別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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違和感を感じると思ったら、左右を回転させていたみたいですー・・・。
まぁいいや。
ええと、左から
ロザリンド
トビィ
アリナ
もちろん描いてくれたのは元IF社員の友人様(笑)。
今から8年ほど前だと思われます。
私もこれくらい画力があったらなー・・・。
めも:4168文字
まぁいいや。
ええと、左から
ロザリンド
トビィ
アリナ
もちろん描いてくれたのは元IF社員の友人様(笑)。
今から8年ほど前だと思われます。
私もこれくらい画力があったらなー・・・。
めも:4168文字
「行くぞ、戦闘開始だ」
顎で指図するトビィにダイキとサマルトは顔を引き攣らせる。
むっとして「言われなくても・・・」と言い掛けたが、ロザリンドに婀娜っぽく微笑まれ「頑張ってね」と言われては、赤面して、口を閉ざし、そそくさと後を追う。
愉快そうにロザリンドは、そんな二人を見送った。
文句を怒鳴り散らしながら階段から姿を現したアリナと、クラフト、二人にも同じように微笑む。
その麗しさに思わずアリナは口笛を吹いた。
「流石トビィ、ちゃっかり美人なおねーさまつきだねぇ」
「ふふ、有難う。あなたも素敵よ、頑張ってね」
「うぉう! 戦闘力倍増っ。やっぱり美女の声援があると気分が違うねぇ! あなたは、安全な場所にいてくれよ?」
同性愛者のアリナ、上機嫌でロザリンドに眩しいほどの笑みを浮かべるとガッツポーズを作り、丁寧にお辞儀を繰り返すクラフトを引っ張って甲板へと出て行く。
それを見送るロザリンド、あの娘とは上手くやっていけそう・・・男女関係的にではなく、トビィと親しいものね・・・と、薄く笑みを浮かべた。
今度の船旅は、トビィと過ごすと決めたのだ、トビィの知り合いとも親しくなるのが普通だろう。
可愛らしい坊やが二人、厭味を感じさせない女が一人、生真面目な青年が一人・・・。
だが。
ロザリンドはもう一人、その場に居た人物に視線を移すと見下すように笑う。
ミシアである。
先程から何か小声でぼそぼそと呟きながら、立ち尽くしているのだ。
宙を見て、焦点の合わない虚ろな瞳で、聞き取れない言葉を発している。
その光景に顔を軽く歪め、ロザリンドは声をかける。
別に無視しておいてもよかったのだが、トビィの仲間ということはこの女も何かしら戦闘能力があるのだろう。
「行かなくていいの? 役に立つのか知らないけれど・・・お嬢さん」
その含み笑いの声に、弾かれたように現実へと舞い戻ったミシア、すぐさまロザリンドに対して睨みを利かせる。
挑発的な視線に、負けじと嘲笑いを浮かべ、軽く壁に凭れるとロザリンドは優雅にキセルを吐いた。
しかし、それも束の間の事だ、状況は変転した。
突如ミシアの身体から目に見えないが、肌で感じる殺気・・・禍々しい何かが湧き上がってきたのである。
ロザリンドとて、ただの一般市民ではない、占いを得意とし、第六感には優れている。
呆然とその場に立ち尽くすロザリンドだが、それでもまだ余裕があった、知らぬ振りして語りかける。
「あなた、トビィの事が好きなのよね? でも、気の毒だけど嫌われているみたいよ。それに、恋人もいるようだしね」
無言でロザリンドを睨み続けるミシア。
しかし、ゆっくりと口を開き始めた、地獄の底知れぬ扉が開くかのような威圧感を感じ、思わずロザリンドは後退する。
それは、ミシアにとって何気ない動作であったかもしれない。
けれど、確かにロザリンドは妙な気配を直感し、背筋に言い知れぬ寒気が走ったのだ。
地の底で呻き声を上げる死霊の叫びか、文字通り悪魔の声か・・・ミシアが、言葉を吐き出した。
「汚らしい声で減らず口を叩くんじゃない、薄汚いメス豚。あんたは気に食わない、何処かの誰かを思い出させる、私のトビィの隣でっ」
かっとミシアの瞳が開き、その背後から立ち上っていた妙なオーラが放射状に吹き荒れた。
思わず身をすくめ、構えるロザリンド。
その異様な光景を、気配を目の当たりにして初めて、自分が置かれている状況が非常に危険だと悟る。
な、なんなのこの娘!? ただものじゃないわ、変よ!?
薄紫の長き髪が地獄の亡者の手腕に見える、黄色い瞳がおぞましく浮かび上がる。
未だ吹き荒れ続ける暗黒のオーラ、それからは深淵の香りがする、邪悪な何かの・・・。
「に、人間じゃないでしょう・・・」
呼吸も間々ならず、苦し紛れにロザリンドが呟くと、ミシアはきょとんとして喉の奥で笑い始めた。
ぎらぎらと光る瞳、重低音の声、見るものが見ればそれは悪魔に取り付かれた女以外の何者でもない。
「ふふっ、そうかしら。そうね、ここまで完璧な容姿の女なんて、滅多にいないものね。神もひいきするわよねぇ、こんなに他の女達と差をつけたら気の毒だわ。・・・哀れんであげる、メス豚さん」
「本当に自信過剰なのね、おバカさん。何処から湧き出る自信か知らないけれど、少しは謙虚にしないと嫌われるわよ」
負けまいと、わざと強がって見せたロザリンド、しかしミシアは益々厭らしい笑みを浮かべるばかりだ。
「くくくっ・・・やあねぇ、これだから。この美の集結した私の容姿・・・嫉妬するのも分かるけれど。まぁ、全てはあの人の為のものなんだけど」
「トビィのこと? ふふ、分からないのね、おバカさん。彼はあなたの存在自体、邪魔みたいよ? 疎ましいのでしょうね、さっき呟いていたもの。可哀想ね、思い込みの激しい人は。嫌悪されているって分からないのなら、トビィに抱かれた事があるのかを考えればいいのに」
そこまで言い放ってから、ロザリンドは再び後ずさる。
ふらふらと壁づたいに移動し、角へと追いやられると喉の奥で悲鳴を上げた。
顔面蒼白、足が震える、そして・・・倒れこむようにしゃがみ込む。
目の前のミシアの姿、電撃が迸り、船内であるはずなのに、生暖かい風が髪を吹き上がらせ、血走った眼で憎憎しそうに睨みつけてきていた。
蛇に睨まれた蛙そのもの、小さくなりながら震えるロザリンドを、愉快そうに爆笑しながら見下している。
「あらあら、メス豚。どうしたの、さっきまでの威勢は? ふふ、嘘ばっかりよね、トビィと私は恋人なの、羨ましいでしょう。可哀想に相手にされないから妄想で私を蹴落とそうとしたのね? あの人は奥手でね、本命には手を出したがらないのよ、なかなか。でもね、あの人は私の身体を全て知り尽くしているの、だって何度も同じ夜を過ごしたのよ? あぁこうして思い出すだけでどうにかなりそうだわ」
うっとりと微睡むように、ミシアは愉快そうに回転する。
それは狂気の宴、異様な気配と含み笑い、この場に他の者がいたら卒倒しそうである。
現に今、ロザリンドは全ての五感で恐怖をひしひしと感じていた。
助けを呼びたい、けれども喉から声が出てこないのだ、声の出し方が・・・分からない。
ひゅうひゅうと、息だけが口から吐き出される、早くしないと・・・殺される!
必死のロザリンドをゆっくりと追い詰めるように、ミシアは一歩一歩、恍惚の笑みを浮かべながら近寄っていった。
「まさか、とは思うけど。メス豚、トビィに抱かれたなんて・・・戯言言わないわよね?」
口調は穏やかだった、しかし、視線は強烈だ、翻弄させるような、無理やりにでも返事させるような権威的な声。
悔しさで、ロザリンドはほとんど動けなくなった自分の身体を無理に動かしてみる。
微かな抵抗、しかしそれはミシアの魔力の高さ思い知るだけだった。
何かしら呪文を唱え、ロザリンドをこの状態へと追いやったわけではない、その禍々しい気配だけでこうして圧迫しているだけだ。
冷や汗を背が伝う、不気味に流れ落ちていく。
まるで長い長い時をこうして過ごしているようであった、なんとも生きた心地がしない。
「ねぇ、ちゃんと質問に答えてくれないかしら? 常識ってものをしらないの?」
唇を尖らせながら、しかしその瞳は勝ち誇ったような満悦の光に満ちている。
もう、死ぬのは覚悟した、しかし、こんなわけの分からない小娘に絶対的な力を見せ付けられたままでは・・・死ぬに死に切れない。
満身の力を込めて、ロザリンドは最後の力を振り絞る。
喉から血が吹き出した、あまりの痛みに顔を大きく歪めるが、これだけは言わないときが済まなかった。
しかし、その声すらも・・・耳を澄まさないと聞こえないほどの、そんなか細い声だった。
「この慢心女! よくもまぁぬけぬけと言いたい放題言ってくれたわね? えぇ、トビィに抱かれていたわよ先程まで、これで・・・満足かしら? 悔しい?」
「・・・冴えない台詞だったわね。これでメス豚も見納めだわ、その前に私の役には立ってもらうけれど」
ひゅっ、そう音が聞こえた時にはすでにロザリンドは・・・絶命していた。
死の覚悟はもちろん、叫び声すら上げる間も無く。
ミシアの放った小剣が深々とロザリンドの眉間に、そして豊満な胸に突き刺さっている。
確実に、急所を仕留めていた。
剣から真紅の血が、一滴、また一滴、伝って流れ落ちていく。
瞳は光を失い、半開きになっている口、それでもまだロザリンドは美しかった。
だが、ミシアにとってどうでもよかった、死体に語りかける、侠気の口調で含み笑いと共に。
「妄りに私のトビィに近づくからそうなるのよ、でも喜びなさい。これから私を引き立たせる役に伝ってあげるから。光栄でしょう、ふふふ・・・」
そして指をパチン、と鳴らす。
唇を軽く舌で湿らせ、にっこりと微笑む。
軽く上下に腕を揺する・・・こんなことがありえるのか、ロザリンドの身体がゆらりと大きく傾き、そして・・・ぎこちなく立ち上がった。
そう、死体が・・・動いたのだ。
「冥利に尽きるでしょう、優しい私に殺されて。淫乱で醜悪なメス豚、幻覚かもしれないけれど、トビィに抱かれたのね。トビィは私の男なんだから、気安く近づくと・・・こうなるのよ。その汚らしい身体で何を要求したのかしら」
優雅に胸の谷間から一枚のカードを取り出す、かくかくと揺れているロザリンドにゆっくりとそれを見せ付けた。
無論、死体のロザリンド、瞳にそのカードが映るわけもなく。
漆黒の縁、毒々しい程真っ赤な薔薇が描かれているカードの裏側は・・・塔の絵。
タロット、大アルカナ16番目の塔のカードである。
「身分を弁えなさい、身の程知らずは天罰を喰らいますよ・・・。あ、もう、遅かったみたいね」
ミシアはゆっくりと口の端に笑みを浮かべ、その場で優雅に、蝶が舞うようにくるり、と回ってみせる。
「さてと、舞台の幕開けね」
唇の端を軽く上げて微笑むミシアの傍らで、ゆらゆらと揺れながら生気の感じられないロザリンドが立っている。
顎で指図するトビィにダイキとサマルトは顔を引き攣らせる。
むっとして「言われなくても・・・」と言い掛けたが、ロザリンドに婀娜っぽく微笑まれ「頑張ってね」と言われては、赤面して、口を閉ざし、そそくさと後を追う。
愉快そうにロザリンドは、そんな二人を見送った。
文句を怒鳴り散らしながら階段から姿を現したアリナと、クラフト、二人にも同じように微笑む。
その麗しさに思わずアリナは口笛を吹いた。
「流石トビィ、ちゃっかり美人なおねーさまつきだねぇ」
「ふふ、有難う。あなたも素敵よ、頑張ってね」
「うぉう! 戦闘力倍増っ。やっぱり美女の声援があると気分が違うねぇ! あなたは、安全な場所にいてくれよ?」
同性愛者のアリナ、上機嫌でロザリンドに眩しいほどの笑みを浮かべるとガッツポーズを作り、丁寧にお辞儀を繰り返すクラフトを引っ張って甲板へと出て行く。
それを見送るロザリンド、あの娘とは上手くやっていけそう・・・男女関係的にではなく、トビィと親しいものね・・・と、薄く笑みを浮かべた。
今度の船旅は、トビィと過ごすと決めたのだ、トビィの知り合いとも親しくなるのが普通だろう。
可愛らしい坊やが二人、厭味を感じさせない女が一人、生真面目な青年が一人・・・。
だが。
ロザリンドはもう一人、その場に居た人物に視線を移すと見下すように笑う。
ミシアである。
先程から何か小声でぼそぼそと呟きながら、立ち尽くしているのだ。
宙を見て、焦点の合わない虚ろな瞳で、聞き取れない言葉を発している。
その光景に顔を軽く歪め、ロザリンドは声をかける。
別に無視しておいてもよかったのだが、トビィの仲間ということはこの女も何かしら戦闘能力があるのだろう。
「行かなくていいの? 役に立つのか知らないけれど・・・お嬢さん」
その含み笑いの声に、弾かれたように現実へと舞い戻ったミシア、すぐさまロザリンドに対して睨みを利かせる。
挑発的な視線に、負けじと嘲笑いを浮かべ、軽く壁に凭れるとロザリンドは優雅にキセルを吐いた。
しかし、それも束の間の事だ、状況は変転した。
突如ミシアの身体から目に見えないが、肌で感じる殺気・・・禍々しい何かが湧き上がってきたのである。
ロザリンドとて、ただの一般市民ではない、占いを得意とし、第六感には優れている。
呆然とその場に立ち尽くすロザリンドだが、それでもまだ余裕があった、知らぬ振りして語りかける。
「あなた、トビィの事が好きなのよね? でも、気の毒だけど嫌われているみたいよ。それに、恋人もいるようだしね」
無言でロザリンドを睨み続けるミシア。
しかし、ゆっくりと口を開き始めた、地獄の底知れぬ扉が開くかのような威圧感を感じ、思わずロザリンドは後退する。
それは、ミシアにとって何気ない動作であったかもしれない。
けれど、確かにロザリンドは妙な気配を直感し、背筋に言い知れぬ寒気が走ったのだ。
地の底で呻き声を上げる死霊の叫びか、文字通り悪魔の声か・・・ミシアが、言葉を吐き出した。
「汚らしい声で減らず口を叩くんじゃない、薄汚いメス豚。あんたは気に食わない、何処かの誰かを思い出させる、私のトビィの隣でっ」
かっとミシアの瞳が開き、その背後から立ち上っていた妙なオーラが放射状に吹き荒れた。
思わず身をすくめ、構えるロザリンド。
その異様な光景を、気配を目の当たりにして初めて、自分が置かれている状況が非常に危険だと悟る。
な、なんなのこの娘!? ただものじゃないわ、変よ!?
薄紫の長き髪が地獄の亡者の手腕に見える、黄色い瞳がおぞましく浮かび上がる。
未だ吹き荒れ続ける暗黒のオーラ、それからは深淵の香りがする、邪悪な何かの・・・。
「に、人間じゃないでしょう・・・」
呼吸も間々ならず、苦し紛れにロザリンドが呟くと、ミシアはきょとんとして喉の奥で笑い始めた。
ぎらぎらと光る瞳、重低音の声、見るものが見ればそれは悪魔に取り付かれた女以外の何者でもない。
「ふふっ、そうかしら。そうね、ここまで完璧な容姿の女なんて、滅多にいないものね。神もひいきするわよねぇ、こんなに他の女達と差をつけたら気の毒だわ。・・・哀れんであげる、メス豚さん」
「本当に自信過剰なのね、おバカさん。何処から湧き出る自信か知らないけれど、少しは謙虚にしないと嫌われるわよ」
負けまいと、わざと強がって見せたロザリンド、しかしミシアは益々厭らしい笑みを浮かべるばかりだ。
「くくくっ・・・やあねぇ、これだから。この美の集結した私の容姿・・・嫉妬するのも分かるけれど。まぁ、全てはあの人の為のものなんだけど」
「トビィのこと? ふふ、分からないのね、おバカさん。彼はあなたの存在自体、邪魔みたいよ? 疎ましいのでしょうね、さっき呟いていたもの。可哀想ね、思い込みの激しい人は。嫌悪されているって分からないのなら、トビィに抱かれた事があるのかを考えればいいのに」
そこまで言い放ってから、ロザリンドは再び後ずさる。
ふらふらと壁づたいに移動し、角へと追いやられると喉の奥で悲鳴を上げた。
顔面蒼白、足が震える、そして・・・倒れこむようにしゃがみ込む。
目の前のミシアの姿、電撃が迸り、船内であるはずなのに、生暖かい風が髪を吹き上がらせ、血走った眼で憎憎しそうに睨みつけてきていた。
蛇に睨まれた蛙そのもの、小さくなりながら震えるロザリンドを、愉快そうに爆笑しながら見下している。
「あらあら、メス豚。どうしたの、さっきまでの威勢は? ふふ、嘘ばっかりよね、トビィと私は恋人なの、羨ましいでしょう。可哀想に相手にされないから妄想で私を蹴落とそうとしたのね? あの人は奥手でね、本命には手を出したがらないのよ、なかなか。でもね、あの人は私の身体を全て知り尽くしているの、だって何度も同じ夜を過ごしたのよ? あぁこうして思い出すだけでどうにかなりそうだわ」
うっとりと微睡むように、ミシアは愉快そうに回転する。
それは狂気の宴、異様な気配と含み笑い、この場に他の者がいたら卒倒しそうである。
現に今、ロザリンドは全ての五感で恐怖をひしひしと感じていた。
助けを呼びたい、けれども喉から声が出てこないのだ、声の出し方が・・・分からない。
ひゅうひゅうと、息だけが口から吐き出される、早くしないと・・・殺される!
必死のロザリンドをゆっくりと追い詰めるように、ミシアは一歩一歩、恍惚の笑みを浮かべながら近寄っていった。
「まさか、とは思うけど。メス豚、トビィに抱かれたなんて・・・戯言言わないわよね?」
口調は穏やかだった、しかし、視線は強烈だ、翻弄させるような、無理やりにでも返事させるような権威的な声。
悔しさで、ロザリンドはほとんど動けなくなった自分の身体を無理に動かしてみる。
微かな抵抗、しかしそれはミシアの魔力の高さ思い知るだけだった。
何かしら呪文を唱え、ロザリンドをこの状態へと追いやったわけではない、その禍々しい気配だけでこうして圧迫しているだけだ。
冷や汗を背が伝う、不気味に流れ落ちていく。
まるで長い長い時をこうして過ごしているようであった、なんとも生きた心地がしない。
「ねぇ、ちゃんと質問に答えてくれないかしら? 常識ってものをしらないの?」
唇を尖らせながら、しかしその瞳は勝ち誇ったような満悦の光に満ちている。
もう、死ぬのは覚悟した、しかし、こんなわけの分からない小娘に絶対的な力を見せ付けられたままでは・・・死ぬに死に切れない。
満身の力を込めて、ロザリンドは最後の力を振り絞る。
喉から血が吹き出した、あまりの痛みに顔を大きく歪めるが、これだけは言わないときが済まなかった。
しかし、その声すらも・・・耳を澄まさないと聞こえないほどの、そんなか細い声だった。
「この慢心女! よくもまぁぬけぬけと言いたい放題言ってくれたわね? えぇ、トビィに抱かれていたわよ先程まで、これで・・・満足かしら? 悔しい?」
「・・・冴えない台詞だったわね。これでメス豚も見納めだわ、その前に私の役には立ってもらうけれど」
ひゅっ、そう音が聞こえた時にはすでにロザリンドは・・・絶命していた。
死の覚悟はもちろん、叫び声すら上げる間も無く。
ミシアの放った小剣が深々とロザリンドの眉間に、そして豊満な胸に突き刺さっている。
確実に、急所を仕留めていた。
剣から真紅の血が、一滴、また一滴、伝って流れ落ちていく。
瞳は光を失い、半開きになっている口、それでもまだロザリンドは美しかった。
だが、ミシアにとってどうでもよかった、死体に語りかける、侠気の口調で含み笑いと共に。
「妄りに私のトビィに近づくからそうなるのよ、でも喜びなさい。これから私を引き立たせる役に伝ってあげるから。光栄でしょう、ふふふ・・・」
そして指をパチン、と鳴らす。
唇を軽く舌で湿らせ、にっこりと微笑む。
軽く上下に腕を揺する・・・こんなことがありえるのか、ロザリンドの身体がゆらりと大きく傾き、そして・・・ぎこちなく立ち上がった。
そう、死体が・・・動いたのだ。
「冥利に尽きるでしょう、優しい私に殺されて。淫乱で醜悪なメス豚、幻覚かもしれないけれど、トビィに抱かれたのね。トビィは私の男なんだから、気安く近づくと・・・こうなるのよ。その汚らしい身体で何を要求したのかしら」
優雅に胸の谷間から一枚のカードを取り出す、かくかくと揺れているロザリンドにゆっくりとそれを見せ付けた。
無論、死体のロザリンド、瞳にそのカードが映るわけもなく。
漆黒の縁、毒々しい程真っ赤な薔薇が描かれているカードの裏側は・・・塔の絵。
タロット、大アルカナ16番目の塔のカードである。
「身分を弁えなさい、身の程知らずは天罰を喰らいますよ・・・。あ、もう、遅かったみたいね」
ミシアはゆっくりと口の端に笑みを浮かべ、その場で優雅に、蝶が舞うようにくるり、と回ってみせる。
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