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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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アサギ+トビィ
マビル

めも
アサギ一人ぼっち
クレロ顔面蒼白
トビィ怒涛の勢い
マビル船旅中
ユキ苛々
ナスタチュームびっくり
サーラもびっくり
オークス困惑
トランシス降臨←?



 勇者は一人、洞窟へと進む。大人の男が一人通るのが精一杯の入口が、ぽっかりと開いていた。小柄なアサギは難なく侵入する、右手を突き出し火炎呪文を唱えた。それで周囲を照らし出し、様子を窺う。 まだ、数歩しか踏み出していないがすでに目の前は暗闇だ。洞窟は、自然に出来たものなのか故意なのか。そっと左手を壁に伸ばす、指先で確かめてみると恐らくは土だ。鍾乳洞、というわけではなさそうだとアサギはそのまま慎重に進む。
 音が、何も聴こえない。自分の指先に火炎の魔法を留めておくことなど、今初めて使ってみた。上手く調整が出来ず、時折火の玉が前方に飛んで行き、地面に落下する。瞳を細めながらアサギは注意深く灯りを頼りに、歩き続ける。
 後方からは来ないだろうが、念の為神経を研ぎ澄ませた。大きく息を飲み込む、終わりがないような洞窟に足が震える。やはり誰かがいるのといないのとでは、精神的余裕が違った。

「大丈夫、私は勇者なのだから」

 恐怖心を押し殺して進む、目の前の自分の詠唱した魔法だけが頼りだ。右手が塞がっているので、武器はすぐに使えない。左手に変えたほうが良いのかと葛藤しながら、ゆっくりと進む。妙に足音が響き渡る、重なる音が自分以外の存在を錯覚させた。妙な汗が吹き出した。
 どのくらい歩いたのだろう、歩けども歩けども、何にも遭遇しない。入口程度の通路が長く続いているだけで、先すら見えない。空気が薄く、時折眩暈を感じるが休んでいる暇などないと、足を動かした。
 と、ようやく前方が明るくなっていた。思わず笑顔になったアサギは勢い良く駆け出すと、洞窟から出る瞬間に詠唱を停止し、剣を取り出して構えたまま飛び出す。
 トン、と地面に立てば森の中だった。鬱蒼と生い茂る草で露出していた足を軽く切ってしまったが、特に何も無い。
 静まりかえる森に一人きり、アサギは眉を潜めて上空を見上げた。星が瞬いている、綺麗な夜だった。

「抜け道?」

 通ってきた洞窟を振り返り、それでも剣を仕舞わなかったアサギは次の瞬間、反射的に剣を頭上で構えていた。キィン、と金属音が響き渡る。歯を食いしばり、重すぎた攻撃に必死で耐えた。右脚を後方に広げて、重心を低くする。足が地中に沈む、声を張り上げて力任せに押し返した。
 
「御一人、でしたか。貴女様程の方が配下も連れず?」

 声の主を睨みつける、桃色の髪が揺れていた。

「……どなたですか?」

 自分を知っているかのような口ぶりに、怪訝にアサギは聞き返した。剣を構え、相手の様子を窺う。
 長身の魔族は、桃色の髪をかき上げると無表情で杖を構える。アサギの剣と対等に交えたその杖の素材は、銀であるように思えた。細長い杖はシンプルだ、装飾などされていない。

「イエン・タイと申します。アサギ様」
「……魔族の方ですよね、アレク様のお知り合いですか?」

 とてもそうとは思えないが、一応訊いてみた。魔界イヴァンにいたのならば、自分を知っていても不思議ではない。

「アレクは存じませんね、仮初の魔王のことなど、知らずとも良し」
「……ということは、私の敵だという認識で良いですか」

 そうアサギが睨みつけて言うと、タイは若干口元の端に笑みを浮かべた。しかし、瞳は笑っていない。肩を竦めて杖をアサギに向けて振り下ろす、両手で剣を構えていたアサギは難なくそれを受け止めた。男と女、青年と少女、力に差が有り過ぎる。

「退散致しますが、また近いうちに」
「ここで何を!?」
「話すような、馬鹿な魔族に見えますか?」

 ただ、遊んだだけだった。タイは後方に跳躍すると追いかけてきたアサギに軽く会釈をし、冷めた瞳でそのまま上空へと飛ぶ。急に月と星が消えて、暗闇になった足元にアサギは唇を噛みながら仰ぎ見る。
 何かが、上空にいた。羽ばたく音が聴こえた、風が吹き荒れた。
 瞬間、燃えるような灯りが見えた。サンダーバードだ、羽が輝いているので羽ばたきすれば光が溢れて零れ落ちる。その美しい姿にアサギは見惚れたが、直様逃がすものかと鋭く叫んでいた。
 このままでは、逃げてしまう。空を飛べなければ逃げていく……アサギは無我夢中で手を伸ばす。と、急に身体が軽くなった気がした。ふわり、と浮いている気がした。
 気ではなかった、地面から足が浮いていた。足を動かす、浮いたまま進んでいる。
 飛んでいる、小さく唇を動かしたアサギは、考えるよりも先にタイが乗っているであろうサンダーバードを睨みつける。逃がしてはならない、とその方角に神経を集中させた。
 ぎこちないが進み始めたアサギの身体は、懸命に追いつこうとした。サンダーバードは気付かずにそのまま優雅に飛行している、距離は離れていくばかりだ。
 せっかく、浮いたのに追いつけない、逃げられる。
 
「待って!」

 鋭く叫び、上手く動けないもどかしさに苛立ち唇を噛み締めていた。――追いつきたい、追いつかなければならない、どうやったらアソコまで行けるの――
 その声に軽く振り返ったタイの細長い怜悧な瞳が、大きく見開かれた。サンダーバードが奇怪な声を張り上げて鳴いた。知らず背筋に悪寒を感じたタイは舌打ちすると、右脚でサンダーバードの腹を蹴り上げる。嘶き、大きく羽ばたくと全力であるように前方に突進した。

「待って!」

 アサギが叫ぶ、その声を聴きながら万が一だとばかりに詠唱を始めたタイだったが、唖然と右を見つめた。
 森林を連想させる深い緑の瞳に、若葉のような淡い緑の髪、ふわりと揺らしながら睨みつけて来る美少女に声が出せない。
 いよいよ過ちを犯したのだと気付き、タイは直様呪文を放った。火炎の呪文である、巨大な火の玉がアサギ目掛けて数個放たれた。剣でそれらを弾き返し、平然と後を追ってくるアサギに軽く歯が鳴る。恐怖で口を閉じていられなかった、目の前のアサギの異質さはタイ自身がよく知っている。
 足止めになるかは解らなかったが、そうするしかなかったので何個も火球を投げつける。タイは、逃亡することしか頭になかった。予定外に計算外だった。
 
「緑の、髪……今のアサギ様に真っ向から勝負を挑んでも殺されるのが道理」
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