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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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君に咲く花があるから楽ー(*´▽`)

 皆が唖然と見つめる中で、アサギはワイバーンと向き合い、頷き始める。
 対話など成立しないと思い、逃げる様に静かに移動し始めたガーベラだが耳を疑った。

「ギ、ギギギ、ギギョゲ」
「大変! そうだったんだ、解りました。私が取り返すのでワイバーンさん達は上空へお願いします。大丈夫です、多分私が捜したほうが安全だと思います。……よかった、解ってくれましたか! ありがとうございます!

 デズデモーナ、解りました。飛べますか? この方達、捜し物をしているそうです。それを追って来たのだそうです」

 会話していた。
 茶番には思えなかった、ワイバーン達は五体共啼くことなく、吼える事もなく静かになり、アサギのほうを向いて首を垂れているからだ。
 そんな馬鹿な。
 アサギが急に振り向いたので、ガーベラは身を小さくする。実はグルではなかとも勘ぐってしまった。しかし、ようやく目にした目の前の美少女に見惚れてしまう。
 なんと美しい緑の髪か、春の芽吹きを感じさせる若々しく艶めいた髪など、初めて見た。そして神々しいまでの光を放つ、大きな瞳。整った鼻筋に、品のよい唇はうっすらと桃色でぷっくらとしている。
 綺麗な声だとは思っていたが、想像以上の美少女だった。
 あまりの美貌に、物の怪ではないかと思ってしまった。
 もしくは、本当に神の遣いか。
 華奢な手足に細い腰、しかしぴったりとした衣服から、はっきりと分かるまだ幼いがふくよかな胸。
 非の打ち所がない。
 呆けているガーベラに不思議そうに微笑むと、アサギは周囲を見渡した。

「えーっと……あ、その方! このワイバーンさん達は、ピンクの丸っこい……このくらいの球を捜しているそうです。それ、卵だそうで。貴女からその卵の香りがすると。ご存じないですか?」

 星が宿っているように煌めくアサギの瞳は、一人の少女を捕えていた。
胸の前で、直径十cm程度の丸を指で作る。
 最初、自分に言われているとは思わず狼狽していたのだが、ようやくグランディーナが自分に話しかけられていることに気づいた。
 ガーベラと同じように逃げていた娘の一人だ。

「ピンク……えっと、桃色です。桃色の丸い物、知りませんか?」

 口籠るグランディーナは、まだ震えが止まらない身体に爪を立てながら考えた。しかし、焦っているので上手く記憶が繋がらない。左右にいた少女達に身体を支えられると、その温もりから徐々に荒かった呼吸が整っていく。「そんな丸い物は知らない」と、言い切れなかった。微かに記憶があるような気がして、思い出していく。
 大人しくなったとはいえ、まだすぐそこにワイバーンがいる為恐怖心を煽られたが、震える足で立ちながら我に返った。
 思い出したので、素っ頓狂な声を出す。

「ま、まさかお父様がこの間旅の商人から買った珍しい宝石のこと!?」
 
 記憶の中に残っていた物と、アサギが言う物が一致したようだ。神妙に頷いたアサギは、手を差し伸べる。

「それですね、それをこのワイバーンさん達に返します。ご案内をお願いしたいのですけど」

「あれ、卵なの!?」

 宝石だと言われたので、卵だなんて思いもしない。知っている卵よりも大きく、何より色合いが美しかった。グランディーナは立ち会っていなかったが、何時かの晩に上機嫌の父が見せてくれた桃色の球は、その日館にやって来た旅の商人が『砂漠で稀に見つかる宝石で、こんな大きさと美しいまでの球体のものは珍しい』と売り込んできた物だ。
 話が本当ならば、父は騙されたことになる。

「だそうです。ワイバーンさん達は煙で眠らされ、気がついたら大事に育てていた卵のうち、一つがなくなっていたそうです。それからずっと、追っていたそうです」

 信じてよい話なのか。珍しい宝石を手中にするための、自作自演なのでは、とも疑う。困惑したグランディーナは、自身では決めかねて周囲の少女達を不安げに見つめる。

「た、確かに最初に狙われたのはガーベラじゃなくて……グランディーナ」

 一人の少女が、迷いを振り払うかのようにそう呟く。
 アサギが来る前、ワイバーン達の標的になっていたのは紛れもなくグランディーナだった。それを、ガーベラが庇ったのだ。
 言葉を全て理解していたかのように、一斉にワイバーン達が羽根を広げて上昇した。もう危害を加える気配はない、危機は去ったのだと思うと少女達は腰が抜けてその場に倒れこむ。張り詰めていた糸が切れて、今になって全員泣き出した。
 泣きながら、迷子の子のように瞳を周囲に走らせると、全員の涙が止まる。同時に盛大な悲鳴が漏れた。
 アサギの隣にいたデズデモーナが、
あのワイバーンより一回りも大きな黒い竜に変化した為だ。
 竜から人型へと変化する様を見ていなかった少女達は、目を回して気を失いそうになった。だが、アサギがにこやかに微笑んでその竜に手を伸ばしているのを見ると、これもまた、危なくはないのだろうとどうにか立ち直る。
 開き直った感があった。

「いきましょう、デズデモーナ。えっと、グランディーナさん、ですか。この子の背に乗ってください。大丈夫、落ちませんから」
「の、のののののの乗るの!?」
「はい」

 アサギは歩き出すと、座り込んでいたグランディーナの腕を引っ張り、無理やり抱き抱える。グランディーナは悲鳴を上げたが、ガーベラ達は気の毒に思いながらも苦笑して手を振った。「頑張って」と口々に呟く。
 何を頑張れば良いのか。「酷い、友達でしょう!?」と言いかけて自分が”友達”ではないことを思い出し、口を噤んで項垂れる。グランディーナの”友達”は、足手纏いになった彼女を置いて、何処かへ蜘蛛の子散らす様に逃げてしまった。
 見捨てられワイバーンに襲われていたところにガーベラ達が通りかかり、こうして助けてくれたのである。互いに面識はあった、娼婦であるガーベラ達を蔑み、辛辣な嫌味を言っていたからだ。面と向かって言いたい放題愚弄されていたにもかかわらず、ガーベラ達娼婦は打算なく手を差し伸べてくれた。

「あの、有難う」

 恥ずかしくて大きな声では言えなかった、おそらくその言葉はガーベラ達に届いていない。けれども、顔を真っ赤にして口籠っている様子を見れば、高慢ちきなグランディーナのせめてもの謝礼だと手に取るように解る。
 ガーベラ達は、アサギに連れていかれた市長の娘グランディーナに肩を竦めて笑う。「元気そうじゃない、よかったよかった」と、小言を返しておいた。

「いきましょう、デズデモーナ」
「御意に、アサギ様」
「ひぃ、喋ったっ」

 ゴツゴツとした強固な鱗に触れ、ついに気を失ったグランディーナを乗せてデズデモーナは静かに浮遊する。竜が喋った事にも驚いた、すでに彼女の許容範囲を超えている。今までよく精神が保ったものだ。
 グランディーナを抱き留めながら、アサギが顔を覗かせてガーベラ達に会釈をする。

「もう、大丈夫ですから! 安心して、怪我の手当てを」

 明るい声に、ガーベラ達娼婦と、何事かと顔を出し始めた逃げ遅れた人々が、唖然と竜の背に乗って舞い上がったアサギを追って瞳を動かした。

「な、なんなの、あの子……。すっごく可愛い子だけど……。あんな綺麗な子、見たことある!?」

 キィィィィ、カトン……。

 ガーベラは不意に、何かの音を聴いた。アサギと名乗った美少女が頭から離れられず、大空に舞って立ち去った方角眺めていた。
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