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牛肉と白菜のクリーム煮(背後作)
です。
・・・書く事がなかったので、とりあえず載せてみました。
用意するもの
・バター
・牛肉
・白菜
・キノコ(舞茸かシメジかエノキ)
・生クリーム(牛乳でも可能)
・塩胡椒
・小麦粉
簡単に出来て美味しいので、冬によく作りますー。
これを超えれば、頑張れ私、アサギ編だっ。
追加日記。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1535044
今日のBGM。
ロマサガ大好きー、曲が大好きー。
3のCDは持っていないので、ニコニコさんで選曲しました。
今日のおやつ。
ロイズのポテチチョコ・フロマージュ。
・・・取って置いたら、賞味期限が迫っていたので慌てて食べてます。
次、アサギ編なので、さくさく書けます。
待っててね、トビィお兄様っ。
↑と、書いて不貞寝のお昼寝していたので、今書き上げました。
静寂がその場を支配する、ミシアはワインを片手に強張った表情のまま相手を睨み付けていた。
穏やかな笑みを浮かべて、幼い顔つきのその男は片手を差し伸べている。
整った顔立ちは、娘達を虜に出来るほど甘く、そして声も聞いていて耳に心地良く。
問題は、恐らく人間ではない種族だということだ。
「よろしければこちらへ来て、一緒に飲みませんか? 良いチーズが入りましたので」
無邪気な笑顔を浮かべ、両手を差し出した。
一歩後退したミシア、額に汗が浮かんだのは目の前の相手の行動も不可解だが、まず力量が全く測れないからである。
見た目は麗しいが、先程から肌に突き刺さる痛みはなんなのか。
ミシアは唇を噛み締め武器を確認した、背に弓があるが構える時間に攻撃を受けるだろう、護身用のナイフならば胸元に潜ませてあるが難なくかわされそうだった。
ダイキとクラフトは無事なのだろうか? 不意に二人はどうなったのか不安になった、まさか死んでなどいないだろう・・・と。
「あぁ、あのお二人でしたらばまだ彷徨っておられますので大丈夫ですよ。ご心配なく、お二人がこちらに戻られる前に、お帰しいたします」
絶句。
全て、お見通しということだろうか。
ミシアは深く唇を噛み締め、我武者羅に武器を手に攻撃を開始しようかとも考えたが、無駄な努力だと判断。
ワインのボトルを傍らに静かに置くと、男を見据える。
「・・・貴方は、誰かしら?」
ようやく声を発したミシアに、男は満足そうに笑うと深々とお辞儀をする。
顔を上げて一歩、また一歩近づいて跪くと、恭しくミシアの手を取り甲に口付けを。
「申し遅れました。シポラにてPOD、教祖を務めておりますイエン・アイです。アイ、とでもお呼びくださいませ」
「・・・色々と訊きたい事があるのだけれど」
「でしょうね、私達も話したいことが山積みです。ですから、どうかこちらへ」
アイは静かに立ち上がると、丁寧にミシアの手を取り歩き出す。
何処をどう歩いたのだろう、美しい装飾施されたドアを開いて部屋に入ればベロアで統一された豪華な場所。
窓から外を見つめている長身の男が、アイとミシアを見つめて深く会釈をし、近寄ってきた。
「あら、イイ男」
思わずミシアの口から零れた言葉、何処となく雰囲気がトビィに似ている気がした。
大人びた長身の冷酷そうな鋭い瞳の男だった、髪の色と瞳がアイと同じであるが雰囲気は正反対。
「お待ちしておりました、出迎えもせずに申し訳ありません。イエン・タイです」
先程のアイと同じ様に跪き、タイはミシアの甲に口づける。
ミシアは唖然としたまま、手を引かれて中央の椅子に座った。
これはまた座り心地が良く、眠りに堕ちてしまいそうな感覚だった。
相当高級な素材で作られているのだろう、それこそ王宮にでもありそうな。
タイがワインを運ぶ、アイがチーズを出す。
二人が正面に着席したので、ミシアは開き直ってかワインを軽く口の中で転がしながら飲み込んだ。
目の前の男は間違いなく魔族達であった、だが、何故か客人としてもてなされている。
二人の魔族に囲まれてそれでも、恐怖を痛感しないのは・・・何故だろう。
確かに緊張はしていたのだが、開き直ってしまったのか堂々としている自分にミシアも驚きが隠せない。
綺麗に空になったグラスに、タイが再びワインを注ぎ入れた。
入れ方も様になっていた、ワイン愛好家なのだろうか、手馴れている。
血のような赤ワイン、ミシアはグラスを転がしながら二人に鋭い視線を送ると、言葉を促した。
それに気づいたのかタイが微笑し、アイと軽く頷くと口を開く。
「困惑気味でしょうから、お話を」
「是非、そうして欲しいわ。手短にね」
「承知いたしました。では、まずこちらをご覧下さい」
タイが徐に立ち上がり、壁にかけてある掛け軸を指差す。
「我らが崇めている破壊の姫君です」
「破壊の・・・姫君?」
復唱したミシアに軽く頷き、タイは掛け軸を愛おしく見つめる。
言われて瞳を細めたミシアだが、そこに描かれているのは、実際見ても何か解らなかった。
布には煌く星々の中心で何かが爆発を起しているような刺繍が施されており、他には薄っすらと星に混じって線が見えるが・・・それだけだ。
何を指すのかがさっぱり解らない、ただの抽象的な絵にしか見えない。
だが、アイも深く頭を垂れてそれを見つめているので、ミシアもとりあえずそれを凝視するしかない。
見続けたり、角度を変えれば何かしら絵の秘密を解く鍵が見つかるかと思ったのだが。
「麗しき破壊の姫君が降臨されれば、その星は再生を迎えるのです。堕落した星に、制裁を与える存在。・・・それが破壊の姫君・・・ミシア様、貴女です」
「はぁ?」
すっとんきょうな声を上げたミシア、真剣に見つめてくる二人の視線に少したじろいだが、気分は悪くなかった。
突然の告白に動揺を隠せずミシアは掛け軸を見続けていた、タイとアイは恍惚とした声で語り出す。
予想外だ、確かにジェノヴァで破壊の姫君の話は聞いたが・・・。
「信じられないのも当たり前、ですが、正真正銘貴女様は破壊の姫君。絶世の美女、底知れぬ魔力、恐れを知らぬ気高き心、動じない冷静さ・・・何より」
タイは掛け軸に移動し、隣に飾ってあった紙切れを丁寧に外すと、それをミシアへと運ぶ。
「見覚えのある字、ではありませんか?」
「・・・これ!」
それを視線に入れた途端、思わず椅子から立ち上がったミシアは、震える手で紙切れを掴み瞳を走らせる。
母の字体だ。
紙が音を立てるほど震えている手で、視界もままならないが唇を動かしながら必死にそれを読み続ける。
「な、なんなの、こ、これ・・・」
「貴女様のお母様である、シャルマ・ドライ・レイジ様。PODの幹部でした、ですがある日を境に姿を眩ませましてね」
幹部という言葉に引き攣った表情を浮かべたミシア、そっとアイが肩を抱きながら椅子に座らせ、背を撫でる。
落ち着かせようとしてくれているようだ、瞳を閉じながら優しく擦っている。
「破壊の姫君・・・貴女様が誕生し、皆で丁重に御守りし、育てるつもりだったのですが。シャルマの裏切り行為で偽者の女児がここに置かれ、本物である貴女様が連れ出されてしまったのです。魔力が高く、幻影に長けた女でして、私達ですらその術を見破り、シャルマを追うことに現在の月日を要しました」
テーブルに肘を置き、顔を覆い隠しながらタイは辛そうに曇った声を出す。
「一人でこの世界を掌握したいという欲望に取り付かれたシャルマは、懸命に我らの追っ手から逃れていたのです。
シャルマと貴女様の共通点は、その肌に、瞳と髪の色。自分の本当の子供であるマダーニの妹として、貴女様を育てていたようですね」
「!?」
弾かれたように紙を握り締めたミシア、再びアイが宥め始める。
「貴女様は誰のお子でもありません、存在自体が神秘なのです。伝説を待ち侘びる我らの前に、あの晩流星と共に流れてきたのですよ。鏡を見れば解りましょう、絶対無二のその美貌、この世のものでは御座いません。そして強力な魅力の香りは、異性を虜にします。それこそ破壊の姫君、他を圧し、屈服させる最大の魔力」
言葉を失った。
眩暈がしたが、妙に視界は鮮明で、掛け軸を見つめて息を大きく飲み込み溜息を。
嘘ではないか、とも思ったがアイもタイも真剣そのものだ。
そもそも、嘘をつく必要など何処にもないだろう。
「シャルマに制裁を加え、貴女様を取り戻す予定が勇者と合流しなかなかお迎えに上がれず・・・。
貴女様の存在は、勇者よりも明確で、魔王よりも絶大なのです。我ら二人は魔族ですが、今の魔族に未来などありません、魔王に従っても滅び行く定めです。正統なる4星クレオの指導者にして救世主、破壊の姫君ミシア様に我らはお仕え致します」
「勇者と魔王、双方どちらが勝とうとも、最終的に戦乱の世は終わりを告げないのですよ。何故ならば正統な指導者が魔王でも勇者でもないからです。ミシア様こそが全てを支配出来るのですから」
二人がミシアに詰め寄り、そっと身体を抱き寄せながら耳元で囁く。
似た声の、音域が違う魔族達の声に鳥肌がたった。
それは、嫌な鳥肌ではない、むしろ快楽。
ミシアは焦点の定まらない瞳で、口元に知らず笑みを浮かべながら心にもないことを呟いた。
いや、この時はまだ”あった”のかもしれない。
「・・・少し、考える時間を頂戴」
「考える事などありませぬ」
アイがそっとミシアの髪に口付けを。
タイが頬に触れて自分の唇を、ミシアの唇へ近づける。
触れるか触れないか、そんな距離感で。
「類稀なる美貌、既に我ら二人も虜に御座います。・・・お会いしとう御座いました、ミシア様。我らの愛しの姫
君」
「ここに、絶対の忠誠を」
二人はミシアを立たせると、両側に立ち部屋の玉座へと誘わせた。
そこに座らせて傍らに控えると、手を二回叩き叫ぶ。
「皆! ミシア様のご帰還であるぞ!」
言うなり、正面のドアが開き、人がそこから溢れ出す。
口々にミシアの名を呼びながら、万歳、万歳、と連呼しながら我先にとミシアの足元まで駆け寄ると涙を流しながら平伏した。
どれもこれも、男ばかりだ。
瞬時に部屋は男で埋め尽くされ、おまけに面食らって最初は度肝を抜かれたのだが冷静になればミシア好みな美形が多いことに気がつく。
「ミシア様、どうか、どうかその美の集結したつま先に口付けすることをお許し下さい・・・」
「私にも、私にも!」
手が伸びる。
ミシアの足首を一人の男が優しく、恭しく、宝物を持つように緊張した面持ちで触れれば、そっとつま先に口付けを。
それを機に、次々と口付けを懇願する男達に、ミシアは笑いが込み上げてきた。
「あは・・・あは、あははははははははは!」
爆笑。
思わず拳を握り締めつつ、ミシアは自分が望んでいたようなこのハーレムの光景を、歓喜の笑みで見下ろしている。
そっとタイが耳打ちをした。
「どうか、応えて下さい。皆、待ち侘びていたのです」
そっと、アイが耳打ちした。
「破壊の姫君、ミシア様。我ら貴女様の虜、なんなりとお申し付け下さい」
口付けしてくる男の顔を、ミシアは蹴り上げてみた。
するとどうだろう、喜びに打ち震えているのか涙を流しながらミシアに土下座をしているのだ。
そっと、タイが耳打ちする。
「ミシア様に、他の者と違うことをしていただければ、あぁして歓喜に打ち震えます。特別扱いされたのですから」
面白くて、ミシアは笑いながら立ち上がると男達の顔を一人一人見つめながら、自分好みな男を物色する。
一人見つけた、瞳を交差させると微笑し、手招き。
赤面しながら近寄ってきた男の頬を平手打ちし、急に胸に引き寄せて頭を撫でる。
周囲から羨望の溜息が零れ、当の本人は呼吸が止まりそうなほど緊張しているようだ。
「ミシア様、ミシア様」
皆うわ言のように名を呼ぶ、ミシアはそれを聞きながら優越感に浸り次々に男達を物色する。
高ぶる感情、流行る胸、手に汗をかきながら狂気の笑みで静かにミシアは唇を開いた。
「タイ、アイ」
「はい」
足元の男の頭を踏みつけながら、笑う。
「ただいま」
「・・・お帰りなさいませ、ミシア様」
男達に囲まれたミシアは、狂気の笑みを浮かべながら気に入った男の唇を奪う。
すると、その男はあまりの感激に身をうち震わせて失神するのだった。
「・・・タイ、アイ」
「はい」
「手始めに何をすれば良いのかしら」
「ミシア様のお好きなように、自由に」
「そう・・・。では、質問を」
「どうぞ」
「世界は私が統治するのね」
「えぇ、今の勢力全てを粉砕し、消去出来ます。ですから”破壊の姫君”。その後で麗しの楽園を御造りになってください」
「私は神秘の存在、父も母もいないのよね」
「えぇ、ある意味神、ですから。神は誰からも産まれません」
「私が家族だと思っていた母と姉は、他人なのね」
「他人どころか、敵に御座います。ミシア様を無謀にも利用しようとしていたのですから。身の程知らずにも程があります」
「世界を統治すべく、まず邪魔な最大勢力と思われる魔王と勇者をぶつけようと思うのだけれど」
「素晴らしい考えです。賛成です」
「一応私、勇者一同だから戻らねばならないわ。敵を探るにも都合が良いし・・・またここへ来るけれどね」
「断腸の思いで、再び別れを迎えねばならないと、覚悟しておりましたから」
「機会があれば、手当たり次第殺しても良いのよね? 勇者も」
「えぇ、構いません。貴女様ならそれが可能に御座います」
「とりあえず、数日ここに滞在したいわ。ダイキとクラフトをなんとか足止めなさい」
「承知いたしました。すでに迷路の屋敷へと誘い、混乱を誘っております。命はどうします?」
「あの二人、特にダイキは成長すれば美形で従順な僕になるわ。殺さないで。けれど、数日後にここへ来るアリナ、という女は目障りだから抹殺して構わないの」
「承知いたしました、アリナ、ですね」
ミシアの瞳が妖しく光り輝いた、不気味な重低音の声に本来ならば誰しも怯えそうだが、奇妙な事に誰も気にも留めない。
心底愉快そうに、手を叩いて自分の考えを紡ぐミシア、その赤ワインを含み、艶と赤を染み込ませた赤い唇からとんでもない言葉が次々と飛び出す。
「アサギとマダーニとアリナは、極刑ね。惨たらしい殺し方しなくてはね、うふふっ」
「・・・では、本日はこちらで宴会を開きましょう。何なりと欲しいものを言いつけてください」
「まぁ、素敵! タイ、アイ。寝所はあるのかしら」
「えぇ、最高級のキングサイズベッドが奥に御座います。姫君の寝所に御座います」
「ふふ、良いわ、良いわ! ・・・何か食べたいわね、テリーヌとか」
「承知いたしました、すぐに」
二人が立ち上がり、一礼して部屋を去るとミシアは選りすぐりの男達を数人引き連れて奥の寝所へと向かう。
赤ワインを衣服に零しながら、手招きしベッドに横になれば。
「ワインが零れてしまったわ、綺麗になさい」
爆笑しながら男達に舌でワインを嘗め取らせる。
一心不乱にミシアの言うがままになる男達を見下しながら、歓喜の叫び声を発していた。
可笑しくて可笑しくて、堪らない。
自分が秀でた美女だとは思っていたが、まさかここまでの魅力があろうとは。
「破壊の、姫君」
なんて甘美な響きだろう。
勇者のアサギをふと、思い出して爆笑する。
魔王を倒す、勇者が居る。
けれど、その魔王と勇者よりの上である存在だと知ったミシア。
眩い、光の勇者の存在が急に霧によって覆われていく。
母も、もはや関係ない。
目的が、音もなく消え失せてしまった。
思い出せない、数ヶ月前誓った事が。
母親の敵を探さねば、父親を救い出さねば・・・姉と誓ったその事が消え失せる。
「平伏しなさい、えぇ、私は」
憂いを秘めた瞳で天井に両手を掲げるとトビィを思い出し、笑う。
類稀なる美貌の所持者、ミシアとトビィ。
なんと似合いの恋人同士だろうか、うっとりと瞳を閉じるとミシアはその名を呼び続ける。
「アサギなんて、メじゃないわ。だって、私は」
最強にして、最大の姫君、世界の統治者。
小さく唇を動かし、心の底から笑い続けた。
勇者など、存在しないのではないだろうかと思えてくる。
勇者などより、上の存在がここに実在しているのだから。
あれは、勇者ではない、自分を引き立てる名脇役なのだ。
自分の身体の上に蔓延る男達の頬を撫でつつ、唇に口付けしつつ、ミシアは高笑いを続けている。
面白くて、仕方がない。
実現するのだ、夢のハーレム生活が。
「出来るのよね、私だからこそ」
女は奴隷にして、馬で引き摺って遊ぼうか、湯だった釜に飛び込んで貰おうか、魔物の中に投げ込んでも面白そうだ。
アサギとアリナとマダーニと。
三人をそんな処刑めいた遊びに放り込んでみたら・・・楽しそうだ。
思えば、マダーニは。
姉ではないのではないかと薄々気づいていた、唇を噛み締める。
何処へ行っても誉められるのはマダーニで、自分も確かに誉められたかもしれないが、マダーニとの落差がありすぎたのだ。
明るく、誰にでも好かれていたマダーニゆえに、皆親しんでいたのかもしれない。
何処となく、ミシアに接する皆の態度は余所余所しかった。
それを子供ながらに痛感していた、あの頃から、姉に嫉妬していたのかもしれない。
違うのだ、皆肌で自分に敬意を払い触れたくとも触れられない高貴な存在であると、直感しての態度だったのだろう・・・と、解釈。
「嫉妬なんて、見苦しいわよ私。値しないのだから」
上半身を起き上がらせる、ワインで濡れ、肌に密着した衣服を脱ぎ捨て男達に妖艶な笑みを浮かべる。
両手を差し出しゆっくりとそのまま倒れこんで、横に軽く転がれば。
くすくす笑いながら瞳を閉じ、小さく欠伸を。
今日、世界が変わった。
明日、何が起こるだろう。
ミシアは自分を囲んでいる男達の視線を浴びながら、心地良さそうに仰向けになると口を半開きに。
舌を軽く出して、艶かしく身体に指を滑らせる。
「触りたければ、触っても良いのよ」
姫君はね、寛大なの。
小さくミシアは呟いた、呟いて、爆笑した。
その頃、アイとタイはしかめっ面で別の部屋に移動している。
「・・・アイ」
「・・・タイ」
名前を呼び合うと、急に互いを抱き締めて身体を震わした。
破壊の姫君に出遭えた歓喜の喜び・・・では、なさそうだ。
「あの女、嫌いー!!」
「落ち着け、アイ。仕方ないだろう、我慢しろ」
アイの絶叫、半泣きでタイに持たれかかると吐き気が込み上げ苦しそうに嘔吐。
背中を青褪めた表情で撫でながら、タイは深い溜息を吐いた。
「気持ち悪いよー、死んじゃうよー、みんなあの淫乱女豚に喰われるよー。愛するタイが一番狙われてるよー!」
「落ち着けアイ、アイ兄。私は平気だ、可哀想だが他の者に相手になってもらおう」
「さっき股間触られたよー! 気持ち悪いよー!」
「・・・変態の極みだ、ある意味破壊的だな」
えぐえぐと泣きつづけるアイの瞳に浮かんだ涙を指で掬うと、タイは軽くアイの唇に自身の唇を重ねた。
頭を軽く撫でる、優しく抱き締めてアイを落ち着かせようとしているらしい。
・・・この双子。
どうやら・・・恋人同士なようだ。
「”本物の”姫君が到着されるまで、偽者には破壊の限りを尽くしてもらわないと。・・・極力早くここから追い出そう。それまで、頑張れるな、アイ兄。最小限の被害に抑えるためにやるしかない」
「う、うん、頑張るよ・・・。あの二人はどうする?」
タイに抱かれて落ち着いたのか、アイは小首傾げて可愛らしく甘えた声で腕を首に回し涙を浮かべた瞳で上目使い。
「あぁ、あの侵入者の。ともかく、あの偽者が出て行くまでは閉じ込めておくべきだ」
「面倒だからタイに任せる。ちょっと・・・休ませて」
「あぁ。こちらは任せてアイ兄は休むと良い。偽者には、兄は感極まって熱が出たとでも言っておこう」
タイは静かにソファにアイを寝かせると頬に口付けし、瞳を閉じさせるように顔を撫でる。
満足そうに眠りに就いたアイを見て安堵の笑みを浮かべると、タイは表情を曇らせある場所へと向かった。
「殺さずに生かしたまま帰す・・・か。非常に苦手な仕事だ」
小声で漏らし早足で建物内を歩き回ると最北端の建物へと到着、壁にかけてあったフードを被り一つのドアから侵入する。
「クラフト、そろそろ戻ろう。遠くへ来過ぎた気がする」
「えぇ。・・・壁に私が印をつけましたからそれを辿れば」
「流石!」
ダイキとクラフトは先程から念入りにこの建物内部を調べていたのだが、何処にも不可解な点はなく。
清潔感溢れる建物で、確かに人とも擦れ違ったが、会釈だけで言葉はかわさず。
ドアがあれば侵入し、物色したが特に異質な部分は見受けられない。
貴族の建物で、使用人たちが働いている・・・そんな印象しかないのだ。
二人と擦れ違っても、誰も気にも留めないことから、余程の人数が居るのではないかと推測出来たがそれだけだった。
「あ、そこ二人」
「うぇ」
戻ろうとした拍子に、声をかけられる。
硬直しているダイキの前にクラフトが進み出るとにこやかに微笑み、その男を見据えた。
「すまないが、草の間へ出向き、小麦粉を二袋、厨房へと運んでくれないか? 人手不足だそうだ」
「承知しました」
すんなりと返答したクラフトに、後方でダイキが慌てふためいたがそれを片手で制する。
男が立ち去った後、すぐにダイキはクラフトに詰め寄ったが軽く窘められ。
「長居は無用です、適当に相槌打てば良いのですよ」
「でも」
「そもそも草の間なんて知りませんし。厨房は先程の場所かもしれませんが。ミシア殿が気がかりです、戻りましょう」
「う、うん」
来た道を戻るという事は、先程の男の後ろを歩くという事だ。
見破られなければ追跡していくだけなので、楽な話だが・・・。
二人は距離を取り、来た道を息を潜めて戻り始めた。
そこへ後方から声がかかったので、飛び上がる勢いで振り向いたダイキ。
「すまない、木の間へ出向いてくれないだろうか。人手不足なんだ」
「わ、解りました」
引き攣った笑顔で返答したダイキに、嬉しそうに声をかけてきた男は笑うとダイキとクラフトの腕を掴む。
慌てふためく二人を尻目に、男は反対方向へと歩き出した。
「助かるよー、一緒に荷物を運んで欲しくて」
「は、はぁ」
クラフトは舌打ちし、逸る気持ちを抑え直様廊下を見渡し特長のある装飾を探した。
人が居ては壁に印をつけて歩くことが出来ない、見取り図を脳内に書き込み続けるしかないのだ。
複雑すぎる道で男は二人を引きずりまわした、同じ場所を何度か歩き回っている気もしてきた。
「木の間、ここまで遠くでしたか?」
冷ややかな声でクラフトが告げる、男は青褪めた顔でクラフトに向き直ると苦笑い。
「ま、迷子になってしまった」
「えー・・・!」
すっとんきょうな声を上げたダイキと、頭を抱えて座り込んだクラフト、この場所へ来て数日だというこの男、まだ道を把握できていないらしい。
立ち止まっていても仕方がないので三人は歩き出した、人っ子一人会わないのが異常な気もする。
折角なので、この場所についてクラフトは探りを入れる事にし、ダイキに目配せすると咳を一つ。
ダイキは静かに小さく首を振って頷くと、心臓に手を当てて少しでも落ち着かせようとした。
クラフトからの視線は、おそらく『私に任せてください』という意味合いだろうと判断。
「困ったときはお互い様ということで。私達も先日入ったばかりですからね、全く把握出来てませんし」
「はは、仲間か。二人はどちらから?」
「私達はジェノヴァから来ました」
「おぉ、向こうの大陸からか! 大変だったろうに。教祖様に惹かれて?」
「・・・えぇ、共感しましたので」
「お近くに居られるだけで安心できる・・・。姫君様は、どれ程の安らぎを与えてくださるのだろうか。早くお会いしたいものだ」
「・・・ですね」
思った以上に口数の多いこの男に胸を撫で下ろしたクラフト、廊下に目をやることも忘れず語り続ける。
「しかし、皆は何処へいったのでしょうか。早く木の間へ行きたいものです」
「皆、木の間にいるのかもしれない。もしくは客人が来ると聞いたのでそちらかも」
「客人?」
眉を潜めたクラフト、出迎えせねばならないほどの大物が来たのだろうか。
それは非常に不味い事態である、本当だとするならば。
「客人を持成す為に皆慌しく動いているらしい、そもそも木の間に行く用事だって・・・。
・・・二人とも、朝礼出ていたか? 何故知らない」
不思議そうに振り返った男に、ダイキは身体を硬直させ立ち止まったが、それでは不審過ぎる。
さり気無くクラフトはダイキの前に進み出て、愛想笑いを浮かべつつ、男の背中を押して先を促した。
「眠くて半分聞いていなかった、・・・秘密にしておいてください」
「不謹慎だな、朝礼は魂の洗濯が出来るのに・・・。心を入れ替えろよ」
「えぇ、申し訳ない。こちらへ来てから感情が高ぶり眠れなかったので、つい」
「あーそれは解る気がする」
クラフトの流暢な嘘に思わずダイキは感心、いつかバレやしないかと心臓は先程から早過ぎる動きだ。
三人はようやく木の間に到着、小腹が空いたと思っていたらパンとコーヒーを配布していたのでそれを頂く。
仕事はここにシーツを敷く、ということらしい。
数十人居るその部屋で、ダイキとクラフトは混じって作業を開始。
こっそりとクラフトがダイキに耳打ちをする。
「ミシア殿が心配です、隙を見て逃げ出しますよ」
「あぁ、解ってる」
ところが。
「さぁ! 祈りを捧げよう。今宵は客人が来ていらっしゃるので教祖様の有り難い言葉はないが」
一斉に跪く皆、別行動は危険だったので二人は渋々真似て跪く。
暫くするとドアから数人が入ってきて同じ様に跪いた、とても出て行ける状態ではない。
どのくらい祈りを捧げていたのか、更に。
「さぁ! 就寝だ。皆、明日への活力を蓄えよう」
言うなりごろ寝を始める一同、ダイキは青褪めてクラフトを見た。
困惑気味ではあったが、クラフトも静かに横になるとダイキに手で「寝ろ」と指示。
唇だけを動かし、必死でクラフトは言葉を伝える。
ゆっくりと動かされる言葉に、ダイキは唇を真剣に見つめて正解を導こうとした。
『皆が寝たら、出歩こう』
多分、クラフトはこう言っている。
同じ様にダイキも唇を動かす『解った』そう、動かしたのだ。
二人は寝た振りをした、寝息が聞こえ始めた頃、先にクラフトが起き上がり静かにドアへと向かう。
誰も起き上がらない、気にも留めない。
ダイキも同じ様に起き上がると、ドアへと近づき静かにドアを二人で開き、その場から・・・立ち去った。
しかし、建物内部は夜で見難い、灯りをつけようものならば目立つだろう。
そう、現在夜だ。
窓から覗く月明かりを頼りに二人は必死で歩く、だが、複雑な順路でここまで来たので道が把握出来ていない。
ミシアはどうしているだろうか、侵入者捕獲、といった情報は流れていないので無事なのだろうが・・・。
何より、アリナ達の合流の件もあるので早々に出るべきだ。
「ごめん、俺が先へ進もうと言ったから」
「ダイキのせいではありませんよ、得た情報もあります。無事に脱出出来れば良いではないですか」
申し訳なさそうに謝罪したダイキに、思いの外クラフトは明るく返答。
別に空元気ではない、まだ絶望に追い込まれていないのだからこれを好機と捉えた方が良いに決まっている。
二人は物置を見つけた、少し埃臭いが仮眠を取ることにし、片隅の毛布に包まって交代で眠る。
明るくなった頃そっとそこを出て、同じ様に歩き回った。
だが、どうしても見覚えのある場所に出ないのだ。
三度目の夜、ようやくクラフトが自分がつけた目印を発見し早足を通り越し、駆け足で急ぐ。
「ミシア殿!」
ようやく辿り着いた場所へ戻れば、そこにミシアの姿はなく。
どっと全身から汗が噴き出す、三日もここに居られるわけがないのだ。
探すべきか、それともミシアがもう敷地内から一人で出て待機していると踏んで、自分達も出るべきか。
「クラフトさ・・・ん? ダイキ・・・?」
足元から不意に声、飛び上がる勢いで眼下に視線を移せば腕が伸びている。
床が音を立てて浮いた、ミシアが顔を出したので唖然と様子を見ていた。
「収納庫、ですわ。偶然見つけましたの」
疲れきったようにそこから這い上がる、思わずダイキが手を差し伸べれば他にも人が居た。
最初に服を交換した二人である、三人で隠れていたらしい。
「幸い、食料はここにあったので、時折隙を見て色々食べさせて貰っていました。・・・この人達は何も口にしていないのですけれど・・・」
「無事でよかった! 話は後だ、早く出よう」
ダイキはミシアの手を取り、クラフトを急かす。
物言いたげにクラフトは口を開きかけたが、無言で床の収納庫から二人を引き上げるとそのままダイキに頷いた。
連れて行く気らしい、確かに残しておいても面倒だろう。
五人はすんなりと地下を通り、敷地から出た。
出たところで二人の猿轡を取り払い、食料を与え、水を与え。
シポラから離れ、二人の体調を整えるべくミシアとクラフトが治療にあたった。
信者二人は大人しく、空腹を満たしても逃げようとはしていない。
どうやら混乱しているらしく、行動が決まらないのだ。
アリナ達が到着する頃だったので、極力シポラへ近づいておかねばならない。
街道に近い場所で五人は野宿を始める。
一応信者二人は木に繋いであるのだが、喚こうともしなかった。
「収穫はありましたか」
ミシアが焚き火を起しながらそう問えば、クラフトが静かに口を開いた。
「いえ・・・。帰るのが精一杯でした」
「そうですか、こちらも特には」
「ご無事で何よりです、心配していました」
疑問は多く残る。
三日間もミシアはあの場所に潜んでいたというが、それにしてはミシア自身が綺麗だ。
まるで入浴でもしたかのように、身体から花の香りが瞬間クラフトの鼻に届いたのである。
排便の問題とてあろう、どう切り抜けたのか。
馬の足音に気づき、二日目アリナとサマルトが馬に乗ってやってきた。
簡単に状況を説明、アリナ達も街での出来事を話し、聞かせる。
大体情報交換が終わったところで、強行突破を試みるアリナをクラフトが宥めた。
「ここまで来たんだ、被害だって街にある、正面から突撃しよう」
「いえ・・・規模が大きいのです。そして敵の正体が不気味です。・・・あそこに、サンダーバードもおります。
飼い慣らしているのかもしれません、あれは・・・強大です」
「ちっ・・・まぁいいや、結論。破壊の姫君という人物を祭っている、教祖は二人、美形らしい。
・・・マダーニとミシアの父さん探さないといけないからボクは突撃したいね」
大袈裟に舌打ち、アリナはミシアの名前を強調し、そこだけトーンを変えて叫んでみたが特に反応はなく普通だ。
「父ならば・・・生きていると信じているので逸らなくとも。この人数では到底無理な気が致しますわ、一旦戻るのが得策であると思います」
「来た意味がないだろ、それじゃ。自分の父親がここにいるかもしれないんだぞ!?」
ミシアの落ち着き払った態度にイラついたアリナと、眉を微かに釣り上がらせて聞いていたクラフト。
「お嬢、落ち着きましょう。突撃し、どうするのですか。想像以上にココの教祖のカリスマ性が高く、また能力が未知数です」
「だったらなんだ!」
どうすべきか。
それぞれの思惑を胸に秘め、ダイキ、アリナ、サマルト、クラフト、ミシアは互いに顔を見つめ合いながら話のつかない会話を、続けている。
空は、暗く。
分厚い雲が太陽を遮断していた。
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