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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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2011年のらくがき。ベルーガと亮、出番待ち二人組み。110107_163048.JPG

時間が欲しい・・・です・・・。

大変です!
妖しのセレスのDVDBOXが出るらしいです!
アニメはみたことがないのです!
欲しいのです!

http://www.y-watase.com/info/index.html

よし、買おう(えぇ)。
書き下ろしイラストが素敵過ぎるのですっ!(落ち着け私)

予約。(ぽちり)

あ。
裏DES、トラ×アサ、第三話? 完結しました。
忘れてました。

・・・とても主人公の彼氏とは思えない変態ぶりに、本編内でどうすべきか悩んでおります。
まぁいいや。

あと、おまたせしました?!
トビィ×アサギ、始動ですー。
頑張れトビィお兄様。
汚名を返上するんだ!!!

身体を休めて、食料等消耗品を整える。
束の間の休息だった、ミノルとトモハルはのんびり、ぼんやりと街というには小さなジョアンを歩き回った。

「ここにいると・・・魔王の影なんて見えないけど」

穏やかな街だ、芝生に転がり二人で昼寝に入る。
今だけ、今だけ・・・。
疲れた体と心に、安らぎを。
昼食を食べれば、直様再び旅が始まる。
それまで、二人は眠りにつくのだった。

「ジョアンからの道だがな、結構な山岳地帯を越えないとピョートルに辿り着けないんだ。今まで以上に険しく過酷な道だから覚悟しろよ。途中で馬車を置いていかねばならないかもしれないから、な」

食事をしながら、ライアンからの宣告に思わずむせるミノルとトモハル。
覚悟はしていた、何しろ街から周辺を見渡せば岩肌が酷く露出する山岳に囲まれていたからだ。
カレー風味の煮込み料理を食べながら、苦笑いしたトモハルと、素直にげんなりと肩を落とすミノル。
徒歩など、想像しただけで嫌気が差す。
何しろ、地球に居た頃は自動車や自転車があった。
徒歩など、通学くらいなものだ。
おまけに、徒歩となると荷物はどうするのか、担いで山を越えるのか?
思わず、馬車が通ることの出来る道がありますように、と祈らざるを得ない。
最近は、物騒なのでこの道を使いピョートルへ向かうことは少なくなったらしい。
ますます嫌気が差す勇者二人だった、が、文句など言ってはいられない。
旅立つ四人、休んだ馬達も元気そうだ。
体力の消耗を考え、数時間おきに交代で仮眠をとるという方法へと変更。
まずはマダーニが睡眠に入る。
その間、ミノルとトモハルはライアンから馬車の扱い方を習う事にする。
夕刻まで、それは続く。
二人が慣れてこれば、簡単な夕食を馬車から下りてとる。
夏だが、流石は山、空気が冷えていた。
肌寒いが、まだ、毛布に包まれば暖かい。
ミノルが就寝に入る、マダーニが後方の注意を、トモハルとライアンは夜通し前方に注意を。
夜半過ぎにミノルとトモハルが交代だ、寝ぼけ眼でミノルはライアンの隣に座る。
魔物の奇襲は、数日間何もなかった。
意外だった、物音に神経を研ぎ澄ませばそれは鳥や動物達である。

と、いうのも。

「ええい、忌まわしい小僧めがっ!」
「やはり、ミラボー様・・・私が」

魔王ミラボー、トーマに破壊された水晶球の代わりを、と何度か魔物をライアンたちへと派遣している。
が、悉く映像にはトーマが映り、数分後には途切れてしまう。
ミラボーの魔力を閉じ込めた水晶球と、それを結ぶ映像転換装置、それさえ付近を飛びまわる飛行型の魔物に装着出来れば映像が容易く流れ込んでくるというのに。
自信過剰に笑みを浮かべて、挑発するかのようにトーマの笑みの直後毎度毎度、水晶球は弾け飛んでいた。

「なんなんだ、あの小僧はっ」
「ですから、ミラボー様。私に出撃命令を」
「エーア、お前には別の大役が待っておるのだ、今行かせる訳にはいかんのだよ」

歯軋りしながら、ミラボーは重たい巨体を引き摺り、喚き散らす毎日である。

「ええい、こちらに待機しておる飛行部隊を全てあの小僧に注ぎ込めっ! 誰か首を持てぃ!」
「しかし、ミラボー様。あまり派手に動きますと他の魔王に悟られてしまいます。大掛かりな飛行部隊は・・・」
「悟られん程度の小型の魔物を3星から取り寄せよ! 複数回にわたり、小僧へと派遣するのだっ」

そうなのだ、他の魔王はミラボーの計画など知らない。
こうして勇者達の状況を把握していた事すら、言っていない。
咎めを受けるかどうかはともかく、今は争いの種は避けておきたいのだ。
トロルは元々、ミラボーの駒ではなく付近にいたトロルを洗脳し差し向けただけである。
3星には強大な魔物も数多く存在したが、派遣するには目立ちすぎた。
だが、実際手頃な魔物ではトーマに全滅させられるのが目に見えているのだ。
使い捨ての魔物でも、勿体無い。
こうして、毎回一匹の飛行魔物と、それに乗った死騎士がトーマへと向かっていたが、惨敗だ。

「何、拍子抜けだね。魔王ミラボーってこんなもの?」

トーマから、ご丁寧にそんな台詞までミラボーのもとへと届けられる。
血管が切れそうな勢いで、ミラボーは喚き散らすのだった。
しかし。

「ミラボー様! アレク殿が訪問されております。・・・魔物派遣が露見したのでは」
「ええぃ、こんな時にっ」

切れそうな血管を無理やり押し込め、ミラボーは作り笑顔で汗を拭きつつアレクを招待する。

「先日から、妙に魔物が魔界イヴァンから飛び立っているらしいが、何か?」
「うむ、人間を襲いに行っているわけではない。飛行部隊故に、長距離の訓練が必要なのだよ」
「そういったことは、貴殿の星でお願いしたい。無意味に我らの配下が過敏になっている」
「すまんかったのぅ。控えよう」

負に落ちない様子のアレクが、ミラボーにも手に取るようにわかったが、今は穏便にことを進めるしかなかった。
これで、派遣が最早出来なくなる。
それもこれも、あの小僧のせいだとますますミラボーは憎悪に燃えるのだった。
今すぐにでも自分が出向き、抹殺したい衝動に駆られるがそれこそ問題である。
勇者達の映像が見ることのできない、苛立ち。
勇者の行動を把握してこそ、優越感に浸れるというのに。
歯軋りを思い切り音を立ててすれば、傍らでエーアが無表情で見つめていた。

ミノル達を追撃する魔物たちを、トーマが事前に殲滅しているのだ、ミノル達が遭遇しないわけである。
実戦も大事だが、今は身体を休める事そして魔法に全てを集中する事を優先してもらいたい、というトーマの願いからか。
そして、早くピョートルへ到着して欲しいという願いも篭められている。

「セントラヴァーズ、セントガーディアン。4星クレオの対の勇者が所持する武器。ガーディアンをトモハルが所持していたのなら、ラヴァーズはアサギ姉さんのモノ。
まぁ、妥当だよね。どんなカタチしてるのかは、知らないけど・・・早く届けてあげなよ」

足元に転がる、肉片を踏みつけながらトーマは小さく呟いた。
もう、幾度もミラボーの手先を撃破した。
最近数が少なくなってきたのは表立って動けなくなってきたためか? 不愉快そうにトーマは肩を竦める。
そろそろ、飽きてきたのが本音である。
もっと自分の能力を開花させられるレベルの魔物の襲来を期待していたが、全くだった。
瞳を閉じる。
見える未来を、視る。
予言家であるアイセルの見た未来、アサギが魔族達を束ねている・・・らしい。
アサギの前に、平穏な世界が開けられているというものだった。
勇者で、魔王。
ありえないが、だからこそ、クレロ全てを掌握できる立場にあるからこそ、成せることなのだろうか。
謎は多く残るが解っている事はアサギの隣に、トーマが君臨しているということだ。
アサギを助け、常に寄り添っていることだけは、確実に解っている。
問題は、トモハルが血塗れで、マビルとミノルが武器を構えてこちらを見据えているという点だった。
勇者であり、魔王であるアサギと対峙しているらしい。

「まぁ、僕の出来る事は姉さんの隣に常に居る為に今以上に力をつける・・・それだけだよ」

太陽の熱で温められた岩の上に寝転がり、トーマは眠る。
持ってきていた食料など、底をついてきた。
そろそろ、離れなければいけない時期である。
どのみち、ミラボーからの援軍とてこれ以上は来ないだろう、あとは付近の魔物をどうミノル達が倒すかだ。
遠く離れた位置のミノル達の気配に安堵しながら、トーマは微かに笑みを浮かべると夢に沈んで行った。

―――トーマ・・・ミノル達をお願いね・・・。大事な人達なの―――

”うん、解っているよ姉さん・・・。”

馬車の扱いもそこそこに、魔力の使い方も格段に上がったミノルとトモハルだが、実戦は迎えていなかった。
敵の襲来で使うのと、練習で使うのとでは分けが違う、実戦で上手く発動できなければ意味がない。
だが、魔物が出てこないのだから仕方がない。
流石に眉を潜めるライアン。

「加護がかけられている筈の街道には、わんさか魔物が。この人気少ない山岳で魔物が出ないとはどういうことなんだか」
「まぁ、旅が順調に進むから幸いだけれど、確かに妙よね・・・。何処行っちゃったのかしら」
「トーマ君が加護の魔法でもかけたとか?」
「私も最初そう思ったけれど、違うみたい、私が感知出来ないの」
「そうなのか・・・。ミノル達も身体を少しは動かしたいだろうなぁ・・・」

ちらり、と後方の勇者二人を見た。
ミノルは今は睡眠時間だ、トモハルが後方の警護にあたっている。
そろそろ陽が沈む、そうなったらミノルを起こしてマダーニが睡眠に入る。
トモハルは早々に松明の準備を始めた、陽が沈めはこれに火を灯し道を照らす。
火は、魔法の練習にもなる為ミノルとトモハルの担当だった。

「大分手馴れてきたな、トモハル」
「うん、任せてよこれくらい」

手際よく布を木に巻き足しアルコールに浸すトモハル、満足そうにライアンは頷く。

「今日はそろそろ何処かで馬車を停めて、野宿だ。想像より馬の疲労が大きい」
「了解、じゃあ、結界の準備もだね」

 荷物を用意し始めるトモハルに、眩しそうにライアンとマダーニは互いに笑みを零すのだった。
近辺が暗くなる頃、馬車を停められそうな位置を早々に発見したライアンはそこで停める。
ミノルとトモハルが結界を張り、マダーニが夕食の準備だ。
ジョアンで調達した小麦を水で練って、湯の中に放り込んで蒸す。
干し肉を茹で戻し、そこらの山菜と煮込んでスープに。
質素だが暖かい食事はやはり、落ち着く。
普段食べなれている干し肉でも、こうするとまた別格だ。
やはりマダーニの調理法の腕が良いこともあるが、地に足をつけていられるというのは本当に心地が良かった。
満天の星空の下で、地面に横になる。
少し肌寒いが焚き火の暖かさが心地良く、馬達は直ぐに寝静まった。
ミノル達も明日からに備えて眠りへと誘われたのだが・・・やはり、夕刻まで寝ていたミノルは多少目が冴えている。
一人瞬きしながら、零れ落ちる星星を見ていた。
アサギは、どうしているだろうか。
トモハルが律儀に陽が廻るのを数えているので、離れ離れになってから早一ヶ月が経過していることなど百も承知。
地球はもう、八月のはずである。
夏休み真っ最中だ、どうなっているのかは解らないが。
ふと。
脳裏に何か響く気配が過ぎる、思わずミノルは上半身を起き上がらせる。

「ミノルちゃん、静かに・・・」

マダーニが起き上がる、ライアンが、剣に手を伸ばす、トモハルも起き上がった。
結界に何かしらの反応が出たのだ、結界は焚き火を中心に半径三メートル、馬車も隠れるほどだが。
ガサゴソ、と何か大きな生物の音が聞こえる。

「ようやく、お出ましか・・・さて」

ライアンが見えない敵に額に汗を浮かべつつ、静かに起き上がる。
遠い場所で、トーマも跳ね起きていた。

「ありゃりゃー、何かに遭遇しちゃったね? ・・・でも、まぁ・・・あれくらいなら倒せるよね、でないと先に進めないよ」

遠見。
魔物が何か解ったトーマは軽く胸を撫で下ろしていた、そこまで強敵ではない、数は多いらしいが。
遠くから、見据える。
何かあれば駆けつけるが、駆けつけなくても大丈夫だろう。

ギギ・・・

トーマの後方から何かが飛び出してきた、一瞥する間もなく。

「うるさいな、邪魔しないでよ」

右手を振り下ろせば、襲い掛かってきた羽の生えた蛇を吹き飛ばしていた。
最期の刺客だろうか、毒を所持しているらしい、赤まだらの飛び蛇だった。
妙に数が多いが、指揮官らしき人物がいない。
トーマは前方に集中しながら、両手を胸の前で交差させる。
すい、と腕を伸ばし水を掬い取るように腕を舞わせながら詠唱を。
両手を一気に地面に叩きつければ、地面から炎上、蛇たちを一網打尽である。
焼かれながらも飛びかかってきた蛇がいたが、トーマの前には皆無だった、弾き飛ばされるのみ。
なんなく、トーマは瞳を細める。

「トモハル、威嚇で光を」
「はい!」

両手を掲げ、トモハルは魔法を発動した、光の魔法だ、攻撃性はない。
明るくなった周囲、ミノルが唖然と口を開く。

「えーっと、何だ、あれ?」
「うーんと、何だろう・・・」

トモハルも、奇怪な姿に言葉を失う。
不気味ではあるが、恐怖は感じない外見だ。

「追い払うだけでも良いだろうな、敵意はなさそうだ」
「おそらく、ヨーウィ。トカゲに見えるけど鱗が硬くて蛇っぽい尻尾があるし・・・何より脚だか手だかが全部で六本。そこまで凶暴な魔物ではないと思うのだけど・・・」

光に一瞬怯んだが、魔物は逃げない、じりじりと妙な脚で近寄ってくる。
マダーニは軽く溜息を吐く、逃げないのなら、相手の目的は一つだ。

「空腹なんでしょうね、夜行性よ確かアレ」
「なるほど、俺達は夕飯か」
「当たり」

暢気なライアンとマダーニの会話に、ミノルとトモハルは身震いだ、大きさ的には中型犬か。
動きは遅そうだが、光る目から数の多さを解らせる。

「トモハル、ミノル。馬を護れ、結界の中から出すな」
「了解!」

なるほど、空腹ならば狙うのは危害のなさそうな馬だろう、ミノルとトモハルはライアンに言われた通り馬に駆け寄り武器を構えた。
落ち着かせるようにトモハルが馬達を中央へと背を撫でながら誘導、水を与えている間にミノルが先制攻撃だ。

「行くわよ、ミノルちゃん! 深追いはしないで、蹴散らすだけよ!?」
「分かってる!
巡る鼓動、照らす紅き火、闇夜を切り裂き、灼熱の炎を絶える事無く。我の敵は目の前に、奈落の業火を呼び起こせ!」

火炎の魔法、中位。
ミノルとマダーニは同時に同魔法を繰り出した、対角上に魔物達へと放つ。
叫び声を上げた魔物だが、それで逃げることはなかった、余程腹が空いているのか。

「こりゃ・・・本格的な戦闘だな」

ライアンが結界を飛び出し、一匹を切り裂く、思いの外皮膚が硬い。
舌打ちし、後方に戻った。
面倒な敵だ、属性も不明、火も恐れる様子がない。
数匹は焦げた様だが、それでも向かってくる上に、焦げた仲間を食い散らかしている。

「と、共食い・・・」

絶句したミノル、確かに焦げた香りは牛肉を焼いたようで、旨そうである。

遠見していたトーマは、ぼそ、と呟く。
こちら側の魔物は早全滅、前方に集中できる。

「ヨーウィ。結構皮膚が硬いから物理攻撃ならば脚を狙うのが良いね。あと、腹も皮膚は柔らかい。爆発系の呪文で吹き飛ばして、腹を刺して止めを刺すのが手っ取り早いかな。奇怪な格好だから、起き上がるのに時間がかかるし」

・・・亀のようなものかなぁ、と独り言。
気付けば、早々に戦いは終了するだろう、所詮敵ではない筈だ。

マダーニが弓矢で脚を狙ってみた、脚には刺さるところから皮膚が柔らかい事に気づく。
が、剣で脚を狙うのは位置が低すぎて逆に困難だった。
注意すべき敵の攻撃は蛇のような尾っぽに、鋭い歯。
ミノルの剣が、魔物の歯に摑まれてしまった。

「ちぃ、放せよっ」

舌打ちし、我武者羅に引っ張るが、剣が折れる。
唖然としたミノル、やはり市販品では無理なのか。

「っていうか、どんだけコイツら歯が丈夫なんだよっ」

ミノルへとマダーニが剣を投げつける、残りの剣はもうない、これが最後だ。

「うーん、この歯で武器を造れたら・・・相当名刀に」

ぶつぶつ頷いているライアンだが、自身の剣も微かに刃こぼれしていた。
マダーニの弓で脚の自由を奪い、尾っぽから切断しているがそれでは時間がかかりすぎる。
ミノルは剣を収め、呪文に全集中する事にした。
前衛でトモハルが戦う中、トーマを思い出し、発動。

「呼びかけに応じるは無数の光、宙に漂う小さな破片よ。我の元へと集まり増幅せよ、眩い光となれ!」

発動の瞬間、トーマが口の端に笑みを浮かべる。
そう、それだよミノル・・・と。
空中で爆発を起こした、岩の破片が周囲に散乱すると、同時に地中を張っていた魔物も吹き飛んでいく。
ひっくり返ってもがいていれば、もうこちらのものだった。
トモハルが躊躇なく剣で腹を突き刺す、びくり、と引き攣らせ絶命していく魔物。
荒い呼吸のミノルは、連打した魔法で著しく体力が消耗していた。

「よくやった、ミノル!」
「お、おぅ! ったりめーだろ」

素早くトモハルが仕留めにかかる、マダーニも魔物の足元へと向かって同様に魔法を繰り出していた。
こうなれば、最早敵ではなく。
戦闘は、終了だ。
トーマは愉快そうに笑うと、小さく拍手を。
穏やかな表情を浮かべ、月へと向かうように宙を舞う。
合格だよ、もう僕がいなくても大丈夫だね、と。
自分は最も近いジョリロシャへ出向くつもりだった、何分・・・腹が減っている。
馬の興奮を宥めつつ、四人は死骸を後に夜半過ぎ、予定より早い出発をした。

「ピョートルに到着したら、剣の調達だな。ミノルの剣が・・・」
「ライアンのも鍛冶屋で直してもらわないと」

武器の損傷が著しい、トモハルの剣は伝説の神器なので、そうはいかないらしいが。
山を越えながら、思ったより道が整備されていた為予定より早くピョートルを目下に出来た一行。
真っ白な城を眼下に見下ろし、逸る気持ちで急いで道を駆け下りた。
雄大で壮大な城だった、ジェノヴァとはまた違った雰囲気の城である。
高く細い城は、どこか冷たく厳しさを感じた。
山岳の中の為か空気も冷えている、多少身震いしながら四人は進む。
手続きをとり、馬車を預け久方ぶりの宿での宿泊。
武器が奉納されているのは、無論城内である。
翌日四人は連れ立って謁見を王に申し出たが、許可は直様下りる事がない。
不貞腐れるミノルを宥め、武器の調達に専念することにし、城を後にした。
無事ピョートルへ到着できたことを報告しようと、街の連絡塔へと出向いた四人。
手紙は、大きな首都には連絡塔があり、そこから手紙を転移出来る。
アリナ達がブジャタ達へと送った手紙もそれだ、一旦ジェノヴァの連絡塔へ転送され、そこから宿へと届いた。
同じ様にライアンも、ジェノヴァ待機組みへと向けて手紙を書く。
行き先はあの宿、時間はかかるが確実に届くだろう。
薬草などを補充し、帰路を思案し、武器を覗く。
ピョートルは、女王国家である。
全体的に男が少ないのは女性国家だからだろうか、男としては嬉しいやら、居辛いやら。
子を成し繁栄する為に、一人の男が何人もの女性を囲える国でもある。
武器屋に入り、ミノルに見合う武器を探させた、身長と重量を考慮する。
金は結構貯まっている、店で良い剣を探すがライアンの目に叶うものはない。
自分の剣は鍛冶屋に預けてあるが、目利きのライアンに剣はお任せだ。
謁見まで、暫しの休息になるわけだが目と鼻の先に目指してきた武器があるというのにこの状態は、もどかしい。
翌日になっても、謁見の連絡は受けられなかった。
三日が過ぎようとしていた。

「女王様。勇者と名乗るものが来ていますが」
「それは何日前かしら?」
「偽物だと思ったので、・・・三日前です」
「・・・先日から、セントラヴァーズの動きがおかしいのです。早急に手配を、本物かもしれません」

到着して三日目の夜半、ようやく連絡が届き宿で眠ろうとしていた四人は慌てて城へと向かう。
頑丈な門を開き、長すぎる廊下と吹き抜けの天井を歩けば自然と背筋が伸びてしまう。
緊張した面持ちのミノルとトモハル、些かマダーニも不安そうだった。
ライアンだけは慣れているのか、堂々とした足取りだ。
最も奥の部屋、派手に着飾っては居ないが、装飾品が細かく美しい為一目で高貴な人物だと解る女性が深く椅子に座っている。
深紅の絨毯が引かれ、左右には警備兵が。
恭しく跪いた四人、女王は真っ直ぐにトモハルの剣に注目した。

「本物のようですね」

女王が真っ先に口を開く、一瞬ライアンが訝しそうに顔を顰めたが誰も気付かない。

「対の武器を取りに来たのでしょう? ・・・それで、もう一人の勇者は? その少年ですか?」

女王の視線の先にはミノルだ、慌てて首を振ると、宝石を取り出す。

「俺は、1星の勇者です」

目を細め、女王は宝石を見つめる。
肩の荷を降ろすと、女王は微かに微笑んだ。

「皆さん、力を抜いて。・・・ようこそ、皆様方、ピョートルに。
クリストバルの神官様から連絡は戴いておりましたが、何分、偽物が多い世の中。お待たせいたしましたね」

本物だと判ってもらえたようだ、安堵し、嬉しそうに微笑むミノルとトモハル。
静かに立ち上がりながら、悠然と手を伸ばし四人を誘う女王、深々と礼をして四人は立ち上がると歩き出す。
相変わらず護衛はついていたが、しかたあるまい。
優しい声色だった、最初の印象とは違う女王の風格。
年にして40代後半だが、それでも肌ははりが合って美しい。

「神官様からは勇者様達がもっと大勢居ると・・・」
「・・・途中で、別れました。ここにあります神器の所有者である勇者は、魔王に連れ去られたのです」
「はぃ?」

女王の声が裏返る、当然だ。
冗談ではない表情だと判断、めまいを覚えながらも、女王は支えられ足を進めた。

「それで・・・人数が少ないのですか」
「はい。彼女に武器を届ける為に、取りに来ました」
「その対のセントガーディアンがあるから本物だと解ったものの・・・、なければ信用できませんでしたよ」

地下。
檻も何もない小さな空間に、ぽつん、と宝箱。
蓋は開いたままだ、なんて物騒なんだとトモハルは青褪めたが。

「あのほうが、視やすいでしょう? それに、見えない壁が張り巡らせてありますからね」

穏やかに女王は微笑む。
宣言通り、すい、っと空間に手を伸ばせばこつん、と何かに行く手を阻まれた。
硝子の箱の中にあるような、そんな。

「解除は、私にしか出来ません。代々ピョートルの女王のみが開錠出来ます」

す、っと空気が揺れたと思えば、次にはすでに空間が消えている。
おずおずと進むと、宝箱の中には。

「セントラヴァーズです、お持ち下さいませ」
「・・・はぁ」

トモハルが、引き攣った。
ミノルが首を傾げた、瞬きを繰り返す。
ライアンが、言葉を失い目を白黒させ。
マダーニが、手を伸ばす。

「武器、ですかこれ?」

トモハルが指差した宝箱の中身、どう、見ても武器ではない。
腕輪だ。
綺麗な細工の、宝石がついた腕輪である。
だからマダーニが手を伸ばしたのだ、高価そうで綺麗で。

「セントラヴァーズです」
「えーっと、俺のセントガーディアンの・・・」
「そうです、そちらの神器と対です」

と、言われても。
トモハルはしげしげと自分の剣を見つめた、不死鳥の彫刻が施された自分の剣。
と、対らしい、目の前の腕輪。

「これは・・・どのように使うものなのでしょうか?」

ライアンが恐る恐る女王に尋ねる、穏やかに微笑みながら一言。

「謎です」

激震。
呆気にとられる四人だが、女王は動じない。

「これは、文献の引用です。
その昔、神と魔族とエルフ族が創造し人間に託した対の神器の片割れです。
セントラヴァーズ。伝説の神器、勇者の武器。非常に特殊な素材で出来ており普段は何の変哲もない腕飾り。付属の石を”反応させる事が出来た者のみが”その稀な効果を発揮させられる、変化の剣。所持者の思い通りの武器形態に変化させられる、攻めの武器。ありとあらゆる状況に合わせ変化させた武器を使いこなす事が出来るのならば、武器の申し子。セントガーディアンとは真逆の”攻”の武器」

暗記している文面を、言って聞かせた。
唸る四人に、女王は続ける。

「セントガーディアン。伝説の神器、勇者の武器。眩い光を放ちながら勇者が”勇者に目覚めたときにこそ”力を発揮する、守護の剣。護るべき者を強く想い続ける事によって、増幅できる特殊な剣。傷つけるのではなく、全てを守り抜くこそが使命だと思えた者のみが手に出来る、”優”の剣」

トモハルは、自分の剣を改めて見直した。
剣の形をしているこちらが守護の意味を持つらしい、思わず戸惑いを浮かべる。

「あながち、お前が回復係になったのにも意味があるんじゃねーの?」
「でも、アサギが前衛で攻撃するって想像できるか? 逆なんじゃないのかな・・・」

ひそめく勇者達を優しく見つめている女王に、思わずライアンは尋ねた。
この場で聞くべきか否か、迷っていはいたが一か八か、である。

「あの、失礼を承知で申し上げます。・・・その、真に言い難いのですが、そのセントガーディアン。クリストバルで授かった神器ですが・・・」
「剣の使い手の貴方から見れば、取るに足らない剣だとおっしゃりたいのでしょう?」

ぎくり、と硬直したライアンと、驚愕の瞳で見るトモハルとミノル。
マダーニは未だにしげしげと腕輪を見つめていた、そうとう宝石が気になるようだ。

「ど、どういうこと?」

うろたえるトモハル、申し訳なさそうにライアンは目を伏せると、首を横に振る。

「すまない、ずっと言えなくて。トビィ君とは語ったんだがその剣・・・俺達から見ればそこそこの威力しかない剣にしか見えないんだ。余程、トビィ君が所持していたあの剣のほうが」
「そう見えて当然です、そのセントガーディアンはまだ解放されていないのですから」

ライアンの言葉を叩ききる女王、一同絶句である。

「幼い勇者よ。その剣は貴方が目覚めたときにしか姿を現しません、今はまだ眠りの状態なのですよ。、間違いなく、神器ですけれど」
「・・・どうすれば目覚めるかは、俺自身の問題ってことですね?」
「えぇ、物分りの良いこですこと」

戸惑い気味だが、はっきりと女王を見据えて語るトモハルに、眩しそうに女王は笑う。

「その調子なら、解放も間近でしょう。貴方にしか解らない事ですよ」
「・・・はい、解りました、頑張ります」
「同様に、そのセントラヴァーズも。本来の所持者の勇者にしか、扱い方が解りません。きっと、選ばれたものならばどうにか出来る筈です」

沈黙。
せめて説明書を・・・とミノルは言いかけたが、アサギならどうにか確かに出来そうな気がしてきた。

「と、ともかく! アサギの武器は無事確保出来た! 急いで戻ろう」
「は、はい!」

想像と違う武器との出会いに、多少面食らってはいるがこれが真実だ。

「夜半遅くにごめんなさいね、勇者様方」
「有難う御座いました」

丁重に礼をするミノルとトモハル、微笑ましく女王は笑う。

「さぁ、次はどうされるのですか? 力及ばずながら私達もお手伝いしますよ」
「忝い」

跪くライアン、ミノルとトモハルは、手に入れたセントラヴァーズという名の腕輪をじっと、眺めていた。

「他の仲間達が、ジェノヴァに集合しているはずです。戻ってそこから合流し魔界イヴァンへと出向きます」
「まぁ、遠いですこと・・・。転送陣が上手く起動すれば良いのですが、やってみますか?」

顔を見合わせ、マダーニは小さく叫ぶ。

「あるの!?」

タメ口に思わず周囲から咳が飛んだが、おかまいなしだった。

「アーサーが自身の星へ戻ったような、転移魔法よ。あるなら直様戻れるわ!」
「ただし、ジェノヴァの何処へ通じているか。最近使っておりませんので・・・。城内の何処かには位置しています、起動はする筈ですが」
「危険を承知で、一か八か、か・・・」

選択の余地はない、四人は神妙な顔で頷くと無論申し出る。
ライアンの武器の仕上がりを待ち、直様出向くことにした。

翌日の夕刻、四人は転送陣へと立ち入る。
万が一に備え、周囲を魔道師達が囲み女王も無論立ち会った。

「神経を研ぎ澄ませ、願うのです。流れに身を任せ、ジェノヴァを思い。何処かへ逸れては一貫の終わり・・・」
「はい!」
「解ったわ!」
「頑張ります、ミノル、覚悟を決めろ」
「わーってるよ!」

馬車は、ピョートルに寄付だ、所詮頂き物である。
四人は手を繋ぐ、意識を飛ばす。
アサギを想う、皆を想う。

転送陣、発動。
 

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