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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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ミシア大暴走中につき。

地平線に太陽が沈みかけ、空が茜色に染まった頃。
アリナとクラフトは「トビィの様子を見てくる」とダイキとサマルトに告げ、部屋を後にした。
ダイキとサマルトは二人して顔を見合わせどうしようか迷ったのだが、トビィのことはこれといって心配していなかったので、食事を摂る事にした。

「トビィはさぁ、何かこう・・・血が通ってないような感じだし。それにきっとあの綺麗な美女だって気紛れで連れていただけだろ? 落ち込んでないと思うんだよなー、本命アサギなわけだし」
「そういうものなのかな」

年上ぶって、呆れたようにトビィの悪態をつくサマルト、ダイキは深く頷く。

「あいつ、顔だけはいいからな、強いしな・・・。今頃適当に他の美女でも捜してよろしくやってるよ」
「ふーん」

魔物の体液でやたら粘つく衣服、部屋の隅に三人分重ねてある。
アリナにサマルト、ダイキの分だった。
クラフトは自分で先程洗濯したようだ、綺麗好きらしい。
アリナは自分で洗って欲しいものだが、衣服を脱ぎ捨てそのままほったらかしである。
洗濯場へ出向き洗う事にする、木の枝を結って作ってある篭にそれらを押し込めると、サマルトは持ち上げる。
鼻を悪臭がくすぐる、思わず顔を顰めて鼻で息をするのをやめると大きく口で呼吸する。

「くっせぇ! 食事の前に嗅ぐもんじゃないな」

部屋を出て、真っ直ぐ洗濯場へと向かう二人は打ち溶け合っていた。

「持つの、代わるよ」

ダイキが声をかけるとサマルトは不思議そうに首を振り、瞳を丸くする。

「何言ってんだ、お前は俺より年下なんだから大人しく黙ってついてこればいいよ。こういうのは年上の役目だ」

妙に『年上』を強調するが、地球だったらこういう嫌な仕事は年下の役目だ。
必死で運ぶサマルトを見ながら、嬉しくなってダイキは微かに微笑む。

初めて見た時は、すかした奴だと思っていたけど結構面倒見の良いいい奴なんだよな・・・。

一国の王子のはずだ、けれども進んで嫌な仕事もするし、威張り散らさない。
口は確かに悪いが、可愛らしい程度である。
二人の横を通りすぎる人々は、その悪臭に鼻を押さえて顔を顰めると一目散に逃げ出していく。
子供達は泣き出すし、大騒ぎだ。

「船内迷惑だな」
「体液が美味しい食べ物の香りだったらいいのになぁ」

困り果てる二人、しかし顔を見合わせると勢い良く吹き出し、足を速める。
洗濯場で仲良く二人で衣服を洗う、戦闘終了後水浴びをした際にこれも洗うべきだったと後悔した。
が、疲労感で洗うまで行き着かなかったのだ。
魔物の体液が衣服に染み付いて頑丈な汚れとなっている、船員が見かねて洗剤をかしてくれるがそれでもなかなか・・・。

「あー、洗濯機が欲しいー。漂白剤に柔軟剤が欲しいー」
「? 何それ?」
「俺達の世界にある、洗濯出来る便利な代物で、ボタンを押せば一気に綺麗になって出てくるんだ」
「すっげー!!」

二人は食事のために懸命に洗濯をした、匂いが取れて、染みは限界まで落とした、干し場に男二人で不器用に干し、食堂に向かう。
腹に入ればなんでもよかったので、適当にサマルトが注文してくれた。
そう、二人ともメニューの文字が読めないのだ。
出てきたのはカレーライスだった、ビンゴである。
一番安いものを選んで正解だったようだ、間違えて注文してしまったチキンソテーと共に二人はがっついて、暫く食堂で会話を楽しんだ。
ダイキは微かに泣きそうだった、一人きりの勇者、けれど近い歳で話の合うサマルトがメンバーにいてくれて安心したのだ。

「ありがとう」
「あ? 何が?」
「こっちの話」

不思議そうに見てくるサマルトに、ダイキは窓から外を見上げる。
星が見えてきた、先程の雨は何処へやら雲ひとつない夜空が広がっていた。

その頃トビィはロザリンドの部屋で一人、ワインを呑んでいた。
先程の戦闘での死者はロザリンドのみ、ロザリンドがこの二等の部屋の支払い済ませていた為に、トビィは自室からこちらへと移っていたのだ。
先にロザリンドからの申請もあって、この部屋の住人となっているトビィは用意されていたワインを呑み続けている。
テーブルの上に空き瓶が二本転がっている、今三本目が空になろうとしていた。
椅子に座り、片肘をテーブルにつきながら項垂れる。
意識が朦朧としてくる、疲労で酒の回りが速いのだろう。
先程まで一緒に酒を飲み、ベッドを共にしたこの部屋の主はもう、いない。
空のワイングラスが、目の前に置いてある。
それを見つめると、自然にロザリンドの顔が浮かび上がってきた。
金髪に豊満な肉体の年上の美女・・・ロザリンド以外にもう一人、トビィは知っている。
その女性も、死んでしまった。
トビィの住んでいた村の住人を惨殺し、気紛れで魔界イヴァンへと連れ去った麗しき魔族の女・・・マドリード。
息子、いや、恋人のように育て、トビィの戦闘能力を格段に引き上げたのも他でもない、マドリードだった。
その弟のサイゴンに剣を鍛えられ、秘められた自分の才能を発揮させ魔族軍のドラゴンナイトの称号も得た。
マドリードの死は看取っていないが、亡骸は見た。
ロザリンドの亡骸は見ていないが、死に際は見た。
二人の死が重なる、二つの映像が脳内で再生される、思わずトビィは頭を大きく振った。
鮮血が二人の身体を流れ落ちる、命の灯火が徐々に小さくなっていき、風に吹き消された。
暗闇の中、紅が映え、二人の亡骸が無造作にトビィの前に置かれている。
しかしその亡骸は二人の美しさを失ってはいない、光り輝くように空気に溶け込んでいるのだ。
穏やかに微笑むマドリード、優しく微笑むロザリンド、思わずトビィは叫んだ。
二人の名を、二人の名前を叫んだ・・・返事が、返ってきた。

「トビィ! トビィ!」

肩を揺すられ、はっとしてトビィは我に返る。
そこには亜麻色の髪のアリナが立っていた、心配そうに覗き込んでいる。

「ア、リナ・・・」

虚ろに半ば驚いてトビィは身体を起こそうとした、が、急に力が抜ける。
意識が戻っていく、暗闇から薄暗い部屋へと戻っていく。
クラフトがアリナの傍らで不安そうに見つめていた、アリナが必死に名前を呼んでいる。
ドアが、見えた。
その右側にトビィの剣・ブリュンヒルデが立てかけてある。
荷物は二人分、皮の袋にはトビィの衣服や薬草などが入っているが、もう一つの高価そうなバッグはロザリンドのものだ。
視界がはっきりとしてきた、部屋で酒を飲んでいて・・・夢うつつだったらしい。

「しっかりしろよ、大丈夫か?」

アリナの男のように無骨だが、それでもやはりか細い指がトビィの頬に当たる。
首をゆっくりと振りながら軽く呻いて「大丈夫だ」、と呟いた。
クラフトが空のワインボトルを片付けつつ「呑みすぎです、身体を壊しますよ」ときつい口調で言ったのがはっきりと聞き取れる。

「そう思って消化に良い、暖かなものを貰ってきましたよ。まさかこれだけをこのペースで呑んでいるとは思ってみませんでしたが」

大きな溜息と共に、クラフトは借りてきた篭から食事を取り出す。
暖かな空気を感じる、鼻につく美味しそうな香りにトビィは瞳を擦ってテーブルの上を見つめた。
料理に興味を示したトビィに安堵の溜息を吐いた二人、アリナはカップをとり、ポットを注ぐとベッドに腰掛けて口に含む。
中身はラベンダティーだった、精神を落ち着かせる作用がある、まだ暖かいそれは脳を安らぎへと導いた。
トビィも無言でそれを飲み干した、気が楽になったような気さえする。
差し出されたのはシナモンをたっぷり振りかけた、バナナサンドイッチパンだ、バナナを軽くバターで炒めてあり、パンも焼き立てでシナモンの香りを一掃引き立てている。
食事しながら、アリナが背中からトビィに語りかける。

「ボク、トビィは人が死んでも動揺しないと思ってたよ。意外」

薄く微笑みながら、トビィはアリナに振り返った、幾分かいつもの状態に戻ってきたようである。

「ふん、一応人間なんでね。知り合いが死ねば誰だって堪えるだろ?」

ニヤリ、と笑いながらアリナがすぐさま言葉を返す。

「そうだけどさ、トビィはアサギ以外の人物なんて、目に入っていないと思ってたから」

美女ロザリンドとトビィの関係など、言わなくてもお見通しだ。
ただの気紛れな遊び相手だとばかり思っていた、だから然程痛手は受けていないだろう、と思っていた。

「・・・愛してるのは、アサギだけだ。昔も今も、これから先もずっと、な。ただ、知り合いの死が以前もあって、それを思い出した。似ていたんだロザリンドと」

急にトビィの声のトーンが低くなった、アリナは思わず口を閉じる。
先程の明るくなりかけた雰囲気が、一気に壊れていってしまう。
沈黙が訪れ、アリナは自分の発言に舌打ちした、が、そんな中で口を開いたのはトビィである。

「すまなかったな、わざわざ来てくれたのに。食事、ありがとう」

照れたように呟いたその声と台詞にアリナはこそばゆさを感じ、思わず吹き出してしまう。
クラフトは瞳を丸くさせて、慌てて駆け寄った。

「知らなかった、謝れるんだ」
「やはり熱でもあるのでは・・・」

真剣に尋ねる二人に、呆れてトビィは空になったカップを置くと、軽く睨みつける。

「お前らは一体オレの事をなんだと・・・」

雰囲気が変わる、待ってましたとばかりアリナが騒ぐ、トビィが顔を顰め、クラフトが穏やかに微笑んだ。
暫く冗談を言い合っていたのだが、話が妙な展開になってきた。

「ね、アサギの何処が好き? ボクはね、小さくてイイ香りがして、可愛い笑顔とか・・・あぁ、全部かもー」

嬉しそうに語るアリナを落胆気味に見つめるクラフト、同情の目を向けるトビィ。
が、サンドイッチを食べ終わるとさらり、と言い放った。

「何処と言われても、アサギの全てだ」

足を組み、ベッドに腰掛けていたアリナは予想通りの返答に、つまらなさそうに寝転がる。

「それじゃわかんないよ、もう少し詳しくなんない?」
「そうは言われても、全部は全部だ。出来ることなら・・・そうだな、秘密の部屋にアサギを閉じ込めて、監禁しながら見つめて居たい位大事だ」

残りのお茶を啜っていたクラフトは、盛大に吹き出して椅子から転げ落ちる。
アリナはガバッ、と起き上がると、奥が深いなぁ、と妙に同感していた。
危険思想ですね・・・呟きながらどうにか立ち上がったクラフトだが、次のアリナの発言に再度後ろに転倒した。

「殺しちゃいたいほど好き、とは違うの? 襲っちゃいたいとは思わないわけ?」
「ごはぁー」

床でのた打ち回っているクラフトを尻目に、二人の会話は急上昇。

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