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この状態のマビルを、トモハルはなんとかしたのですよー。
書き易いので大丈夫だと思いますが、アル様VSトモハルが始まる前に、終わらせたいところです。
死んだ両親に兄のアイセル、そして弟のトーマ、ついでに魔王アレクが施した、ご丁寧なあたし専用の結界。
これのせいで、出るに出られない。
小さい頃からここに閉じ込められて、森から出たことがないんだ。
話を聞けば、町があったり、お城があったりするらしーじゃない?
海っていう大きな湖があったり、あたしには未知の世界が広がっているそーだ。
・・・見てみたいな。
あたしだって、色んなものを見てみたいのに。
ここから、出て行きたいのに。
おねーちゃんは、卑怯だ。
どうしてあたしがここに縛られているのに、おねーちゃんは自由に生きているんだろう。
殺して成り代わるか、それとも生きたまま立場を交換させるか。
やらなきゃ、あたしは一生このままだ。
冗談じゃない、そんなの、絶対に嫌なのっ。
結界から出られないけれど、結界の中には魔族も人間も入ってこられる。
あたしは出た事がないから見たこと無いけど、どうも外からこの場所を見るとあたしが見えないんだって。
ここにいるのに、誰も気がついてくれない。
でも、いつからあたし、『呼ぶ』ことを覚えたんだ。
手招きしてね、こっちへおいで、って呼ぶとねぇ、ふらふらと結界の中に入ってきてくれるの。
見た目がキレーな魔族とか人間しか呼ばないんだー、あたし好みな男の子を招き入れるの。
で、遊ぶんだ。
仲良くなるとね、色んなものくれるんだよ。
いいね、男の子って。
今日は珍しく6日も保っている金髪に赤い眼の、キレーなオモチャと一緒だ。
可愛いね、て誉めて、頭を撫でてくれる。
当然。
転がってじゃれて遊んでたら、妙な感覚に身体が震えた。
思わず上に乗っかってたオモチャを突き飛ばして起き上がると、そのまま走り出す。
息を切らせて辿り着いた先にあったものは。
「おねーちゃん」
そう、間違いない。
初めて見た、おねーちゃんだ。
一目で解った、確かに・・・あたしに・・・似てなくもない。
けど。
「あたしのほうが絶対可愛いじゃんっ」
そうなのだ、なんかぽやぽやしてて、鈍臭そうだし、髪の艶だってあたしのほうが綺麗。
瞳だってあたしのほうがおっきくてキラキラしてる、唇もぷっくら艶やかなのはあたし、胸だってあたしのほうが絶対大きいし、ともかく外見もだけど・・・。
なんだ、あのひ弱な魔力は。
殺せる、間近で見て解った、殺す事が出来る。
あたしなら、絶対に殺れる筈だ。
ただ、何が負けたかって。
「・・・キレーなオモチャがいっぱい」
そうなのだ、そんななのに、おねーちゃんの周りにはあたしがさっきまで一緒だったオモチャ以上のオモチャが、数人居て。
知ってる、おにーちゃんから聞いてるから知ってる面子だ。
あの黒の長髪男は魔王ハイ。
そっちの銀髪に角が生えてるのは、魔王リュウ。
金髪の女はどうでもいいから置いといて、その隣に居るのが魔王アレク。
で、あの途轍もなくキレーなの・・・紫銀の髪の男が・・・類を見ない人間のドラゴンナイト、トビィ。
あたしの上空を二体のドラゴンが飛行している、あれがトビィの相棒達だろう。
そう、おねーちゃんの周りにこれだけ上玉のオモチャが一気に揃っているんだ。
あたしはとりあえず、行けるトコまで追いかけた。
何をしているんだろう、あんな現時点で最強としか言い様子がない面子で、何をするんだろう。
おねーちゃんは楽しそうに笑いながら、トビィと手を繋いで歩いている。
みすぼらしいそこらへんの雑草で作った花冠を、嬉しそうに頭に乗っけて笑っている。
や、あんなのはあたし、絶対要らないけど。
やがて手頃な場所で座り込んで何かを広げ始めた、バスケットからたくさん取り出してる。
・・・お昼ご飯を食べに来たの!?
みんなで仲良く輪になって、あたしが見たことないようなものを談笑しながら食べ始めた。
あの白い丸っこい食べ物、なんだ???
美味しそう・・・。
「アサギは料理が上手だなー、はっはっは!!」
魔王ハイが涙を流して食べている・・・とりあえず、あれはおねーちゃんが作ったらしい。
あたしは、お腹を軽く押さえた。
お腹、空いた。
セツナイ。
トビィが優しく微笑みながら、おねーちゃんにチキン? を食べさせたり。
魔王リュウが、苺を勧めていたり。
魔王ハイが、豪快に無我夢中で幸せそうに料理を食べていたり。
魔王アレクとその恋人らしき女が、愉快そうに笑みを浮かべて。
そして、中心におねーちゃんが居て、とても、たのしそうに・・・。
「ムカツクっ!!」
あまりにも腹立たしくって、思わず魔力を解放して呪文を繰り出した、得意の電雷の呪文、最大級。
でも、結界に阻まれてそちらまで届かない、あたしの魔力はここから出て行かない。
「くそっ、くっそっ!!」
がむしゃらに、何度も呪文を繰り出してみる、何度かやってみたら結界が崩壊するかもしれないじゃないか。
「天より来たれ我の手中に、その裁きの雷で我の敵を貫きたまえ。眩き光と帯びる炎、互いに呼応し進化を遂げよっ! 我の前に汝は消え行く定めなり、その身を持って我が魔力の贄となれっ」
両手に集中、爆発させるんだ、あたしの全てをっ。
標的はただ一人、おねーちゃん、死んでしまえ、だいっ嫌いだっ。
あたしは大きく振り被って最大の呪文を繰り出した、けど・・・駄目だ、結界に阻まれて全く何も変わらない。
逆に結界から魔力が跳ね返ってきて、逃げられずにあたしはその威力の半分を自身で受け止める形になった。
「ぎゃんっ」
身体が痺れて、焼けて、遠くへ放り出されて地面に叩きつけられた。
流石あたしの魔力、あぁ、これがおねーちゃんにぶつけられたら、絶対即死なのに。
届かない。
あたしの声も姿も、魔力も。
誰にも届かないんだ。
転がって上空を見た、黒竜と緑の風竜が優雅に飛行している。
名前は確かデズデモーナとクレシダといったかな・・・どーでもいいや。
痛い、痛い。
間抜けだ、まさか自分の呪文で痛手を負うなんて。
痛い、痛いよ。
早く治療しなきゃ、傷が残ったら大変だ。
震える手で、治癒の魔法を自身に降り注ぐ。
痛い、痛いってば。
あたしは知らず出てきた涙を腕で拭いながら、唇を痛いくらいに噛み締めて、もう一度おねーちゃんを観に行った。
食事が終わって、なんかボールで遊んでた。
人の顔位の大きさのボールを、みんなで輪になって投げたり受け止めたりしてる。
何あれ、楽しいの?
あたしは見たことなかったから、首を傾げてその光景を眺めてた。
みんな笑顔でボールを追いかけて、ぽーんと高く上がったボールに歓声をあげて。
理解出来ない遊びだけど、でも。
「・・・楽しそう」
あたしは、あんな風に数人で飛び跳ねて遊んだ事はない。
隣の人と手を叩いて喜んだり、失敗して励ましあったり。
だって、ここには壊れ行くオモチャしかないんだもん。
あんなこと、出来るわけないじゃないか。
おねーちゃんは、色々出来るんだ、あたしに出来ない事、出来てしまうんだ。
楽しく毎日幸せそうに、誰かに護られて、生きていけるんだ。
あたしに似てて、全く似ていないモノ。
悔しい。
悔しい。
どうして、あたしはここにいるの。
どうして、あたしはあそこへいけないの。
・・・おねーちゃんが居るからじゃないか、おねーちゃんのせいで、あたしはここに閉じ込められているんじゃないかっ。
消えろ。
死んでしまえ。
あたしを、ここから、出して。
出してよ!
「あ、ごめんなのだー」
「大丈夫ですよ、今とってきます」
結界を殴りつけていたら、ボールがこちらへ飛んで来た。
結界の壁に軽く当たって跳ね返って、ころころと転がっている。
おねーちゃんが。
笑顔で息を切らせてこちらへ向ってきて。
あたしの足元のボールを拾い上げた。
思わず、結界を叩いてみる。
気づくわけがないけど、叩いてみた。
立ち上がったおねーちゃんは、不意にあたしを見た。
あれ、眼が合った。
偶然、眼が合った、あぁそうか、身長とか一緒なのか。
じぃ、と何かを見るようにこちらを見ている。
あたしは振り返ってあたしの後方を見た、何もない。
何を見てるんだ、変な女。
あぁ、近くで見てもあたしのほうがやっぱり可愛いや。
真顔で、じぃ、と何かを見ているおねーちゃん、何、何で見てるの?
ぺたり
おねーちゃんが何故か結界に触れるように手を伸ばして、掌を結界に当てる。
「・・・は?」
思わずあたしは、その掌に重ねるように、掌を突き出してみた。
なんとなく、身体がそう動いたんだ。
まだじぃ、と見ているおねーちゃん、何を見てるの?
・・・まさか、あたしが見えているの!?
何、笑ってるのか、あたしを嘲ってるのか、見下しているのか。
そうだね、影武者の存在くらい、知ってるかもね。
あぁ、そうですよ、あたしがあなたの影武者ですー。
ここから出られないの、あんたが生きてるお陰で、あたしはここに閉じ込められてるのっ。
満足した? 早く行けよ、目障りだっ。
「待ってて、必ずソコから出してあげる」
睨みつけたら、そう言った。
・・・え?
今、なんて言った?
誰に言った、何を言った?
真顔で見てくるおねーちゃんに、あたしは唖然と口を間抜けに開いて、そのまま。
思わず。
助けて、出して、と。
言いたくなったけど、悔しかったから言わなかった。
勝手なこと言うな、出来もしないくせに。
する気なんか、ないくせにっ。
っていうか、ちょっと待って、ホントに見えてるの・・・?
あたしのこと、解るの?
「た、すけ、て」
「待ってて、必ずソコから出してあげるから」
あたしは。
思わず、おねーちゃんに手を伸ばした。
そしたらおねーちゃんは悲しそうに苦しそうに目の前で涙を一筋零して、『大丈夫だからね』って。
こう言ったんだ。
見えてる?
解るの?
じゃあ、早く、助けてよ。
ここから出してよ。
泣いてる暇があったら、こっから出して。
・・・出してくれたら、お礼に殺してあげるから。
やだなぁ、感謝なんてしないよ?
長い間ずっとここに居たんだ、いくら助けてくれたからって、絶対にお礼なんて言わないから。
あたし、待っててあげる。
早く殺されにきなよ、おねーちゃん。
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