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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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   クレロから話を聴く
   夏休み終了。ハイ、リュウに会いに行く
⇒ トビィの過去を知る
   助けに行く、看病する
   ミノル崩壊
   トモハル激怒
   アサギ、5星マクディを見つける

 学校に通い、夕方帰宅したアサギは水晶が光っていることに気がついた。手にして掲げ、唇を開く。

「どうかされましたか、クレロ様」
『アサギ、すまない。今時間があれば来て欲しい』
「えっと、大丈夫です。ランドセル置くのでちょっとだけ、待って欲しいです」
『良いよ、準備が整い次第呼んでくれ』

 アサギはランドセルを所定の位置に置き、宿題を机の上に揃えて置くとクレロに呼びかけた。
 次の瞬間、身体がふわりと浮かんだかと思えば見慣れてきた神の居城に立っている。数度瞬きをし、光り輝く視界に瞳を慣らせてから足を踏み出す。

「すまないな、アサギ。いつも呼び立ててしまって」 

 クレロが手を差し出してきた、長い濃紺の髪が揺れる。アサギは微笑むと会釈をし、その手を取った。

「いえ、大丈夫です。今日は何が?」
「頻繁に来てもらうのも悪いが、水晶に細工をしておこうと思ってな。特別だ。今までは私からしかここへ呼ぶことが出来なかったが……アサギだけ、願えば瞬時にここへ来られるようにしておこう」
「え、そんなこと出来るのですか……でも、何故私だけ? 他の皆は?」
「元魔王リュウにハイ、彼らに会いたいだろう?」
「それは、確かに」
「会いたい時に使ってくれれば良い、一旦ここを中継するが、声をかけてもらえれば直様転移させよう」
「ありがとうございます、それなら時間がある時にハイ様にお土産作ってあげられます」

 嬉しそうに笑うアサギに、クレロも微笑む。満足そうに頷き、アサギから水晶を受け取ったクレロは傍に控えていたソレルを呼んだ。立ち上がり、静かに口角を上げてアサギに会釈するソレル。

「時間が少しかかるので、ソレルに案内させるから好きな場所で遊んでおいで」
「わぁ、ありがとうございます! ソレル様、宜しくお願いします」

 純白の羽を軽く動かし、黒髪がふわりと揺れる。艶やかなストレートのその髪は、ミディアムボブ、瞳も黒いソレルは羽さえなければ日本人と言っても通用するような顔立ちをしていた。額に金のサークルを填め、アサギを丁重に誘い、クレロに会釈をすると二人して歩いていく。その後姿を見つめながらクレロは別の場所へと急いだ。

「何か隠していないか?」
「……特に何も? 隠すようなことなどないよ、トビィ」

 壁にもたれ、不機嫌そうに声をかけてきたトビィに苦笑する。腕を組み、片足を壁につけたままゆっくりとクレロを捕らえたトビィの瞳。一瞬クレロの顔が引き攣るが、気にしない振りをして小部屋へと誘う。茶を運ばせ、着席を促し、渋々と座ったトビィの前に、クレロも腰を下ろした。

「今は君達の協力が必要不可欠なんだ、解っていることは包み隠さず話すよ」
「だといいが? どうにもアンタは信用出来ない」
「ならば何故協力をしてくれるのかな? 確かに君はアサギ以外の事に関しては無関心に思える」
「そっくりそのまま言葉を返そう、アサギをこの世界へ連れてこられるのがアンタだから、協力している。それだけだ」
「……成程。さて、今日の用事は何かな?」

 茶を啜りながら微笑んだクレロに舌打ちしたトビィは、カップに手をつけず語り出す。

「あの施設、特に動きはない。いつまでオレに見張らせるつもりだ? 見えているんだろ、本当はこの場所から下界が。どういう意図があるのか聞きたいね」
「……確かに、君の言う通り私は世界の全てを見通せる。だが、同時に幾つも見ることは無理なのだよ。あの施設を窺うと、他が手薄になってしまう。信頼できる者に、気になる箇所の監視を頼んでいるだけだ。時間差で見ることは出来るが、それでは遅い」
「時間差?」
「そうだ。この間か通している部屋の球体があるだろう? あれは世界の一部始終を監視し、その映像を”記録”している。見ようと思えば君の育ての親である魔族マドリードの最期も」

 トビィがテーブルを思い切り豪打した、カップの茶が零れその騒音に数人が駆け寄ってくるが、クレロが直様人を払う。嫌悪感を露にしているトビィに謝罪すると、クレロは続けた。

「申し訳ない、今の言葉は浅はかだった。だが、君とて不審がっていただろう。あの低俗な魔族のオジロンにマドリードが殺られるわけはない、と」
「……過ぎたことだ、知人の死に際を見たいなど、普通は思うか?」
「まぁ、確かに。話は逸れたが、あの球体で過去の出来事を追う事も出来るのだよ。最近は忙しくて把握が出来ないがね」
「オレがあの施設を把握、アンタは何処を見ているんだ?」
「色々、だ。惑星クレオだけではなく、他惑星も見ている。はは、混乱しそうだよ」
「魔王は消えたんだろ? 他惑星の心配をするなんて余裕だな、復興の手助けをして、自分を崇めてもらうという算段か」
「はは、手厳しいな。違うよトビィ、あの惑星には他の神がいる。あの場所は、彼女のものだ。行方不明だけれどね」
「どうにも”神”が胡散臭い」
「そういえばトビィ、君は魔族のサーラ、を知っているかな。深紅の長髪で線が細い女性のような」
「……廃墟で会ったな、あの魔族が何か?」
「魔界イヴァンに来ていた、状況説明出来そうな人物が君しかいないんだが頼まれてくれないかね。立派な竜を使えば何処へ行くにも可能だろう?」
「人遣いの荒いことで。あの魔族に恩なんざないが、オレに得することはあるのか?」
「近いうちに、アサギに会わせよう」
「卑怯な奴、いよいよ信用出来ないが、今は踊らされてやるよ」

 瞳は笑わず、ただクレロを睨みつけたトビィは立ち上がるとようやくカップを手にして、茶を飲み干す。無造作にテーブルに置いて、歩き出した。

「例の施設はその間アンタが見張るのか?」
「ああ」
「マダーニ達はどうした? まだ出向いた洞窟から戻らないのか?」
「行き違いだよ、あの洞窟には何もなかった。別の場所を捜索してもらっている。邪教の住処になっていそうな場所を突き止めてもらうことが、目的だ」
「上から指示だけ出して、いい気なもんだな。アンタがひ弱な事は解ったが他の住人達はどうなんだ? 翼があって飛行出切るだろ? 魔法やら武器も扱えるんだろ? どうして地上で一緒に物事を突き止めない」
「君達のほうが能力的には上だ。万が一には彼らにも戦闘態勢に入ってもらうよ」
「……なら、突っ立って睨みを利かせるだけでなく、鍛錬しろと指示を出しておけ」
「トビィ、魔族サーラ達の住んでいる場所は魔界イヴァンでない。これが地図だ」

 振り向いたトビィにクレロは羊紙を丸めて投げる、受け取り軽くそれを振ると部屋を後にした。残されたクレロは残り少なかった茶を啜り、深い溜息を吐くと軽く頭を抱える。

 一方、ソレルとアサギはトビィ達が話していた球体の前にいた。その大きさといったら、直径三メートル程度。アサギは一周し、不思議そうにその球体を見つめている。今は何も映っていない。

「これ、何で出来ているのですか?」
「わかりませんわ、勇者アサギ様。さぁ、次の部屋へ行きましょう。この球体は神であるクレロ様にしか反応致しません。過去の記録も紐解いて見ることが可能なのです、誰しもが拝見してしまっては歴史が狂う可能性がありますので。ですから今は何も映りません、空中庭園へ行きませんか? 見目麗しい花々が咲き誇っていますよ」
「素敵ですね! ……あの、ソレル様。クレロ様はこの惑星が出来たときから、ずっと神様なのですか?」

 球体に手を添えながら、アサギがそう問うとソレルが微笑む。

「いいえ、神も寿命があります。クレロ様は7代目の神ですわ、寿命は確かに人間より長く、魔族やエルフ族と同等ですけれど。神の選出は時の神が一人の候補者を指名することで交代出来ます」
「そういうものなのですね、総理大臣みたいな感じでしょうか。天皇様の様に代々一族が引き継いできた、というわけではないのですね。面白いです」
「ふふ、アサギ様も面白いですわ。さ、行きましょうか。お茶も用意して……」

 アサギに手を伸ばしたソレルの顔が歪んだ、映る筈のないものが、球体に映っていたからだ。唖然と球体を見つめる、アサギもそれを見ていた。

「そ、そんな、馬鹿なっ。クレロ様しか起動出来ない筈なのにっ」
「わ、私何か不味い事しました、か……」

 慌てふためくアサギだが、球体に釘付けになった。トビィが映っていた、森の中にいた。
 やがて魔族に囲まれ、一方的に攻撃を受けている映像が流れ始める。アサギが悲鳴を上げ、半泣きでソレルの衣服を掴むと必死に揺さ振る。

「ソレル様、ソレル様! あそこへ行かせてくださいっ、トビィお兄様が、トビィお兄様がっ」
「お、落ち着いてアサギ様。クレロ様を呼んできます、大丈夫ですわトビィ殿は屈強なお方。敗北など」

 混乱気味の脳内、軽く額を押さえてソレルは顔面蒼白で部屋を飛び出す。脚を震わせながら、アサギはその球体の中のトビィを見つめた。どう見ても致命傷だ、このままでは死があるのみ。アサギは口元を押さえ、大粒の涙を溢すと無我夢中で球体を殴り続ける。そこへ行かせて、そこへ行かせてと叫びながら。
 やがて、後方が発光していることに気がついた。地球へ戻る際に使用した水鏡が、淡く光りアサギを誘う。アサギは夢中で駆け出すと、その水鏡に飛び込んだ。ぱしゃり、と空気が震えて光が散乱した。
 アサギは必死に手を伸ばす、トビィの名を呼びながら、懸命に先程の映像を思い出していた。視界は純白、何も見えない。だが一瞬耳鳴りがしたかと思えば、視界が開け木々の真上にいた。何度か瞬きを繰り返す、小さく悲鳴を上げたアサギの身体が問答無用で落下する。宙を掴むように必死で腕を伸ばし、唇を噛み締めるとその速度が遅くなる。
 ゆるやかに落下し、地面に降り立ったアサギはどっと吹き出た汗をそのままに、トビィを探した。枯木を踏みながら、一方向へ走ると見慣れた美しい紫銀の髪が見えた。思わず名を呼ぶ。

「トビィお兄様!」

 抱き抱ええ、うつ伏せになっている身体を梃子の原理で起き上がらせると、そのまま抱き締めた。耳元で回復魔法を唱える、震える身体できつく抱き締めながら。
 発光するアサギの身体、一旦は心配停止状態であったトビィだが心臓が動き出す。そして二人は知らなかったのだが、トビィの後方で愛剣ブリュンヒルデもまた、再生していた。
 魔族達に破壊された稀少な水竜から創り上げられた、トビィ専用の剣。二つに折れ、一部砕かれていた美しい装飾と鋭い刃が織り成す唯一無二のその剣がアサギから放たれた光によって何事もなかったようにその場に転がっていた。
 小さく呻き、眉を顰めたトビィに気がついたアサギは安堵の溜息を吐くと泣きながら再び抱き締める。

「よかった、トビィお兄様……貴方がいないと、私は」

 クレロ達がやってきたのはその直後である、水鏡の光が消え、クレロを筆頭に部屋に入ってきた皆が見たものは。

「……どういう、ことだ。あれではっ」

 球体の映像、森に寄り添う二人。嬉しそうに泣き続けているアサギと、その腕の中で若干微笑んでいるトビィ。
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