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これが終われば地球にかーえーれーるー。
地響き。
あたしはまどろみの中に居たから、寝ぼけ眼で起き上がるとその方角を見やる。
なんだ?
ふわり、と宙に浮いて様子を見るべく頭を軽く振った。
魔力同士の激しいぶつかり合い、どうやら・・・魔界で戦闘が開始されたようだ。
あたしは、部外者なので呆然とその光景を見ていたんだけど。
あまり詳しく見られるわけじゃないから、直ぐに飽きてまた眠りに就こうと思った。
けど。
「結界が!」
消滅した、というか、消えかかっている。
・・・誰かが、死んだんだ。
誰だ、誰だ!?
あたしは慌てて魔力を探った、消えているのは・・・。
「おにーちゃん・・・」
唖然、おにーちゃんの気配が全く感じられない、死んでしまったんだ・・・。
次いで、消えた気配は魔王アレク。
結界はもう、意味を成さない。
この程度ならあたしとて内側から破壊できそうだ。
何より、あたしの存在を知る人物が残るは弟のトーマのみ、トーマは人間界へ遊びにいってるからあたしは・・・自由だ!
嬉々として思い切り上空へと飛ぶ、何処まで行ける? 今まではこの辺りが限界だった。
結界の壁に阻まれて、これ以上高く飛べなかった。
・・・行けた! あたし、出られた!
嬉しいっ、楽しいっ! あは、自由だ!
「出られたよ、おねーちゃん。助けてもらわなくても出られたよ? うそつき」
くるりくるり、空中で回転してみる。
あぁ風が気持ち良い、こんな風景だったんだ、知らなかった!
あそこにお城がある、あれがきっとお城。
なんか煙が立ち上ってて、火も上がってるけど、きっとお城!
あれが海! あれは街! 楽しい!
無我夢中で見つめていたら、不意に、妙な気配を感じた。
近くまで行ってみよう、なんか変な感覚。
徐々に近づいていったら解った、魔王ミラボーが一斉攻撃を受けて倒れたんだ。
にしても、あれだよね、あたしの魔力も引けを取らないよね。
あたしだったら魔王ミラボーくらい、簡単に倒せてしまいそうだよ?
みんな、大した事なさそうだ。
面白くなくて、そのまま踵を返し、何処へ行こうか思案していたらば。
!?
地面から急激な魔力の増幅、何だ、この禍々しいの!?
振り返った瞬間、地面から突如吹き上げてきた得体の知れない化物が・・・おねーちゃんを食べたとこだった。
「く、喰われた・・・」
唖然。
おねーちゃんがはっきりと、その生物に丸呑みにされた瞬間を見てしまった。
あは、あはははは、大した事ないね。
死んでしまった、あたしが手を下さなくても。
呆気ない、あんなのの影武者だったなんて、信じられない。
あたしは大声で笑った。
愉快で愉快で仕方ない、もうこれで、あたしを縛るものは何もない。
さぁ、何処へ行こう?
「貴様ァッ!!」
絶叫と共に更に膨れ上がった魔力、あたしは一時硬直してから声の主を捜す。
トビィだ、激怒してドラゴンと共に攻撃を開始してる。
見れば、喰われたおねーちゃんを助ける為なのか、その場に居た全員が攻撃を開始してた。
魔王ハイに、魔王リュウ、他何やら数名。
不意に、茶髪の男に眼がいった、同じくらいの歳かな?
手にしていた剣が、眩い光を放ち過ぎてて、眼が痛いからあんまり見なかったけど。
好みの顔じゃないし。
・・・遅いよ、そこの人たち。
おねーちゃん、食われたでしょ?
見たでしょ? 助からないよ、死んでるよ。
なのに、何故戦うの? 何のために戦うの?
そんなに必死になんでなるの? そんなにおねーちゃんが、大事なの?
馬鹿みたい、逃げればいいのに。
その変な敵は、巨大に膨れ上がって、もう止め様子がないよ?
あたしが参戦しても、無駄そうだから助けになんて行かないし。
零れる魔力が、近づくな、ってあたしに言い聞かせる。
「おねーちゃんは、みんなに護られているんだね。・・・死んだけどさ」
疎ましい存在。
あたしにはない物、たくさん持ってる人。
でも、もうこれで会う事もないよね。
さようなら、おねーちゃん。
観戦してたら案の定得体の知れない物体が勝利した。
最後に倒れたのはトビィとクレシダ、か。
残念でした。
さて、何処へ行こうかな?
いい加減立ち去ろうとした時だった。
ザワリ
背筋が凍りつく、血が逆流する。
後方で、未知の数値の魔力が突如現われた。
このあたしですら戦慄を覚えた程の、魔力。
誰、誰だ!? 何処から来た!?
振り返った瞬間、あたしが見たものは。
「・・・おねーちゃん・・・?」
得体の生物の腹を引き裂いて、出てきて微笑して浮遊していた、おねーちゃんだった。
緑の髪に、緑の瞳、さっきまで黒髪に黒い瞳だったのに。
ゾクリ
・・・桁が違う! 魔力に違いがありすぎる、馬鹿げてる、なんなのあれ!?
あまりのことに呆然と、身動きとれずに眺めてた、というか、眼が離せないんだ。
吸い寄せられるように魅入ってしまう、その姿。
ひょっとして、あれが本来のおねーちゃん・・・なの?
おねーちゃんは何故か見当違いの方向へ飛んで行った、何をするのかと思えば湖に水飛沫を上げて落下して。
暫くして水浸しで浮上してくると、無表情で何か言った。
何て言ったのかは解らないけど、得体の知れないその生物が奇声を上げておねーちゃんに突進し。
微動だすることなく、おねーちゃんは空気中から創りだしたとしか思えない、純白の鞭でその敵を・・・。
叩い・・・え? あれ、鞭じゃないの? 槍みたいになってるし、なんだかもう、何をどう攻撃しているのかすらわからないけど。
優雅に舞うように、その鞭みたいなのを振り回して、余裕でおねーちゃんはその敵を、滅多刺しにしている。
額を汗が伝う、急にあたしは地面に引っ張られるように落下した。
バキバキと木々をへし折って、地面に叩きつけられる。
魔力操作が上手く出来ない、浮遊力が消去されたんだ。
悲鳴を上げながら宙に手を伸ばして、必死にもがいたけど、駄目だった。
背中から強打、苦痛に顔を歪めて身動きとれずに蹲る。
けど、起きなきゃ、逃げなきゃ。
きっとおねーちゃんはあたしが邪魔だ、殺しに来るだろう。
勝てない、勝ち目などない。
随分と情けない姿だ、腕を使って地面を這って進み続ける。
殺される前に、おねーちゃんに気づかれる前に。
あたしは、恐怖で身体を強張らせながら、気力だけでそこから進んだ。
でも、あたし。
森から出た事ないから、知らないんだ。
何処へ行けばいいのか、わからないんだ。
「っ、ふぇっ・・・」
怖くて、泣いた。
痛くて、泣いた。
だぁれも、いない、あたしを知ってる人が、だぁれもいない。
だれも、たすけて、くれない。
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