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ワイン、二本目。
味がわからなくなってきたし、眠くなってきたから、ふらふらとベッドへ向った。
・・・飲みすぎて気持ちが悪い。
ぺたり、と床に座り込んだあたしは、その場に蹲る。
少し休めばまた歩けるから、そしたらベッドに転がろう。
冷たい床に、頬をつける。
瞳を閉じて、深呼吸。
不意に、ふわり、と身体が軽くなった気がした。
瞳を開けてみると・・・。
「・・・」
律儀なお人形があたしを抱き起こしていた。
ホント、忠実な人形ですことー・・・。
背中を擦って、軽く頭を撫でて。
「大丈夫だからね。必ず護ってあげるからね」
なんか、そう聞こえたけど。
人形は喋らないから幻聴だ、・・・眠い。
あたしは、そのまま、眠りに就いた。
真正面から抱き締めて貰って、そのまま眠ったの。
朝、目が覚めたら、コイツ。
・・・そのままの体勢でちゃんとあたしを支えててくれた。
変な、人形。
眠っているコイツの顔を見ていたら。
無性に顔が熱く感じたから、気持ち悪くて再度コイツの腕の中で瞳を閉じる。
・・・なんだ、これ?
くすぐったいような、不思議な気分に陥ったから、もっかいコイツを見た。
安らかな寝息を立てているコイツ、あぁ、チョット可愛い顔をしている。
あたしの好みじゃないけど。
数日後、気配を感じてあたしはコイツの腕の中から飛び起きた。
思わず小屋から飛び出して、周囲の気配を探る。
誰か、居る。
見つかったんだろう、あたしは小屋に戻ると人質で楯代わりのアイツを起こそうとした。
そしたら起きててマントを羽織って、剣を背中に装備している。
・・・ホント、忠実な人形・・・。
流石あたし、効果は抜群なのね。
思う存分、コイツをフル活用してやろう。
思っていたら、突然コイツが腕を引っ張って、それから軽く、抱き締めてきた。
・・・へ?
「必ず、護ってあげるからね」
・・・は?
なんか、しゃべった、この人形。
唖然と見上げたら、シーツを被せられて部屋の隅に座らされた。
・・・。
な、何この人形。
コイツは。
何時ものように笑ってあたしの頭を撫でると、そのまま出て行く。
あまりのことに、何が起こったのか解らなくて、そっとあたしは立ち上がると窓から顔を出した。
その時、爆音。
小さく叫んで思わずしゃがみ込む、収まったから窓から顔を出して・・・見た。
「・・・」
アイツ、あたしを護る為に必死に戦っていた。
勝てるわけがないじゃん、あれは、相手はトビィとその竜二体。
あたしでも手古摺る相手なんだし、無理に決まっている。
けど。
思ったよりアイツは強かった。
・・・忠実なお人形さん。
時間稼ぎ、しておいてね。
とりあえず、あたしは逃げよう。
勝てないもん、単体でならどうにかなりそうだけど。
・・・。
逃げようよ、あたし。
窓から見てないで、逃げようよ。
折角お人形が戦っているんだから、逃げようよ。
「・・・勝てない癖に・・・」
窓から見ていたら、案の定アイツは地面に叩きつけられていた。
でも。
それでも。
何故か。
立ち上がって。
一生懸命。
血を、流しながら。
・・・なんで。
どーして。
あれだけダメージを受ければ。
あたしの術くらい。
・・・解ける筈なのに。
ばかみたーい。
ばかみたーい・・・。
『護ってあげるからね』
そう言って笑ったアイツが。
・・・あぁ、もう!
馬鹿は、あたしだったらし-。
「天より来たれ我の手中に、その裁きの雷で我の敵を貫きたまえ。眩き光と帯びる炎、互いに呼応し進化を遂げよっ! 我の前に汝は消え行く定めなり、その身を持って我が魔力の贄となれっ」
思わず、窓から飛び出してトビィに向けて電雷系最大の魔法を詠唱、一気に叩き落した。
「アンタ、何やってんの!? ばっかじゃないの!?」
ボロボロになったコイツを引っ張りあげて、怒鳴りつける。
「助けにきたわけじゃなくて、楯になってもらうから、今、死なれると困るだけだから、それだけだからねっ!」
コイツ。
あたしを見て何をするかと思ったら。
「出てきたらダメじゃないか! ちゃんと隠れてないとっ」
はぁ?
なんなの、コイツ。
マントをむしりとって、あたしに被せると、何やらトビィに弁解を始めていた。
「こ、この子は違うんだ。何も悪い事はしてないんだ」
「・・・つまり、なんだ。トモハルお前、ソイツ、庇ってるわけだな?」
低いトビィの声、マントから顔を覗かせて睨みつけてやる。
ここであたし、重大な事に気がついた。
トビィの竜は、三体だ。
・・・一体、足りない。
それは、つまり。
「トビィお兄様っ!」
身体が硬直する。
恐る恐る振り返ってみたら、黒竜・デズデモーナに乗ったおねーちゃんが間近に居た。
気がつけば、他にも勇者達やら、おねーちゃんの仲間らしき人間が大勢居た。
は・・・あはは・・・。
勝てるわけ、ないじゃんね?
あたしには、コイツしかいないのに。
おねーちゃんには・・・こんなに、たくさん・・・。
・・・悔しいっ。
思わず、目の前に居たトモハルの首筋にナイフを突きつけた。
人質だから、こうしてこのまま逃げよう。
勇者なんだから、効果は抜群の筈だった。
「オレは別にトモハルが死んでも支障はないから、な」
言って、いきなり突っ込んできたトビィ。
はぁ!?
勇者なのに、大事にされてないの、コイツっ。
なんて役立たずっ。
剣を大きく振り被ったトビィに、思わず瞳を閉じるあたしだけど、鈍い音がして目の前のコイツのうめき声が聞こえた。
微かに瞳を開く、剣を受け止めて、懸命に跳ね返そうとしている人形が・・・居た。
「不甲斐ない、な。いい加減目を覚ませ」
「うるさいなぁっ、さっきから、この子は悪い子じゃないって言ってるだろっ」
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