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キミを見つけた
間違いなく、キミだと直感
手首を掴んで振り向かせたら、案の定キミだった
不思議そうな顔をして、いきなり平手打ちをしてきた
キミだ、と思ったから嬉しくて笑ったら
キミは気味悪がって俺から逃げ出した
約束、果たそうと思って
お城に住みたいと言っていたから、無理をして国王に名乗り出てみた
アレが欲しい、これが欲しい、言うから全部買おうと思って
それが食べたい、どれも食べたい、言うから全部取り寄せようと思って
我侭を、全部叶えようと思ったんだ
無茶苦茶言って、怒って拗ねているキミは可愛い
跳ね除けられて、自暴自棄で八つ当たりしてきても可愛い
誰にでも我侭言っていいよ、キミの好きなようにすればいい
けれど
必ずその我侭を叶えられるのは俺だけだと
何時の日か気づいてくれればいいな、と
気づいてくれるまで、解って貰えるまで
ずっと、ずっと、願いを叶え続けるんだ
今までキミが我慢していたことも、全部俺に言えばいい
必ず、叶えてあげるから
さて、何処へ身を潜めよう。
あたしの存在がバレたから、きっと血眼で捜してくるに違いない。
後ろからついてくるコイツをちらり、と見て・・・あ。
灯台下暗し、ってやつ?
コイツの家に身を潜めよう、誰も勇者の家にあたしがいるだなんて思わない。
当分そこでコイツからおねーちゃんの仲間の情報を聞き出すの。
・・・まさかホントにコイツの家、ビルの隙間じゃないでしょうね・・・?
「ねぇ、おうちまで連れてって。あたし、疲れた」
「・・・」
頷いたので、あたしは手を取る。
じてんしゃでコイツの家へ行った。
・・・思ったより大きい。
おまけに、くるまが三台置いてある。
くるまがあるなら、これでちゃんと迎えに来てよね! 馬鹿にしてんの!?
と、怒っても仕方がない。
コイツが二階の窓を指差した、あそこから入れ、ということだろう。
ふわり、と浮いて、窓の鍵を魔力であけて、あたしはするり、とコイツの部屋に侵入した。
暫くして、部屋にコイツも入ってくる。
ジュースとお菓子を持ってきてくれたので、遠慮なく頂くとして。
あ、ぷりくらが飾ってある。
お、これが勇者一同様のしゃしん? へぇ・・・。
ふーん・・・。
物珍しいものが色々あったので、あたしはすることもないし、適当に見てまわった。
「とりあえず、あたし、眠い。寝る」
ぼふん、とベッドに転がって瞳を閉じた。
思ったより、ふかふかだし、なんかいー匂いがする。
瞳を閉じてうとうとしていたら、昼間のトランシスが甦ってきて。
あの瞳が怖くて、言われた言葉が痛くて、突き飛ばされた時の擦り傷がズキズキして。
「・・・ふぇ」
思い出したら、泣けてきた。
コイツが隣に居たけれど、操り人形だし見られているわけではないので、泣いた。
だって・・・ホントに怖かったんだ、痛かったんだ。
全否定されたような、あたし。
あたしだって、おねーちゃんみたく笑ってみたい。
あんなふうに、くるくる廻るように愉しそうに生きてみたい。
そしたら、誰かが、きっと・・・。
ぎゅ
・・・? ん? なんだ???
涙を脱ぐって左手を見たら、コイツ、何故か手を握ってきた。
・・・。
あたし、手を握れなんて命令した?
それとも、あたし、そう思ったからコイツが反応したのかな・・・。
あたし、手を握って欲しかったのかな。
また、夜が、眠るのが怖くて、コイツでもいいから、手を握って欲しかったのかな。
コイツが、軽く微笑んだ気がしたけれど、妙にあったかかったその手に不覚にも安心したあたしは・・・。
そのまま寝て、起きたら朝だった。
コイツ。
ずっと同じ体勢で手を繋いでいてくれたらしくて、やっぱり、そこにいた。
なんとまぁ、忠実な人形。
これなら、あたしを護って死んでくれそう。
数日後、コイツのトコに誰かが来たので思わず隠れる。
「トモハル、お前何やってんだよ! アサギの偽者がやっぱり地球に来ててさ、トランシスが遭遇したらしいけどブチ切れしてて手に負えなくて。ともかく、捜索中だぜ!? お前家で何してんの!?」
顔を見る。
ミノルだ、勇者ミノル。
厄介な奴が来た、また勇者だ。
コイツも人質に取ろうかな?
「早く着替えろ、行くぞっ。武器武器・・・」
っ、部屋に 入ってきた!
思わずクローゼットの中に滑り込むあたし、何やってんだろ。
とりあえず、このままここで待機して・・・。
「はい、セントガーディアン! ほい、マント! 服は何処だよ、服はっ」
ガチャ
音がして、眩しい光が差し込んできたと思ったら。
目の前にミノルが居た、視線が交差する。
「ど、どちらさまー!?」
「ちっ、面倒!」
仰天して仰け反ったミノルを蹴り上げる、逃げよう。
マントを羽織って、剣を装備したコイツがあたしを引っ張ると、窓から飛び出した。
「いってぇっ! おい、トモハル、トモハル!?」
窓から飛び出して、浮遊なんて出来ないと思っていたけど、コイツはあたしを抱えたまま浮遊して何処かへ向った。
・・・飛べたのか、コイツ。
ミノルが大声で喚いてた、無視してコイツは飛び続ける。
やがて、気がついたら・・・ここ・・・。
見覚えのある風景、空気。
「もしかして、あたしが最初に居た場所?」
「・・・」
深く頷くコイツ、チキュウから、元の場所へ戻ってきたんだ。
魔界イヴァン、久し振りに戻ってきた。
ここなら、あたしの小屋がまだあるはずだから、当分そこに身を顰めよう。
閉じ込められていた結界の場所に、舞い戻るなんて思わなかったけど。
コイツに手を握られて眠るのにも、慣れた。
昔から使っていた小さなベッドに転がって、何時ものように手を握って貰って眠りに就く。
明日から、作戦を考えなきゃいけない。
きっとここも直ぐに見つかるだろう、戦わねばならない。
切り札は、コイツ。
久し振りの自宅なのか、どうも腑に落ちなくて、あたしは眠れなかった。
起き上がってワインを取りに行くと、グラスに注いで飲み干す。
「飲む?」
一応コイツにも聞いてみた、首を横に振られた。
「あたし、ね・・・」
ぽつり、ぽつりと、コイツに、人形のコイツだからこそ気兼ねなく話をしてみる。
酔ってきたのもあるだろうし、なんとなく誰かにぶちまけたくなった。
「おねーちゃんの、身代わりというか、影武者なんだ」
ずっと、そのせいでここに閉じ込められてた。
そして、友達もいなくて一人ぼっち。
両親は昔死んだし、おにーちゃんも死んだ、弟は行方不明。
あたしだけ、ここにいる。
「べ、別に寂しいわけじゃないんだからねっ」
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