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トモハル マツシタ
マビル タガミ(マツシタ)
ミノル カドワキ
ケンイチ オオイシ
ダイキ ナカムラ
ココ・ヴァディヴァ
トビィ・サング・レジョン
アサギ=レイ
マジョルカ・S・マツシタ
他・シポラ城下町の皆さん等
というわけで、なんかケータイだとエラーになるらしいので、移動して様子見。
・・・レスポンスが不正って何ですか(倒)。
マビルがESへ行かない場合は、このようにしてトモハルは誤解を解いたので、マジョルカという娘が二人の間に授かれました。
ので、途中まではトモマビと一緒ですー。
メイド達が騒いでいた、マビルは呆れ顔で近づくと壁にもたれて聞いている。
話の内容は、トモハルだ。
マビルには全く理解が出来ないが、本当に人気があるらしい。
「ねぇ」
思わず声をかけてみる、メイド達は一斉に振り返るとマビルを見つめた。
「あいつの何がそんなにいいわけ?」
メイド達は顔を見合わせて、くすくす、笑っている。
それが勘に障った、『どうしてわからないの?』なんだかそう言われている様で。
「聞き返しますけど、何がそんなにお嫌いです?」
言われて言葉に一瞬詰まったが、憮然とした態度で一言。
「全部」
言ったマビルにメイド達はやはり、くすくす笑い続ける。
「何がおかしいわけ?」
腹が立った、壁を叩いて大声を出してみたが、メイド達は笑うばかり。
「全部お嫌いなら、この城にいなくてもいいのに」
「便利だから、使ってやっているだけだけど。お金はあるしね」
「では、お金だけ仕送りしてもらえばよろしいのでは?」
「あったかいベッドもあるし、広い部屋もあるし」
「お願いすれば、どこにでも、いくつでも別荘くらい買ってもらえますよ」
言葉に、詰まった。
確かにそうなのだ、お金だけ適当に毎月巨額貰えればそれでいいじゃないか。
・・・言葉に詰まったので、話題を逸らすことにした。
「あんな、誰にでもへらへらしてる男にきゃーきゃーわめく、あんた達の気が知れない」
きょとん、とメイド達顔を見合わせてやはり・・・くすくす笑っている。
青筋たてて、マビルは噛み付くように身を乗り出し、机を叩いた。
馬鹿にされている感、たっぷりなこの待遇。
「あんなの彼氏にしたいと思う? あたしは、絶対嫌!」
「え、私は彼氏にしたいです」
「えぇ、私も」
皆口々にそう言うので、マビルは流石に拍子抜けした。
洗脳されてないか? そう思って睨みつけるが。
「あれ、皆揃ってどうしたの?」
トモハルだ、手をひらひらさせて部屋に入ってきたので、マビルはそっぽを向き、その場を去ろうとした。
くい、と身体が後ろへと、すり抜ける腕をトモハルに捕まれたらしい。
驚いて振り払おうとした、が不意に瞳を見つめられて、一言。
「マビル、好きだよ」
また、これだ。
マビルは思い切り腕を振り払った、振り払ってそのまま怒涛の勢いで立ち去る。
後ろから、声が聴こえた。
「うん、みんな今日も可愛いね」
唇を噛み締めて走り去る、あんな、女とみれば誰にでも可愛いを連呼する男の何がいいんだろう・・・そう思って。
騒がれたいだけの優男、ナンパ師、ろくでもない。
その夜、またメイド達がお菓子つまんで会話中だったので、こっそり混ざってみた。
今もトモハルの話題だ、何が良いのか。
「ねぇ。誰にでも可愛いっていう男の、何がいいの?」
ぼそり、と呟く、メイド達は耳元で何か顰めきあっていたので、マビルは非常に居心地が悪く。
「可愛い、って言われると私は嬉しいですけど。また可愛いって言われるように努力したくなります」
「私は嬉しくはないけれど、女の子扱いされてるんだ、ってちょっと気分は良いかな?」
「あれは、ただの挨拶でしょう?
城へ初めて来て緊張で身体が強張っていたらトモハル様『ようこそ、可愛いメイドさん、よろしくね』って、気さくに話してくださいました。
最初、私だけ特別なのかと思って、実は期待してしまったのですけれど・・・見てたら、気づいたんです」
ざわざわ。
メイド達の話は続くがマビルは半ば興味なさそうに聞いていた、自分と意見の合う人物がいないのだ。
「私にだけ言って欲しいって思いましたけどねー」
「うん、思うよねー。でも」
「うん、でもねぇ」
ほらみろ、やっぱりそうなんだとマビルは鼻をならして聞き耳を立てる。
「あんな露骨に比較されたら、もうねぇ」
「ホントにねー」
比較? マビルは思わず声を出した。
一斉にメイドの視線がマビルに集中するので、思わず尻込み。
「いつも、笑っておどけてらっしゃいますけど、お一人だけ。
真剣に見つめている人がいらっしゃいます」
居たっけ、そんな人? マビルは首を傾げた・・・というか、捻った。
「”可愛い”は誰にでも言いますよ、トモハル様の口癖みたいなものですから。
でも、”好き””愛している”の言葉は、お一人にしか告げられていません」
「えぇ。お一人にだけ、確実に」
そうか? マビル、首を捻って低く唸って頭を抱える。
「見てて、解られませんか?」
「私達にはよぉく、解るんですけどねぇ・・・」
「なので、思うんです」
くすくす笑うメイド達は、口を揃えてこう言った。
「意地悪してます、可愛い可愛い国王様が一人の女性の物になって欲しくなくて。
きっと、トモハル様はその人を手に入れたら、私達に可愛いも言ってくれなくなりますから」
「今のままなら、少しだけ、夢を見られますから”みんな平等に”」
頭を抱えているマビルに、一人のメイドがそっと近寄って耳元で囁いた。
「私達の言うトモハル様への好き、は。
トモハル様がその人へ言う「好き」と、感情の種類が違うのですよ」
「お一人にだけ、他の感情を表されますから、本当に解り易いです」
「最優先ですしね、姿を見つけると」
意味が、解らないマビルはそのまま顔を顰めて部屋を出た。
お菓子を食べながら、歩いて部屋へと。
みんな同じにしか見えないが・・・、マビルは部屋に戻るとベッドに転がる。
”お一人”が、誰かさっぱり分からないが、ふと、思った。
好きと、言われている人物は・・・大勢居るだろう。
自分も含め、他のメイドもそのはずだ。
翌朝、マビルはいつものように庭に居た。
庭に転がって昼寝中、昼間はベッドより断然外だろう。
一時間位経過しただろうか、起きてみればブランケットがかけられていた。
心地良く包まって寝返りをうったら何かにぶつかる、思わずゆっくり瞳を開く。
「あ、ごめん。起しちゃったね」
トモハルがえへら、と笑って隣に座っていた。
「勝手に人の寝顔見ないでくれる? 気分最悪」
「うん、ごめんね。マビルの寝顔、可愛いから好きなんだ」
「キモい、もういい、部屋で寝る」
立ち上がる、ブランケットをその場に残して寝起きで機嫌が悪いのも手伝って。
「マビル、あんまり庭で寝たら駄目だよ。城の中だけど・・・危ないから」
「あぁ、ホントに。あんたみたいな変質者がいたら、うかうか寝てられないよね」
「うん、だから。気をつけるんだよ」
「あんたが気をつければっ」
「大丈夫だよ、見てるだけだから」
「だーかーらー! それがキモいのっ」
「あはは、また、嫌われちゃったね」
苛々して、マビルは踵を返してトモハルの元へ戻る、思い切り右手を振り上げた。
パシーン、良い音が響き渡った、当然だ、渾身の一撃。
トモハルの頬にくっきり赤い手形、呼吸荒くマビルは足も踏みつけて再度、平手打ち。
「あんた、人をイラつかせる天才」
「・・・ごめんな。解ってはいるんだ、けどさ。
好きだから、やっぱり・・・傍には居たいと思って。
その・・・うん、ごめん」
えへら、と笑ってそう言うからやはりマビルは平手打ちをした、連続で。
「あんたそんなんだから、彼女の一人も出来ないんだよっ、ばっかじゃないのっ。
好き好き言ってりゃ、誰でもホイホイ寄って来るって思ったら、大間違いだ! というか、あんたの脳内では女全員彼女なのかもしれないけどねっ」
「彼女が欲しいわけじゃないから、別にできなくてもいいよ。
俺は今でもマビルが好きなんだし、彼女って好きな子になってもらうもんだと思ってる。
一人の子が、俺のこと好きで傍に居てくれればそれで十分だ」
情けなく笑って、俯いたトモハル。
歯軋りしながらマビルは腕を振り上げた、殴るべく。
トモハルならばそれを簡単に避けれたはずだ、だが動くことなく、真正面から強打を受けた。
何度も何度もマビルは殴りつけた、好き好き言う目の前の軽々しい男が、憎くて、憎くて。
「なっさけないっ! あんたそれでも男!? 良い様に殴られてんじゃないっ」
「マビル、イラつくから殴りたいんだろ? 好きにすればいい」
「キモっ! あんたドM!?」
「それでマビルの苛々が収まるなら、喜んで」
「うっわ、最悪!」
思わず鳥肌、肌を擦って温めながら侮蔑の視線を投げつけた。
微かに微笑んで、トモハルは突っ立っている。
「・・・それでも、好きなものは好きなんだ。こればっかりは・・・直ぐに変えられないよ」
「殴られるのが好きって、どんだけあんた変態なの!?」
「いや、殴られるのが好きなんじゃなくて。・・・その・・・はは、ホント、駄目だね俺」
「いーやーきもーいっ、もう、この城あんたの代で終わりだよっ! 死んじゃえっ」
「死んだら。マビルのこと忘れられるかな」
不意にトモハルが真顔になって小さくそう、それでもはっきりと呟いたからマビルは思わず振り上げた手を止めた。
思いの外、真剣な表情だったから、思わず息を飲みこんだ。
「無理、だろうな。忘れたくないし、俺。・・・嫌われてもうざがられてもさ、マビルの傍にいたいと思うし。
マビルが他の誰かを好きでもさ、幸せそうな姿を見ていられればそれでいいと思うし。
・・・本当に、ごめんな」
トモハルの言っている意味が解らなくて、マビルは口を開けて唖然と立ち尽くしたまま。
メイドの言葉を何個か思い出したが、上手くまとまらない。
「好きに、なってごめんね」
そっと、トモハルの腕が伸びて軽くだがマビルを引き寄せて抱き締める。
硬直してしばしマビルは呆然と、腕の中に居た。
遠慮がちに抱き締められているので、振りほどけるはずだ。
けれど、何故か出来なくて、言葉も出なくて、そのまま。
「誰にでも、好きって言うなっ!」
「俺マビルにしか言ってないよ」
「嘘つくなっ、最初おねーちゃんで、あたしでメイドで、あんたころころ心変わりしすぎだよっ」
「言ってないよ、マビルにしか言ってない」
「だーもうっ!」
トモハルを突き飛ばして仁王立ちしたマビルは、踏み潰したい衝動に駆られた。
とにかく目の前のトモハルに対して、怒りしか沸き起こってこないのだ。
けれど、怯える様子もなくトモハルは真剣に、微かに寂しそうな視線で見つめてくる。
「俺は、マビルにしか好きだと言ってない」
「だからーっ」
「聞けよっ!」
一瞬のマビルの隙、振り回す腕を掴んで、そのままトモハルは引き寄せ顎を掴む。
二人の視線が交差した途端にマビルの背筋に冷や汗、トモハルの態度が怖くて思わず息をするのも忘れた。
「そこだけは、訂正しろ。そこだけは譲れない」
「ちょ、苦しっ」
「嫌いで構わない、でも、俺がマビルの事を好きな気持ちだけは、絶対に誰にも譲らない。否定されたくもないね」
「ちょ、っ、っつ!」
マビルの顔が歪む、息が出来なくて、涙が目の端に微かに滲んだ。
「あ、ごめん・・・」
ようやく冷静になったのか慌ててトモハルは手を離し、マビルの背を優しく擦る。
マビルが知っている普段のトモハルだ、躊躇いながら右手で背を軽くさすっているだけ。
「ご、ごめん」
マビルは何も言わずに大人しく擦られていた、むせながら、地面を見つめて。
思いの外苦しかったので、今腕を振り上げる気力もないし、トモハルの視線が怖かった。
「・・・それでも、マビルのことが好きなんだ。誰よりも大事だし、誰よりも傍に居たいし。
誰よりも、幸せになってもらいたい。相手が俺でなくても、構わないから。
決して、マビルの邪魔はしない。だから、これだけは譲れないんだ。
この気持ちは変わらないんだ、申し訳ないとは思うけど。でも・・・好きなんだよ」
大人しく聴いたが、だからどうした、と反論したくなった。
無視してマビルはむせている、やがて徐々に手が離れてトモハルはそのまま「ごめんね」の一言を残してブランケットを拾い上げると立ち去ってしまった。
希に、咳が出た。
マビルは膝を抱えて蹲ると、一人でその場で息を整える。
トモハルは、嫌いだ。
あんなに一緒に居てくれたのに、居なくなったから嫌いだ。
優しすぎるから嫌いだ、誰にでも同じ様に接するから嫌いだ。
数日後、例の如く食堂にて。
紙と睨めっこして紅茶を飲んでいるトモハルを見かけたのでマビルは、そぉっと近寄り覗き込む。
ようやくトモハルが気づいて、苦笑いで紙を手で隠したので面白くなさそうにマビルは唇を尖らせた。
「それ、何?」
「あ、あぁ、これは・・・。うん・・・」
困惑気味に写真や資料を渋々見せるトモハル、何かと思えばいつかマビルが一人で訪れた綺麗な教会だ。
「俺がさ、設計したんだ。街に作ったのはいいんだけど・・・」
「へぇ」
知らなかった、思わず目を丸くするマビル。
「・・・利用者がいないんだよね。収益がさ・・・ないんだ。才能ないんだろうなぁ」
「ちょっと待って、ここ、なんなの?」
写真を観ながらマビルは率直に問う、収益、という言葉がひっかかる。
苦笑いしながら、紅茶をマビルに煎れたトモハルはテーブルに突っ伏し、温くなったリンゴを齧りながら。
「結婚式場なんだ、それ」
「・・・」
「地球のツレがさ、結婚する時に色々資料を貸してもらって、真似して俺が設計したんだけど。
ほら、これがチラシね・・・。
チラシを貰っていくカップルは多いんだけど、予約がないんだ。
オプションとかもさ、凝って、ほら・・・女の子が喜びそうだろ?
チラシだけ飛ぶようになくなっても、実際利用者がないから、ここだけ赤字なんだよね・・・。
これで街を潤すわけじゃないけど、イイ線いくと思って過信したんだろうな。
俺の勝手な計画のせいで、財政が。
仕方ないから、一般解放ついでに偶に聖歌隊呼んでコンサートは行ってるんだけどね。
それくらいしか利用価値がない・・・。
確かに、アサギのそのステンドグラスの前に勝手に賽銭置いていく人もいるんだけど。
マビル、何処か改良出来るところ、ありそうなら教えて欲しいな」
チラシに目を通すマビル、綺麗な造りの建物はマビルとて知っている。
内装には何の問題もないだろう、何がいけないのか検討がつかない。
ドレスとて、綺麗なデザインばかりだった、申し分ないだろう。
金額とて、平均以下だった、マビルにはそれが解らないがお得なのだ。
マビルは知らないが、フラワーシャワー、ライスシャワー、拘った花たちを使うらしい。
近場のレストランへ移動し、日本の結婚式場ではポピュラーなケーキカットや、光り輝く水で部屋を埋め尽くしたり、少なくともマビルは心惹かれた。
「別に・・・良いと思うけど・・・あたしはね」
「でも、困ったことに利用者がいないんだ・・・。何か原因があると思うんだけど」
「・・・チラシにアンケートでもつけて、調査したら?」
「あぁ、そっか・・・。そうだね・・・。一応コンセプトは”祝福を受けた死まで別つ事がない恋人達”なんだけど」
異様にしょげているトモハルが少し気の毒になった、確かに自分で設計したなら、落胆するだろう。
「あたしは、このドレスとかも着てみたいと思うよ」
チラシの一つを指差すマビル、トモハルが驚いて顔を上げたので、顔を顰めてマビルはすぐにそこから指を離す。
心なしか、トモハルの顔に笑みが浮かんでいる。
「・・・マビルは、純白が似合うから。きっとドレスも似合うんだ、綺麗だろうな。花嫁姿」
ぼそ、っとトモハルがそう呟いた、瞳は何処か遠くを見つめている。
鼻で笑い、マビルは腕を組んで椅子の背もたれに重心をかけ。
「だって、あたしだもん。ちょー可愛いんだから! あ、でもトモハルは呼んであげない」
「呼ばなくてもいいよ」
先にまだ言いたい事があったのだが、トモハルの強い口調に遮られた。
嫌悪感を隠せずに、軽く頬を膨らましトモハルを睨むが、マビルを見ることなくトモハルは紅茶のカップを見つめている。
「何その言い方、あんた生意気」
椅子から立ち上がり、マビルはトモハルの胸倉を掴もうとしたのだが、あっけなく右手で弾かれた。
触るな、とでも言うように。
跳ねられた手を唖然ともう片方の手で抱きとめ、トモハルを見る。
「呼ばなくてもいいよ。折角の式をめちゃくちゃに壊されたくないだろ?」
「だから、呼ばないって言ってるのっ。でも、呼んでないのにあんた来てそうだもん!」
「行かないよ・・・。マビル攫って行きそうな自分が解るしさ、流石に大人しく出来るほど俺、自分抑えられないし」
「は?」
攫われても困る。
大口開けて突っ立っているマビルと自分のカップを綺麗に洗うと、トモハルは何も言わずにそのまま出て行った。
唇を噛み締めて、何かを堪えているようなトモハルが何故かマビルは気になった。
気になったが。
「ちょー綺麗なドレス着るんだから! あ、あたしの彼氏はとてもお金もちだから、色んなドレスを着せてくれるんだから!」
「・・・うん・・・おめでとう。きっと、綺麗だよ。誰よりも、綺麗だよ」
叫んだら、立ち止まりもせずにそう言ったトモハルの声が聴こえた。
マビルは、翌日フードを深く被ると城を出る。
気になったのであの場所を訪れた。
そこは、あの日と同じ。
何も変わっていない、恋人達が出入りし、入口においてあるチラシを持ち帰っている。
人は来るのだ、何がいけないのか。
マビルはそっと一人で入ってみた、双子の姉のステンドグラスを見上げながら、ぼーっと席についてみる。
恋人達が三組ほど、何か話をしていた。
「ここで式、挙げてみたい・・・」
一人の娘がそう呟いたので、思わず笑顔になってしまったマビルは、飛び出したい気持ちを抑えて必死で椅子に座っていた。
記念すべき一人目の御客さんだ、何故か心の底から嬉しくて。
「でも」
娘は寂しそうに笑う、他の娘達も同じだった、口々に「挙げてみたい」と呟くがそこから決まらない。
マビルはいてもたってもいられなくて、理由を聴く事にした。
「あの、さ。なんでここで結婚式、しないの?」
フードを深く被っているので、不審がられて一人も声を発しないが・・・。
一人の男がマビルの前に立つと、一生懸命説明をする。
「したいんですけど、気軽に出来る場所ではないでしょう・・・。
ここは皆式を挙げたいんです、これ以上の場所はないですよ。
でも」
でも。
だから何だ。
マビルは苛立って、どうしても理由が知りたくて。
沈黙が流れる、非常に気まずい時間だった。
「・・・トモハル様が」
「は?」
「トモハル様の願いが叶わない事には、流石に・・・」
「願い?」
6人が頷く、マビルはフードを取ろうかとも思ったが、止めて大人しく聴く事にした。
「・・・ここは、トモハル様が最初に式をされるべきだと思うんです。愛する人を思って設計した場所ですよね。
誰も、まさかその想いを超えて、ここで式を挙げるなんて思いませんよ・・・」
「そ、そうなの?」
初耳だ。
というか、原因はトモハルだ。
皆、ここで式を挙げたいのだが、トモハルより、国王より先は気が引ける、ということらしい。
「気にしなくてもいーんじゃないの、それ」
マビルは溜息と共にそう告げるが、6人が反論、思わず尻込みしてしまう。
・・・ともかく、原因は解ったのでマビルはトモハルに教えようと思った。
が、それは。
トモハルが結婚しないと、トモハルの苦労が報われないということで。
そしてマビルとトモハルは結婚している・・・筈なので、トモハルが誰かと式を挙げれば、マビルは。
「あたしは、ホントに何処へ行けばいいの・・・?」
どうすればいいのか解らずに、マビルは一人大きな部屋に戻って寝転がる。
マビルは思ったのだ、トモハルを何故か笑顔にしてあげたいな、と。
言う事を決意した、原因はトモハルだと。
トモハルがあそこで式を挙げれば、皆こぞって挙式するのだ、と。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
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