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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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そんな相手でも受け入れは不可能だったのだから、今回の人間でも無理だろう、と老樹は深い溜息を吐く。

「懐かしい話じゃの。しかし、まるで昨日のようでもあり。廻り廻って歴史は繰り返されるのじゃ」

微かに項垂れているようにも見える老樹に、動物達は咆哮を止めた。

「とにかく、人間と仲良くなりたいアニスの為にも、人間を襲うのは止しなさい。まして、あのトカミエルという人間に何かあったら、お前達はどうするつもりだね?」

老樹の言葉に、動物達は一斉に俯くとただ、押し黙るより他なかった。
『あぁ、そうか。人間に何かあったらアニスが悲しむんだ』

その日アニスはいつものように、リス達と木の上から人間達を観察していた。
今日は花が咲き乱れる花畑で、花を摘みながら結上げて指輪やら、腕輪やら、冠やらを作っている。
アニスには到底考え付かない遊びで、指先を器用にくるくると動かしながら作り上げていくのを真剣に見入っている。
感嘆の溜息を漏らしながら、楽しそうに笑っているアニスの傍ら、リスは深い溜息を吐いた。

「トカミエル、トカミエル! 私に冠作ってよ。お姫様の冠ね」
「よし、分かった。オルビスは綺麗だものな、飛び切りの冠を作るよ」
「わぁ。嬉しいっ! じゃあ、それを使ってみんなで後で劇やらない? 私、囚われのお姫様。トカミエルが、お姫様を助けに来る王子様。後は・・・適当で」
「はは・・・。わかったよ」

オルビス、と呼ばれた少女は現在街で一番の金持ちの娘だ。
煌びやかな衣装は、いつも少女達の憧れであり、容姿も悪くない、勝気な瞳が際立つ。
少年達の主格がトカミエルならば、少女達の主格がオルビスだろうか。
苦笑いしながら、他の子供達も集まってきて、冠の完成を待つ。
その間、劇の役柄を皆は決めるのだった。
一人トカミエルは、オルビスに頼まれた通り、黙々と冠を作る。
純白の花と緑の葉が織り成す、色彩の美しさ。
オルビスの栗毛に、その冠は良く映えそうだ。
オルビスがトカミエルに好意を抱いているのは公然の秘密であり、それは当然の事の様にも思えた。
押しの強いオルビス、満更でもないトカミエル、二人は常に共に行動していたので、恋仲のようだ。

「出来たよ、オルビス姫」
「まぁ、嬉しいですわ、トカミエル王子」

冠を頭上に乗せて貰うと、オルビスは上機嫌でスカートの裾を摘み、軽く会釈をする。
既に劇は始まっているのだ。
仲睦まじく暮らす二人に、割って入る敵役の子供達。

「やぁやぁ、近頃評判の美しい姫だなっ、貰っていくぞー、あーはっはっはっは!」
「きゃー! 助けて、トカミエル王子っ」

数人の子供に担がれて、遠くへ連れて行かれるオルビスを、トカミエルと家来役の子供達が追う。
アニスは木の上からそんな在り来たりな劇を、愉快そうに手を叩きながら見ていた。
何もかもが新鮮で、胸が高鳴る。
人間とは、なんて面白い事を考えるのだろう。
暫くして陽は傾き、空が暗くなり始めると、子供達は森から出て行った。

「明日はオレとトリアの誕生日会だから、みんな出席してくれよ」
「もちろん行くわ! この間買って貰った一番の可愛いドレスを着て行くわ」

言いながらオルビスはその頭上の冠を投げ捨てると、トカミエルの腕に抱きついた。
ようやく静まり返り始めた花畑に、人間達が摘み散らかした花や花で作られた物が転がっている。
一時的に心を満たす『玩具』であって、終わってしまえば興味がない代物だ。
好きなトカミエルに作らせた冠ですら、オルビスは躊躇なく放り投げた。
取って置いたところで、枯れて醜くなる花冠など、不要である。
アニスは木から身を乗り出し、離れていく人間達に耳を澄ませる。

「誕生日会、って・・・何? 知ってる?」
「さぁ? っていうか、アニス、危ないよっ!! ぎゃーっ」

リスが必死にアニスを引っ張ったのだが、支えは意味を成さず。
枝があると思った場所にそれはなく、宙を掴んだアニスの身体はバランスを崩して豊かな木の葉の間から、ひょっこりと顔を出した。
ガサガサガサ・・・

「え?」

その葉の音に気づいたリュンが、一人その木を見、アニスの姿を捉えた。
木の葉から逆さまに顔を出している見たこともない少女。
木の葉に混ざる見事な新緑の髪、大きな緑の瞳、不思議そうに首を傾げてこちらを見ている、想像を超える美少女。
リュンは思わず顔を赤らめて惚けてアニスを見つめた。
仲間達が去っていくのも構わず、リュンはひたすらアニスを魅入ってしまった。

「・・・何してるんだ、リュン」

肩を叩かれて、小さな悲鳴を一つ、身体を飛び上がらせると、リュンは頭を振り、自分の頬を抓った。
痛いので、夢ではなかったようだ。
現実だと確認すると、リュンは声をかけてきた人物、トリアの腕を引っ張って、アニスの居た木を指した。

「ちょ、トリア、見て見て、あそこ! あの木だよっ! すっごく可愛い女の子が・・・あれ?」
「女の子?」

興奮気味に自分を強い力で引っ張るリュンに苦笑いをしながら、トリアは一応その木を見た。
が、アニスの姿はそこにはない。
リス達が血相抱えて必死にアニスを引っ張り上げたのだ。

「あそこに居たんだってばっ。すっごい可愛い子がっ」
「とりあえず、落ち着け。オレ達の知らない女の子が? 木に?」
「そうっ! あんな可愛い子、見たことないよ! びっくりだよっ」
「でもなぁ、街の面子ならみんな知ってるし・・・知らない女の子だなんて・・・」
「信じてくれないわけ? 本当に居たんだよ、顔を出してたんだ」
「妖精だったりしてな。とりあえず、帰るぞリュン。遅いから見に来てやったんだからな」
「むー・・・。・・・ぜーったい居たんだからね」
「リュンが嘘をつかないことは知ってる。見間違いでもなさそうだ、な」
「トリアも、きっと気に入ると思うよ。すっごい可愛いんだ」

可愛い、と連呼するリュンにトリアは軽く苦笑いする。
このあどけないリュンが異性を『可愛い』と興奮気味に語るのは今までなかったことなので、トリアは強ち見間違いではないと思っていた。
しかし、一体誰なのか?
街の同年代のメンバーは把握しているはずだし、仮に最近引っ越して来た娘だとしても、それだけ可愛いのなら噂になるはずだがなっていない。
該当者がいない。
まさか、本当に妖精? そんな馬鹿な・・・。
だが、リュン同様トリアもその話が気になる様子で、何度も振り返って足を止めては、木を見つめている。

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