別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
×
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間違えて小説をそのまま貼り付けてしまったので、訂正訂正。
急いでいるとロクなことが起こりませんね。
10分クオリティ、ボールペンのアース。
マビルを描くつもりだったのですが、今出番ないのでアースにしてみました。
一応いち記事につき、いち絵(らくがき)を目標にしています。
そうよね、毎日10分でも描き続けたら画力だって一年でレベルが1くらい上がるかもしれないもの・・・!
いい加減、デジタルに以降したいです、色塗りを。
やり方がイマイチわからない・・・。
周囲はプロばっかりなのになっ!
完全に出遅れましたなっ(項垂)。
外伝1を続けて書いて行きたいのですが、先走ると本編のねたばれ万歳なので今後も二ヶ月更新です。
・・・ぷろろーぐでばれてますけども。
小説家になろう 様用に書いてたわけじゃないから、そのまま転載したせいで・・・。
ま、いっか★
急いでいるとロクなことが起こりませんね。
10分クオリティ、ボールペンのアース。
マビルを描くつもりだったのですが、今出番ないのでアースにしてみました。
一応いち記事につき、いち絵(らくがき)を目標にしています。
そうよね、毎日10分でも描き続けたら画力だって一年でレベルが1くらい上がるかもしれないもの・・・!
いい加減、デジタルに以降したいです、色塗りを。
やり方がイマイチわからない・・・。
周囲はプロばっかりなのになっ!
完全に出遅れましたなっ(項垂)。
外伝1を続けて書いて行きたいのですが、先走ると本編のねたばれ万歳なので今後も二ヶ月更新です。
・・・ぷろろーぐでばれてますけども。
小説家になろう 様用に書いてたわけじゃないから、そのまま転載したせいで・・・。
ま、いっか★
アースはいつもの様に学校から帰宅すると自宅の部屋で、本を読み更けていた。今日手にしている本は、リュミの友達が貸してくれた愉快な童話だ。両親は「低俗な内容の本だわ、友人を選びなさい」と眉間に皺を寄せたが、アースは気にすることなく読んでいる。
幼い頃からアースが与えられ手にしてきた書物は、童話などなかった。歴史や土地の属性、代々の神々の出身地や動物、植物の図鑑などだ。
だからアースは知らない。幼い子供は寝る前に母親が童話を読んでくれること、子守唄を歌ってくれることを。アースは、腫れ物でも触るかのように常に家では一人だった。
だが今は違う、学校へ行けば友達も増えた。何故か両親は良い顔をしないが、そこまで制限されたくはない。
「楽しい本! こんなものがあるなんて、知らなかった。また、貸してもらえるかな……」
ベッドに転がりながら読み耽る。それは、友情を描いた冒険物の本だった。可愛らしいイラストつきで、夢中で読み終えてしまう。
友達とは、なんて素敵なのだろう。自分に足りないものを教えてくれる。傍にいてくれるだけで、何故か安心する。
勉強も一人よりも楽しい、皆で意見を出し合いながら解いていく事が、尚更楽しく思える。
アースは本を閉じると、窓から外を見つめる。風に木々が揺れていた、各家の明かりが揺らめいて見える。
「アース、入りますよ」
ノックの音に、アースは首を傾げて窓から離れる。珍しい来客だ、部屋に訪れる事など滅多にない。
「どうぞ、お母様」
母親の来訪に驚きを隠せないアース、夕食を済ませ水浴びも終えた。だから読書に耽っていたのだ、あとは就寝するだけである。
「しっかり勤勉に励んでいますか? 貴女は一族の期待の星なのです、生半可な努力ではいけませんよ。先程は口を出しませんでしたが、俗物な本など貴女には不要です」
「いいえ、お母様。俗物だなんて酷いです、とても楽しくてわくわくする素敵な本でした」
反論したアースに、母も目を吊り上げる。若干口調が強張っていた。
「偉大なる神のこと、把握していますね?」
「神様ですか?」
突如母が言い出した単語に、アースは再び首を傾げた。神の事ならば幼い頃から誰しも教えられていることだ、何を今更言っているのだろうか。
「男神クリフ様は、私達と同じ土の精霊出身です。就任されてから早百年ほど、最も若くしてその座に着いた偉大なるお方。
女神エロース様は、光の精霊出身です。就任されてから早三百年ほど、最も長くその座についていらっしゃる容姿端麗・才色兼備な全ての女性の頂点に立つお方」
「えぇそうですね。きちんと受け答えが出来るように今晩、お二方の経歴について再度調べておきなさい」
「受け答え?」
きょとん、としているアースに母は真顔で告げた。その様子は、とても親子には見えない。先生と生徒ですら、もっと愛情ある声で語り掛けないだろうか。無機質な母の瞳だが、アースは慣れていた。
「明日は、貴女の惑星の育成協力者の選出日です。最も優秀な貴女に、神々が直々にお声をかけてくださります。粗相のないようになさい」
「え、明日なのですか!?」
それは初耳だ、そろそろだとは聞かされていたが急すぎやしないだろうか。
選出されるとついに惑星へと移動する、学校から離れなければならないのだ。四六時中惑星にいなくても良いが、ほぼ付きっ切りで生活する為、こちらへ戻るのは容易ではない。親しくなった友人や、人間の少年少女に挨拶がしたかった。
口を噤んだアースに淡々と続ける母、横目で机の上の本を見つめる。
「ですから、そのような本など読まなくとも。
さ、支度をして惑星の育成についての本を読みなさい。……それから、他の育成に関わる精霊に関しての情報が入りました。女は貴女一人です、気を抜かないように、男になど負けないように励みなさい。命を育む重要な任務ですよ、浮き足立っていてはなりませんから。
”惑星を完成させる”それ以外は不要です、あまり親しくならないようになさい」
「お母様は、誰が私と共に惑星を作ってくださるのか、もうご存知なのですか?」
アースの声に答えることもなく、母は踵を返して去っていく。軽く溜息を一つ、アースは急いで荷造りを始めた。
と言っても、大してない。数枚の着替えと役立ちそうな動植物の図鑑や、飼育方法の本のみだ。
普通、家族の思い出の絵やら誕生日に貰ったオルゴールなどを土の精霊の少女達は持参するが、そのようなものすら、アースにはない。本だけが、アースの両親から貰ったものだ。
他には学校で出来た友達と日記を交換していたので、そのノートも持参する事にした。
言われた通りに二人の現神について、再度アースは調べ始める。輝かしい二人の足取りを、脳裏に憶え込んだ。
その頃、一階では。
「……全員同姓ならよかったのに。心配だわ、間違いでもあったりしたら」
「困ったものだ、どうにかならないのだろうか。アースにはなんとしても育成を成功させ、このブリュンヒルデ家の繁栄に繋げて貰わねばならんのに。色恋事を始めに教えておいてはどうだろうか」
「興味をもたれでもしたら……。幾らなんでも他種族の男も、育成最中に堂々とアースを手にかけるなどしないでしょう? 知らないほうが良いと私は思いますけど」
「だが、アースは妙な色香があるからなぁ」
父親のその発言に、母親が目くじら立てた。慌てて口を塞ぐ父親は、冷汗をかいて俯くしかない。「これだから男は」……と、悪態ついて舌打ちする母親に身を小さくして反論できない父親。養子なので肩身が狭いのだ。
「ま、まぁ。女のお前に全てを任せるよ」
「えぇそうして下さいな、アナタ。……あと一歩よ、あと一歩でブリュンヒルデの名を全一族に知らしめる事が出来るわ。あの子は、神の座にだってつけるはず。エロース様とて現在三百年、そろそろ交代の時期よ」
能力もない、家柄も低い。ブリュンヒルデ家に生まれた母は、特に華やいだ生活を送っていなかった。自身の育成した惑星は、確かに成長したのだが人間が住める惑星ではなく、今現在は植物が繁栄しているだけだった。
土の精霊の力量と功績は、如何に安定した惑星を創造出来るかどうかだ、それ以外では認められる術などない。
惑星を完成させ、程なくして今の夫と一緒になった。同じく低い家柄の土の精霊だ、ブリュンヒルデ家のほうがまだ格が上だったので養子に来させた。
稀に同期の土の精霊に出会えば、みすぼらしい自分に顔を伏せて逃げるように歩いていたあの時代。
アースさえ、アースさえ成功すれば、夢に描いた生活が始まる。広い屋敷に移り住み、誰からも影で笑われること泣く堂々と出歩くことが出来る。今まで自分を見下し、相手にもしなかった土の精霊を見下し、高笑いが出来る。
「……絶対に、負けない……。夢を、終わらせないわ」
ブツブツと何かに取り付かれたように、母は呟く。不憫そうに父は、二階のアースの部屋を見つめていた。
翌日。
両親と共にアースは神殿へと出向く。本日の服装は華美なものではなく、控え目にアースらしい麻のワンピースだ。エロース様の前では着飾ってはいけない、という暗黙のルールがあるのだが、アースはそれに感謝した。
気合を入れて早々に来ていたアース達は、渋々と門番へと中へと誘われる。アースは申し訳なさそうに瞳を伏せたが、母は何故か堂々と歩いていた。彼女の脳内では、既にこれが上級階層への第一歩なのだ。
静まり返る神殿内で、二つの王座の前にアースは平伏す。まだ、当然神たちは来ていない、早すぎるのだ。
親は、後方の席で平伏していた。
誰が、自分の育成を共にしてくれるのだろうか。風の精霊はリュミで決定だとは思うが、他の精霊に知り合いはいない。
淡い期待を抱く。火の精霊トリプトル・ノートゥングだったら良いな、とアースは思っていた。
名を思い出し、心の中で呼べば顔が火照る。あの、涼しげな目元の熱い眼差しの精霊の姿を思い浮かべる。
胸が高鳴る、こんな感情は初めてだった。何と呼べばいいのかなど、アースは知らなかった。
ただ、会いたかった。もう一度、見てみたかった。
どんな声だろうか、聞いてみたいと思った。あの凛々しい戦いを、間近で見てみたいと思った。
好きな食べ物はなんだろうか、普段は何をしているのだろうか。学校内にいる筈だが、出会ったことがないから生活が分からない。
やがて、ようやく神殿内に人足が集まり始める。無数の足音に惚けていたアースは我に返った、自分の異常なまでの執着に苦笑いする。決まったわけではない、来る確立など0に等しい。
自嘲気味に笑い、アースは平伏したまま時を待った。
やがて、盛大なファンファーレが鳴り響いた。神のお出ましである。
「クリフ様、入室!」
「次いでエロース様、入室!」
顔を上げることは、まだ許されない。床を布が引き摺る音が聞こえる、二人が歩いているのだろう。
暫くして、二人が深く王座についたらしい、再度盛大にファンファーレが鳴り響いた。
「ではこれより、土の精霊アース・ブリュンヒルデの惑星についての儀式を開始する。
アース・ブリュンヒルデ。顔を上げてそなたの惑星の名を、呼びなさい」
両親が緊張で身体を強張らせたが、アースは堂々と、しかして優雅に顔を上げると微笑して瞳を伏せる。正しい姿勢と、良く通る声でアースは告げた。
「クリフ様、エロース様。アース・ブリュンヒルデと申します。私の惑星は”スクルド”と申します。本日、このようなお近くで拝見出来、とても光栄に思います」
「スクルド。……運命、という意味だな。アース、頑張りなさい」
クリフがそう声をかける。神直々の発言に周囲は多少驚いたが、咳を一つし皆沈黙した。
横目でクリフを見たエロースは、眼下のアースに微笑んでいた。みすぼらしい、ただの土の精霊だ。なんと青臭い娘だろうか、と鼻で笑う。
美しいと噂されている娘だが、こうして間近で見ればたいしたことがなく思えた。しかし、何故か手にしている貴金属が、じっとりと汗にまみれていたのだ。
「では、これより。育成者との顔合わせを始めます。まず、風の精霊より。リュミ・フリッカ!」
再び平伏していたアースは思わず歓声を上げそうになった、後方で扉が開かれる音が聞こえる、足音が聞こえる。
やがて隣に見慣れた靴が現れた、一礼して跪き、平伏せばリュミが笑っている。
「よろしく、アース」
「うん、すっごく幸せ!」
小声で語る二人だが、静寂の間ではそれすらも大きく聴こえる。誰かの咳払いが聴こえた。
「では次に、水の精霊より。トロイ・ベルズング!」
「何だって!?」
叫んで顔を上げたリュミに、一斉に咳払いが飛ぶ。慌てて苦笑いでリュミは平伏したが、興奮は抑えられない。
「すっげー、この間の優勝者だ! 剣教えてもらえる」
「よかったね!」
近づいてきた足音、リュミは緊張して身体を小刻みに震わせている。余程嬉しいのだろうと、微かに顔を上げてアースが横目でリュミを見た瞬間だった。
一礼し、跪いたトロイと視線が交差したのだ。
思わず軽く会釈をし、戸惑いがちに微笑んだアースのその先で、トロイは停止した。
「トロイ・ベルズング」
焦燥感に駆られて名を呼んだ司会者の声に我に返ると、トロイは平伏す。俯いたその表情が微笑んでいたことなど、誰も知らなかった。
トロイが選出を知ったのは三日前だった、知らせを受けて両親が飛んで来たのだがトロイは不機嫌そのもので一度拒否している。
だが、拒否という権限がなく腹を立てながら本日参加した。
土の精霊の育成者に選定されることは、ある意味名誉なことだ。優秀なものが選定されることくらいは、知っている。だが、トロイにはやりたいことがまだ多々あった。剣を磨くことが第一優先だったが、先日の武術大会以降目的が変わっていた。
あの日見た、土の精霊を探すことが今のトロイの最優先すべきことだったのだ。
無論、アースである。だが、アースの名前を知らなかったので同一人物だとは夢にも思わなかった。それどころか”土の精霊の最も優秀な女”という噂だけは聞いていたので、非常に不愉快だった。
他の女の相手など、している暇などない。トロイはどうしてもアースに会いたかった。
それがどうだろう、まさか今後常に共に居られるとは。
トロイは自分の強運に感謝した、薄く微笑むと微かに首を曲げてアースを見つめる。
「よろしく」
「宜しくお願いします」
にっこりと、笑うアース。あぁ、この笑顔が見たかったのだ……とトロイは目を細めていた。
非常に容姿端麗で異性に人気のあるトロイは、常に周囲に少女達が居た。が、当の本人は連れない様子でそれがまた人気の秘密でもあった。
冷めた態度、誰にでも同じ様に接する男。何をしても様になる……。
土の精霊とは違い、水の精霊には純潔など必要がない。閨事においてもトロイは優秀だったのだ。
だが、特定の彼女などを作ることはなかった。縛られるのが嫌いだった、気軽に浅く接し、来るもの拒まずである。
「あぁ成程。この日の為に、か」
小さく呟いたトロイ、無性に楽しくて仕方がない。
初めて出遭った土の精霊は温かな空気の香りがする、なんと安らぐのだろう。穏やかな日差しに包まれて、眠っている感覚だった。
アース・ブリュンヒルデ。名を確認し呼んだトロイは、胸の奥に芽生えた感情を知っている。
これが、恋というものだ。早く会話してみたい、間近で笑顔を見てみたい。
幼い頃からアースが与えられ手にしてきた書物は、童話などなかった。歴史や土地の属性、代々の神々の出身地や動物、植物の図鑑などだ。
だからアースは知らない。幼い子供は寝る前に母親が童話を読んでくれること、子守唄を歌ってくれることを。アースは、腫れ物でも触るかのように常に家では一人だった。
だが今は違う、学校へ行けば友達も増えた。何故か両親は良い顔をしないが、そこまで制限されたくはない。
「楽しい本! こんなものがあるなんて、知らなかった。また、貸してもらえるかな……」
ベッドに転がりながら読み耽る。それは、友情を描いた冒険物の本だった。可愛らしいイラストつきで、夢中で読み終えてしまう。
友達とは、なんて素敵なのだろう。自分に足りないものを教えてくれる。傍にいてくれるだけで、何故か安心する。
勉強も一人よりも楽しい、皆で意見を出し合いながら解いていく事が、尚更楽しく思える。
アースは本を閉じると、窓から外を見つめる。風に木々が揺れていた、各家の明かりが揺らめいて見える。
「アース、入りますよ」
ノックの音に、アースは首を傾げて窓から離れる。珍しい来客だ、部屋に訪れる事など滅多にない。
「どうぞ、お母様」
母親の来訪に驚きを隠せないアース、夕食を済ませ水浴びも終えた。だから読書に耽っていたのだ、あとは就寝するだけである。
「しっかり勤勉に励んでいますか? 貴女は一族の期待の星なのです、生半可な努力ではいけませんよ。先程は口を出しませんでしたが、俗物な本など貴女には不要です」
「いいえ、お母様。俗物だなんて酷いです、とても楽しくてわくわくする素敵な本でした」
反論したアースに、母も目を吊り上げる。若干口調が強張っていた。
「偉大なる神のこと、把握していますね?」
「神様ですか?」
突如母が言い出した単語に、アースは再び首を傾げた。神の事ならば幼い頃から誰しも教えられていることだ、何を今更言っているのだろうか。
「男神クリフ様は、私達と同じ土の精霊出身です。就任されてから早百年ほど、最も若くしてその座に着いた偉大なるお方。
女神エロース様は、光の精霊出身です。就任されてから早三百年ほど、最も長くその座についていらっしゃる容姿端麗・才色兼備な全ての女性の頂点に立つお方」
「えぇそうですね。きちんと受け答えが出来るように今晩、お二方の経歴について再度調べておきなさい」
「受け答え?」
きょとん、としているアースに母は真顔で告げた。その様子は、とても親子には見えない。先生と生徒ですら、もっと愛情ある声で語り掛けないだろうか。無機質な母の瞳だが、アースは慣れていた。
「明日は、貴女の惑星の育成協力者の選出日です。最も優秀な貴女に、神々が直々にお声をかけてくださります。粗相のないようになさい」
「え、明日なのですか!?」
それは初耳だ、そろそろだとは聞かされていたが急すぎやしないだろうか。
選出されるとついに惑星へと移動する、学校から離れなければならないのだ。四六時中惑星にいなくても良いが、ほぼ付きっ切りで生活する為、こちらへ戻るのは容易ではない。親しくなった友人や、人間の少年少女に挨拶がしたかった。
口を噤んだアースに淡々と続ける母、横目で机の上の本を見つめる。
「ですから、そのような本など読まなくとも。
さ、支度をして惑星の育成についての本を読みなさい。……それから、他の育成に関わる精霊に関しての情報が入りました。女は貴女一人です、気を抜かないように、男になど負けないように励みなさい。命を育む重要な任務ですよ、浮き足立っていてはなりませんから。
”惑星を完成させる”それ以外は不要です、あまり親しくならないようになさい」
「お母様は、誰が私と共に惑星を作ってくださるのか、もうご存知なのですか?」
アースの声に答えることもなく、母は踵を返して去っていく。軽く溜息を一つ、アースは急いで荷造りを始めた。
と言っても、大してない。数枚の着替えと役立ちそうな動植物の図鑑や、飼育方法の本のみだ。
普通、家族の思い出の絵やら誕生日に貰ったオルゴールなどを土の精霊の少女達は持参するが、そのようなものすら、アースにはない。本だけが、アースの両親から貰ったものだ。
他には学校で出来た友達と日記を交換していたので、そのノートも持参する事にした。
言われた通りに二人の現神について、再度アースは調べ始める。輝かしい二人の足取りを、脳裏に憶え込んだ。
その頃、一階では。
「……全員同姓ならよかったのに。心配だわ、間違いでもあったりしたら」
「困ったものだ、どうにかならないのだろうか。アースにはなんとしても育成を成功させ、このブリュンヒルデ家の繁栄に繋げて貰わねばならんのに。色恋事を始めに教えておいてはどうだろうか」
「興味をもたれでもしたら……。幾らなんでも他種族の男も、育成最中に堂々とアースを手にかけるなどしないでしょう? 知らないほうが良いと私は思いますけど」
「だが、アースは妙な色香があるからなぁ」
父親のその発言に、母親が目くじら立てた。慌てて口を塞ぐ父親は、冷汗をかいて俯くしかない。「これだから男は」……と、悪態ついて舌打ちする母親に身を小さくして反論できない父親。養子なので肩身が狭いのだ。
「ま、まぁ。女のお前に全てを任せるよ」
「えぇそうして下さいな、アナタ。……あと一歩よ、あと一歩でブリュンヒルデの名を全一族に知らしめる事が出来るわ。あの子は、神の座にだってつけるはず。エロース様とて現在三百年、そろそろ交代の時期よ」
能力もない、家柄も低い。ブリュンヒルデ家に生まれた母は、特に華やいだ生活を送っていなかった。自身の育成した惑星は、確かに成長したのだが人間が住める惑星ではなく、今現在は植物が繁栄しているだけだった。
土の精霊の力量と功績は、如何に安定した惑星を創造出来るかどうかだ、それ以外では認められる術などない。
惑星を完成させ、程なくして今の夫と一緒になった。同じく低い家柄の土の精霊だ、ブリュンヒルデ家のほうがまだ格が上だったので養子に来させた。
稀に同期の土の精霊に出会えば、みすぼらしい自分に顔を伏せて逃げるように歩いていたあの時代。
アースさえ、アースさえ成功すれば、夢に描いた生活が始まる。広い屋敷に移り住み、誰からも影で笑われること泣く堂々と出歩くことが出来る。今まで自分を見下し、相手にもしなかった土の精霊を見下し、高笑いが出来る。
「……絶対に、負けない……。夢を、終わらせないわ」
ブツブツと何かに取り付かれたように、母は呟く。不憫そうに父は、二階のアースの部屋を見つめていた。
翌日。
両親と共にアースは神殿へと出向く。本日の服装は華美なものではなく、控え目にアースらしい麻のワンピースだ。エロース様の前では着飾ってはいけない、という暗黙のルールがあるのだが、アースはそれに感謝した。
気合を入れて早々に来ていたアース達は、渋々と門番へと中へと誘われる。アースは申し訳なさそうに瞳を伏せたが、母は何故か堂々と歩いていた。彼女の脳内では、既にこれが上級階層への第一歩なのだ。
静まり返る神殿内で、二つの王座の前にアースは平伏す。まだ、当然神たちは来ていない、早すぎるのだ。
親は、後方の席で平伏していた。
誰が、自分の育成を共にしてくれるのだろうか。風の精霊はリュミで決定だとは思うが、他の精霊に知り合いはいない。
淡い期待を抱く。火の精霊トリプトル・ノートゥングだったら良いな、とアースは思っていた。
名を思い出し、心の中で呼べば顔が火照る。あの、涼しげな目元の熱い眼差しの精霊の姿を思い浮かべる。
胸が高鳴る、こんな感情は初めてだった。何と呼べばいいのかなど、アースは知らなかった。
ただ、会いたかった。もう一度、見てみたかった。
どんな声だろうか、聞いてみたいと思った。あの凛々しい戦いを、間近で見てみたいと思った。
好きな食べ物はなんだろうか、普段は何をしているのだろうか。学校内にいる筈だが、出会ったことがないから生活が分からない。
やがて、ようやく神殿内に人足が集まり始める。無数の足音に惚けていたアースは我に返った、自分の異常なまでの執着に苦笑いする。決まったわけではない、来る確立など0に等しい。
自嘲気味に笑い、アースは平伏したまま時を待った。
やがて、盛大なファンファーレが鳴り響いた。神のお出ましである。
「クリフ様、入室!」
「次いでエロース様、入室!」
顔を上げることは、まだ許されない。床を布が引き摺る音が聞こえる、二人が歩いているのだろう。
暫くして、二人が深く王座についたらしい、再度盛大にファンファーレが鳴り響いた。
「ではこれより、土の精霊アース・ブリュンヒルデの惑星についての儀式を開始する。
アース・ブリュンヒルデ。顔を上げてそなたの惑星の名を、呼びなさい」
両親が緊張で身体を強張らせたが、アースは堂々と、しかして優雅に顔を上げると微笑して瞳を伏せる。正しい姿勢と、良く通る声でアースは告げた。
「クリフ様、エロース様。アース・ブリュンヒルデと申します。私の惑星は”スクルド”と申します。本日、このようなお近くで拝見出来、とても光栄に思います」
「スクルド。……運命、という意味だな。アース、頑張りなさい」
クリフがそう声をかける。神直々の発言に周囲は多少驚いたが、咳を一つし皆沈黙した。
横目でクリフを見たエロースは、眼下のアースに微笑んでいた。みすぼらしい、ただの土の精霊だ。なんと青臭い娘だろうか、と鼻で笑う。
美しいと噂されている娘だが、こうして間近で見ればたいしたことがなく思えた。しかし、何故か手にしている貴金属が、じっとりと汗にまみれていたのだ。
「では、これより。育成者との顔合わせを始めます。まず、風の精霊より。リュミ・フリッカ!」
再び平伏していたアースは思わず歓声を上げそうになった、後方で扉が開かれる音が聞こえる、足音が聞こえる。
やがて隣に見慣れた靴が現れた、一礼して跪き、平伏せばリュミが笑っている。
「よろしく、アース」
「うん、すっごく幸せ!」
小声で語る二人だが、静寂の間ではそれすらも大きく聴こえる。誰かの咳払いが聴こえた。
「では次に、水の精霊より。トロイ・ベルズング!」
「何だって!?」
叫んで顔を上げたリュミに、一斉に咳払いが飛ぶ。慌てて苦笑いでリュミは平伏したが、興奮は抑えられない。
「すっげー、この間の優勝者だ! 剣教えてもらえる」
「よかったね!」
近づいてきた足音、リュミは緊張して身体を小刻みに震わせている。余程嬉しいのだろうと、微かに顔を上げてアースが横目でリュミを見た瞬間だった。
一礼し、跪いたトロイと視線が交差したのだ。
思わず軽く会釈をし、戸惑いがちに微笑んだアースのその先で、トロイは停止した。
「トロイ・ベルズング」
焦燥感に駆られて名を呼んだ司会者の声に我に返ると、トロイは平伏す。俯いたその表情が微笑んでいたことなど、誰も知らなかった。
トロイが選出を知ったのは三日前だった、知らせを受けて両親が飛んで来たのだがトロイは不機嫌そのもので一度拒否している。
だが、拒否という権限がなく腹を立てながら本日参加した。
土の精霊の育成者に選定されることは、ある意味名誉なことだ。優秀なものが選定されることくらいは、知っている。だが、トロイにはやりたいことがまだ多々あった。剣を磨くことが第一優先だったが、先日の武術大会以降目的が変わっていた。
あの日見た、土の精霊を探すことが今のトロイの最優先すべきことだったのだ。
無論、アースである。だが、アースの名前を知らなかったので同一人物だとは夢にも思わなかった。それどころか”土の精霊の最も優秀な女”という噂だけは聞いていたので、非常に不愉快だった。
他の女の相手など、している暇などない。トロイはどうしてもアースに会いたかった。
それがどうだろう、まさか今後常に共に居られるとは。
トロイは自分の強運に感謝した、薄く微笑むと微かに首を曲げてアースを見つめる。
「よろしく」
「宜しくお願いします」
にっこりと、笑うアース。あぁ、この笑顔が見たかったのだ……とトロイは目を細めていた。
非常に容姿端麗で異性に人気のあるトロイは、常に周囲に少女達が居た。が、当の本人は連れない様子でそれがまた人気の秘密でもあった。
冷めた態度、誰にでも同じ様に接する男。何をしても様になる……。
土の精霊とは違い、水の精霊には純潔など必要がない。閨事においてもトロイは優秀だったのだ。
だが、特定の彼女などを作ることはなかった。縛られるのが嫌いだった、気軽に浅く接し、来るもの拒まずである。
「あぁ成程。この日の為に、か」
小さく呟いたトロイ、無性に楽しくて仕方がない。
初めて出遭った土の精霊は温かな空気の香りがする、なんと安らぐのだろう。穏やかな日差しに包まれて、眠っている感覚だった。
アース・ブリュンヒルデ。名を確認し呼んだトロイは、胸の奥に芽生えた感情を知っている。
これが、恋というものだ。早く会話してみたい、間近で笑顔を見てみたい。
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