忍者ブログ
別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
[470]  [469]  [468]  [467]  [466]  [465]  [464]  [463]  [462]  [43]  [461
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

がんがん、いきますよー。

ハイも、リュウも、作者的にとても、お気に入り。
魔界での最重要人物は、マビルと兄のアイセル、及び弟のトーマですが。

これで、約4500文字、あと二万文字はOK。
・・・頑張れ私。

部屋を出たリュウには気づくことなく、ハイは優しく正面からアサギを抱き締めた。
力の加減が出来たらしく、今回はアサギも苦しくなさそうである。
暫し、ハイは口を開かなかった。
何か言おうと躊躇しているわけでもなく、ただ、アサギの温もりを確かめる。

「えーっと・・・ハイ、さ、ま?」

初めてアサギが名前を呼んだ、戸惑いがちに名前を呼んだ。
それが嬉しくて、思わず身体を跳ね上がらせる。
人に名前を呼んでもらえることが、これほどまでに嬉しいことだなんて、誰が思うだろう。

「無理を言ってしまって、すまないとは思う。だが、私はアサギと共に居たいのだ。絶対にアサギを傷つけないし、何からも護り通す。一緒に居てくれるだけで良い、それ以上は望まないから、こんな私の我侭を聞いてもらえないだろうか」
「・・・? えーっと、魔王と勇者が一緒にいると、良い事ありますか?」
「魔王と勇者、ではなくて。私とアサギ、と考えてみてはくれないだろうか」
「えーっと・・・」

明らかに困惑気味のアサギ。
いきなり連れてこられた魔界で共に過ごしてくれ、と言われてもはた迷惑な話である。
まさか、『一目惚れしました、好きです、付き合ってください』とは言えない。

「そのうち、順を追って話すから。今はその、なんだ。あー・・・ゆっくりしてくれ」
「はぁ・・・」

こうして。
勇者として異世界に召喚されたアサギは、何故か成り行きで魔界イヴァンで過ごす事になった。
勇者の隣に居るのは魔王ハイ、どうしても受け入れがたい事実である。
優しい瞳と柔らかな声、とても魔王には思えないのだ。
勇者として、やるべきこととはなんだろう。
目的は、世界を救うことで間違いないだろう。
世界を救うということで、魔王の存在を聞いた、魔王を倒せば世界に平和が訪れる・・・はずだった。
魔王なら、目の前に居る。
世界を破滅に導き、劣悪な者・・・魔王。
本当にそうだろうか?
そもそも、城を破壊され、仲間を殺されたというサマルトとムーンとて、魔王ハイの姿すら知らなかった。
本当にそれを行ったのは、ハイなのだろうか? 何かの間違いではないのか。
目の前で自分を抱き締めているハイを見上げながら、アサギは唇を噛み締める。
とても、魔王には思えない。
魔王なら、勇者を抱き締めたりはしないだろう。
先程まで共に居た仲間達と同じだ、優しいし、あったかい。

「もしかして・・・私達は大きな間違いをしてる・・・?」

小さく零した言葉。
心に住み着いた疑問を、消すことが出来ない。
解決するのに時間がかかりそうな疑問である。

『勇者としての、私の目的は何なのですか?』

心で、誰かに問いかけてみた、その答えを、自分で見つけようと思った。
悪行を働いているのは、もっと別の何かであって、魔王はひょっとしてただの偶像では?
とりあえず、今は。

「えーと、ハイ様。少しお時間を下さい、です。ちょっと混乱してます」
「だろうな。疲れただろう、休むと良い」

気まずそうにハイはそっとアサギの身体を離し、部屋のドアへと向った。

「何かあったらすぐ呼ぶんだぞ?」
「わかりました」
「夕食の時間になったら、また来る。おやすみ、アサギ」
「・・・おやすみなさい・・・?」

軽く手を振って離れる二人、アサギはドアが閉じた音を聴いた後、首を傾げた。
何故、魔王と挨拶を???
混乱しつつ、これ以上考えると知恵熱が出そうだ、アサギは一人くぐもった声を出しながらベッドに倒れ込む。
考えても解らない、何をすべきなのかが、解らない。

私は、勇者。
魔王ハイと、リュウが近くに居る。
みんなとは、離れ離れ。
ここは、魔界。
すべきことは、何?

『魔王を倒す事』

・・・魔王を倒す? 悪い人たちには見えないけれど、倒さなきゃいけないの?

『魔王を、倒すの』

でも、私には。

『魔王は、まだ存在するの。あなたが倒すべき相手は、もっと別の魔王』

・・・?

いつしか、夢の中へと入っていたアサギは、夢で誰かと会話していた。
誰かがわからないけれど、酷く懐かしい声だった。
以前も聞いた気がする声だ、何処でだったか・・・。
つい最近聞いた気がするのだが。
思い出せない。

「アサギ、アサギ? 大丈夫か? 夕食だぞ」

揺さ振られて、重たい瞼をゆっくりと開く。
見慣れない男の人に、高すぎる天井、何処か把握するのに時間がかかった。

「・・・」
「大丈夫か? 魘されていたが。」
「だい、じょうぶです・・・」

優しく抱き起こされて、額に手を当てて考える。
徐々に思い出す記憶、ここは魔界で、魔王の城の一室。
どうも深い眠りに入っていたらしく、上手く考えがまとまらなかった。
ハイに抱きかかえられて、城を歩き回り、庭へと到着。
紫陽花が咲き乱れる庭園に、ランプの淡い光が幻想的な、ディナーの場所である。
思わずアサギは歓声を上げた。
その美しい光景に目が釘付けになる、見れば蛍も舞っている様だ。
ハイが育てて作ったというマーマレード、苺のジャムをパンのお供に。
羊の臓物を煮込んだというものやら、ローストビーフ、ポテトやニンジンの塩茹でも、パンに良く似合う。

「・・・魔王も普通に食事するんですね・・・」
「うん。お腹空くし」
「・・・ですよね・・・」

目の前で食べ続ける二人の魔王を見つつ、アサギは軽く溜息を吐いた。
美味しいのだ、この料理。
非常に場景も美しいのだ。
が。
何故、魔王と食事をしているのか、疑問である。
2人は全く気にする様子もなく、余程空腹だったのか、我先に、と食べているのだが。
料理がなくなる前に、アサギも夢中で食べ始める。

「美味しいですよね、この料理」
「気に入ってもらえたか? よかったー。料理人を叱咤した甲斐があったものだ」

得体の知れない生物の料理が出てきたら、どうしようかと思っていたのだが、その心配はなさそうだ。
食後になると、ハイがこれまたお手製の紅茶を煎れてくれたので、星空を見上げつつまったりとした時間を過ごす。
ここは、何処だ? 魔界だ。
考えるのも馬鹿らしくなってきたのだが、真面目なアサギはひたすら今の状況を考え続ける。
魔王と、お茶。

「・・・あの。この紅茶もさっきのジャムも、ハイ様が作られたとか?」
「うむ。趣味で」
「しゅ、趣味ですか・・・」

魔王の趣味に、ジャム作りとか、紅茶煎れとか。
首を捻って低く唸るアサギ、気にする様子もなく、リュウが口を開く。

「私も苺が大好きでねー、自家栽培してるのだー。今度自慢の苺畑に連れて行ってあげるのだよ」
「じ、自家栽培・・・」

美味しい紅茶を飲みつつも、納得がいかない、と不貞腐れるアサギ。
随分と魔王のイメージが変わってしまった、とても・・・倒せそうにない。

「あのー、聞いて良いのか分かりませんが、質問をいいでしょうかー?」
「いいぞ、いいぞ、どんどん聞いておくれ!」

控え目に言ったアサギだが、妙に乗り気なハイに、たじろぐ。

「普段は何をされているんですか? 魔王のお仕事ってなんですか?」
「普段?」

ハイとリュウは顔を見合わせる、軽く首を傾げて日常を思い出しているようだが。

「・・・朝起きて、畑に水をやりに行ったり、果物を収穫したり」
「木陰でお昼寝して、水遊びとか・・・」
「夜はこうして、まったりと星の鑑賞」

聞かなければ良かった、と項垂れるアサギ、嬉々として語る二人を、恨めしそうに見つめる。
魔王のイメージ、型崩れである。
紅茶を飲み干すと、アサギは多少乱暴にカップをテーブルに置いた。

「あのっ! 私は一応勇者です」
「うん、知ってるのだー。可愛い勇者だよね」
「っ!? 敵対してますよね!?」
「そうだろうなぁ、魔王と勇者だからなぁ」
「では、何故寛いでこんなふうに、星空の下で紅茶を飲んでいるんですか!?」
「そうは言われても・・・」

立ち上がって、アサギは右手に魔力を集中させる、呪文を発動させるつもりだ。
が、驚いた様子もない二人の魔王は、困惑気味にアサギを見つめるばかり。

「こ、こうやって、私が攻撃したらどうするんですか!?」
「どうしようかな、でも、アサギは攻撃しないと思うのだ」

リュウのその言葉に、思わず力が抜けたアサギ。

「敵意のない人物には、自分から攻撃出来ないよね、アサギは」

微笑まれて、そう言われる。
一瞬呆けたが、すぐに赤面すると両手を天に掲げた。
馬鹿にされたと思ったのだ、勇者なのに。

「出来ます、私、勇者ですからっ」
「いいよ、やってごらん。でも、アサギには、出来ないのだ」
「出来ますっ」
「出来ない」

リュウがゆっくりと立ち上がる、ほくそ笑んで芝生を踏みながら、アサギへと歩く。
気迫負けして一歩づつ後退するアサギに、更にリュウは微笑んだ。

「やってごらん。至近距離に入ってあげるのだ。呪文、思い切りぶつけていいのだよー?」
「っ・・・!」

目の前まで来られて、視線を合わせるように屈まれて、リュウが一言。

「さぁ、可愛い勇者様。魔王ハイでも、魔王リュウでも、どちらでも。攻撃してみてごらん」

後方でハイが深い溜息を吐いている、からかいすぎだ、と言いたいらしい。
アサギは身体を小刻みに震わせながら、懸命に呪文を発動しようとした、けれど。

「・・・で、出来ません」

ゆっくりと、力なく腕を下ろす、涙目でリュウを見つめた。

「悪い人に、思えないので。・・・攻撃出来ません・・・」
「でしょー。そうだと思ったのだー」

あはは、と軽く笑うリュウ、ぽんぽん、と肩を叩かれて、手を引かれて席へと戻った。

「この際、勇者と魔王を忘れるのだ。そのほうが気も楽なのだよー?」
「では、こちらが質問しよう。アサギのこと、教えてくれないだろうか」
「・・・はぁ・・・」

2人の魔王が、子供のように瞳を輝かせて身を乗り出してきたので、アサギは苦笑いしつつも小さく頷く。

「ご趣味は?」
「趣味ですかー、お菓子を作ったりとか・・・」
「ほぅ、家庭的なのだ! 好きな男性のタイプは?」
「えーっと、笑うと可愛い人で、一緒に居ると楽しくて・・・」
「よし、ハイ、笑うのだ! ・・・可愛くない笑顔なのだー・・・」
「・・・あの、すいません・・・。この質問、何か意味が?」
「気にしなくていいのだ、アサギ。んー、恋人にするのに年齢は関係しますか?」
「えーっと、・・・別に・・・」

リュウの質問に、きちんと真面目に答えるアサギ、笑い転げながらリュウはハイを見ている。

「では、最後に。今、好きな人はいますか?」
「え」

ハイが硬直する、リュウが先程と変わらぬ笑みでアサギを見つめている、アサギが、赤面する。

「・・・あの、その質問の意図は何でしょう」
「細かい事は気にしちゃいけないのだー。で、好きな人は?」

俯いて、必死に泣き出したいのを堪えているハイ、心の中で爆笑しながら、リュウはアサギに詰め寄る。

「好きな人、というか、気になっている人ならいます」
「それは、ハイですか?」
「いえ、ハイ様ではないですけど・・・」

アサギの声を聞いた途端、ハイは椅子から盛大にひっくり返って泡を吹いた。

「きゃー!? ハイ様!?」
「可哀想なハイ・・・。まぁ、でも、気になっている程度だしねー」

慌てて駆け寄って抱き起こすアサギ、リュウはそんな2人を見つめつつ、飲み残しの紅茶を飲み干して。
明日から、面白くなりそうだなぁ、と一人呟いて、にんまり。
魔界の夜は、更けていく。
勇者が訪れたその地で、ゆったりと、時は流れる。
全ては『運命』、定められた、運命。
勇者に焦がれ、勇者になった異界の娘が、魔王に見初められ魔界へ来た。
そう、運命。
遠い昔に廻り始めた運命の歯車は、終焉を迎えつつある。

その時、魔界で。

魔王アレクがひっそりと自室からそんな三人を見ていた、微かに瞳に希望を燈し。
アサギに瓜二つな魔族の少女が、沸きあがる苛立ちで魔法をがむしゃらに連打していた。
その兄が、緊張した面持ちで親友の下へと向った。
魔王ミラボーと側近のエーアが、暗闇で笑い転げていた。
魔王ハイの側近であるテンザが、三人を見つめ歯軋りしていた。

夜空に浮かんだ星々が、唄を奏でる。
煌いて、哀しく、啼く様に奏でている。

全ては、ここへ来てしまった一人の小さな勇者の為に。
勇者でありたいと願った、少女の為に。
廻る歯車、指し示す。

『じかんが、ないの―――』
『あなたは、まちがえないで―――』
『ねがうの、おもいえがくの、いちばんあなたがしたいこと―――』

不意にアサギは顔を上げた、リュウが背負ったハイの手を握りつつ、城内で立ち止まる。
誰かに呼ばれた気がしたのだ。
魔界へ来てから、何度も聞いた気がする声である。

「・・・誰?」

問いかけにも、答えない、その声の主。
まだ、アサギには解らない。
その人物を、よぉく、知っているのに、解らない。

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新コメント
[10/05 たまこ]
[08/11 たまこ]
[08/11 たまこ]
[05/06 たまこ]
[01/24 たまこ]
[01/07 たまこ]
[12/26 たまこ]
[11/19 たまこ]
[08/18 たまこ]
[07/22 たまこ]
フリーエリア
フリーエリア
最新トラックバック
プロフィール
HN:
把 多摩子
性別:
女性
ブログ内検索
カウンター
Copyright © あさぎるざ All Rights Reserved.
Designed by north sound
Powered by Ninja Blog

忍者ブログ [PR]