別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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これで完結、きっと、大丈夫。
今更ですが、そのカテゴリー、ふざけすぎ(死)。
・・・思いつかなくて。
これを読んだ後に
・ミノル君的恋の話
・DES外伝4(実はこれがかなり重要だったりとか)
・現在進行中の本編
・・・を、読むとひょっとすると何か意味が解るかもしれなかったり、しますです。
今更ですが、そのカテゴリー、ふざけすぎ(死)。
・・・思いつかなくて。
これを読んだ後に
・ミノル君的恋の話
・DES外伝4(実はこれがかなり重要だったりとか)
・現在進行中の本編
・・・を、読むとひょっとすると何か意味が解るかもしれなかったり、しますです。
「知人がそういうことしてると、俺が恥ずかしいから、やめろっ」
二人を引き離したミノル、赤面してマビルは俯いていたがトイプードルを店員に返す。
「お前ら、自重しろ。つーか、まさかこんなとこで会うとは思わなかった」
顔を引き攣らせているミノルの隣で、ココが二人に会釈。
「こんにちは。今からランチ食べるけど、一緒に行く?」
当然の遭遇にマビルはトモハルの背に軽く隠れた、ミノルは解るが、ココはあまり親しくない。
結構人見知りが激しいのだ。
女に対しては、特に。
「苺のデザートだらけの、ブッフェに行くんだ」
「苺・・・」
マビルが興味深そうに呟いたので、不本意ながらトモハルは同意する。
本当は、二人で食べたかったのだろう。
四人でホテルのスカイラウンジへ出向いた、なるほど、女性客で溢れ返っているのは苺のせいか。
ブッフェ形式にあまり慣れていないマビルを、優しくサポートしながら、トモハルは一周して席に着くと食べ始める。
軽い緊張で口数少ないマビルだが、三人の会話に聞き耳を立てた。
三人、というか二人だ。
トモハルは気を使ってだろう、マビルの隣で静かに食事している。
「そーいえばさ、お前らホント仲いいのな」
「ね、変わってないよねー」
呆れ返っているミノルに、羨ましそうにマビルを見ているココ。
「憶えてる? アサギを救う為にさ、みんなの記憶を消す時。トモハルがさぁ『俺はアサギよりマビルが大事だから、嫌だー!』とか叫んで強力しなかったんだよなー。あたいさ、あれ見たときトモハルって凄い男だな、って思ってたよ」
「な、何それ?」
ココの発言にマビルは思わずフォークを皿に置いて、ココに話しかけた。
平然と隣でトモハルは食事を続けているので、ココはミノルと目配せして語り出した。
「知ってるかな・・・。アサギがね、ちょっと殻に閉じこもってた時があったんだよな。殻から出てこなくて、アサギが心配だったから皆で助ける方法を考えた。
その唯一の方法が、勇者であった記憶を失くす事。
辛かった記憶を消去するしか、手立てがなくてさぁ。で、他のミノルやトモハル達も記憶を消されることになったんだ」
「そ。で、俺達は意見一致で記憶を失くす魔法をかけてもらうことにしたんだけど、トモハルが逃亡したんだよ。
マビルを忘れたくないから、って言ってさ。アサギが死ぬか死なないか、の時だろ、皆で追いかけた、説得した。・・・でも、トモハルは」
一人で食事しているトモハルを、三人が見つめる。
視線を感じ、水を飲みながらミノルを軽く睨みつけ。
「俺が好きなのはマビルだ、アサギじゃない。どうしてマビルを忘れなきゃいけなかったんだろ。
ミノルだって、『アサギを救うためには記憶を失くして欲しい、ココのことは忘れてくれ』って言われたら、拒否するだろ」
トモハルの横顔を見つめながら、激しい動悸に襲われたマビル。
「・・・アサギを選ぶかも、俺ほげあぅえいいいいっ」
アサギの名が出た瞬間に、思い切りココがミノルの頬を捻り上げた、悲鳴を上げるミノル。
苦笑いしてトモハルは、マビルを見た。
マビルは。
思わず、そっと、控え目にだが、トモハルの腕を掴んだ。
言葉は出なかった、けれどとても嬉しく、信じられないことだった。
生きているアサギを救う事よりも、死んでいてもう会えないマビルを忘れないことを選んでいたトモハルに。
・・・嬉しすぎて、いや、アサギは助けて欲しかったが、嬉しくて、嬉しくて。
思わず、泣きそうになる。
震えながら掴んだマビルの手を、そっと上から握り、トモハルは小さく笑う。
「・・・居辛い」
「・・・らぶらぁぶだ」
赤面し俯いたままのマビル、それを優しく見下ろしているトモハル。
ミノルとココはコーヒーをまったりとすすりながら、言葉をかけられなくて暫しそこに座ったまま。
また、苺を食べ始めた。
することがなかったので。
ミノル達と別れて、適当に歩いていたトモハルとマビル。
マビルは化粧直しに入ったので、トモハルは一人、外で待っていた。
鏡に向かって念入りに化粧を治していたマビルの後ろを、二人の女性が通り過ぎ、トイレへと。
「ねぇ、外に居た男の子、超かっこよくなかった?」
「あぁ、あの細身の子。うん。いいよね~」
グロスを塗っていたマビル、途中でやめて慌てて外に飛び出すとトモハルを探す。
トモハルは、壁にもたれて待っていたのだが。
よく見たらその向かい側に居る女性二人もどうもトモハルを見ているらしく、顔を赤らめて話をしている。
マビルは、青褪めた。
近寄ってみれば、トモハルは直ぐに気づいて顔を上げると両手を広げたが。
「だめ、駄目なの、トモハル!」
「え、え、え、え?」
「こ、今度から一緒にトイレにも入って!」
「・・・な、何事!?」
「ひ、一人になったら駄目なのっ」
「お、落ち着いてマビル、何、何、ゴキブリに襲われたとかそんな感じ?」
「ち、違うのーっ」
何が言いたいのか全く解らないマビルに、流石にトモハルも困り果てた。
だが、必死に何か言いたそうだ。
そこを、先程化粧直し中に後ろを通り過ぎた女性二人が、戻ってくる。
「やっぱり彼女いるしー」
「だろうねー」
その会話を聞き、なんとなくトモハルは理解したので。
マビルを抱き締めると、そのまま口付けを。
もがいて赤面したマビルだが、すぐに大人しくなった。
・・・安心したらしい、ようやくトモハルにもマビルの言いたいことが解ってきたのだ。
嬉しい事に、マビルは心配になったらしい。
それは、嫉妬で不安で、トモハルを好きだからこそ、起こる感情だ。
「さぁ、行こうかマビル」
手を繋ぐ。
カップルシートで映画を観て、二人で注文するコースを夕飯に食べ、夜景を観に出掛けて。
夜景を見るどころか、始終車内でキスしかしていなかった気もするが、それはそれ。
背景がとりあえず夜景だから善しとしよう。
「前。トモハル、あたしの花嫁姿みたいとか、言ったよね」
「うん。きっと誰よりも似合うから」
マビルは。
躊躇いがちに、トモハルの身体を押し返すと、サイドミラーを見つめる。
「呼ばないからね、絶対! あたしの意見は変えないんだからっ」
トモハルの、手を強く握った。
何度か深呼吸して、空いていた左手で頬を押さえ火照りを払うように。
「で、でも、一箇所だけ、あたしの花嫁姿を見られる場所があるのっ。・・・そこになら、居てもいいよ。い、いい? 結婚式には呼ばないんだからね! で、でも、でも」
簡単な、謎かけ。
トモハルは手を優しく握り返した、サイドミラーを見ているマビルの顔を見るべく身体を起こすと助手席側へと重心を移す。
気配を感じ、マビルは思わず硬直したのだが、意味をトモハルは解った様だ。
花嫁姿を見られる場所、マビル呼ばなくとも会場に居る為には。
・・・一つしかない。
マビルの隣で、新郎として立てば良いのだ。
「そこに、俺が居てもいいんだね?」
「ゆ、許してあげる」
「そう・・・ありがとう。・・・狭いから、今度車買い替える」
ぼそ、っと呟いてトモハルはマビルを無理やり向かせることもなく、髪に頬に、優しくキスを。
耐え切れなくなったマビルが、ゆっくりとこちらを向いたから・・・トモハルは満足そうに微笑した。
「言い忘れたけど」
「な、何?」
キスの合間に、トモハルはマビルに語りかける。
「俺。相当しつこいから、マビルが今後俺の事を嫌いになっても、もう手放さないけど覚悟できてる?」
「な、何それ!」
また、キス。
会話は一回だけ、キスをしたら次の会話が出来るのだ。
「というか、もう、遅いんだけどね。もう離さないからね」
「・・・あたしを嫌いにならせないようにすれば、覚悟なんてあたししなくてもいいのにっ」
キス。
息継ぎのタイミングが難しいマビルは、呼吸が上がっている。
「帰ろうか、マビル。・・・俺の休暇は、あと5日あるんだ」
「どこか、行ける?」
「旅行の支度するために、一度城に帰ろう」
「ん。・・・えっと」
「最初の旅行は、タラソテラピー。・・・一緒に行ってくれますか?」
車を動かす、マビルは手を握ったまま、嬉しそうに笑った。
「し、仕方ないなぁ、そんなに行きたいならマビルちゃんが連れて行ってあげる!」
けれど、言葉は裏腹な言葉。
一緒に行きたいのは、マビルの願望だ。
「来年のバレンタインディナー、予約しないと」
「・・・ホント?」
二人で食べればきっと、美味しいだろうとマビルは胸を躍らせる。
赤信号で車が停車したので、トモハルは再びキスを繰り返した。
城に戻れば、マビルをお風呂に入らせている間にトモハルは、小部屋からマビルの部屋と再び引越し。
数年ぶりに戻ってきた。
元々運ぶものなどあまりないので、簡単に完了する。
入れ替わりに入浴に出向き、戻ってきたマビルは置かれていた荷物を何気なく見ていた。
ふと、ノートを数冊発見し思わずそれを引っ張り出す。
読みたかった、トモハルの日記である。
逸る気持ちを抑えて、読むことを躊躇い何度も表紙を閉じて開いて。
きっと、自分の事が書いてあるが、もし、違っていたら。
トモハルの気持ちは解ったはずなのに、まだ、やはり少し怖い。
・・・急に知りすぎて、怖いのだ、幸せすぎて。
けれど、トモハルは。
トモハルは信じてもいいと思ったマビルは、そっとノートを開いた。
読みながら、ノートに涙を零す。
それは。
最初に出遭った頃から書き綴られており、マビルを必死にデートへ連れ出すために書いたお小遣い帳の延長線だったのだ。
『家族の洗車代、2千円。これでゲーセンに行ったりマックに行ったり出来そうだ』
マビルが死んだ時のことも書いてあった。
『俺は、最低だ。何も護れなかった』
『マビルを、返して』
そこから先はそれしか書いてない、時折、『逢いたい』と。
そして今日ミノルたちから聞いた、記憶を失う日のこと。
『必ず、思い出す。それまで待っててマビル。・・・俺の大事な子』
次に再会した時の喜び。
マビルと暮らした高校三年間の、幸せな出来事。
城が出来、一緒に居るはずなのにどんどん離れていく二人への、恐怖。
そして、あのバレンタイン。
本当は、告白する気だったトモハル。
あの日、あの教会でトモハルが話していた相手はアサギではなく、自分だったのだと。
あの日、マビルが飛び出していたらもっと早くに一緒にいられたのに。
手が震えた、早く会いたくなった。
早く戻ってきて、マビルはノートを胸に抱いたままドアの前で待つ。
「う、うわ!?」
泣きながらドアを開いたトモハルに抱きついてきたマビル、何処かで見たようなノートが握られており、トモハルは赤面した。
自分の想いを綴りすぎた、あの恥ずかしい日記を・・・読んだらしい。
「トモハル、トモハル」
名前を呼び続けるマビル、好きだと、言いたいマビル。
けれど、どうしても、言えない。
言わなくても解るが、トモハルは聞いてみたかった。
抱き上げてベッドに運ぶと、ノートを傍らに置いて何度も口付けを。
溢れる涙を嘗めながら、苦しそうに顔を歪めているマビルを落ち着かせようと必死に髪を撫でる。
好きだと、言いたいのに、言えなくて。
唇の形ではわかるが、声が出ないのだ。
「大丈夫だよ、マビル。深呼吸」
好きだ、と言えない代わりにマビルは両手を広げた。
ふっ、と笑ってマビルに近づき口づけるトモハルを抱き締めた。
少しでも衝動を与えたら、壊れてしまう金属細工を扱うようにトモハルはマビルを抱き締めた。
数時間後に、ようやく途切れ途切れ、マビルは。
「好き」
と、熱に浮かされた声で、喘ぎ声の合間にそう漏らす。
好き、大好き、愛している、ずっと一緒、これからも一緒、君だけを、あなただけを。
名前と、想いを互いに交互に言い合えば。
ミノルはコンビニ袋をぶら下げて城内を歩いていた、トモハルの部屋へ行けばもぬけの空だ。
慌てふためき走り回っている見知った姿を見つけ、ミノルは小走りで後を追う。
「何してんの?」
「ミノル様っ」
トモハルと仲の良いコックのロバート、メイド数名。
手に氷入り水差しを持っているメイド、食事のトレイを抱えているメイド・・・ひょっとして病気になったのだろうか、とミノルは思った。
その部屋は昔マビルとトモハルの部屋だった場所の前で、皆立ち尽くしている。
「三日目です」
「へ?」
ロバートの呆れ返った声に、ミノルは首を傾げた。
「休暇は確かに七日で、まだ期日は過ぎておりませんが! 三日! 三日もっ」
「何が何が何が何が」
わなわなと身体を震わしているロバートの代わりに、メイドが困ったようにミノルの腕を引っ張る。
「・・・三日間、出てこられないのですわ。トモハル様」
「死んでねぇよな?」
「食事は・・・このように運んでおります。食べられてますし、その心配はないのですが・・・」
「? 何してんの?」
ミノルも昔、買いたてのゲームを夜通しして、部屋に籠もったことがあったが。
その時、ドアが勢いよく開いた。
一斉に皆、ドアを凝視する。
黄色い悲鳴を上げたメイド、ミノルは唖然とトモハルを見た。
室内は、暗い。
カーテンを閉め切ってあるらしい、それはおいておいて。
「マビルが・・・喉渇いた、水が欲しい」
「は、はい、こちらに」
廊下に出て、陽の光を浴び眩しそうに瞳を細めたトモハル。
じっとりと汗ばむ額、上気する頬に息遣い、さらりと薄いローブを羽織り、腰を簡単に縛ってあるだけの姿。
胸元などはだけ、細身ながらも程好い筋肉の男らしい裸体が見える。
メイドは赤面しつつがくがくと震えながら、トモハルに水差しを渡したのだが、指が、触れた。
「ごふぅ!」
「ぎゃー! メイドがトモハル様の色香にやられたっ! 救護ー救護ーっ」
間近でトモハルを見たメイド、一人が卒倒し床にひっくり返る。
続続と連鎖反応で倒れていくメイド達、慌てて食事のトレイを受け止めたミノルは、トモハルとようやく視線が交差。
「あ、えーっと。遊びに来たけど・・・」
「取り込んでる・・・今度にしてくれないか、ごめん」
「ん、んん」
トレイを渡し、コンビニ袋を手渡したミノル。
トモハルは汗で濡れた髪を書き上げながら、袋の中身を見た。
ペットボトルが3本もある、おそらくミノルとトモハルと、マビルの分だろう。
そしてポッキーに、栄養ドリンク。
・・・以前、仕事で疲労が溜まっていたトモハルに、度々栄養ドリンクを届けていたミノルは、いつものようにそれを買ってきたのだ。
トモハルは、力なく笑った。
「助かったかも」
「うーぉえーっと、また、来るな」
「悪い」
ドアが、閉まる。
沈黙。
倒れているメイドと、立ち尽くしているロバートとミノル。
中で何がどうしてどうなっているのかくらい、ミノルにも判断出来た。
沈黙。
「三日?」
「三日です、現在三日目です」
「・・・な、なんて奴・・・!」
「マビル、お水。紅茶もあるよ」
「飲む・・・。今、朝? 夜? 何時?」
「知らない」
ペットボトルを手渡し、マビルを抱き起こして飲ませている間もトモハルは全身に口付けている。
ペットボトルに口をつけたが、身体がトモハルに反応するので上手く飲めないマビルはか細く半泣きの声を出した。
「飲めない・・・」
「なんとか飲んで」
愛しくて愛しくて。
一時も離れられなくて。
このまま、この状態が続けばいいのに、と。
眠くなったら、二人で抱き合って眠り。
起きたらまた、愛の言葉を、身体を重ねて。
繰り返し、繰り返し。
そうでないと、発狂しそうで。
「マビル」
「ん」
「愛してる」
「ん」
・・・二人で、一緒に居よう。
※なんか色々と危険になってきたので省略
ロバートと軽く会話をし、足を運んだご足労なのか食事を用意してもらったミノルは仕方なく引き上げることにした。
のだが、メイド達の黄色い声再び、トモハルかと思えばトビィだ。
クレシダと共に歩いてきたトビィ、ミノルを見つけると直様口を開く。
「アサギ、見なかったか?」
唐突な質問にミノルは思わず言葉を詰まらせるが、首を横に振る。
「見てない・・・っていうか、こっち、来てるわけ? 危なくないか?」
数年の調査で、アサギがこちらの世界へ足を運ぶとトランシスが暴走し天空城にて被害を出す事が発覚した。
故にアサギはこちらの世界へ容易に戻れないのだ、戻りたくとも。
「見てないなら気にするな」
「と、言われてもなぁ・・・。元カノなんだし、気になる」
「気にするな、あれはアサギの過去における抹消すべき過ちだ」
「・・・殺す」
トビィは、憤慨するミノルに目をくれず、暫し思案していたが城から出て行った。
深夜。
身体を寄せ合い眠っている二人を見下ろしている人物が、一人。
宙にふわふわと浮きながら、笑顔で二人の顔を交互に見ている。
「幸せそうなのですねー・・・」
静かに口を開いたら、トモハルが瞼を微かに動かしたので慌てて自分の口を塞ぐ。
起してしまっては可哀想だ、数分すれば、またトモハルは静かに寝息を立てて眠り始めたので安堵。
宙に浮いていたアサギは、軽く廊下に睨みをきかせると瞬間的に廊下に移動、静まり返っているそこへ降り立つ。
「・・・あまり。怒らせないほうが良いと思いますですよ」
そこにいる、”誰かに”そう警告をした。
「・・・トモハル様? お言葉ですが」
「何? 問題でもある?」
「・・・」
一週間ぶりに仕事に復帰したトモハル、早速会議なわけだがトモハルの膝の上には赤面しているマビルが乗っていた。
連れてきたのだ、急な参加なので席がなくこうしてトモハルの膝の上にいるわけだが。
あちらこちらで咳が上がる、流石に不謹慎ではなかろうか、とのことだが。
「このほうが、落ち着くんだ。他に気を取られないで済むし」
トモハルのその言葉通り、別に始終マビルを見つめているわけでも、気を取られているわけでもなくトモハルは気難しい顔で会議を普段通りこなした。
マビルが何をしているのか考えないで済む分、気が楽なのだろう。
そして手は繋いでいられる、精神安定剤になっているのかもしれない。
微笑ましい光景だ、と多々の者がマビルの在席を許したが若干数名。
・・・快く思わない者がいた。
それとてマビルは気づいたので、その会議後部屋でトモハルに相談したのだ。
次からは部屋で待つ、と。
だがトモハルは断固拒否、傍に居るように徹底。
居心地が悪いのなら、マビルの席を作らせると。
嬉しいマビルだが、自分の存在が邪魔である人物達がこの城にいることを知っていた。
その夜。
城内の物置部屋にて声が。
誰も滅多に近づかない場所、夜なら尚更である。
部屋でくぐもった声が幾つも、5名程に聴こえる。
「全く・・・トモハル様には失望です」
「本当に。あそこまで溺れられては、威厳も何もあったものではありませんな」
会話はトモハルへの不満と失望、嫌悪等。
聞いていて気分が良いものではない、5人が失脚させようと相談していた。
あれやこれや、と会話しているその物置、天井付近に空間の歪み。
5人は気づかなかった、気づかれずに侵入したその人物は静かに話を聴いていた。
数分後、トン、という音とともに地面に降り立つ。
その微かな物音、けれども明確に耳に届いた音に五人は振り返ると手にしていたランプでその音先を探す。
人の足。
徐々に上へと照らし、見覚えのある顔に皆が言葉を失った。
「夜更けに、何のご相談ですかー?」
「あ、アサギ、さ、ま・・・? まさかっ」
悲鳴に近い声を出した5人の目の前で、アサギはにっこりと笑うと両手を一回叩く。
パン!
響いたそれ、空気の振動が5人に伝わり、同時にその場に倒れ込んだ。
低く呻きながら倒れている五人の身体から、何かが、抜け出る。
「おいで、セントラヴァーズ」
抜け出たそれを、一気に剣で真横に切り裂いたアサギは唇を噛んだ。
「アイとタイの魔力が、全部浄化出来てない・・・」
悔しそうに眉を歪める、剣をまだ構えたままアサギは静かに耳を澄ませている。
・・・おかえりなさい、破壊の姫君・・・
聴こえた声に、剣を振り。
「アサギ=レイという名前なのです」
鋭く言い放つと左手で胸の前に素早く印を結ぶ、簡易だが全力の光の浄化の魔法だった。
消え行く気配に肩の荷を降ろすと、倒れている五人の耳元にそっと耳打ち。
「これからも、トモハルとマビルをよろしくなのですよ。・・・大丈夫、少しの疑心につけこまれただけなのです」
アサギは、ふわりと宙に浮くとそのまま微笑して消えた。
家に戻ればギルザがベッドの中で本を読んでいる、起きていたらしい。
「・・・次は。オレも連れて行くように」
「はい、なのです」
苦笑いしてアサギはそっと、隣に潜り込むとギルザの腰に腕をまわし、瞳を閉じた。
頭を撫でつつ、ギルザは数分読書をしていたが、アサギの寝息が聞こえたので枕元のランプを消すと布団に潜り同じ様に眠りにつく。
外では、トビィとクレシダ、デズデモーナにオフィーリアが部屋の電気が消えたことを見計らい、溜息を吐くとそのまま飛び立っていった。
つづく。
二人を引き離したミノル、赤面してマビルは俯いていたがトイプードルを店員に返す。
「お前ら、自重しろ。つーか、まさかこんなとこで会うとは思わなかった」
顔を引き攣らせているミノルの隣で、ココが二人に会釈。
「こんにちは。今からランチ食べるけど、一緒に行く?」
当然の遭遇にマビルはトモハルの背に軽く隠れた、ミノルは解るが、ココはあまり親しくない。
結構人見知りが激しいのだ。
女に対しては、特に。
「苺のデザートだらけの、ブッフェに行くんだ」
「苺・・・」
マビルが興味深そうに呟いたので、不本意ながらトモハルは同意する。
本当は、二人で食べたかったのだろう。
四人でホテルのスカイラウンジへ出向いた、なるほど、女性客で溢れ返っているのは苺のせいか。
ブッフェ形式にあまり慣れていないマビルを、優しくサポートしながら、トモハルは一周して席に着くと食べ始める。
軽い緊張で口数少ないマビルだが、三人の会話に聞き耳を立てた。
三人、というか二人だ。
トモハルは気を使ってだろう、マビルの隣で静かに食事している。
「そーいえばさ、お前らホント仲いいのな」
「ね、変わってないよねー」
呆れ返っているミノルに、羨ましそうにマビルを見ているココ。
「憶えてる? アサギを救う為にさ、みんなの記憶を消す時。トモハルがさぁ『俺はアサギよりマビルが大事だから、嫌だー!』とか叫んで強力しなかったんだよなー。あたいさ、あれ見たときトモハルって凄い男だな、って思ってたよ」
「な、何それ?」
ココの発言にマビルは思わずフォークを皿に置いて、ココに話しかけた。
平然と隣でトモハルは食事を続けているので、ココはミノルと目配せして語り出した。
「知ってるかな・・・。アサギがね、ちょっと殻に閉じこもってた時があったんだよな。殻から出てこなくて、アサギが心配だったから皆で助ける方法を考えた。
その唯一の方法が、勇者であった記憶を失くす事。
辛かった記憶を消去するしか、手立てがなくてさぁ。で、他のミノルやトモハル達も記憶を消されることになったんだ」
「そ。で、俺達は意見一致で記憶を失くす魔法をかけてもらうことにしたんだけど、トモハルが逃亡したんだよ。
マビルを忘れたくないから、って言ってさ。アサギが死ぬか死なないか、の時だろ、皆で追いかけた、説得した。・・・でも、トモハルは」
一人で食事しているトモハルを、三人が見つめる。
視線を感じ、水を飲みながらミノルを軽く睨みつけ。
「俺が好きなのはマビルだ、アサギじゃない。どうしてマビルを忘れなきゃいけなかったんだろ。
ミノルだって、『アサギを救うためには記憶を失くして欲しい、ココのことは忘れてくれ』って言われたら、拒否するだろ」
トモハルの横顔を見つめながら、激しい動悸に襲われたマビル。
「・・・アサギを選ぶかも、俺ほげあぅえいいいいっ」
アサギの名が出た瞬間に、思い切りココがミノルの頬を捻り上げた、悲鳴を上げるミノル。
苦笑いしてトモハルは、マビルを見た。
マビルは。
思わず、そっと、控え目にだが、トモハルの腕を掴んだ。
言葉は出なかった、けれどとても嬉しく、信じられないことだった。
生きているアサギを救う事よりも、死んでいてもう会えないマビルを忘れないことを選んでいたトモハルに。
・・・嬉しすぎて、いや、アサギは助けて欲しかったが、嬉しくて、嬉しくて。
思わず、泣きそうになる。
震えながら掴んだマビルの手を、そっと上から握り、トモハルは小さく笑う。
「・・・居辛い」
「・・・らぶらぁぶだ」
赤面し俯いたままのマビル、それを優しく見下ろしているトモハル。
ミノルとココはコーヒーをまったりとすすりながら、言葉をかけられなくて暫しそこに座ったまま。
また、苺を食べ始めた。
することがなかったので。
ミノル達と別れて、適当に歩いていたトモハルとマビル。
マビルは化粧直しに入ったので、トモハルは一人、外で待っていた。
鏡に向かって念入りに化粧を治していたマビルの後ろを、二人の女性が通り過ぎ、トイレへと。
「ねぇ、外に居た男の子、超かっこよくなかった?」
「あぁ、あの細身の子。うん。いいよね~」
グロスを塗っていたマビル、途中でやめて慌てて外に飛び出すとトモハルを探す。
トモハルは、壁にもたれて待っていたのだが。
よく見たらその向かい側に居る女性二人もどうもトモハルを見ているらしく、顔を赤らめて話をしている。
マビルは、青褪めた。
近寄ってみれば、トモハルは直ぐに気づいて顔を上げると両手を広げたが。
「だめ、駄目なの、トモハル!」
「え、え、え、え?」
「こ、今度から一緒にトイレにも入って!」
「・・・な、何事!?」
「ひ、一人になったら駄目なのっ」
「お、落ち着いてマビル、何、何、ゴキブリに襲われたとかそんな感じ?」
「ち、違うのーっ」
何が言いたいのか全く解らないマビルに、流石にトモハルも困り果てた。
だが、必死に何か言いたそうだ。
そこを、先程化粧直し中に後ろを通り過ぎた女性二人が、戻ってくる。
「やっぱり彼女いるしー」
「だろうねー」
その会話を聞き、なんとなくトモハルは理解したので。
マビルを抱き締めると、そのまま口付けを。
もがいて赤面したマビルだが、すぐに大人しくなった。
・・・安心したらしい、ようやくトモハルにもマビルの言いたいことが解ってきたのだ。
嬉しい事に、マビルは心配になったらしい。
それは、嫉妬で不安で、トモハルを好きだからこそ、起こる感情だ。
「さぁ、行こうかマビル」
手を繋ぐ。
カップルシートで映画を観て、二人で注文するコースを夕飯に食べ、夜景を観に出掛けて。
夜景を見るどころか、始終車内でキスしかしていなかった気もするが、それはそれ。
背景がとりあえず夜景だから善しとしよう。
「前。トモハル、あたしの花嫁姿みたいとか、言ったよね」
「うん。きっと誰よりも似合うから」
マビルは。
躊躇いがちに、トモハルの身体を押し返すと、サイドミラーを見つめる。
「呼ばないからね、絶対! あたしの意見は変えないんだからっ」
トモハルの、手を強く握った。
何度か深呼吸して、空いていた左手で頬を押さえ火照りを払うように。
「で、でも、一箇所だけ、あたしの花嫁姿を見られる場所があるのっ。・・・そこになら、居てもいいよ。い、いい? 結婚式には呼ばないんだからね! で、でも、でも」
簡単な、謎かけ。
トモハルは手を優しく握り返した、サイドミラーを見ているマビルの顔を見るべく身体を起こすと助手席側へと重心を移す。
気配を感じ、マビルは思わず硬直したのだが、意味をトモハルは解った様だ。
花嫁姿を見られる場所、マビル呼ばなくとも会場に居る為には。
・・・一つしかない。
マビルの隣で、新郎として立てば良いのだ。
「そこに、俺が居てもいいんだね?」
「ゆ、許してあげる」
「そう・・・ありがとう。・・・狭いから、今度車買い替える」
ぼそ、っと呟いてトモハルはマビルを無理やり向かせることもなく、髪に頬に、優しくキスを。
耐え切れなくなったマビルが、ゆっくりとこちらを向いたから・・・トモハルは満足そうに微笑した。
「言い忘れたけど」
「な、何?」
キスの合間に、トモハルはマビルに語りかける。
「俺。相当しつこいから、マビルが今後俺の事を嫌いになっても、もう手放さないけど覚悟できてる?」
「な、何それ!」
また、キス。
会話は一回だけ、キスをしたら次の会話が出来るのだ。
「というか、もう、遅いんだけどね。もう離さないからね」
「・・・あたしを嫌いにならせないようにすれば、覚悟なんてあたししなくてもいいのにっ」
キス。
息継ぎのタイミングが難しいマビルは、呼吸が上がっている。
「帰ろうか、マビル。・・・俺の休暇は、あと5日あるんだ」
「どこか、行ける?」
「旅行の支度するために、一度城に帰ろう」
「ん。・・・えっと」
「最初の旅行は、タラソテラピー。・・・一緒に行ってくれますか?」
車を動かす、マビルは手を握ったまま、嬉しそうに笑った。
「し、仕方ないなぁ、そんなに行きたいならマビルちゃんが連れて行ってあげる!」
けれど、言葉は裏腹な言葉。
一緒に行きたいのは、マビルの願望だ。
「来年のバレンタインディナー、予約しないと」
「・・・ホント?」
二人で食べればきっと、美味しいだろうとマビルは胸を躍らせる。
赤信号で車が停車したので、トモハルは再びキスを繰り返した。
城に戻れば、マビルをお風呂に入らせている間にトモハルは、小部屋からマビルの部屋と再び引越し。
数年ぶりに戻ってきた。
元々運ぶものなどあまりないので、簡単に完了する。
入れ替わりに入浴に出向き、戻ってきたマビルは置かれていた荷物を何気なく見ていた。
ふと、ノートを数冊発見し思わずそれを引っ張り出す。
読みたかった、トモハルの日記である。
逸る気持ちを抑えて、読むことを躊躇い何度も表紙を閉じて開いて。
きっと、自分の事が書いてあるが、もし、違っていたら。
トモハルの気持ちは解ったはずなのに、まだ、やはり少し怖い。
・・・急に知りすぎて、怖いのだ、幸せすぎて。
けれど、トモハルは。
トモハルは信じてもいいと思ったマビルは、そっとノートを開いた。
読みながら、ノートに涙を零す。
それは。
最初に出遭った頃から書き綴られており、マビルを必死にデートへ連れ出すために書いたお小遣い帳の延長線だったのだ。
『家族の洗車代、2千円。これでゲーセンに行ったりマックに行ったり出来そうだ』
マビルが死んだ時のことも書いてあった。
『俺は、最低だ。何も護れなかった』
『マビルを、返して』
そこから先はそれしか書いてない、時折、『逢いたい』と。
そして今日ミノルたちから聞いた、記憶を失う日のこと。
『必ず、思い出す。それまで待っててマビル。・・・俺の大事な子』
次に再会した時の喜び。
マビルと暮らした高校三年間の、幸せな出来事。
城が出来、一緒に居るはずなのにどんどん離れていく二人への、恐怖。
そして、あのバレンタイン。
本当は、告白する気だったトモハル。
あの日、あの教会でトモハルが話していた相手はアサギではなく、自分だったのだと。
あの日、マビルが飛び出していたらもっと早くに一緒にいられたのに。
手が震えた、早く会いたくなった。
早く戻ってきて、マビルはノートを胸に抱いたままドアの前で待つ。
「う、うわ!?」
泣きながらドアを開いたトモハルに抱きついてきたマビル、何処かで見たようなノートが握られており、トモハルは赤面した。
自分の想いを綴りすぎた、あの恥ずかしい日記を・・・読んだらしい。
「トモハル、トモハル」
名前を呼び続けるマビル、好きだと、言いたいマビル。
けれど、どうしても、言えない。
言わなくても解るが、トモハルは聞いてみたかった。
抱き上げてベッドに運ぶと、ノートを傍らに置いて何度も口付けを。
溢れる涙を嘗めながら、苦しそうに顔を歪めているマビルを落ち着かせようと必死に髪を撫でる。
好きだと、言いたいのに、言えなくて。
唇の形ではわかるが、声が出ないのだ。
「大丈夫だよ、マビル。深呼吸」
好きだ、と言えない代わりにマビルは両手を広げた。
ふっ、と笑ってマビルに近づき口づけるトモハルを抱き締めた。
少しでも衝動を与えたら、壊れてしまう金属細工を扱うようにトモハルはマビルを抱き締めた。
数時間後に、ようやく途切れ途切れ、マビルは。
「好き」
と、熱に浮かされた声で、喘ぎ声の合間にそう漏らす。
好き、大好き、愛している、ずっと一緒、これからも一緒、君だけを、あなただけを。
名前と、想いを互いに交互に言い合えば。
ミノルはコンビニ袋をぶら下げて城内を歩いていた、トモハルの部屋へ行けばもぬけの空だ。
慌てふためき走り回っている見知った姿を見つけ、ミノルは小走りで後を追う。
「何してんの?」
「ミノル様っ」
トモハルと仲の良いコックのロバート、メイド数名。
手に氷入り水差しを持っているメイド、食事のトレイを抱えているメイド・・・ひょっとして病気になったのだろうか、とミノルは思った。
その部屋は昔マビルとトモハルの部屋だった場所の前で、皆立ち尽くしている。
「三日目です」
「へ?」
ロバートの呆れ返った声に、ミノルは首を傾げた。
「休暇は確かに七日で、まだ期日は過ぎておりませんが! 三日! 三日もっ」
「何が何が何が何が」
わなわなと身体を震わしているロバートの代わりに、メイドが困ったようにミノルの腕を引っ張る。
「・・・三日間、出てこられないのですわ。トモハル様」
「死んでねぇよな?」
「食事は・・・このように運んでおります。食べられてますし、その心配はないのですが・・・」
「? 何してんの?」
ミノルも昔、買いたてのゲームを夜通しして、部屋に籠もったことがあったが。
その時、ドアが勢いよく開いた。
一斉に皆、ドアを凝視する。
黄色い悲鳴を上げたメイド、ミノルは唖然とトモハルを見た。
室内は、暗い。
カーテンを閉め切ってあるらしい、それはおいておいて。
「マビルが・・・喉渇いた、水が欲しい」
「は、はい、こちらに」
廊下に出て、陽の光を浴び眩しそうに瞳を細めたトモハル。
じっとりと汗ばむ額、上気する頬に息遣い、さらりと薄いローブを羽織り、腰を簡単に縛ってあるだけの姿。
胸元などはだけ、細身ながらも程好い筋肉の男らしい裸体が見える。
メイドは赤面しつつがくがくと震えながら、トモハルに水差しを渡したのだが、指が、触れた。
「ごふぅ!」
「ぎゃー! メイドがトモハル様の色香にやられたっ! 救護ー救護ーっ」
間近でトモハルを見たメイド、一人が卒倒し床にひっくり返る。
続続と連鎖反応で倒れていくメイド達、慌てて食事のトレイを受け止めたミノルは、トモハルとようやく視線が交差。
「あ、えーっと。遊びに来たけど・・・」
「取り込んでる・・・今度にしてくれないか、ごめん」
「ん、んん」
トレイを渡し、コンビニ袋を手渡したミノル。
トモハルは汗で濡れた髪を書き上げながら、袋の中身を見た。
ペットボトルが3本もある、おそらくミノルとトモハルと、マビルの分だろう。
そしてポッキーに、栄養ドリンク。
・・・以前、仕事で疲労が溜まっていたトモハルに、度々栄養ドリンクを届けていたミノルは、いつものようにそれを買ってきたのだ。
トモハルは、力なく笑った。
「助かったかも」
「うーぉえーっと、また、来るな」
「悪い」
ドアが、閉まる。
沈黙。
倒れているメイドと、立ち尽くしているロバートとミノル。
中で何がどうしてどうなっているのかくらい、ミノルにも判断出来た。
沈黙。
「三日?」
「三日です、現在三日目です」
「・・・な、なんて奴・・・!」
「マビル、お水。紅茶もあるよ」
「飲む・・・。今、朝? 夜? 何時?」
「知らない」
ペットボトルを手渡し、マビルを抱き起こして飲ませている間もトモハルは全身に口付けている。
ペットボトルに口をつけたが、身体がトモハルに反応するので上手く飲めないマビルはか細く半泣きの声を出した。
「飲めない・・・」
「なんとか飲んで」
愛しくて愛しくて。
一時も離れられなくて。
このまま、この状態が続けばいいのに、と。
眠くなったら、二人で抱き合って眠り。
起きたらまた、愛の言葉を、身体を重ねて。
繰り返し、繰り返し。
そうでないと、発狂しそうで。
「マビル」
「ん」
「愛してる」
「ん」
・・・二人で、一緒に居よう。
※なんか色々と危険になってきたので省略
ロバートと軽く会話をし、足を運んだご足労なのか食事を用意してもらったミノルは仕方なく引き上げることにした。
のだが、メイド達の黄色い声再び、トモハルかと思えばトビィだ。
クレシダと共に歩いてきたトビィ、ミノルを見つけると直様口を開く。
「アサギ、見なかったか?」
唐突な質問にミノルは思わず言葉を詰まらせるが、首を横に振る。
「見てない・・・っていうか、こっち、来てるわけ? 危なくないか?」
数年の調査で、アサギがこちらの世界へ足を運ぶとトランシスが暴走し天空城にて被害を出す事が発覚した。
故にアサギはこちらの世界へ容易に戻れないのだ、戻りたくとも。
「見てないなら気にするな」
「と、言われてもなぁ・・・。元カノなんだし、気になる」
「気にするな、あれはアサギの過去における抹消すべき過ちだ」
「・・・殺す」
トビィは、憤慨するミノルに目をくれず、暫し思案していたが城から出て行った。
深夜。
身体を寄せ合い眠っている二人を見下ろしている人物が、一人。
宙にふわふわと浮きながら、笑顔で二人の顔を交互に見ている。
「幸せそうなのですねー・・・」
静かに口を開いたら、トモハルが瞼を微かに動かしたので慌てて自分の口を塞ぐ。
起してしまっては可哀想だ、数分すれば、またトモハルは静かに寝息を立てて眠り始めたので安堵。
宙に浮いていたアサギは、軽く廊下に睨みをきかせると瞬間的に廊下に移動、静まり返っているそこへ降り立つ。
「・・・あまり。怒らせないほうが良いと思いますですよ」
そこにいる、”誰かに”そう警告をした。
「・・・トモハル様? お言葉ですが」
「何? 問題でもある?」
「・・・」
一週間ぶりに仕事に復帰したトモハル、早速会議なわけだがトモハルの膝の上には赤面しているマビルが乗っていた。
連れてきたのだ、急な参加なので席がなくこうしてトモハルの膝の上にいるわけだが。
あちらこちらで咳が上がる、流石に不謹慎ではなかろうか、とのことだが。
「このほうが、落ち着くんだ。他に気を取られないで済むし」
トモハルのその言葉通り、別に始終マビルを見つめているわけでも、気を取られているわけでもなくトモハルは気難しい顔で会議を普段通りこなした。
マビルが何をしているのか考えないで済む分、気が楽なのだろう。
そして手は繋いでいられる、精神安定剤になっているのかもしれない。
微笑ましい光景だ、と多々の者がマビルの在席を許したが若干数名。
・・・快く思わない者がいた。
それとてマビルは気づいたので、その会議後部屋でトモハルに相談したのだ。
次からは部屋で待つ、と。
だがトモハルは断固拒否、傍に居るように徹底。
居心地が悪いのなら、マビルの席を作らせると。
嬉しいマビルだが、自分の存在が邪魔である人物達がこの城にいることを知っていた。
その夜。
城内の物置部屋にて声が。
誰も滅多に近づかない場所、夜なら尚更である。
部屋でくぐもった声が幾つも、5名程に聴こえる。
「全く・・・トモハル様には失望です」
「本当に。あそこまで溺れられては、威厳も何もあったものではありませんな」
会話はトモハルへの不満と失望、嫌悪等。
聞いていて気分が良いものではない、5人が失脚させようと相談していた。
あれやこれや、と会話しているその物置、天井付近に空間の歪み。
5人は気づかなかった、気づかれずに侵入したその人物は静かに話を聴いていた。
数分後、トン、という音とともに地面に降り立つ。
その微かな物音、けれども明確に耳に届いた音に五人は振り返ると手にしていたランプでその音先を探す。
人の足。
徐々に上へと照らし、見覚えのある顔に皆が言葉を失った。
「夜更けに、何のご相談ですかー?」
「あ、アサギ、さ、ま・・・? まさかっ」
悲鳴に近い声を出した5人の目の前で、アサギはにっこりと笑うと両手を一回叩く。
パン!
響いたそれ、空気の振動が5人に伝わり、同時にその場に倒れ込んだ。
低く呻きながら倒れている五人の身体から、何かが、抜け出る。
「おいで、セントラヴァーズ」
抜け出たそれを、一気に剣で真横に切り裂いたアサギは唇を噛んだ。
「アイとタイの魔力が、全部浄化出来てない・・・」
悔しそうに眉を歪める、剣をまだ構えたままアサギは静かに耳を澄ませている。
・・・おかえりなさい、破壊の姫君・・・
聴こえた声に、剣を振り。
「アサギ=レイという名前なのです」
鋭く言い放つと左手で胸の前に素早く印を結ぶ、簡易だが全力の光の浄化の魔法だった。
消え行く気配に肩の荷を降ろすと、倒れている五人の耳元にそっと耳打ち。
「これからも、トモハルとマビルをよろしくなのですよ。・・・大丈夫、少しの疑心につけこまれただけなのです」
アサギは、ふわりと宙に浮くとそのまま微笑して消えた。
家に戻ればギルザがベッドの中で本を読んでいる、起きていたらしい。
「・・・次は。オレも連れて行くように」
「はい、なのです」
苦笑いしてアサギはそっと、隣に潜り込むとギルザの腰に腕をまわし、瞳を閉じた。
頭を撫でつつ、ギルザは数分読書をしていたが、アサギの寝息が聞こえたので枕元のランプを消すと布団に潜り同じ様に眠りにつく。
外では、トビィとクレシダ、デズデモーナにオフィーリアが部屋の電気が消えたことを見計らい、溜息を吐くとそのまま飛び立っていった。
つづく。
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