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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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「どうして、どうして僕は選ばれなかった・・・?」

亮が呟いた、その言葉。
共に居られないのなら、アサギの傍を離れなければならないのならば。
亮のその強い想いが内に秘める力を呼び起こすのに、時間はかからなかった。
勇者としてその場で選ばれなくても、その器は十分過ぎる程彼にはあったのだ、けれどもそれぞれの石は、彼を指し示さない。
最初は小さな風が亮の頬を撫でた、優しく、やんわりと。
徐々に速く強くなる風、砂塵が校庭を舞い、鳥達が怯えて遠くへと飛び立っていく。

「誰か、誰か! どうか、アサギをっ」

自分が共に居られないなら、同等の力を持つべき者へと、せめて託そう。
このもどかしい想いを、誰かに託さなければ。
誰か、誰に?

「アサギの守護をっ!」

亮の叫び声が校庭にこだまする。
風に乗って、声が駆け抜けていく。
その願いは、想いは、誓いは、遠く遠く離れた地へと、風に乗ったまま届けられた。
風は呼びかける、今はまだ知らぬ、過去の仲間へと。
亮は、見知った男の姿を確認した、瞬間歓喜の笑みを浮かべる。
見知っているのは『魂』が、見たこと無い男だが、過去から知っている気がした。
紫銀の流れる髪、濃紫の瞳、端正な顔立ちの水を連想させる男を姿を確認したのだ。
亮は、自身の風を彼へと送り届けた。
風に想いを乗せて、最も信頼できる男へと望みを託す。
僕の代わりに、アサギを護って。
大事なアサギを、護って。
近い未来、その男はアサギと出会うだろう。
もう、大丈夫だ・・・。
亮は校庭で一人、穏やかに微笑んだまま空を見上げる。
暫しの後、校庭は騒乱に包まれたのだが亮には関係のないことだった。
子供達が隣同士で叩きあい、教師達が叫び声を上げ、校長を頼るべく詰め寄る。
そう、目の前で不可解な事件が起きた。
眩い光と共に、御伽噺の使者がやってきた、巨大なネズミも降ってきた。
やがて生徒が六名、使者と共に消えていった。
夢ではない、皆が見ていた。
校長の頭は錯乱状態である、未だかつてこんなケースはない。
『校長マニュアル』にも掲載されていない事態が起こってしまった。
どうするべきだ、様子を見るべきなのか? 誘拐事件として世間に公表すべきものなのか!?
なんと説明する? 光の中に消えていきました、と説明をするのか!?
親御さんにはどう説明する!? PTAからの攻撃にはどう対応する!?
テレビの取材が来たら、どう謝れば!? いや、謝るようなことしたのか!?
そんな時、大人より子供のほうが順応が速かった、生徒達は整列し直すと教師の言葉を待ったのである。
副校長の指示で、今にも倒れそうな校長は教壇に登るとこう告げた。
見ているこちらが気の毒になるほど、顔面蒼白、泡を吹いて倒れそうな校長、もうすぐ定年。

「あーうーおーえーあー・・・。本日はー、休みとしますー。自宅へ皆で戻り、明日の準備をしてくださいー。各自教室で宿題を聞き、元気な顔で明日登校してくださいねー。以上」

わぁ!
校庭で子供達の歓声が上がった。
学校が休みになればそれは嬉しいだろう、手を取り合って喜び、はしゃぎ回る。
数時間後、各自教室で宿題を出されながらも生徒達は帰宅して行った。
給食だけは食べたようだ。

「どーするんですか、校長っ!」

職員室では校長がハンカチで口元を押さえながら、机に突っ伏しつつ教師達のわめき声を聴いている。
聞いているというか、聞き流しているというか。
皆総出でネットで検索をかける、『生徒達が目の前で姿を消した場合』『目の前に不可解な生物が現われた場合』・・・。
それらの対応策など出てこない、だが起きたことは現実だ。
消えた生徒は『6-1:田上浅葱』『6-2:松長友紀』『6-2:松下朋玄』『6-2:中川大樹』『6-4:大石健一』『6-4:門脇実』以上六名。
両親に連絡を取らなければならない、しかしなんと説明をすべきだ!?
ここは慎重に電話を・・・、いやいや、行動が遅れる程マスコミに標的にされる!
教師達は一斉に脳裏にある映像が浮かんだ。

『こちらは、生徒達が行方不明になった小学校の校庭です! あ、校長です、教師達です! すいません、すいません、何故早くご両親に連絡をしなかったのですか!? 子供を心配する親へと冒涜だと思いませんか!?』

リポーター達に塞がれ、身動きできない映像。
一生のうち、体験できる人間は数少ないはずだった、が、数日後には経験しざるを得ないだろう。

『本当にねー、困るわよねー。こっちは信頼して学校に預けているのに、子供を行方不明にされちゃぁねー※音声は変えてあります』

関係ない近所のおばさんやらが、捲くし立て、ここぞとばかり文句を言っている。
教師達は身を震わせた、冗談ではない、こんな事態は避けなければ!
頭を盛大に横に振ると、校長は跳ね起きて「電話だー! とりあえず、消えた生徒達の両親へ電話だーっ」と叫んだ。
慌てて教師達は、各生徒達への連絡網を開いた。
電話をかける教師も気が重い、罵声を浴びせられるか信じてもらえず不振がられるか。
混沌とした職員室、6月26日、初夏の出来事。

亮は近所の子供達を連れて下校する、アサギがいない以上、この地区の引率を任されるのは自分だと解っていた。
横断歩道を低学年から渡らせて、自分は最後に。
止まってくれた車に礼をして、亮は歩いていく。
と、目の前で低学年がすっ転んだ。
バランス感覚がない年頃、石に躓いた訳でもなく、前にころりんと。
間が空いて大声で泣き出す、慌てて亮は駆け寄ると抱き起こして膝についた小石を払い除ける。
特に怪我はないが、痛みではなく驚きで泣き出したのだろう、泣き止まない。
困り果てて負んぶして帰ろうと、背負っていたランドセルを下ろしかけた。

「どうしたの。大丈夫!?」

何処からともなく声が聞こえる、見れば車道から一台の車がこちらへ向かってきて、亮の前すれすれで停車した。
その近すぎる距離に亮は小さく悲鳴を上げる、が、降りてきた女性はそんなことお構いなし。

「転んだの? ケガは?」
「あ、はい、大丈夫みたいです」
「そっか、ならよかった。じゃあ、これを・・・」

女性は車内へ戻ると、何やら漁り始め、戻ってきた。
手に握られていたのは・・・飴。

「ほら、甘い飴嘗めよっか。おいしーよ。苺味だよー。元気出るよー」

女性は泣いている子に、飴を渡す。
にっこり笑って、頭を撫でて、ほっぺをぷにぷに、触り続ける。
きゃはは、と笑い始めたのに安堵し、女性は立ち去ろうとした。
ありがとうございました、声を張り上げてお礼をする亮に、女性は振り返る。

「いえいえ、どういたしましてー。気をつけて帰るんだよー」

ばいばい、手を振って女性は車に乗り込んだ。
せめて見送ろうと亮が突っ立っていると、電話が鳴っていたのか、何やら携帯で会話し始めた。

「あー、はいはい、こちら奈留ですー。今向かっている途中ですー。もう暫くお待ちくださいー」

奈留という名前らしい、亮は再度深く礼をすると、再び歩き出す。
自宅には帰らず、亮は田上家へと出向いた。
丁度用意されたおやつが出ていたところで、亮もご馳走になる。
今日はよく冷えた手作りミルクプリンだ、甘くて美味しい。
学校からアサギが消えたと電話が入ったらしく、今夜説明会があるとか。

「あはは、びっくりよね。浅葱、消えたのねー」

やたら暢気な母親に、亮は思わず苦笑い。
娘が消えたのに、この余裕はどうしたことか。
そんな亮の視線に気づいたのか、母親はゆっくりと笑みを浮かべる。

「浅葱、勇者になりたいって言ってたんでしょ? 望んでいたことが現実に起きたのよね。なら、喜ばしいことじゃない? 」
「でも!」
「私には解るの。あの子はちゃんと戻るわ。そう思うでしょ、亮君も」
「・・・確かに、そうですけど」

思うというか、戻って貰わないと困る。
願い続ける、無事で戻れるようにと。
けれど確かに、亮には解っていた。
アサギがそのうち無事な姿で、怪我一つなく戻ってくることを。
アサギの弟達とゲームをしながら考える、確かに不安が消えた。
アサギの姿が見えなくなった時は、不安で苦しくて押しつぶされそうな空気だったのに。
今は妙に軽い、何故か安心している。

「・・・大丈夫、アサギは大丈夫だ」

そう、大丈夫。
護り続けよう、願い続けよう、祈り続けよう。
何処に居ても僕がアサギを護れるように、風を送ろう。

キィィィ、カトン。

亮は何処かで歯車が回った音を聞いた。

※奈留は何しに出てきたんだろう(笑)

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