別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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終わらないぞ、年内に。※諦めた
一夜明けて、大きなベッドの上にはアサギを何者かから護るように抱き締めて眠っているトビィと、控え目にアサギの寝間着を掴んで眠っているリュウと。
そしてベッドから蹴り落とされ床で眠って居たハイの、そんな光景が広がっていた。
目が醒めたのか、アサギが何度か瞬きをする。重い瞳を持ち上げて、視界を見つめ続けると目の前には男性の胸板があった。逞しくて、妙に色香がある。一瞬目を大きく開いたのだが、鼻をすすると安堵したように微笑し、再び眠りに入る。
知っている香りだった、随分と昔から傍にあった大切な香りだ。腕のぬくもりも知っている、これは、安全な領域だと判断する。だから、すんなりと眠りに戻った。
陽射しが、室内に入り込む。暫し、その部屋は静寂で包まれていた。
だから、魔王アレクが訪ねて来ても誰も起きては居なかった。寝心地悪く、大きな欠伸をしてハイが起き上がらなければこの計画は先延ばしになっていただろう。
来訪者に気がつき、ハイが寝癖がついた髪のまま出迎える。
身なりを普段通りに整えたアレクがそこには立っていた。軽く室内を覗き込んだアレクは、まだアサギが眠っていることに気がついた。多少眉を顰める。
「すまない、起こしてしまっただろうか」
「いや……気にするな。昨夜皆で結構暴れたのでな、眠くてかなわん」
大きく伸びをしながら、だらしなく欠伸をするハイ。
昨夜暴れた、とはなんなのか気になったがアレクはあえて突っ込まなかった。
軽く瞳を細めただけである、目の前のハイは非常に不服そうな表情で歯軋りしている。
軽く咳をし、アレクは用事を切り出した。回りくどいことは苦手である。
「本日、ロシファを迎えに行く。よければ皆で出かけないか?」
「ふむ、親睦会か! 良いではないか」
「昼には目的地に到着したいから、皆を早急に起こして欲しい。昼食はこちらで用意しよう」
アレクが去ってから、ハイはリュウを掴んでベッドの外に放り投げる。トビィも同じ様に掴んで捨てるつもりだったのだが、遅かった。気がつけば剣先を突きつけられているのだ。不敵に微笑んでいるトビィと視線が交差し、ハイは腸が煮えくり返りギリギリと音が外部に聴こえる程、歯軋りをした。まさか、人間のそれも年下の男に一時でも捻じ伏せられるとは。
仮にも魔王である、本来ならば許してはならない。自分の威厳に関わる。
火花散らす真下で、ようやくアサギも目を醒ました。トビィに頬を撫でられ、気持ち良さそうにまどろむ。
「くっそぅ、兄っていいなぁ」
ハイが呟き、指を咥えてそれを見つめるとトビィが鼻でそれを笑う。優越感に浸れる、非常に愉快だ。
しかし、「良くない時もあるけどな」とトビィは小声で付け加えて小さく溜息を吐いた。目の前の無邪気な小悪魔には、嬉しいことでもあるが手を焼いている。無自覚なので、性質が悪い。誘っているようで、全く誘っていない。
異性として認識されていないような気がしてならない状況に、多少遺憾である。
床でようやう小さく呻いて起き上がったリュウも含め、ハイは3人にアレクが訪ねて来て、本日出かけようと誘われたことを伝えた。
はしゃぐアサギとリュウは、手を取り合って歓んでいる。
アサギは全く警戒していないが、ハイはその様子を不審に見つめる。リュウの態度は、曖昧だ。アサギに対して稀に攻撃的になる、かと思えば友好的にも。得体が知れない。
トビィとて、目を光らせた。リュウについて飄々としており、何を思案しているのか把握出来ない最も厄介な人種だと判断している。
そんな2人を嘲笑うかのように、アサギと手を叩きながら微かにリュウは口角を上げた。
「お弁当を持って行くのですか? ……楽しそう! あ、私も作ろうかな、作れるのかな」
何気なく呟いたアサギのその一言に、気を張り詰めていた3人が一斉に反応する。アサギの手料理、など聴いただけで興奮してしまう。
ハイは手料理を食べたい一心で、アサギに縋るような視線を送る。それはもう、血走った眼で。
リュウも懇願するような視線を送った、興味がある事は間違いない。
トビィは「美味しいからな、是非食べたいもんだ」と、アサギに微笑む。
「な、何をつくろうかな。きっと勝手が違うから……」
3人の視線を受け、狼狽しながらアサギは微笑する。まさか、ここまで過剰に反応されるとは思わなかったのだ。
母を日頃から手伝っていたアサギにとって、料理は他愛もないことなのだが、何しろここは地球ではない。人様の自宅へ行って作ることも難しいというのに、調味料や食材が違うであろうこの場所で、何が出来るのかを考えた。
「卵焼きと……から揚げとかなら出来るかな。お米があればおにぎりも作れるけど……」
期待されているようなので、アサギは必死に思案した。思いつく限りの、出来そうな料理を口にしてみる。
聴くなりハイは、部屋を飛び出しホーチミンを捜しに出掛けた。食通で、食材には詳しそうな人物だったからだ。
仕事中のホーチミンを無理やり抱えて戻ると、アサギの前に引き摺り出す。
当然事情が飲み込めていなかったホーチミンは、引き攣りながらハイを睨みつけた。申し訳なさそうに恐縮したアサギが、簡潔に事情を説明する。ようやくそれで事情が理解出来たホーチミンは、アサギの頭を撫でて宥める。
アサギが悪いのではない、悪いのはハイだ。
まぁ、美少女の美しい指で作られた料理を食べたいと思うのは男の性か。
解らないでもなかったので、ホーチミンはアサギに免じてハイを許すことにした。
いつもの通い慣れた食堂に連れて行き、厨房に勝手に入っていくと何やら話をつけている。
勇者アサギの後方に、魔王が2人と人気のドラゴンナイト。
これでは、厨房の皆は機嫌を損ねないように準備をするしかなかった。半強制である。
厨房の一角が貸し出され、アサギの望んだ食材がずらりと並べられた。
ホーチミンは仕事を途中で放り出してきたので、断腸の思いで戻ることにし早々にその場から去る。アサギの作る料理が楽しみだったのだが、仕方がない。
アサギはレースも刺繍もされていない、至ってシンプルなエプロンを貸してもらうと気合十分に料理を始めた。
やはりどこの世界でも男はエプロンに惹かれるものなのか、ハイは至極満面の笑みでアサギを見つめている。それはもう、気持ちが悪いくらいに。
手際よく卵を割りほぐし、砂糖に牛乳、多少の塩を入れて混ぜ合わせ、フライパンでたっぷりのバターを溶かす。熱されたら卵を流しいれて、そのまま器用に広げて片手でフライパンを上手く調整しながら焼き上げていく。
甘いふんわりとした香りが、漂い始めた。
何時の間にやら観客が増えており、その無駄なき動きに皆感嘆の溜息を漏らした。
「スープが飲みたいな、美味しいからな」
トビィは微笑しながらアサギを見つめる。以前助けられた時に、毎食飲ませてくれた野菜が溶け込んだスープが忘れられない。だが、今回は弁当なのでスープを作ることがないだろう。
残念そうにトビィは腕を組むと、忙しなく動くアサギを見ていた。
『歌声で、目を醒ました。良い香りが鼻につく、空腹を覚える。小さく呻いて上半身を起こし、傍らにかけてあった衣服を羽織る。
「ごめんなさい、起こしちゃいました?」
「……、敬語だ」
「ぁ。……えっと、訂正っ。”ごめんね、起こしちゃった?”」
朝食の準備をしていた彼女は、振り返ると悪戯っぽく笑った。小さく吹き出すと自分も笑う、近づいて髪を撫でながら口づける』
トビィは眉を顰める、今の光景はなんだったか。
以前アサギが助けてくれた時、確かに部屋に食事を運んでくれたのだが、料理をしていた姿は観ていない。
けれども、何故かアサギが自分の為に料理をし、一緒に食べた記憶がある。
一瞬、目の前が真っ暗になった。吐き気を催し、トビィは思わず壁にもたれこむ。心配そうに誰かが声をかけてきたが、首を振って軽く右手を上げた。大丈夫だ、と言いたかった。
「なん……だ、今の」
荒い呼吸を繰り返す、エプロン姿で懸命に料理しているアサギを見つめ、胸が痛む。キリリ、と軋む。
「……大丈夫だ、直に夢は現実になる」
虚ろな瞳でトビィはそう、呟いた。脳裏に甦るのは、恋人のような、いや、夫婦のような2人。遠くない未来の、2人の姿のはずだとそう思った。自分を見つめ、自分と歩むアサギの姿だと。
届けられた水を一気に飲み干すと、幾分か冷静になれた。身体中からドッと噴き出した汗が気持ち悪い。
額を拭い、再び瞳を閉じる。
浮かび上がるのは、愛しい愛しいアサギの姿。護るべき、愛しい愛しい女の姿。
トビィは、何度も呟いた。「大丈夫だ」と。
アサギは卵焼きとおにぎり、そして鶏肉の塩焼きを作った。米が日本産と違い、形が微妙に細長いが米である。梅干しや昆布の佃煮を具にしたかったが生憎なかったので、焼き鮭にしておいた。海苔がないのも残念だが、仕方がない。
アサギの料理以外にも、厨房の別の一角で魔王達の弁当が作られていたので豪華な品数になった。
アレクとロシファが現れ、弁当を抱えて一行は城を出る。
魔王勢揃い、皆が足を止めて平伏した。まさか親睦の為皆で外で食事をするのだとは、誰も思わず。
「ロシファ様、こんにちは!」
「アサギ、こんにちは。今日は宜しくね」
微かにロシファはリュウに視線を送ったが、今のところ不審な動きはしていないようだ。アサギの傍らのトビィが、話に聞いていた人間のドラゴンナイトだというので、そちらにも目を向ける。
不思議な、取り合わせだこと……。
ロシファは、唇を尖らせるとアレクの腕に抱きつき歩く。些か照れながら早足になるアレクに、苦笑した。
違う惑星の魔王が3人、人間が2人で、片方は勇者。そして魔族とエルフの混血である自分。
「運命は、動き出したのね」
ロシファは、アレクの腕をきつく掴んでそう漏らした。吉と出るのか、凶と出るのか。
そしてベッドから蹴り落とされ床で眠って居たハイの、そんな光景が広がっていた。
目が醒めたのか、アサギが何度か瞬きをする。重い瞳を持ち上げて、視界を見つめ続けると目の前には男性の胸板があった。逞しくて、妙に色香がある。一瞬目を大きく開いたのだが、鼻をすすると安堵したように微笑し、再び眠りに入る。
知っている香りだった、随分と昔から傍にあった大切な香りだ。腕のぬくもりも知っている、これは、安全な領域だと判断する。だから、すんなりと眠りに戻った。
陽射しが、室内に入り込む。暫し、その部屋は静寂で包まれていた。
だから、魔王アレクが訪ねて来ても誰も起きては居なかった。寝心地悪く、大きな欠伸をしてハイが起き上がらなければこの計画は先延ばしになっていただろう。
来訪者に気がつき、ハイが寝癖がついた髪のまま出迎える。
身なりを普段通りに整えたアレクがそこには立っていた。軽く室内を覗き込んだアレクは、まだアサギが眠っていることに気がついた。多少眉を顰める。
「すまない、起こしてしまっただろうか」
「いや……気にするな。昨夜皆で結構暴れたのでな、眠くてかなわん」
大きく伸びをしながら、だらしなく欠伸をするハイ。
昨夜暴れた、とはなんなのか気になったがアレクはあえて突っ込まなかった。
軽く瞳を細めただけである、目の前のハイは非常に不服そうな表情で歯軋りしている。
軽く咳をし、アレクは用事を切り出した。回りくどいことは苦手である。
「本日、ロシファを迎えに行く。よければ皆で出かけないか?」
「ふむ、親睦会か! 良いではないか」
「昼には目的地に到着したいから、皆を早急に起こして欲しい。昼食はこちらで用意しよう」
アレクが去ってから、ハイはリュウを掴んでベッドの外に放り投げる。トビィも同じ様に掴んで捨てるつもりだったのだが、遅かった。気がつけば剣先を突きつけられているのだ。不敵に微笑んでいるトビィと視線が交差し、ハイは腸が煮えくり返りギリギリと音が外部に聴こえる程、歯軋りをした。まさか、人間のそれも年下の男に一時でも捻じ伏せられるとは。
仮にも魔王である、本来ならば許してはならない。自分の威厳に関わる。
火花散らす真下で、ようやくアサギも目を醒ました。トビィに頬を撫でられ、気持ち良さそうにまどろむ。
「くっそぅ、兄っていいなぁ」
ハイが呟き、指を咥えてそれを見つめるとトビィが鼻でそれを笑う。優越感に浸れる、非常に愉快だ。
しかし、「良くない時もあるけどな」とトビィは小声で付け加えて小さく溜息を吐いた。目の前の無邪気な小悪魔には、嬉しいことでもあるが手を焼いている。無自覚なので、性質が悪い。誘っているようで、全く誘っていない。
異性として認識されていないような気がしてならない状況に、多少遺憾である。
床でようやう小さく呻いて起き上がったリュウも含め、ハイは3人にアレクが訪ねて来て、本日出かけようと誘われたことを伝えた。
はしゃぐアサギとリュウは、手を取り合って歓んでいる。
アサギは全く警戒していないが、ハイはその様子を不審に見つめる。リュウの態度は、曖昧だ。アサギに対して稀に攻撃的になる、かと思えば友好的にも。得体が知れない。
トビィとて、目を光らせた。リュウについて飄々としており、何を思案しているのか把握出来ない最も厄介な人種だと判断している。
そんな2人を嘲笑うかのように、アサギと手を叩きながら微かにリュウは口角を上げた。
「お弁当を持って行くのですか? ……楽しそう! あ、私も作ろうかな、作れるのかな」
何気なく呟いたアサギのその一言に、気を張り詰めていた3人が一斉に反応する。アサギの手料理、など聴いただけで興奮してしまう。
ハイは手料理を食べたい一心で、アサギに縋るような視線を送る。それはもう、血走った眼で。
リュウも懇願するような視線を送った、興味がある事は間違いない。
トビィは「美味しいからな、是非食べたいもんだ」と、アサギに微笑む。
「な、何をつくろうかな。きっと勝手が違うから……」
3人の視線を受け、狼狽しながらアサギは微笑する。まさか、ここまで過剰に反応されるとは思わなかったのだ。
母を日頃から手伝っていたアサギにとって、料理は他愛もないことなのだが、何しろここは地球ではない。人様の自宅へ行って作ることも難しいというのに、調味料や食材が違うであろうこの場所で、何が出来るのかを考えた。
「卵焼きと……から揚げとかなら出来るかな。お米があればおにぎりも作れるけど……」
期待されているようなので、アサギは必死に思案した。思いつく限りの、出来そうな料理を口にしてみる。
聴くなりハイは、部屋を飛び出しホーチミンを捜しに出掛けた。食通で、食材には詳しそうな人物だったからだ。
仕事中のホーチミンを無理やり抱えて戻ると、アサギの前に引き摺り出す。
当然事情が飲み込めていなかったホーチミンは、引き攣りながらハイを睨みつけた。申し訳なさそうに恐縮したアサギが、簡潔に事情を説明する。ようやくそれで事情が理解出来たホーチミンは、アサギの頭を撫でて宥める。
アサギが悪いのではない、悪いのはハイだ。
まぁ、美少女の美しい指で作られた料理を食べたいと思うのは男の性か。
解らないでもなかったので、ホーチミンはアサギに免じてハイを許すことにした。
いつもの通い慣れた食堂に連れて行き、厨房に勝手に入っていくと何やら話をつけている。
勇者アサギの後方に、魔王が2人と人気のドラゴンナイト。
これでは、厨房の皆は機嫌を損ねないように準備をするしかなかった。半強制である。
厨房の一角が貸し出され、アサギの望んだ食材がずらりと並べられた。
ホーチミンは仕事を途中で放り出してきたので、断腸の思いで戻ることにし早々にその場から去る。アサギの作る料理が楽しみだったのだが、仕方がない。
アサギはレースも刺繍もされていない、至ってシンプルなエプロンを貸してもらうと気合十分に料理を始めた。
やはりどこの世界でも男はエプロンに惹かれるものなのか、ハイは至極満面の笑みでアサギを見つめている。それはもう、気持ちが悪いくらいに。
手際よく卵を割りほぐし、砂糖に牛乳、多少の塩を入れて混ぜ合わせ、フライパンでたっぷりのバターを溶かす。熱されたら卵を流しいれて、そのまま器用に広げて片手でフライパンを上手く調整しながら焼き上げていく。
甘いふんわりとした香りが、漂い始めた。
何時の間にやら観客が増えており、その無駄なき動きに皆感嘆の溜息を漏らした。
「スープが飲みたいな、美味しいからな」
トビィは微笑しながらアサギを見つめる。以前助けられた時に、毎食飲ませてくれた野菜が溶け込んだスープが忘れられない。だが、今回は弁当なのでスープを作ることがないだろう。
残念そうにトビィは腕を組むと、忙しなく動くアサギを見ていた。
『歌声で、目を醒ました。良い香りが鼻につく、空腹を覚える。小さく呻いて上半身を起こし、傍らにかけてあった衣服を羽織る。
「ごめんなさい、起こしちゃいました?」
「……、敬語だ」
「ぁ。……えっと、訂正っ。”ごめんね、起こしちゃった?”」
朝食の準備をしていた彼女は、振り返ると悪戯っぽく笑った。小さく吹き出すと自分も笑う、近づいて髪を撫でながら口づける』
トビィは眉を顰める、今の光景はなんだったか。
以前アサギが助けてくれた時、確かに部屋に食事を運んでくれたのだが、料理をしていた姿は観ていない。
けれども、何故かアサギが自分の為に料理をし、一緒に食べた記憶がある。
一瞬、目の前が真っ暗になった。吐き気を催し、トビィは思わず壁にもたれこむ。心配そうに誰かが声をかけてきたが、首を振って軽く右手を上げた。大丈夫だ、と言いたかった。
「なん……だ、今の」
荒い呼吸を繰り返す、エプロン姿で懸命に料理しているアサギを見つめ、胸が痛む。キリリ、と軋む。
「……大丈夫だ、直に夢は現実になる」
虚ろな瞳でトビィはそう、呟いた。脳裏に甦るのは、恋人のような、いや、夫婦のような2人。遠くない未来の、2人の姿のはずだとそう思った。自分を見つめ、自分と歩むアサギの姿だと。
届けられた水を一気に飲み干すと、幾分か冷静になれた。身体中からドッと噴き出した汗が気持ち悪い。
額を拭い、再び瞳を閉じる。
浮かび上がるのは、愛しい愛しいアサギの姿。護るべき、愛しい愛しい女の姿。
トビィは、何度も呟いた。「大丈夫だ」と。
アサギは卵焼きとおにぎり、そして鶏肉の塩焼きを作った。米が日本産と違い、形が微妙に細長いが米である。梅干しや昆布の佃煮を具にしたかったが生憎なかったので、焼き鮭にしておいた。海苔がないのも残念だが、仕方がない。
アサギの料理以外にも、厨房の別の一角で魔王達の弁当が作られていたので豪華な品数になった。
アレクとロシファが現れ、弁当を抱えて一行は城を出る。
魔王勢揃い、皆が足を止めて平伏した。まさか親睦の為皆で外で食事をするのだとは、誰も思わず。
「ロシファ様、こんにちは!」
「アサギ、こんにちは。今日は宜しくね」
微かにロシファはリュウに視線を送ったが、今のところ不審な動きはしていないようだ。アサギの傍らのトビィが、話に聞いていた人間のドラゴンナイトだというので、そちらにも目を向ける。
不思議な、取り合わせだこと……。
ロシファは、唇を尖らせるとアレクの腕に抱きつき歩く。些か照れながら早足になるアレクに、苦笑した。
違う惑星の魔王が3人、人間が2人で、片方は勇者。そして魔族とエルフの混血である自分。
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