別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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転載で力尽きて、本編が進まないという恐ろしい事態です。
あ。
http://novel18.syosetu.com/n2350v/
最近、小説家になろう、様でも投稿しています。(転載という)
こちらだと、何個も連載してよいのです!
で。
↑あれこれそれ置き場、こちらに移動させていただきました(おぃ)。
ネタバレになるので、まだトラアサの転載してませんけど、外伝4の、どうでもいい話が載ってます。
トモハラ×マビルじゃなくて、マローはタイミング的に何処にも入れられないのでありません(宣言)。
ベルガー×マローとか、トレベレス×マローとかは出来ますが、作者が全力で拒否(おぃ)。
←ここから9月3日。
無事? 小説家になろう様サイトにて、外伝4が完結いたしました。
そういうわけで、マビルとクロロン。
早く本編進めよう、うん。
あ。
http://novel18.syosetu.com/n2350v/
最近、小説家になろう、様でも投稿しています。(転載という)
こちらだと、何個も連載してよいのです!
で。
↑あれこれそれ置き場、こちらに移動させていただきました(おぃ)。
ネタバレになるので、まだトラアサの転載してませんけど、外伝4の、どうでもいい話が載ってます。
トモハラ×マビルじゃなくて、マローはタイミング的に何処にも入れられないのでありません(宣言)。
ベルガー×マローとか、トレベレス×マローとかは出来ますが、作者が全力で拒否(おぃ)。
←ここから9月3日。
無事? 小説家になろう様サイトにて、外伝4が完結いたしました。
そういうわけで、マビルとクロロン。
早く本編進めよう、うん。
緊急事態が起こっている中、そんなこと露知らずなアサギとハイ、ホーチミンは仲良く魔法の練習をしていた。若干、なにやら騒がしいとハイが思ったが、アサギ以外どうでも良いので放置である。
ハイが気付き、即座に参戦していたら何か未来が変わっていたかもしれない。
……いや、訂正しよう。”変わらなかった”。
「それで、どうしますかハイ様。アサギちゃんにどちらから教え込みます?」
「そなたの手が空いている自分は、そなたが教えてくれ。私は食事の手配をしつつここで見ている」
「畏まりました」
言うなりハイは近くに居た衛兵を呼び寄せた、昼食をここで摂りたいので用意しろ、と言っているらしい。
慌てて食事担当を連れてくるために走り去る衛兵、ハイは満足そうに脚を組み、踏ん反り返って椅子に座っている。
ホーチミンは気兼ねなく、アサギの肩に手を置き、微笑した。緊張気味のアサギを解したいらしい。
「ほら、楽にね。火炎の魔法から極めて行きましょうか。もう一度、出来るところまで見せてもらえるかしら」
「はい」
アサギは神経を集中させて詠唱に入る、アサギの周囲から彼女を護るように空気が立ち昇り始めた。
ふわり、とスカートが揺れてアサギの腕がしなやかに伸びる、思わずホーチミンの背筋に寒気が走っていた。
アサギから放たれた、火炎の魔法。相殺すべく、ホーチミンも瞬時に火炎を操る。
その勢いに、思わずアサギは感嘆の溜息を漏らした。だが、ホーチミンの額には汗。
ハイは気付かなかったのか、アサギの底知れない魔力に。
多彩な魔法を使いこなす事が出来る理由など知らないが、少なくとも解った事がある。
アサギを取り囲む周囲の空気が、アサギに忠実だ、ということだ。
「アサギちゃん。上位の魔法を覚えたい? それとも、出来る限り多彩な魔法を覚えたい?」
「え?」
近寄ってきたホーチミンに、アサギは首を傾げると聞きなおした。
「多彩?」
「えぇ。まだアサギちゃんが知らない魔法があるわ。個人的に、アサギちゃんが何処まで相反する魔法を覚えられるか見てみたい気もするの」
「そうなんですか、ならそれでも良いです。頑張りますから」
微笑むアサギの髪をそっと撫でると、ホーチミンは次に影縛りの魔法を教えることにする。
攻撃補助魔法だ、ムーンが使用可能だった。アサギはその威力を見ていないが。
夢中で教わる中、昼食が運ばれてきた。ハイの声と共に一時、訓練は終了である。
三人は、芝生に座り込み香りよい食事に胸を躍らせる。本日は鶏挽肉にワカメを混ぜ込み作ったダンゴのスープと、ライ麦のパン、それにメロンだ。
「海藻類はお肌に良いからね、たくさん戴きましょう」
いそいそとホーチミンがスープをすする、満足そうに瞳を閉じて、パンに齧りついた。料理人が控えているので、お替りは自由だ。
アサギも夢中で食べるが、早く魔法の練習を再開したいからだった。とても愉しく感じられてしまった、もっともっと、たくさんの魔法を覚えたかった。
意欲的なアサギの前向きな姿勢か、それとも実力なのか。
午後から影縛りは無論、防御壁を出現させ魔法を跳ね返すことも出来るようになる。
恐ろしいまでの伸び様子に、ホーチミンも呆気に取られる。
「禁呪レベルも教えたいくらいだわ。習得できそう」
「? どんなのですか?」
「私は使えないけど、魔法が持ち主を選ぶ事があるの。世界にたった一人、使える魔法が幾つか存在するのよ。明日、図書館で調べてくるわ、お休みいただくわね」
何故か、ホーチミンの胸が弾む。勇者など辞めさせて、自分の弟子に引き込みたいくらいの逸材だ。
ホーチミンが休みならば、明日はハイが教師だ。三人は暗くなるまで訓練を続け、夕飯を食堂で摂ると別れる。
スリザも、アイセルも、サイゴンも、そこにはいなかった。
「めっずらしー。アイセルなんか、毎日ってくらい、ここで酒呑んでるのに」
不思議そうにパスタを絡めながら口へ運ぶホーチミンの傍ら、アサギもそう言われると不安になる。
「大丈夫でしょうか? 何かあったのでしょうか」
「気にしなくていいわよぉ、そのうち来るから」
と、ホーチミンは笑ったが、結局会うことは出来なかった。当然だ、スリザは眠ったままで、二人は城内で調査をしたままだった。
翌日、アサギはハイと二人きりで魔法の訓練を再び開始した。
アレクとリュウが観に来ていたが、そこに、スリザの姿はやはりなかった。
「……変ですハイ様。スリザ様がいらっしゃらないんです」
「たまには、そういう時もあるだろう」
「…………」
何故か不安そうなアサギを励ますように、ハイはアサギに魔法を教える。だが、甘い授業では進まない。ホーチミンが教師がいいな、と軽くアサギは溜息を零した。
ホーチミンが図書館で調べものをしていた頃、運悪くサイゴンとアイセルと出くわしてしまう。
くまなく城内を探索していたので、絶対に訪れない場所で会った事で、ホーチミンに追求されてしまった。
サイゴンに押し付けると、一旦戦線離脱するアイセル。上手く丸め込め、キスでもして。と、耳元で無茶振りを言い全速力で図書館を飛び出したアイセル。
面倒なので、アレクに許可を貰いに行ったのだった、ホーチミンも仲間に引き入れてもいいか、という事だ。アサギもハイも信頼しているし、何より二人に近い人物。話して置いて損はないだろう。
「で、なんで二人してこんなとこにいるのよぉ」
「いや、だから。偶然」
「偶然で、剣士と武術師が図書館にいるのぉ!? 逢瀬してたんじゃないのぉ!?」
「気味悪い事言うなよ!」
どうしていつも恋愛ごとに持って行きたがるんだっ、と鳥肌を押さえつつ腕を全力で擦る。アイセルなんてごつい男は、論外だ。
「じゃあ話してよっ。なんなのよっ」
「お前こそどうしてココにいるんだ? アサギ様は」
「アサギちゃんの魔法を探しに来ているのっ」
金切り声のホーチミン、いい加減青筋浮かせて管理人がやってきた。二人を有無を言わさずつまみ出して図書館の外へと放り捨てる。
図書館の管理人は、基本腕力自慢だ。こういった時に備えて、もあるのだが多大な本の片づけをするためには力が必須である。
腰を擦りながら、ホーチミンは項垂れて廊下の壁にもたれこんだ。やる気をなくしたらしい。
「あーあー、魔法が。また明日来ようかな。あ、でも明日はお仕事だ」
「アサギ様だって、待っていてくれるさ、じゃな」
そ知らぬ顔して立ち去ろうとしたサイゴンのマントを思い切り引っ張る、首が後ろにガク、となればサイゴンが苦しそうに首元を擦った。
「殺す気かっ」
「逃げないでよ、暇になったから責任とって」
「忙しい、じゃ!」
逃げることをサイゴンは諦めなかった、が、ホーチミンとて負けてはなかった。マントを踏みつけたまま、その場から動かなかった。忌々しそうにマントを脱ぎ捨てても逃走しようとしたサイゴンだが、首からマントを外した瞬間だ。
眉間に皺を寄せてマントを地面に落とした時、目の前にはホーチミン。
声を出す間もなく、唇を塞がれる。
「!」
チュ、と軽い音。触れた唇は、柔らかかった。そして、甘かった。
唖然としていたサイゴンだが、軽く微笑んだホーチミンが悪戯っぽく片目を閉じてスキップ気味に走り出し、ようやく自分の唇に指を当てる。
「う、うわあああああああああああああああっ」
悲鳴が図書室に入り込み、再び管理人が出てきてサイゴンの頭部を分厚い本ではたいた。が、それどころではない。
唇を必死に擦りながら、マントを拾い上げると一目散に走り出す。
口付けなど、大人になってから初めてだった。まさか相手がホーチミンになろうとは、思ってなかった。
「トビィ! 助けてくれえええええっ」
混乱して、どうにもならない相手の名を呼んでみる。いるわけがないし、いたところでどうにもならない。
サイゴンは走った、自分が今どんな顔をしているのかわからないが、誰にも見られたくなかったのでマントで不自然に顔を覆い隠す。窒息しそうだった。
「サイゴン!?」
アイセルの声だった、辛うじて布の隙間から様子を窺えば、アレクも一緒だった。流石に頭が冷えてマントを脱ぎ去ると床に片膝つく。
荒い呼吸、不自然な態度に、アレクは困惑した。が、アイセルは何かあったな、と直様理解。冷静さをサイゴンが失うのは、毎度ホーチミン絡みだった。
「ホーチミンにも、話をしておいて欲しいと今アイセルに頼んだところだ。サイゴンも宜しく頼む」
戸惑いがちに告げたアレクに、牙をむく勢いでサイゴンは面を上げた。流石に隣でアイセルも唖然としてしまう。拳を震わしながら、サイゴンは告げた。
「あ、あいつとて、女です! 狙われるかもしれませんっ」
「ホーチミンは男であろう?」
すんなりと否定したアレクだが、思わずサイゴンは自分の口元を塞いだ。瞬間、アイセルが悟ってしまう。
静まり返る廊下で、サイゴンは赤面しながら腕で自分の顔を覆い隠した。何も言えずに、縮こまっている。
「男であろう? 美しいが」
悪気はないが、アレクは二回、繰り返した。アレクは非常に他人の恋慕に疎いのが、欠点である。魔王ゆえ、気にせずとも良いのだろうが、それにしても酷すぎる。
深い溜息と共に、アイセルは聞かなかった振りを決め込んだ。
「アレク様。私から話をしておきます、参りましょう。スリザ隊長は?」
「医師の話では、記憶が抜けているらしい。安否を気遣い、当分任を外す」
平伏したまま、サイゴンは震えていた。まさか、ここであんな言葉を言う羽目になろうとは。ホーチミンが不在で、本当に心底良かったと安堵する。
「今晩、食堂で」
耳元で囁いてきたアイセルに身体を震わし、サイゴンは静かに項垂れた。
暫し、足音が遠ざかってもサイゴンはその場から動けずにいた。非常に、嫌な一日だった。
振り返れば、走馬灯の様に今日の出来事が流れていき、記憶を消したくなってくる。
ようやくおぼつかない足取りでサイゴンは立ち上がると、壁に手をつきながら歩き始めた。
「疲れた」
一言。
ふと見れば、ハイとアサギが魔法の訓練中だったので、気分転換にそちらに顔を出す事にしたサイゴン。階段を下りるのが面倒だったので、手すりから一気に庭へと跳躍する。
上から振ってきたサイゴンにアサギは若干驚いたが、すぐに屈託のない笑みを浮かべて会釈をしてきた。
トス、と華麗に地面に着地したサイゴンをハイは忌々しそうに見つめてきたが、引き攣った笑顔で応対するしかない。
「お二人で訓練ですか、ご苦労様です」
「こんにちは、サイゴン様」
朗らかなアサギの後方、ドス黒いオーラを纏ったハイが、左手に何か魔力を籠めていた。
邪魔された事をやっかんでいるのは解るが、邪魔したくて来たわけではない。
「あの、ハイ様。アレク様から伝言がありますので、少々お時間戴けますか」
「面倒だな、ここで言え」
「……お耳拝借」
アサギの目の前で、二人して密かに話し出す。
聞きたいが、遠慮してアサギは一人で黙々と訓練を開始した。
地面に手をついて、自分の気の流れを探るように意識を集中させる。
その、後方で。
「……というわけで、ハイ様もお気をつけください。アサギ様にも十分注意を」
「成程、返り討ちにしてくれるわ」
鼻息荒く仰け反ったハイに頭をたれ、別れの挨拶をしようと思った矢先のこと。
パン!
何かが爆ぜた音に慌てて二人はアサギを見つめる、中心でアサギが惚けていた。
唖然と、二人も見つめれば。
「何をした、アサギ」
ハイが絞り出した声に、アサギは返答しない。ただ、惚けたまま庭を見つめる。
百花繚乱、庭に美しい花が一気に咲き誇っていた。
ハイが見た事がない花が多々ある、アサギには解っていたが。
桜の樹から舞い落ちる美しき日本の風景、下では紫陽花に桔梗。山百合が凛として佇む。
「……あの、私、何をしたんでしょう」
地面に手をつき、ホーチミンに昨日教わったように神経を集中させていた。それだけだ。
無言で、三人は花香る庭に佇む。美しい魔法だが、ハイには判別できない種類だった。
攻撃でも、補助でもなんでもない、ただ、人の目を癒すための魔法である。
昨日、ロシファが扱った魔法と、ほぼ同質である。エルフ特有だと思って居たが違うらしい。
「……アサギ、そなたひょっとして最も得意な魔法は土属性なのでは」
「土? ですか? えーっと、石の飛礫を敵にぶつけたりとか?」
「それもだが、地震を発生させたり植物の蔓を使って敵を絡めたりなど出来る」
瞬時に花を咲かせる者が人間に居たとは、低く呻くハイだが、直ぐに切り替える。
「まぁ、アサギは美しいから。花に好かれるのも無理はない」
勇者にはあまり関係がないのでは、とアサギは思ったがこれはこれでよかったと思い直した。
三人は暫し、庭で寛ぐ。
しかしこうして花見をしていると、口元が寂しくなるというもの。
サイゴンは気を利かせて、飲み物の調達に向かう。と、アレクと擦れ違った。
「アレク様! アサギ様が驚くべき魔法を使いましたよ! 庭に行ってみてください、驚かれますよ」
「? 解った。どのみち、ハイに用事もあることだ」
サイゴンは四人分の飲み物を食堂から運ぶ、キゥイとグレープフルーツを絞った酸味の利いたものだった。
庭に戻れば、アサギがまた、庭を変化させている。どれだけ庭に花を咲かせるつもりなのか、サイゴンは微かに笑った。あぁ、ホーチミンが観たら歓喜の悲鳴を上げそうだ、と。
「待っていた、サイゴン。ハイと席を外す、アサギを護衛していてくれないか」
「は?」
飲み物を手渡しながら、サイゴンがハイを観れば、不服だが仕方ないとばかりに軽く頷いていた。
頭をかきつつ承諾、二人の魔王を見送り庭で遊んでいるアサギを見つめる。
非常に美しい女の子だ、それこそ、自分の理想通りの。
腕を伸ばせば蝶がやってきて、指先に止まっている。どうしてこの子は勇者なのだろう、ふと、疑問が湧いた。
「あ、サイゴン様」
「はい、いかがされました」
蝶と戯れながら近寄ってきたアサギは、笑顔で度肝を抜くような台詞を吐いたのだ。
「良い機会なので、剣を教えてください」
無理です。
サイゴンは即答しようと思ったが、泣かれたら困ると思い直ししばし無言でアサギを見つめる。
ハイに見つかれば大目玉だ、死刑宣告されそうだ。
だが、アサギの願いを断れば、それはそれでハイが怒り狂いそうだ。
どうしたものか。
「あの、駄目でしょうか?」
「い、いえ。俺でよければ」
サイゴンは、腹を括る。勇者の剣を、見てみたい好奇心に負けていた。
飲み物を飲み干し、すらり、と自慢の剣を引き抜くとアサギに手渡した。流石にそれは重いので、両手で抱えるしかないアサギ。
「素振りを始めましょう、ここには剣がこれしかないので」
「はい!」
久し振りの運動に、アサギは嬉しそうに剣を振り続ける。
本来片手剣だが、懸命に両手で上下に振るアサギ。サイゴンは何か剣の代わりになるものはないか、と目を庭に走らせた。
枝を折ればどうにかなりそうだが、アサギが哀しみそうなのでこの件は却下する。
他には、何もない。
サイゴンは仕方なく肩を竦めるとアサギの素振りを見ていた、なかなかの姿勢だったので声をかける。
「上手ですね、誰かに習いましたか?」
「あ、はい。みんなが教えてくれました」
やがて慣れたのか、アサギはヒュン、と剣で舞うかのように、受身を取り、斬りかかり、一人で型を作り始める。
見事だった、自分の剣だが、アサギに従属しているように見えてくる。
満足そうに頷いていたサイゴンだったが、不意に懐かしさが込み上げた。
トビィを思い出した、当初トビィもこうして剣を両手で扱っていたものだ。
新しく出来るかもしれない、二人目の人間の弟子にサイゴンは口元に笑みを零す。
が、どうにも腑に落ちない。
目の前のアサギが、トビィに見えて仕方がない。
「……いやー、トビィにそっくり」
「え?」
思わず呟いたサイゴンに、アサギの手が止まる。
唖然と息を切らせて、首を傾げると控え目にアサギが告げた。
「トビィって、あの、紫銀の髪のですか? やたらかっこいいお兄さんの?」
「へ? 知っているのですか?」
二人は、目をぱちくりと瞬きし、互いの顔を指差す。
「え? どうして?」
「え? 会った事が!?」
偶然ではなく、必然。
ようやくここで、トビィを介して二人が繋がる。混乱する二人を、上からリュウが見下ろしていた。
つまらなそうに、見下ろしていた。
ハイが気付き、即座に参戦していたら何か未来が変わっていたかもしれない。
……いや、訂正しよう。”変わらなかった”。
「それで、どうしますかハイ様。アサギちゃんにどちらから教え込みます?」
「そなたの手が空いている自分は、そなたが教えてくれ。私は食事の手配をしつつここで見ている」
「畏まりました」
言うなりハイは近くに居た衛兵を呼び寄せた、昼食をここで摂りたいので用意しろ、と言っているらしい。
慌てて食事担当を連れてくるために走り去る衛兵、ハイは満足そうに脚を組み、踏ん反り返って椅子に座っている。
ホーチミンは気兼ねなく、アサギの肩に手を置き、微笑した。緊張気味のアサギを解したいらしい。
「ほら、楽にね。火炎の魔法から極めて行きましょうか。もう一度、出来るところまで見せてもらえるかしら」
「はい」
アサギは神経を集中させて詠唱に入る、アサギの周囲から彼女を護るように空気が立ち昇り始めた。
ふわり、とスカートが揺れてアサギの腕がしなやかに伸びる、思わずホーチミンの背筋に寒気が走っていた。
アサギから放たれた、火炎の魔法。相殺すべく、ホーチミンも瞬時に火炎を操る。
その勢いに、思わずアサギは感嘆の溜息を漏らした。だが、ホーチミンの額には汗。
ハイは気付かなかったのか、アサギの底知れない魔力に。
多彩な魔法を使いこなす事が出来る理由など知らないが、少なくとも解った事がある。
アサギを取り囲む周囲の空気が、アサギに忠実だ、ということだ。
「アサギちゃん。上位の魔法を覚えたい? それとも、出来る限り多彩な魔法を覚えたい?」
「え?」
近寄ってきたホーチミンに、アサギは首を傾げると聞きなおした。
「多彩?」
「えぇ。まだアサギちゃんが知らない魔法があるわ。個人的に、アサギちゃんが何処まで相反する魔法を覚えられるか見てみたい気もするの」
「そうなんですか、ならそれでも良いです。頑張りますから」
微笑むアサギの髪をそっと撫でると、ホーチミンは次に影縛りの魔法を教えることにする。
攻撃補助魔法だ、ムーンが使用可能だった。アサギはその威力を見ていないが。
夢中で教わる中、昼食が運ばれてきた。ハイの声と共に一時、訓練は終了である。
三人は、芝生に座り込み香りよい食事に胸を躍らせる。本日は鶏挽肉にワカメを混ぜ込み作ったダンゴのスープと、ライ麦のパン、それにメロンだ。
「海藻類はお肌に良いからね、たくさん戴きましょう」
いそいそとホーチミンがスープをすする、満足そうに瞳を閉じて、パンに齧りついた。料理人が控えているので、お替りは自由だ。
アサギも夢中で食べるが、早く魔法の練習を再開したいからだった。とても愉しく感じられてしまった、もっともっと、たくさんの魔法を覚えたかった。
意欲的なアサギの前向きな姿勢か、それとも実力なのか。
午後から影縛りは無論、防御壁を出現させ魔法を跳ね返すことも出来るようになる。
恐ろしいまでの伸び様子に、ホーチミンも呆気に取られる。
「禁呪レベルも教えたいくらいだわ。習得できそう」
「? どんなのですか?」
「私は使えないけど、魔法が持ち主を選ぶ事があるの。世界にたった一人、使える魔法が幾つか存在するのよ。明日、図書館で調べてくるわ、お休みいただくわね」
何故か、ホーチミンの胸が弾む。勇者など辞めさせて、自分の弟子に引き込みたいくらいの逸材だ。
ホーチミンが休みならば、明日はハイが教師だ。三人は暗くなるまで訓練を続け、夕飯を食堂で摂ると別れる。
スリザも、アイセルも、サイゴンも、そこにはいなかった。
「めっずらしー。アイセルなんか、毎日ってくらい、ここで酒呑んでるのに」
不思議そうにパスタを絡めながら口へ運ぶホーチミンの傍ら、アサギもそう言われると不安になる。
「大丈夫でしょうか? 何かあったのでしょうか」
「気にしなくていいわよぉ、そのうち来るから」
と、ホーチミンは笑ったが、結局会うことは出来なかった。当然だ、スリザは眠ったままで、二人は城内で調査をしたままだった。
翌日、アサギはハイと二人きりで魔法の訓練を再び開始した。
アレクとリュウが観に来ていたが、そこに、スリザの姿はやはりなかった。
「……変ですハイ様。スリザ様がいらっしゃらないんです」
「たまには、そういう時もあるだろう」
「…………」
何故か不安そうなアサギを励ますように、ハイはアサギに魔法を教える。だが、甘い授業では進まない。ホーチミンが教師がいいな、と軽くアサギは溜息を零した。
ホーチミンが図書館で調べものをしていた頃、運悪くサイゴンとアイセルと出くわしてしまう。
くまなく城内を探索していたので、絶対に訪れない場所で会った事で、ホーチミンに追求されてしまった。
サイゴンに押し付けると、一旦戦線離脱するアイセル。上手く丸め込め、キスでもして。と、耳元で無茶振りを言い全速力で図書館を飛び出したアイセル。
面倒なので、アレクに許可を貰いに行ったのだった、ホーチミンも仲間に引き入れてもいいか、という事だ。アサギもハイも信頼しているし、何より二人に近い人物。話して置いて損はないだろう。
「で、なんで二人してこんなとこにいるのよぉ」
「いや、だから。偶然」
「偶然で、剣士と武術師が図書館にいるのぉ!? 逢瀬してたんじゃないのぉ!?」
「気味悪い事言うなよ!」
どうしていつも恋愛ごとに持って行きたがるんだっ、と鳥肌を押さえつつ腕を全力で擦る。アイセルなんてごつい男は、論外だ。
「じゃあ話してよっ。なんなのよっ」
「お前こそどうしてココにいるんだ? アサギ様は」
「アサギちゃんの魔法を探しに来ているのっ」
金切り声のホーチミン、いい加減青筋浮かせて管理人がやってきた。二人を有無を言わさずつまみ出して図書館の外へと放り捨てる。
図書館の管理人は、基本腕力自慢だ。こういった時に備えて、もあるのだが多大な本の片づけをするためには力が必須である。
腰を擦りながら、ホーチミンは項垂れて廊下の壁にもたれこんだ。やる気をなくしたらしい。
「あーあー、魔法が。また明日来ようかな。あ、でも明日はお仕事だ」
「アサギ様だって、待っていてくれるさ、じゃな」
そ知らぬ顔して立ち去ろうとしたサイゴンのマントを思い切り引っ張る、首が後ろにガク、となればサイゴンが苦しそうに首元を擦った。
「殺す気かっ」
「逃げないでよ、暇になったから責任とって」
「忙しい、じゃ!」
逃げることをサイゴンは諦めなかった、が、ホーチミンとて負けてはなかった。マントを踏みつけたまま、その場から動かなかった。忌々しそうにマントを脱ぎ捨てても逃走しようとしたサイゴンだが、首からマントを外した瞬間だ。
眉間に皺を寄せてマントを地面に落とした時、目の前にはホーチミン。
声を出す間もなく、唇を塞がれる。
「!」
チュ、と軽い音。触れた唇は、柔らかかった。そして、甘かった。
唖然としていたサイゴンだが、軽く微笑んだホーチミンが悪戯っぽく片目を閉じてスキップ気味に走り出し、ようやく自分の唇に指を当てる。
「う、うわあああああああああああああああっ」
悲鳴が図書室に入り込み、再び管理人が出てきてサイゴンの頭部を分厚い本ではたいた。が、それどころではない。
唇を必死に擦りながら、マントを拾い上げると一目散に走り出す。
口付けなど、大人になってから初めてだった。まさか相手がホーチミンになろうとは、思ってなかった。
「トビィ! 助けてくれえええええっ」
混乱して、どうにもならない相手の名を呼んでみる。いるわけがないし、いたところでどうにもならない。
サイゴンは走った、自分が今どんな顔をしているのかわからないが、誰にも見られたくなかったのでマントで不自然に顔を覆い隠す。窒息しそうだった。
「サイゴン!?」
アイセルの声だった、辛うじて布の隙間から様子を窺えば、アレクも一緒だった。流石に頭が冷えてマントを脱ぎ去ると床に片膝つく。
荒い呼吸、不自然な態度に、アレクは困惑した。が、アイセルは何かあったな、と直様理解。冷静さをサイゴンが失うのは、毎度ホーチミン絡みだった。
「ホーチミンにも、話をしておいて欲しいと今アイセルに頼んだところだ。サイゴンも宜しく頼む」
戸惑いがちに告げたアレクに、牙をむく勢いでサイゴンは面を上げた。流石に隣でアイセルも唖然としてしまう。拳を震わしながら、サイゴンは告げた。
「あ、あいつとて、女です! 狙われるかもしれませんっ」
「ホーチミンは男であろう?」
すんなりと否定したアレクだが、思わずサイゴンは自分の口元を塞いだ。瞬間、アイセルが悟ってしまう。
静まり返る廊下で、サイゴンは赤面しながら腕で自分の顔を覆い隠した。何も言えずに、縮こまっている。
「男であろう? 美しいが」
悪気はないが、アレクは二回、繰り返した。アレクは非常に他人の恋慕に疎いのが、欠点である。魔王ゆえ、気にせずとも良いのだろうが、それにしても酷すぎる。
深い溜息と共に、アイセルは聞かなかった振りを決め込んだ。
「アレク様。私から話をしておきます、参りましょう。スリザ隊長は?」
「医師の話では、記憶が抜けているらしい。安否を気遣い、当分任を外す」
平伏したまま、サイゴンは震えていた。まさか、ここであんな言葉を言う羽目になろうとは。ホーチミンが不在で、本当に心底良かったと安堵する。
「今晩、食堂で」
耳元で囁いてきたアイセルに身体を震わし、サイゴンは静かに項垂れた。
暫し、足音が遠ざかってもサイゴンはその場から動けずにいた。非常に、嫌な一日だった。
振り返れば、走馬灯の様に今日の出来事が流れていき、記憶を消したくなってくる。
ようやくおぼつかない足取りでサイゴンは立ち上がると、壁に手をつきながら歩き始めた。
「疲れた」
一言。
ふと見れば、ハイとアサギが魔法の訓練中だったので、気分転換にそちらに顔を出す事にしたサイゴン。階段を下りるのが面倒だったので、手すりから一気に庭へと跳躍する。
上から振ってきたサイゴンにアサギは若干驚いたが、すぐに屈託のない笑みを浮かべて会釈をしてきた。
トス、と華麗に地面に着地したサイゴンをハイは忌々しそうに見つめてきたが、引き攣った笑顔で応対するしかない。
「お二人で訓練ですか、ご苦労様です」
「こんにちは、サイゴン様」
朗らかなアサギの後方、ドス黒いオーラを纏ったハイが、左手に何か魔力を籠めていた。
邪魔された事をやっかんでいるのは解るが、邪魔したくて来たわけではない。
「あの、ハイ様。アレク様から伝言がありますので、少々お時間戴けますか」
「面倒だな、ここで言え」
「……お耳拝借」
アサギの目の前で、二人して密かに話し出す。
聞きたいが、遠慮してアサギは一人で黙々と訓練を開始した。
地面に手をついて、自分の気の流れを探るように意識を集中させる。
その、後方で。
「……というわけで、ハイ様もお気をつけください。アサギ様にも十分注意を」
「成程、返り討ちにしてくれるわ」
鼻息荒く仰け反ったハイに頭をたれ、別れの挨拶をしようと思った矢先のこと。
パン!
何かが爆ぜた音に慌てて二人はアサギを見つめる、中心でアサギが惚けていた。
唖然と、二人も見つめれば。
「何をした、アサギ」
ハイが絞り出した声に、アサギは返答しない。ただ、惚けたまま庭を見つめる。
百花繚乱、庭に美しい花が一気に咲き誇っていた。
ハイが見た事がない花が多々ある、アサギには解っていたが。
桜の樹から舞い落ちる美しき日本の風景、下では紫陽花に桔梗。山百合が凛として佇む。
「……あの、私、何をしたんでしょう」
地面に手をつき、ホーチミンに昨日教わったように神経を集中させていた。それだけだ。
無言で、三人は花香る庭に佇む。美しい魔法だが、ハイには判別できない種類だった。
攻撃でも、補助でもなんでもない、ただ、人の目を癒すための魔法である。
昨日、ロシファが扱った魔法と、ほぼ同質である。エルフ特有だと思って居たが違うらしい。
「……アサギ、そなたひょっとして最も得意な魔法は土属性なのでは」
「土? ですか? えーっと、石の飛礫を敵にぶつけたりとか?」
「それもだが、地震を発生させたり植物の蔓を使って敵を絡めたりなど出来る」
瞬時に花を咲かせる者が人間に居たとは、低く呻くハイだが、直ぐに切り替える。
「まぁ、アサギは美しいから。花に好かれるのも無理はない」
勇者にはあまり関係がないのでは、とアサギは思ったがこれはこれでよかったと思い直した。
三人は暫し、庭で寛ぐ。
しかしこうして花見をしていると、口元が寂しくなるというもの。
サイゴンは気を利かせて、飲み物の調達に向かう。と、アレクと擦れ違った。
「アレク様! アサギ様が驚くべき魔法を使いましたよ! 庭に行ってみてください、驚かれますよ」
「? 解った。どのみち、ハイに用事もあることだ」
サイゴンは四人分の飲み物を食堂から運ぶ、キゥイとグレープフルーツを絞った酸味の利いたものだった。
庭に戻れば、アサギがまた、庭を変化させている。どれだけ庭に花を咲かせるつもりなのか、サイゴンは微かに笑った。あぁ、ホーチミンが観たら歓喜の悲鳴を上げそうだ、と。
「待っていた、サイゴン。ハイと席を外す、アサギを護衛していてくれないか」
「は?」
飲み物を手渡しながら、サイゴンがハイを観れば、不服だが仕方ないとばかりに軽く頷いていた。
頭をかきつつ承諾、二人の魔王を見送り庭で遊んでいるアサギを見つめる。
非常に美しい女の子だ、それこそ、自分の理想通りの。
腕を伸ばせば蝶がやってきて、指先に止まっている。どうしてこの子は勇者なのだろう、ふと、疑問が湧いた。
「あ、サイゴン様」
「はい、いかがされました」
蝶と戯れながら近寄ってきたアサギは、笑顔で度肝を抜くような台詞を吐いたのだ。
「良い機会なので、剣を教えてください」
無理です。
サイゴンは即答しようと思ったが、泣かれたら困ると思い直ししばし無言でアサギを見つめる。
ハイに見つかれば大目玉だ、死刑宣告されそうだ。
だが、アサギの願いを断れば、それはそれでハイが怒り狂いそうだ。
どうしたものか。
「あの、駄目でしょうか?」
「い、いえ。俺でよければ」
サイゴンは、腹を括る。勇者の剣を、見てみたい好奇心に負けていた。
飲み物を飲み干し、すらり、と自慢の剣を引き抜くとアサギに手渡した。流石にそれは重いので、両手で抱えるしかないアサギ。
「素振りを始めましょう、ここには剣がこれしかないので」
「はい!」
久し振りの運動に、アサギは嬉しそうに剣を振り続ける。
本来片手剣だが、懸命に両手で上下に振るアサギ。サイゴンは何か剣の代わりになるものはないか、と目を庭に走らせた。
枝を折ればどうにかなりそうだが、アサギが哀しみそうなのでこの件は却下する。
他には、何もない。
サイゴンは仕方なく肩を竦めるとアサギの素振りを見ていた、なかなかの姿勢だったので声をかける。
「上手ですね、誰かに習いましたか?」
「あ、はい。みんなが教えてくれました」
やがて慣れたのか、アサギはヒュン、と剣で舞うかのように、受身を取り、斬りかかり、一人で型を作り始める。
見事だった、自分の剣だが、アサギに従属しているように見えてくる。
満足そうに頷いていたサイゴンだったが、不意に懐かしさが込み上げた。
トビィを思い出した、当初トビィもこうして剣を両手で扱っていたものだ。
新しく出来るかもしれない、二人目の人間の弟子にサイゴンは口元に笑みを零す。
が、どうにも腑に落ちない。
目の前のアサギが、トビィに見えて仕方がない。
「……いやー、トビィにそっくり」
「え?」
思わず呟いたサイゴンに、アサギの手が止まる。
唖然と息を切らせて、首を傾げると控え目にアサギが告げた。
「トビィって、あの、紫銀の髪のですか? やたらかっこいいお兄さんの?」
「へ? 知っているのですか?」
二人は、目をぱちくりと瞬きし、互いの顔を指差す。
「え? どうして?」
「え? 会った事が!?」
偶然ではなく、必然。
ようやくここで、トビィを介して二人が繋がる。混乱する二人を、上からリュウが見下ろしていた。
つまらなそうに、見下ろしていた。
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