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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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ミノル君的恋の話に直結予定で書き始めたのですが。

終わらないー。

その高校は、女子のリボン、及び男子のネクタイの色で学年が解る。
今年度は一年がマゼンタ、二年がマラカイトグリーン、三年がスカーレットだ。
来年の一年は、卒業する現在三年の色・スカーレットとなる。
制服はブラウンのブレザー、一般的なデザインだ。
マゼンタのリボンに、大きな苺のピアスをつけ、ツインテールの美少女は友人達と歩いていた。
一年でも噂の美少女である、平均身長にそこそこ大きな胸、何より瞳が大きくて下がり目。
毎朝時間をかけてブローしている自慢の髪は艶やかで、短くスカートを折り畳み意気揚々と何故か人気のない校舎裏を3人で歩いていた。

「ねぇ、いつ告白するの?」
「今度の試合の後かな・・・。絶対勝つよね、先輩」

きゃー、と沸き立つ友人達に笑顔を向けると、自慢の髪をさらり、と揺らす。

「運命の一目惚れ。彼女、いないみたいだし、きっと先輩も私の事知ってる筈。頑張らなきゃ」

時は五月。
高校生になったばかりの、この自信に満ち溢れた少女は立ち止まると、その場に座り込む。
3人で長いおしゃべりを始めたのだった、持ってきた紙パックのジュースを飲みながら。

「顔良し、身長良し、運動神経良し、成績も良し、家も結構なお金持ち、一度見た私服のセンスも良し、男女問わずの人気者。
憧れるよね~」

うっとりと呟いた友人に微笑んだ、中学から高校に上がり、入った先で王子を見つけた。
3人とも先輩を意識していたが、最も美少女に譲ったのだ、叶わないと踏んだので。
争うのもメンドクサイのだろう、好き、ではなく”憧れ”が勝る気持ちなのだ。
それに、この友人が見事先輩をゲットできた場合、その友達を紹介される可能性もあるわけで。
寧ろ、そちらに期待している二人である。
そこへ、足音。

「やめときなよ」
「悪い事言わないよ」

左右から、声が。
怪訝に顔を上げれば、友人二人は顔を青褪めその場に縮こまった、上級生だ。
右からマラカイトグリーンのリボンを揺らして二年が、左からスカーレットのリボンを揺らして三年が。
どちらも三人ずつで、一年生達に歩み寄ってくる。
一年の美少女、慧子は鼻を鳴らして臆することなく立ち上がると仁王立ちになる。
肝が据わっているのか、無鉄砲なのか。

「あら、先輩方。こんにちは」

ちなみに、顔見知りではない、初対面だ。
二年生が、腕を組んで一定の距離で立ち止まった。

「悪い事言わない、やめときなって」
「痛い目見るよ? 別に困らないからいいけどさ」

三年生が、やはり腕を組んで一定の距離で立ち止まった。

「見る分には面白いからいーけどね」
「忠告しておこうと思って」

女が9人集まれば、それはそれで脅威。
たまたま通りかかったごくごく平凡な二年の男子生徒二人は、この光景に只ならぬ気配を感じ踵を返して逃げ出した。
二年生の一人、色を抜きすぎているのではないか、というくらいの金に近い髪を高い位置で団子状にし、派手なピアスにつけ睫毛、化粧も濃い最も怖そうな女が静かに何かを取り出す。
思わず後ずさりそうになった一年生だが、三年生は静かに見ていた。

「・・・松下朋玄、二年A組。サッカー部所属、時期キャプテン確定。成績、上の中。しっとりさらさらな髪に、下がり気味の鋭い瞳、屈託ない笑顔の持ち主、身長175cm。両親と兄の四人暮らし、ペットはなし。親友に二年A組門脇実。他、親しい人物として二年C組大石健一、及び中村大樹、D組の三河亮とも親しい様子。
攻略手順、皆玉砕につき不明。アレのサイズ、なかなかのモノ。セックスの上手さ、多分高ランク。将来有望、当校における最も注目すべき男子」

唖然、と口を開いたまま、慧子達一年生はその二年生を見つめた。
三年生がその姿に平然と、声をかける。

「彼女は、校内でも有名なイケメンデータ管理者。憶えておきなよ」
「・・・はぁ」

ただのギャルにしか見えないが、取り出した小型パソコンには何やらびっしりとデータが詰まっているらしい。
結構小まめな様子である、イケメンデータ管理人ギャル(二年生)は、静かに腕を組んでいた。
酷く自慢げに立っている、口元は微かに笑っているようだが。
というか、どこからの情報なのか。
沈黙が流れた、不意に三年生は3人で固まると、何やら会話を始める。

「あの一年が、告白も出来ずにプライドをずったずたに切り裂かれて近寄ることも出来ずに戻ってくる、に・・・購買のヤキソバパンとクリームパン」
「私もそれにスタバのキャラメルフラペチーノ、トールで」
「同じく、キルフェボンのイチゴのタルト」

それでは賭けにはならないような気がするか、それはさておき。
二年生も負けじと3人で会話を始めた。

「同じく、31でダブルカップ!」
「スープストックの新作スープ!」
「・・・面倒だから、何か奢ってくれればいーよ」

二年、三年、にっこりと一年生・・・というより、慧子に満面の笑みを浮かべた。
大口開けて会話を聴いていた慧子だが、身体を小刻みに震わしつつダン! と右脚を地面に叩きつけ。

「告白して成功するに、サマンサの新作バッグ!」

慌てて友人達は口を押さえたのだが、慧子の鼻息は荒く。
冷静になれば何故そのような賭けをせねばならないのか、と無視すればよかったものを。

「いいよ、その賭け乗ってあげる。もし、一年生ちゃんが告白出来て成功したら、みんなでバッグ、買ってあげるよ」

さらり、と三年生が言えば、軽く浮けば流すように二年も同意。
彼女達には、負けない自信があったのだ。
地球が逆回転しない限り、告白が成功するわけはないと、知っていたのだ。
不敵な笑みを浮かべつつ、額に浮かぶ汗を拭いつつ。
慧子はさらり、と自慢の髪を靡かせて、右往左往している友人達を尻目にやってはいけないことをやってしまった。
が、当の本人は全く知る由もないことで。

「約束ですよぉ、先輩。絶対ですからねっ」
「なんなら、一人一個ずつ、買ってあげてもいいけど」
「うん、かまへん、かまへん」
「その代わり、一年生ちゃん。失敗したらうちらに奢ってね♪」

こうして。
何故か、数日後に他校との試合を控えているサッカー部所属の二年生に片思いしていた一年生・慧子は。
初対面の先輩方と奇怪な賭けをしてしまったのだった。
引くに引けないというよりも、乗せられただけなのだが、幼少より可愛いと持て囃され雑誌のスナップにも掲載された事のある慧子。
プライドが許さなかったらしい、何故そこまで否定されなければいけないのか、知らなかったのだから。
9人の女子高校生は、気づけば暗くなった校舎裏から、のんびりと校舎へと向かった。
打ち解けたのか、揃いも揃って歩く中で会話までも愉しむ。

「狙い目は、亮君だけどね。ガードが固い」
「健一君と大樹君も固いよ~、人気は高いけど不落だ」
「・・・門脇実、二年A組。サッカー部所属、ミッドフォルダー担当、攻撃的。成績、下。目つきの悪さと横暴な態度が放って置けない母性本能くすぐりタイプ、身長170cm。一人っ子、松下朋玄の隣人。親友に二年A組松下朋玄。他、親しい人物として二年C組大石健一、及び中村大樹、D組の三河亮とも親しい様子。
攻略手順、簡単、しかし付き合ってからが難しい。意外と古風、料理や裁縫の出来る大人し目の女子が好み。アレのサイズ、普通。セックスの上手さ、普通」

また出てきたデータを読み上げる、興味本位で慧子はパソコンを覗いてみたが、どうやら写真つきのようだ。
他にもびっしり、好きな食べ物やら行きつけの店、出没地域や住所まで。

「写真、売ってもいいけど?」
「・・・今度、見せてください」

引き攣った笑顔で、丁重にお断りした慧子達。
校舎に入れば階が学年で違うので、それぞれ離れることになったのだが。

「大丈夫? 慧子・・・、あんな約束して」
「私が告白を成功させればいいんでしょ? 見てなさい、絶対に勝ってやるんだから」

不安そうに互いに顔を見合わせる友人二人を尻目に、慧子は燃えていた。
馬鹿にされるとやる気が以上に高まる性格であり、こうなるともう他が見えない。
最終目的は”告白の成就”の筈だが、目的が変化しつつあるような気がした。
校舎を出れば、校庭が見える、サッカー部も野球部もすでに居ない様だ。
憧れの先輩の練習風景を見損ねた、と慧子は歯軋りしていたが、聞き覚えのある声に振り返れば。
先程の二年と三年と、再び合流する羽目になった。
9人、まるで以前からの知り合いの様に並んで歩けば。
誰かがすっとんきょうな声を張り上げた、思わず彼女を見れば。

「噂の二年イケメン軍団!」

小声ながらも、歓喜の声で叫んだので皆、首が軋むほどそちらを見た。
噂をすればなんとやら。
部活を終え、着替えて歩いていたのは先程名前の挙がっていたメンバーだった。
手を振りながら唯一の剣道部である大樹も合流し、仲良さそうに歩いている。
思わず、会話を盗み聞く9人。

「腹減ったー! なんか喰ってかね?」

と、ミノルが言えば、苦笑いで朋玄と亮が一歩下がった。

「ごめん、家に早く帰らないと、さ。今日、お袋達近所の人達と恒例のボーリング大会なんだよ・・・」
「僕もパス。トビィと約束してる」

トビィ?
9人は皆、同時に首を傾げた。
人名だろうか、外国人だろうか、それはさておき。
不服そうに実は残りの2人に目配せしてみた、軽く頷いている。
同意、ということだろう、人数は減ったが実は満足そうだ。
何を食べるか、ということで盛り上がる3人の前を歩いていく朋玄と亮。
腕時計を見ながら、気にした様子の朋玄は、ふと顔を上げると反射的にそのまま猛然とダッシュ。
いきなり表情が変化したのを、9人も見逃さなかった。
冷静さを失った、必死の形相だった。
何かと思えば、いや、上級生達にはわかっていたのだが。
少なくとも、一年生たちは初めて見る表情である。
平素、あのように取り乱した態度はお目にかかれない。

「離れろーっ!」

トモハルの、絶叫が周囲に響き渡る、耳を手で押さえ、ゆっくりと近寄り出した実達、そしてきょとん、としたままの慧子達。
校門に、人だかりが出来ていた。
中心部に、誰かが立っている。
怒涛の勢いで人混みに突入したトモハル、何をしているのかこちらからでは見えないが、鬼のような形相で周囲に睨みを利かせ、荒い呼吸を繰り返していた。
一定間隔で、集まっていた男子生徒達が離れた中央、トモハルの隣。
慧子達一年は唖然と、大口開けてその光景を目の当たりにする。
艶やかな黒髪は、遠目で見ても柔らかで。
大きなつり上がり気味の瞳は、子猫の様に興味の対象を探し。
少々きつめの、ベビーフェイス、すらりとした手足は小柄ながらもバランスが取れており。
身体にフィットするデザインの衣服は、見事に彼女のスタイルの良さを強調していた。
片手に苺と生クリームたっぷりのクレープ、片手にキャラメルラテ。
容姿に自信があった慧子だが、唖然と彼女を見つめるしかなく。
本当に”魅力”を所持する人間は、何処に居ても目立つものだ。
如何に、人を振り向かせられるか、脚を止められるか、魅入らせる事が出来るか。
容姿だけではない、存在感があってこそ、人目を惹く。
黒猫のようなその少女には、間違いなく飛び抜けた魅力が溢れ返っている。
屈辱。
初めて慧子自身が認めざるを得ない、敗北感。
何よりも、入学して一目惚れしたその先輩の顔が、動作が。
彼女にだけ、見せている。
彼女にのみ、反応する。
彼女だから、自然と。
興味なさそうにクレープを齧っているその美少女の正面に立ち、群がっている男子生徒を追い払っているらしいトモハルは。
平素の冷静さもなにもない、あれが素なのかもしれない。
身動きできずに、魅入っている慧子に背後から深い溜息と共に声がかかった。

「・・・告白、出来る?」

数分、沈黙。
慧子が搾り出した台詞は。

「あれ、誰ですか?」

返答では、なかった。
始終、見ていた。
トモハルとその美少女を見ていた。
誰が見ても、一目瞭然だ。
”あれ、誰ですか?”
答えなど、知っている、理解出来ている。
けれども、抗いなのかなんなのか、訊いただけで。
慧子はぼそり、と自分で答えを口に出したのである。

「朋玄先輩、好きな子、いたんだ・・・」

ぼそっと、慧子は口にした。
友達二人がうろたえながら、慧子にどう声をかければ良いのか解らずに後方で目配せするばかりで。
二年生は沈黙のまま、後姿の慧子を見ている。
そして、三年生が。
何も言わずに、隣に立った。
立っただけだった、視線は前方に、慧子は見ない。
傍から見たところで、誰が見ても瞳には同じに映る。
見慣れない表情をするのは、それだけ現在傍に居る相手が”特別だから”。
嬉しそうなのが、遠目でも解るのだ、その美少女を見ている瞳が”優しすぎる”。
声が違う、仕草が違う、余裕のない態度が、全てを裏付ける。
溺れきっている、虜である。
入る余地など、全くないほどに。
見て、判る程に。

「彼女、いないって聞いたのに」
「彼女じゃないよ、一緒に住んでるだけで」

慧子の呟きに、簡易れず二年が後ろから答えた。
皆、二人を眺める。
彼女であろうとなかろうと。
同棲してようが、していまいが。
慧子はこれまでだって相手に恋人がいようがいまいが、お構いなしだった。
他人から奪うことなど、慣れている、どうってことない筈だった。
しかし、あれは無理だと直感したのだ。

「駄目だよ、マビル。もう直ぐ帰るってメールしといたろ? ピザを・・・」
「ここに立ってるとね、おいしーもの買ってもらえるの、たくさん」

半分くらいクレープを食べ、飽きたのか残りをトモハルに手渡す。
キャラメルラテを満足そうに飲みながら、飽きたのかそれもトモハルに渡す。

「夕飯前に食べたら駄目だってば・・・」
「もー、うるさいなーっ! まだ食べられるよ、ちゃんと」

受け取った残りのクレープを食べながら、トモハルは苦笑い。
それでも、目の前で膨れっ面しているマビルを見つめながら、瞳は笑っていた。
可愛くて可愛くて、仕方がない・・・ようにしか見えない。

「帰ろう、マビル。ピザでいい? 何か食べてく?」
「んーっと」

クレープを食べ、ゴミを丸めて鞄に押し込み、氷ばかりのカフェラテで喉を潤しながらトモハルは右手をマビルに差し出せば。
怪訝そうに眉を顰めたマビルだが、数秒おいて、手をそっと、握った。

「また、明日な!」

後方に居た、ミノル達に爽やかに、夕日の為ではなく赤く染まった顔でトモハラは別れの挨拶を。
歩き出した二人を見送って手を振っていたミノル達だが、そこへ聞きなれた車の排気音。
リョウが軽く手を上げると、車は停車し運転席から長身の男が颯爽と降りてくる。
決して安くはない純白のワンボックス、さり気無くポイントで高級ブランド使いをしている男。
先程まで男子生徒が群がっていた校門、今度は女子生徒が押し寄せるように群がってきた、黄色い悲鳴つきで。
長身の美形、危うく慧子も悲鳴に近い黄色い声を上げるところだった、レベルが違うのだ。

「・・・っ! 来た、久々にあの人!」

急に目の色を変えて二年ギャルがパソコンを取り出し何やら入力しつつ、デジカメ片手に写真撮影。

「悪いね、トビィ。迎えに来てもらって」

リョウがトモハルと同じ様にミノル達に手を上げて、別れようとすれば。

「トビィー。奢ってー、腹減ったー」

露骨に嫌そうな顔をしたトビィに、ミノルが大袈裟に顔を顰めて腹を擦りつつ近寄った。

「断る」
「奢れー、奢れー、奢れー。焼肉食いたい、焼肉食いたい、肉ー肉ー」
「あのな・・・」
「おい、ケンイチ達も頼め! 四人がかりならどうにかなる!」

焼肉を連呼していたミノルに、諦めてケンイチとダイキも加わり、肉を連呼。
引き攣った笑みのリョウは、困ったようにトビィを見上げるが、一言。

「試合前だから、肉というより僕は鰻がよかったんだけど」
「あ、俺も鰻でもいーや」
「・・・お前らな、最近遠慮してないだろ・・・。オレがお前ら位の時はもっと」
「老けてたよね、うん」

トビィの答えも待たずに車に乗り込んだミノル達、鰻で決定したようだ。
騒ぎに歩いていたトモハルとマビルも振り返っていた、見覚えのあり過ぎる車種に、軽く頷き。
車はゆっくりと近づいてきて、二人の隣で停止した。
助手席から、リョウが遠慮がちに窓を開けて声をかける。

「トビィが奢ってくれるって。一緒にどう? 鰻なんだけど」

トモハルは、あからさまに嫌そうな顔をした。
リョウには言う前から解っていたので、声をかけたくなかったのだ。
トモハルは、マビルを見る。
マビルは、暫し何か考え事をしていたが、トモハルを見上げ、一言。

「足、疲れたから鰻で、いーよ」

トモハルはリョウに苦笑いをし、マビルの為にドアを開け、マビルのバッグを持ってから車に乗せた。
非常に慣れている様子から、普段からあんな調子なのだろうと判断。
車は、ざわめく校門から、何事もなかったように立ち去っていく。
9人は、見ていた。
始終見ていた。
二年ギャルは、必死に写真撮影を行っていたようだが、それでも見ていた。
見ていたのは、トモハルとマビル。

「カレカノじゃないなんて、嘘じゃん」

慧子は、小さく、無気力にそう漏らす。
静かに、他のメンバーが慧子を見た。

「カレカノより、性質悪いじゃん、あんなの・・・」

語尾が、消え行く。
三年が、軽く慧子の肩にようやく手を置いた。

「だから、言ったでしょ。”告白出来る? あの状態で”」

多分、あのイケメン集団は無論、トモハル自身も気付いていないだろう。
けれども同世代の少女達だからこそ、気付いてしまうのだ。
恋人同士では、ないのだろう。
トモハル自身の口から、彼女はいない、と慧子とて聞いた。
だが、トモハルは”好きな人はいない”、とは言っていなかった。
トモハルが好きな相手は、解った。
好きな人が居るのに、彼女ではないというなれば、片想いなのだろう。
けれども、慧子達は気付いてしまった。

「あの子も・・・好きなんじゃん・・・。両想いでしょ、あんなの・・・」

そうなのだ。
本人同士が全く気付いていないだけで。
誘われて、嫌そうな顔をしたのは、トモハルだけではなかった。
マビルもだ。
隣で、微かにマビルも嫌そうに見上げたのだ。
嫌がる理由など、一つしかない。

”二人で、居られないから”

それだけ。
小さなきっかけさえ、あの二人に与えれば。
動き出すだろう。
手を差し出したトモハルに、眉を顰めた時も。
慧子は見ていた、仕方なしに手を繋ぐ振りをして、マビルは俯いて嬉しそうに微笑した。

 

 

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