彼女には影が付きまとう……。
球体の中のアサギは、トビィの愛剣ブリュンヒルデを大事そうに抱えるとトビィの胸にそっと横たえる。そうしてトビィの上半身を抱き起こし、静かに瞳を閉じた。球体に映っていた二人の姿が消え、そこに映るのは不気味な程静かな森。
「手当てを、お願い致します」
アサギの声が響いた、その声に皆が身構え数歩後退し知らず取り囲むような配置をとる。トビィを支えたまま、先程と同じ体勢で大きな瞳を瞬きしているアサギに、クレロが手を差し伸べた。
「……安心しなさい、必ず良くなるよ。アサギも看病してあげなさい。誰か、彼を救護室に!」
クレロの声に直様反応出来たのはソレルとマグワートのみだった、二人は無言でトビィに近づくと、極力身体を動かさないように宙に浮かせそのまま何処かへとゆっくり向かう。安堵し、大きな溜息を吐いたアサギはトビィの剣を抱えてその後を追った。クレロも静かについて行く。
幾つもの部屋を通り抜け、同じ様な景色だったので何処をどう歩いたのか解らないが、突き当りの扉の向こうには純白の部屋が待っていた。中央に一つだけベッド、何もかもが純白で瞳が痛いくらいである。
宙に浮いていたトビィはそっとそこに横たえられ、直様毛布がかけられた。駆け出したアサギはベッドを覗き込む、口元に耳を当てると呼吸していることが解った。耳に微かにかかる空気がくすぐったいが、嬉しい。涙を浮かべてそのままそっとベッドに突っ伏したアサギの隣に、クレロが立った。
「好きな時にこの場所に来なさい、この部屋は安心だ、常に治癒魔法が反響し唱えられ続けている部屋だと思えば良い」
「ありがとうございます!」
暫くここにいる、というアサギを置いて皆は退室した。不安そうに皆がクレロを見つめるが平然と指示を出し、何事もなかったかのように作業に戻る為歩き出した。
「アサギの為に椅子を、そして食事が摂れるように机を。……私はトビィから目が離せなくなった、過去の自分に会わせてはいけない。あの部屋だからまず意図的に向かわない限り辿り着けないと思うが、彼は勘が良い」
「今のトビィも、あぁしてアサギ様にあの部屋で看病されていた、ということですよね?」
「そういうことだ、現在トビィが二人存在しているという異常事態だが、それが通常なのだから仕方がない」
「アサギ様が救いに行かねば、トビィはあの時点で死んでいた……とすると、勇者として地球から召喚され旅をしていたアサギ様達にトビィが加わることが出来ない。……不利ですね」
「これは必然だ、トビィの存在は魔王戦において必要不可欠な人物なのだよ。多少空間を歪めてでも彼には生きてもらわねばならないのだ」
「……クレロ様、それを平気で成し遂げたアサギ様が私たちは恐ろしゅう御座います」
クレロは、口を閉ざした。皆も、俯いて誰とも視線を合わせず今の出来事を忘れたいと思った。
神でもないのに、同等の能力を持つ勇者であり破壊の姫君と成り得る異界の娘。得体が知れない。
やがて部屋にアサギ用の椅子と、簡単な食事と机が運び込まれた。ベッドの傍らに置き、手を伸ばせば届く位置にある。アサギは深々と頭を下げ、ドアが閉まるまで顔を上げなかった。
「トビィお兄様……早く良くなってくださいね」
届けられた食事を覗き込む、スープなのだろうが今はまだ食べられる状態ではなさそうだった。
「トビィお兄様、頑張ってください。……でないと、過去の私を助けに行くことが出来ません。あの、吸血鬼が住み着いていたジェノヴァ行きの洞窟で、お会いすることが出来なくなります」
アサギはそっと手を伸ばし、トビィの頬に触れた。瞳を閉じ、詠唱を開始する。ぼんやりと発光するアサギの身体は心地良い体温で、まるで胎児に戻り母親の中でゆらりと守られているような錯覚になる。
「だ……誰、だ?」
「私は、アサギといいます。大丈夫です、怪しい者ではありません」
薄っすらと瞳を開いたトビィが、小さく吹き出した。静かに瞳を閉じ、ゆっくりと瞳を開いてアサギを見つめる。
「怪しくはないが、美しい娘だ。ここまで綺麗な女は初めて見た。天女か、迎えが来たのか」
「違います、生きています。倒れている貴方を助けて看病を始めました、貴方の剣も持ってきました。早く良くなってくださいね」
「ありがとう……綺麗な髪だな。豊かな新緑色の柔らかく艶やかな髪に、大きな瞳は美しい深緑色。軽く頬を桃色に染めて、熟れたさくらんぼの様な唇を持ち。まるで少女達の夢物語、御伽噺の中のお姫様のような容姿。その愛くるしい顔立ちは、見る者全てを魅了してしまうと言っても過言ではない。華奢な容姿なのに何故だろう……力強く感じる。不思議な娘だ。
アサギ、と言ったか」
「はい、アサギ、です」
トビィが腕を伸ばし、そっとアサギの髪に触れる。新緑色の髪が揺れた、微笑むアサギとトビィ。
「天女でなければ、何だというのだろう。怪我などすでに治ったようだが、アサギの力か?」
「いえ、貴方の生きたいという願望と体力が助けたのです。私は回復魔法を唱えただけです」
「……何処かで逢ったか? その柔らかで耳に心地良い声、聴いた記憶が……」
「お眠りください、早く良くなってくださいね」
そっとトビィの手を握ったアサギは、困惑気味に微笑んだ。トビィは名残惜しそうに肩を竦めるが眠気に襲われて瞳を閉じる、その時、ドアがノックされた。トビィの手からゆっくりと抜け出し、ドアへ向かったアサギは立っていたクレロに会釈をする。
「トビィはどうだ?」
「今少し瞳を開きました、とても素晴らしいお部屋ですね」
「言っただろう、私の出来ることは回復魔法、回復魔法、回復魔法、と」
冗談めかして笑ったクレロに、釣られてアサギも笑い出す。
「疲れただろう、そろそろ地球に戻るかね」
「そう、ですね。夕飯食べたらまた来ます!」
「そうしなさい、さ、帰ろうか」
ドアを閉め、歩き出す二人。廊下を歩きながらふと、クレロは壁に映るアサギの容姿に瞳を細めて微笑む。
「それにしてもアサギの黒髪は美しいな、その漆黒の瞳も。ここには黒髪黒瞳の者がいないのでね、珍しいのだよ」
「そうなのですか? 地球の日本は染めている人もいるけれど、みんな黒髪黒瞳ですよ」
あどけなく笑ったアサギに、クレロも微笑んだ。
「そんな、筈は……どういう、ことだ」
誰も、応じる事など出来ない。沈黙が気まずく広がるだけである、頭を抱えてクレロがふらりと覚束無い足取りで球体に触れた。
「過去を、変えてしまった」
「は!?」
クレロの一言に、後ろにいた者達が一斉に悲鳴に近い声を上げる。項垂れているクレロを見る限り、冗談ではなさそうだった。もとよりこの緊迫した状況下で、冗談を言えるような男ではなかったが。
「あれは、今のトビィではない。過去のトビィだ、現在のトビィは今竜に乗って飛行している」
「……つまりアサギ様は”過去”を球体に映し出し、更にその過去へと”時間を越えて戻った”ということですか?」
「そういうことだな」
調子を取り戻したのか、淡々と告げるクレロに皆が唖然と大口を開ける。口元に手を当て思案している姿に、不安を覚えないわけがない。だが、想像に反してクレロは冷静だった。急に脳内が冴えてきたのだ、これが”正しい現在”であると認識した。
「アサギが過去を変えたのは事実だ、だが、間違いではない。これで合っている」
「……まさか」
ソレルが、不気味なものでも見るかのように、球体に映る二人を見つめる。畏怖の念が大半を占めるその視線に、皆も同調した。それだけのことを、やってのけたのだ。
「察したか、ソレル。現在から過去へと、アサギが飛ぶ……それこそが正常な未来だ。現在竜に乗っているトビィも、過去にあぁしてアサギに救われているのだろう。それで納得がいく、トビィはアサギが地球から召喚される前に『会っている』という事実が。つまり、もしアサギが過去へ救いに行っていないのならば、トビィは現在存在していない。
過去は確かに変えた、だが、誤りではなくそれが通常の流れなのだろう」
全員が、震えながらアサギを見つめる。ただの勇者ではなかったのか、一体何者なのか。
ソレルが代表し一歩前に進み出ると、クレロに語りかける。意を決し、大きく深呼吸をして。
「クレロ様、そろそろ教えてくださいませ。勇者アサギ様は何者ですか? ただの勇者ではないのでしょう、貴方が常に見張っている少女です。今も、不可解なことを成し遂げました。
その球体を作動させられるのは”神”ただ一人の筈です」
皆が、クレロの口から真実を語られることを願い、待った。口内に溜まった唾液を飲み込む音が、あちらこちらで響く。緊張は、極限状態だった。
「……解っていたら苦労はしない、現時点で憶測だが言える事は。
破壊の姫君、という邪教徒に祀り上げられることになる運命を持つ少女であるということ。
とはいえ、この球体を作動させたということは……”過去において神だった者の転生した姿”なのだろうか。それ以外では考えられない、神以外に許されない権限だ。反応したということは、アサギに何か要因があることは間違いないのだが……」
球体にもたれ、俯いたクレロに皆が口を紡ぐ。知らず身体が震えた、厄介な人物を連れてきたものだと、勇者の石を呪った。ただの異界の少女ならばよかった、だが彼女には影が付きまとう……。
球体の中のアサギは、トビィの愛剣ブリュンヒルデを大事そうに抱えるとトビィの胸にそっと横たえる。そうしてトビィの上半身を抱き起こし、静かに瞳を閉じた。球体に映っていた二人の姿が消え、そこに映るのは不気味な程静かな森。
「手当てを、お願い致します」
アサギの声が響いた、その声に皆が身構え数歩後退し知らず取り囲むような配置をとる。トビィを支えたまま、先程と同じ体勢で大きな瞳を瞬きしているアサギに、クレロが手を差し伸べた。
「……安心しなさい、必ず良くなるよ。アサギも看病してあげなさい。誰か、彼を救護室に!」
クレロの声に直様反応出来たのはソレルとマグワートのみだった、二人は無言でトビィに近づくと、極力身体を動かさないように宙に浮かせそのまま何処かへとゆっくり向かう。安堵し、大きな溜息を吐いたアサギはトビィの剣を抱えてその後を追った。クレロも静かについて行く。
幾つもの部屋を通り抜け、同じ様な景色だったので何処をどう歩いたのか解らないが、突き当りの扉の向こうには純白の部屋が待っていた。中央に一つだけベッド、何もかもが純白で瞳が痛いくらいである。
宙に浮いていたトビィはそっとそこに横たえられ、直様毛布がかけられた。駆け出したアサギはベッドを覗き込む、口元に耳を当てると呼吸していることが解った。耳に微かにかかる空気がくすぐったいが、嬉しい。涙を浮かべてそのままそっとベッドに突っ伏したアサギの隣に、クレロが立った。
「好きな時にこの場所に来なさい、この部屋は安心だ、常に治癒魔法が反響し唱えられ続けている部屋だと思えば良い」
「ありがとうございます!」
暫くここにいる、というアサギを置いて皆は退室した。不安そうに皆がクレロを見つめるが平然と指示を出し、何事もなかったかのように作業に戻る為歩き出した。
「アサギの為に椅子を、そして食事が摂れるように机を。……私はトビィから目が離せなくなった、過去の自分に会わせてはいけない。あの部屋だからまず意図的に向かわない限り辿り着けないと思うが、彼は勘が良い」
「今のトビィも、あぁしてアサギ様にあの部屋で看病されていた、ということですよね?」
「そういうことだ、現在トビィが二人存在しているという異常事態だが、それが通常なのだから仕方がない」
「アサギ様が救いに行かねば、トビィはあの時点で死んでいた……とすると、勇者として地球から召喚され旅をしていたアサギ様達にトビィが加わることが出来ない。……不利ですね」
「これは必然だ、トビィの存在は魔王戦において必要不可欠な人物なのだよ。多少空間を歪めてでも彼には生きてもらわねばならないのだ」
「……クレロ様、それを平気で成し遂げたアサギ様が私たちは恐ろしゅう御座います」
クレロは、口を閉ざした。皆も、俯いて誰とも視線を合わせず今の出来事を忘れたいと思った。
神でもないのに、同等の能力を持つ勇者であり破壊の姫君と成り得る異界の娘。得体が知れない。
やがて部屋にアサギ用の椅子と、簡単な食事と机が運び込まれた。ベッドの傍らに置き、手を伸ばせば届く位置にある。アサギは深々と頭を下げ、ドアが閉まるまで顔を上げなかった。
「トビィお兄様……早く良くなってくださいね」
届けられた食事を覗き込む、スープなのだろうが今はまだ食べられる状態ではなさそうだった。
「トビィお兄様、頑張ってください。……でないと、過去の私を助けに行くことが出来ません。あの、吸血鬼が住み着いていたジェノヴァ行きの洞窟で、お会いすることが出来なくなります」
アサギはそっと手を伸ばし、トビィの頬に触れた。瞳を閉じ、詠唱を開始する。ぼんやりと発光するアサギの身体は心地良い体温で、まるで胎児に戻り母親の中でゆらりと守られているような錯覚になる。
「だ……誰、だ?」
「私は、アサギといいます。大丈夫です、怪しい者ではありません」
薄っすらと瞳を開いたトビィが、小さく吹き出した。静かに瞳を閉じ、ゆっくりと瞳を開いてアサギを見つめる。
「怪しくはないが、美しい娘だ。ここまで綺麗な女は初めて見た。天女か、迎えが来たのか」
「違います、生きています。倒れている貴方を助けて看病を始めました、貴方の剣も持ってきました。早く良くなってくださいね」
「ありがとう……綺麗な髪だな。豊かな新緑色の柔らかく艶やかな髪に、大きな瞳は美しい深緑色。軽く頬を桃色に染めて、熟れたさくらんぼの様な唇を持ち。まるで少女達の夢物語、御伽噺の中のお姫様のような容姿。その愛くるしい顔立ちは、見る者全てを魅了してしまうと言っても過言ではない。華奢な容姿なのに何故だろう……力強く感じる。不思議な娘だ。
アサギ、と言ったか」
「はい、アサギ、です」
トビィが腕を伸ばし、そっとアサギの髪に触れる。新緑色の髪が揺れた、微笑むアサギとトビィ。
「天女でなければ、何だというのだろう。怪我などすでに治ったようだが、アサギの力か?」
「いえ、貴方の生きたいという願望と体力が助けたのです。私は回復魔法を唱えただけです」
「……何処かで逢ったか? その柔らかで耳に心地良い声、聴いた記憶が……」
「お眠りください、早く良くなってくださいね」
そっとトビィの手を握ったアサギは、困惑気味に微笑んだ。トビィは名残惜しそうに肩を竦めるが眠気に襲われて瞳を閉じる、その時、ドアがノックされた。トビィの手からゆっくりと抜け出し、ドアへ向かったアサギは立っていたクレロに会釈をする。
「トビィはどうだ?」
「今少し瞳を開きました、とても素晴らしいお部屋ですね」
「言っただろう、私の出来ることは回復魔法、回復魔法、回復魔法、と」
冗談めかして笑ったクレロに、釣られてアサギも笑い出す。
「疲れただろう、そろそろ地球に戻るかね」
「そう、ですね。夕飯食べたらまた来ます!」
「そうしなさい、さ、帰ろうか」
ドアを閉め、歩き出す二人。廊下を歩きながらふと、クレロは壁に映るアサギの容姿に瞳を細めて微笑む。
「それにしてもアサギの黒髪は美しいな、その漆黒の瞳も。ここには黒髪黒瞳の者がいないのでね、珍しいのだよ」
「そうなのですか? 地球の日本は染めている人もいるけれど、みんな黒髪黒瞳ですよ」
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