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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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マビルが可愛い。
トモハルが、ウザイ。

私そっくりで、ウザイ(瀕死)。

・・・なので、あまりにも、情けなくて。
泣きながら書いたトモマビ22をお送りしておりますですよ。

ところで、どなたかトモハルのからくり(?)に気づいた人いるのかしら、とか(どきどき)。


トモハルをぶん殴って大きく呼吸して。
床に転がっていた指輪を拾い上げてから、変な紙を手にとって。
眺めてからあたしは何故か赤くなった顔を、ごしごしっ、としてからその紙を。
ベッドの上に置いて部屋を出た。
何が夫婦。
何故夫婦。
よ、よくわかんないけど、普通そういう時って。
「好き」とかそういう言葉があるもんなんじゃないの!?
頭にきた。
よくもまぁぬけぬけと、勝手に夫婦に!

仕方ないから指輪を填める。
うん、指輪は気に入ったから貰っておいてあげる。
・・・それだけだよ。
いいね、それだけなんだから!

・・・でも、あの部屋は可愛かったから。
も、戻ってあげるよっ。


朝起きたら、左手の薬指に指輪。
右手の先にいるトモハル、その左手薬指にも、指輪。
そうか、夫婦になったんだった。
・・・変なの。
別に、破棄してもいいよねぇ、あんな馬鹿げた・・・。
・・・。
まぁ、メンドイし、このままでいーや。
・・・面倒だからだよ。
別にトモハルと結婚してもいいとか、そう思ったわけじゃないんだからね!?

ともかく、お城住まいが始まった。
広いし綺麗だし。
まだまだ色々増えていくみたいで、お庭も出来るらしい。
他の勇者達も集まってきて、今後について会議するとかだったから、あたしももちろん出席するつもりだった。
異様に張り切っているトモハルは傍から見ていて愉しそうだ、遣り甲斐ある仕事を見つけた、ってカンジ?
国の方向性を固めるとかで、日々会議、合間に建設状況を確認。
・・・あたしも、あたしなりに勉強してみた。
役に立つ、っていうか、あたしの意見も聞いてもらいたかった。
のに。

「トモハル、あたしも出るよその会議」
「マビルは大丈夫だよ、何も心配しなくてもいいからね。暇だろうから何処かで遊んでおいで」
「や、そーじゃなくて・・・」
「夕飯は一緒に食べよう、何がいい?」
「や、だから、別にそんな豪華じゃなくてもいいんだけど」
「うん、待っててね。すぐ終わらせるからね」

・・・。
笑顔で頭を撫でて、あたしを置いていく。
トモハルは毎日毎日城内で会議してた。
あたしも、その隣に居たいんだけど。
一応あたし、このお城の王妃なんだよね?
そうなんだよね?
意見しちゃいけないの?
何故、出席しちゃいけないの?

あたしは毎日一人ぼっちになった。
おねーちゃんはいないし、いつも居てくれたトモハルがいない。
城内にはいるから、傍にはいるのかもしれない。
でも。
朝起きて一緒にご飯食べたら、夕飯まで会えない。
広すぎるお城は、退屈だ。
あたしの為にかおねーちゃんとの絵画とか飾られたけど。
・・・退屈。
何をしたらいいの?
あたし、何故ここにいるの?
というか、何故。
トモハルの傍に前みたく居られないの?
・・・イライラしてきた。
近くにいるのに、いるはずなのに、物凄く遠い場所に居る気がして。
左手の薬指に光る指輪、これがなかったときのほうが、近くに居られた気がする。
べ、別に傍に居たいわけじゃない、・・・居たいわけじゃ、ない。

もうすぐ、トモハルの誕生日だ。
あたしは何をあげればいいのか検討もつかなくて一人で時間もあることだし、ぶらぶらと街を歩く。
恋人同士に用意された物は、世間に溢れ返っている。
お揃いのマグカップとか、ペンダントとか。
でも、どれもこれもあたし達には不釣合いな気がして。
結局何も買えないまま、その日を迎える。
トモハルの意向があって、国を挙げての盛大な誕生日会はなかった。
普段と何も変わらない日常、色んな人がプレゼントを渡しに来たり、言葉を述べに来た。
何故か解らないけど城内で働いているメイドに絶大な人気(らしい、信じられないけどさ)で、女達から手作りのクッキーやらケーキやら多々貰って、トモハルは照れ笑いを浮かべてて。
・・・なんだ、ありゃ。
悪いけど、あたしはそんなのあげたりしないから。
よかったね、たくさん貰えて。
・・・取り囲まれている姿を見たら、無性に腹が立ったから、何も買わなくてよかったと思った。
なんだかあたしの居場所がない気がして、うろうろと城内を彷徨った。
そうなのだ、あたし、友達というものが特にいないのだ。
おねーちゃんが居てくれればよかったし、他はトモハルとずーっと一緒だったから。
人と話すことが嫌いなわけじゃないけど、自分から話しかけるのは苦手だ。
強いて言うなら奈留くらいだろーか、友達って。
・・・でも、あれは友達じゃなくて下僕だー。
おねーちゃんが。
好きな人としかキスはしちゃいけないし、ましてや身体を重ねるなんてもってのほかだと以前あたしを怒ったから、うろうろとキレーなオモチャを探すこともなくなったし。
あ、あたし一応旦那がいるらしーしっ。
庭でぼんやりとベンチに座っていたら、猫の鳴き声。
退屈だったし猫でも探そうと思って、声を頼りに歩き回ったら、木の上で鳴いていた。
え、下りられないのかな。
ミャーミャー震えて鳴いている猫、そっと宙に浮いて助けに行く。
思ったより大人しくて、動物に触った記憶があんまりないんだけど、ともかく、そっと、抱き締めて地面に下ろした。
この猫、何処から来たんだろう。
何処かへ行くと思ったら、何故か足元に擦り寄ってきた。
・・・え、どうしたら。
・・・んー・・・。
厨房にミルクを貰いに行って、何を食べるのか解らなかったから昼ご飯の残りの焼き魚を与えてみる。
夢中で食べている猫、なんか可愛かったから頭を撫でて遊んでた。
真っ黒い、猫。

「ひとりぼっち? うん、あたし暇だから一緒に遊んであげるよ」

あたし、迷子の黒猫を飼う事にしたの。

その日の夕飯は流石にトモハルの誕生日なだけあって、豪華だった。
あたしの好きなものがたーくさん、並んでた。
うん、美味しい。
お風呂には薔薇の花が浮かんでた、きっとトモハルが貰った花束を、こうしてやってみたのだろう。
綺麗だ。
黒猫は、名前をクロロン、って名付けて、庭に置いて来た。
明日、部屋で飼ってもいいか聞いてみようと思って。
大きなベッドに転がっていた、部屋はトモハルが貰ったプレゼントで溢れてて居場所があんまりない。
何を貰ったんだろう、別にあんなのにあげなくてもいーのに。

「食事、美味しかった?」
「うん。美味しかった。あのリゾット、凄く好き」
「そっか、よかったー」

お風呂上りで顔が上気しているトモハルが部屋に戻ってきて、なんか疲れてるような印象を受けたけど、ちやほやされるというのも大変だね。
もうすぐ、明日になる。
日付変更前に、そうだね、とりあえず。

「お誕生日おめでとー。19歳ー、もう若くないねー」

あたし、一月が誕生日だからまだ18歳なの。
そう言ったら、トモハルは立ち止まって、目を丸くしてた。
・・・何、あたしが祝いの言葉しちゃ、いけないのか。
気に入らなくて睨みつけたら、咳をして顔を赤くしてから挙動不審に部屋をうろうろと廻って、ワインを一本、グラスを二個。
手にしてこちらへやってくる。

「トビィがくれたんだ、結構律儀なんだよね。お勧めらしいから、一緒に呑もうか」
「おつまみは?」
「これまた貰った、燻製があるから・・・」

トビィの見立てならきっと美味しいはずだ、あたし、軽く頷いて呑む事にする。
小さく乾杯。
貰い物が食べ物って、いいね、色々困らなくて済む。

「言っとくけど、あたし、プレゼント買ってないからね」

言ったら、吹き出してトモハルは微笑する。
頭を撫でながら、思いの外優しい声でこう言ったんだ。

「別に要らないよ。・・・マビルが居てくれたからそれで、十分なんだよ」

・・・そうなの?
ふーん・・・安上がりー。
一向に目を逸らさず頭を撫でるのを止めないトモハル、こちらが妙に照れてきた。
なんでだ。
ワインが強いのだろーか、2人で一本空にして、燻製も食べ終わった。
うん、寝よう。
アルコールが廻ってきた、ちょっとくらくらする気がする。
顔は火照って熱いけど、今ならぐっすり眠れそうなくらい、だるい。
トモハルがテーブルにグラスとかボトルとか片付けてくれたから、あたしは軽く伸びをして欠伸。
寝よう。
戻ってきたトモハル、横に座ってじぃ、っとあたしを見てくるから。
・・・なんなんだ。
あんまり、見ないで欲しい。

「・・・マビル」

何故、近寄ってくる!?
何故、頭を撫でてくるの!?
そんな甘ったるい声で名前を呼ばれても、あたしは。
不意に頭を撫でていた手が、そっと頬に触れてきたと思ったら、次の瞬間。
軽く抱き寄せられて、気がついたら唇を塞がれていたの。

ええええええええええええええええええええ!?

瞬間、頭がまっしろけ。
触れるか触れないかの口付けだったから、びっくりして少し離れた瞬間に息をしようと唇を開いたら。

なんか、入ってきた!

「・・・!? っ~、!!!!」

どういうことだ、ちょっと待った、これは困るっ。
止まらないトモハル、ともかくもがいた、あたしはもがいた。
いつもみたく、ぶっ飛ばそうと思った。
けど、どうしても、どうしても、力が入らない。
ワインのせいだ、アルコールが。
というか、おまけに、あれだ、あれなの。
信じられない、トモハル、キスが上手かった。
ので、あたしとしたことが、頭が真っ白にー!

「っあ・・・」

・・・。
”あ”、じゃないでしょ、あたしーっ!
何故ベッドに押し倒されてるのー!?
唇が、離れたから、ようやく視線が合った。
マズイ。
これは、マズイ。
熱に浮かされた様な表情のトモハルは、いつもみたくへらへらしてなくて、妙に男っぽかったので、思わず惚れそうに・・・。
いやいや、惚れないから惚れないから!

「ちょっと、ちょっとっ」

暴れてみたのだけど、ダメだ、こいつ、力の加減してない、動けないじゃないかっ。

「好きなんだ、マビル」

いや、あのさっ。
また顔が近づいてきたから、近づいてきたから、胸が、苦しいから。
なんか、ドキドキするから、胸が痛いから。

「キスは、好きな人としかしちゃいけないって、おねーちゃんが言ってたっ」

寸でのとこで、そう叫ぶ。
一瞬、トモハルの顔が歪んだ気がしたけれど、なんか情けなく微笑んで。

「・・・ずっと、好きなんだ」
「あ、あんたはあたしのことが好きかもしれないけど、あたしは好きじゃないもんっ」

また近づいてきたから、思わず、そう言ったの。
そしたら、硬直していた。
チャンスだ、このまま逃げ切ろう。

「まぁー、あたし可愛いから、好きになるのは勝手だよ、自由。でも、あたしは、好きじゃないし、おまけにさ、キス下手くそなんだもん、気持ち悪かったのっ」

硬直してるトモハルを押し返す、ふぅ、息が出来た。 
何も反論してこないから、優位な立場に戻るべく、あたし、見下して笑ってやったのだ。

「よくも、このあたしにキスしたあげく、押し倒してくれたよね。人が折角誕生日祝ってあげたのにさ、酷くない? あたしの好みはもっとクールな美形なの。好みの顔でもないクセに、おまけに下手くそなキスだなんて、ホント、冗談じゃない」

髪をかき上げて、唇をごしごし擦った。
どんな顔をしてるのかと思って嘲笑って睨みつけたら。
・・・あ、あれ。
・・・。
・・・。

「ご、ごめんな」

酷く。
泣きそうな顔で俯いてあたしのほうも見ないで、それだけ言って。

「そ、そうだよな。もともと、マビルは俺のこと、好きじゃないもんな・・・」
「うん、そうだよ。勘違いも甚だしいよね」

あ、あれ?

「・・・頭、冷やしてくるよ」
「うん、そーして。あたし、寝るから。こんな危険な男の隣じゃ気分良く寝られないから、帰ってこないでほしーくらいだよ」

あ、あのっ。

「・・・そうだね、そうしようか」

・・・えっと・・・。
立ち上がったトモハルは、そのまま。
一度もあたしの顔を見ることなく。
静かに、部屋から出て行った。
・・・う、うん、これでいいや。
もっかい、ベッドに転がった。
寝よう、疲れた。
・・・でも、眠れない。
胸がドキドキしてて、眠れない。
それから。
トモハルの、顔が。
なんか、すごいショックを受けてたみたいで。
何処見てるのかわかんない目で、声も、震えてて。
胸が、痛い。
何故か、悪い事をした気がしてきた。
いや、あたしは悪くない。
もとはと言えば、あんなことしてきたトモハルが悪いんだ。
あたし、悪く、ないもん。
・・・そうだよね?
でも、なら、なぜ、あたしは。
胸がこうも、痛いんだろう。
あの、トモハルの表情が、忘れられないんだろう。
・・・まぁ、でも、アイツのことだ。
きっとへらへら笑って戻ってくる。
土下座して戻ってくる。

・・・トモハルは、朝まで戻ってこなかった。
眠れなくて、待ってたの。
戻ってきたら、叱ってからまた手を繋いで眠ろうと思ったの。
でも、でも、トモハルは、戻って、来なくて。
寝不足で朝ご飯を食べに行ったら、もう先に仕事に入っているとかで、顔を合わすこともなかった。
ふ、ふん!
・・・お、おかしい、な。
胸が痛い、痛いよ。

クロロンと遊ぶ為に庭に行ったら、話声が聞こえてきたから、何故か身を潜めてしまった。
トモハルとメイドの人だ、よくトモハルの隣に居るあたし達より年上の人。

「どうされたんですか、朝から様子がおかしいですよ? 誕生日ではしゃぎ疲れました?」
「・・・キスが下手らしくて、俺」

そんな相談するなよ、馬鹿っ。
呆れた。
ほんっと、男らしくない奴っ。
後姿だから顔が見えないけど、イライラしてきた。
と、思ったら。
思ったら。

「じゃあ、私で練習します? トモハル様なら私構いませんけど」
「え」

・・・はぁ!?
何言ってるんだ、あの女!
わー、むかつくー。
そんな女、張った押してしまえ、トモハルっ。
植木の陰から、2人を覗いてる。
あたし、何してるんだろう・・・。
出て行って「これ、あたしのですからっ」って言えばいいのに。
というか、何故沈黙。
トモハル、ねぇ、何してるの?
ねぇ、早く何かいいなよ。

「・・・ありがとう」

聞こえた言葉は、ありがとう。
小さく笑った女の声、なんか、2人が動いた気がした。
だ、だから、あたし。

その場から、逃げ出した。
出て行って、二人を殴ればいいのに、出来なかった。

な、何さ。
トモハル、キスが下手だからって、練習なんかしなくてもいーじゃんっ。
下手じゃないよ、違うんだよ。
とても、上手なの、上手だったの。

やめてよ。
他の人とキスなんかしないでよ。
あたしのなんだから、勝手にあたしに何か言われてへこんだくらいで、そんな。

・・・やめてよ、痛いんだ、頭と胸が痛いんだ。

部屋に戻って、ベッドにダイブ。
すっごい気持ち悪くて、お昼ご飯も食べずに伏せってた。
寝てなかったこともあって、夜まで眠ってたらしく気がついたら窓の外は真っ暗だった。
お腹空いたけど、食べに行く気力がなくて、ふいにテーブルを見たらサンドイッチが置いてあったからそれを食べる。
海老とアボカドだ、美味しい。
温いけどオレンジジュースも置いてあった。
トモハルが置いてくれたのかな。
あたしは一生懸命それをお腹に入れた、お腹空いてるのになかなか思うように食べられない。
食べながらクロロンを思い出して、サンドイッチ片手に庭へ向かった。
大変だ、お腹空かせているに違いないもん。
暗くなっててよく分からなかったんだけど、ガサガサ、って音がしたからそちらへ歩く。
 
「トモハル様はキス、とても上手ですよ」
「ちょっ」
「えー、えー! キスしてもらったんだー? メイドには平等にしてもらわないと困りますぅ、トモハル様」
 
耳を疑った。
何、今の会話。
朝のメイドと他数名のメイド、そしてトモハル。
っつーか、なんであんなにメイドばっか引き連れているわけ!?
真っ赤になって取り囲まれて、満更でもなさそうに・・・って、何、あれ!?
というか、なんであの年増メイド、トモハルがキス上手い事、知ってんの・・・?
やっぱり、朝、キスをしたの?
あの後、あたしが逃げた後、キス、したの・・・?
練習したの?
あたしにしたみたく、あの年増メイドに、キス、したの?
想像したら、胸が痛んだ。
やめだ、やめっ! 今のなしっ。
痛くて痛くて、トモハルを見たら、でれでれと、メイドに囲まれて、さ。
・・・好きな人としか、キス、しちゃいけないって、おねーちゃんが、言ってたの。
あたしは、また、そこへ出て行くことが出来なくて、クロロンを捜さずに部屋に戻った。
そっと、戻った。
惨めだ。
なんで、怒れないのだろう。
というか、怒る必要もないのか、な。
あたし、別にトモハルが好きなわけじゃないし。
うん・・・そうだよね。
でも、酷く・・・。
疲れた。
とても、疲れたの。
涙が、何故か止まらなくて。
気持ちが悪い。
トモハルは、帰ってこなかった。
ドアを見てたけど、開かない。
あたし、また、眠ったの。
・・・嫌だな、キスの練習でもしているのかな。
たくさんのメイドと、キスの練習をしてるのかな・・・。
嫌い、嫌いだ、トモハルなんて、嫌い。
好きじゃない、好きなわけがない、だから、あたし、別に傷つかない。
・・・はずなの。

朝、トモハルはまた居なかった。
ひょっとして、あの年増メイドの部屋にでも寝泊りしているのだろうか。
・・・と、考えたら苛々した。
庭に行ってクロロンを呼んだら暫くして、木の上からするする、と降りてきた。
おー、上手になったね木登り! っていうか、木下り。
 
「ニー」
「ミャー」
 
!?
木の上からもう一匹。
茶色の猫が下りてきて、あたしの足元でじゃれ付いている。
 
「何、友達? 何処から連れて来たんだか」
 
あたしはまたまた厨房に出向いて、ミルクと大量に獲れ過ぎたお魚を分けてもらって、二匹に与えた。
 
「あんたは茶色いから、チャチャ、って名前にしてあげるよ」
 
チャチャはクロロンを追っかけまわしてる、嫌がって逃げて威嚇して、引っかくクロロン。
あははー、でも、チャチャは一生懸命クロロンについていくんだよね。
二匹と遊んでいたら、足音が聞こえて、怪訝に振り返った。
トモハルだった。
 
「あれ、猫?」
「うん。迷子猫、あたしの友達。二匹になった」
「名前は?」
「黒いのがクロロンで、茶色がチャチャ」
「ぷっ、そのまんまだね」
 
笑ったな? ・・・ふんっ。
隣にしゃがみ込んで、背丈の長い草を引き抜いて二匹の前で揺らすと、それに飛び掛ってくる猫。
あたしは猫と遊ぶトモハルを横目でじぃ、っと、見ていた。
唇を見た。
結構綺麗な形をしている、そうか、この唇にキスされたのか、あたし。
 
「チャチャは、クロロンが好きなんだね」
「そうなの?」
「うん、チャチャがオスで、クロロンがメスだ」
 
二匹を持ち上げて性別を確認、教えてくれたトモハルは、優しくクロロンを撫でている。
とっても、愛しそうに、頭を撫でている。
じぃ、っと見ていたら、不意にトモハルがこちらを向いた。
びっくりした、慌てて顔を背ける。
 
「何か俺の顔についてる?」
「べ、別にっ。相変わらず間抜け面だな、と思ってー」
「はは、さっきツマミ食いしてきたケーキの生クリームでもついてるのかと思ったよ」
「はぁ!? 国王がそんなことしていいの!?」
 
笑いながらようやく会話出来た、二人で芝生に座り込んで猫と遊ぶ。
うん、前みたいな時間だ。
あたし、こういうの好き。
クロロンが気に入ったのか、ずっと抱き締めてて放さないトモハル、すっごく優しそうな目で見ているから、思わずあたし服を掴んだ。
 
「き、キス、してもいーよっ」
 
唇を見ていたら、とてもキスをしたくなった。
クロロンがちょっと、羨ましいと思ってしまった。
その、あれだ。
うん・・・。
言って、恥ずかしかったものだから。
 
「な、なんかさぁ、城の人たちにあんたがキスが下手で落ち込んでる、ってきーたからー。仕方ないからこのあたしが直々に練習してあげるよ、特訓特訓。まぁ、顔も悪くてキスも下手な男なんて最悪だし、うん、だから、さ」
 
嘲り笑う様に、小ばかにした感じでそう言って、あたしは大人しく目を閉じた。
目を閉じてないと、恥ずかしくてまた反射的に身構えてしまいそうだったから。
沈黙。
ニャーニャー猫の声が聞こえるけど、トモハルは何も言わない。
空気が動いたからキスをしてくれるのだと思ったら、ぽふ、と頭に何かが乗った。
あったかいそれ、クロロンだ。
黒い尻尾があたしの顔に触れる、くすぐったい。
目を開けたら、トモハルが、距離を置いて、微笑んでいる。
あ、あれ?
 
「な、何、キスしないの? 特別だよ?」
「いや、いいんだ。ごめんな、気を遣わせちゃったね。そんなことしなくても大丈夫だよ」
 
え・・・。
 
「さて、そろそろ戻ろうかな」
「仕事?」
「うん。大事に育てるんだよ」
「う、うん」
 
・・・あれ。
トモハルはクロロンを撫でてから、そのまま去っていった。
どうして?
どうしてあの年増メイドの練習には応じたのに、あたしには応じないの・・・?
逆でしょう? 普通逆だよねぇ!?
あたしの頭から下りて、またクロロンはチャチャと遊び始めた。
一生懸命チャチャがクロロンについていくと、ようやくクロロンも認めたのか仲良く二匹一緒にくっついている。
・・・いいな。
いい、なぁ・・・。
ねぇ、なんで、キスしてくれないの・・・?
二匹の猫はとても仲が良いみたい。
ねぇ、チャチャみたくもっとさ、頑張ってよ。
あたしに何か言われても、気づいてよ、多分本心じゃないの、それ。
・・・なんで、キスして、くれないの・・・?
 
夕飯食べて夜、ベッドに転がっていたらトモハルが戻ってきた。
起きているとは思わなかったのか、ぎょっとしている。
や、ぎょっとしていたのはあたしの格好を見て、かな。
あたし、何がしたいのかわかんないけど、ふりふりすけすけのベビードールを着てみたのだ。
いつもはタンクトップに短パンなんだけど、うん、いや、その、なんとなく。
真っ白のやつ、奈留とおねーちゃんと色違いでお揃いなんだ、奈留がくれたんだ。
気まずそうに視線を逸らしたトモハルに気にするわけでもなく、あたしはごろごろと転がる。
チラチラとあたしはトモハルを見ていたら、なんかクローゼットから何かを取り出してきてあたしにふわり、とそれをかける。

何かと思ってトモハルを見たら、トモハルは困ったように笑ってた。
 
「駄目だよ、そんな格好を人に見せたら」
「・・・おねーちゃんと奈留とお揃いなの」
「うん、女の子同士で寝るときに着るんだよ」
「いーじゃん別にっ」
「駄目だよ、俺がここにいるから」
 
言葉遣いがいちいちなんか子供をあやすみたいでさ、むかついた。
 
「あぁ、欲情しちゃって、あたしピンチになるんだー、そうなんだー。前科あるしね」
 
相手してあげてもいいよー、って笑って言おうとしたら、トモハル。
真顔で、本当に困惑して。
 
「いや、もうしないからそれは心配しなくてもいいんだ。絶対にあんなこともうしないから、安心して眠っていいんだよ」
 
あたし。
思わず言葉を失った。
酷く、傷ついた気がする。
拒否された気がする。
べ、別にしてもいいのに。
・・・なんで?
 
「ふ、ふん。信用できないねっ」
「アサギに誓って、もうしないよ」
 
おねーちゃんに、誓って?
・・・。
凄いものに誓ったな。
・・・本当に、しないつもりなんだろうか。
しないんだろうな、おねーちゃんの名前を出してきたんだ、絶対しない。
え、どうして? なんで、なんで? だから、キスもしてくれないの?
 
「だからね、そんな格好してても俺は平気なんだけどね、そういうのはね、好きな人の前で着るものなんだよ」
 
それくらい、知ってるもん。
平気? あたしがこんな格好してても平気なの・・・?
なんとも思わないの?
・・・トモハルに見せようと思って着てみたのに、それじゃ意味が。
トモハルは強引に目を瞑ってあたしにローブを着せると、そのまま、手を軽く繋いで横になった。
 
「おやすみ、マビル」
「お、おやすみ・・・」
 
寝やがった。
キスも、してくれないし。
身体に触れもしなくなってしまった。
手は、繋いでくれるみたいだ。
あたし、酷く胸が痛い、叫びたい。
どうして、どうして?
背中を見つめる、そう、背中を見つめた。
前はこっち向いて寝てくれたんだ、互いの顔を見て眠ったんだ。
どうして、見てくれないの?
キスする相手が他に出来たから? それ以上のことも出来る相手が山ほど居るから?
あたしなんか、どうでもいいんだろうか。
一度罵声を浴びせて拒否したから、面倒だし、もう手を出さないって?
 
どれだけあたしが色んなベビードールを身に纏っても、トモハルは毎晩苦笑い、しまいには軽い溜息。
あたしだけ、バカみたいだ。
 
「ト、トモハル」
「ん?」
「あ、あの、す」
「?」
「す、すきやきが食べたいっ」
「鋤焼? まだ暑いけど・・・食べたいのなら明日の夕飯はそれにしようか」
 
馬鹿みたいだ。
離れていったら惜しくなったのか、こっち向いて欲しくて、好きとかいう変な言葉を言いたくなった。
別に好きじゃない、ただ、プライドが許さないんだ。
こんなあたしが隣に居るのにキスもしてくれない、なんて。
良く考えてたら、トモハルの誕生日のあの日まで、いつも一緒だったのに絶対に手を出してこなかった。
・・・好きと言いたくても上手く言えなくて、あたしは何故かしょっちゅう今後も鋤焼を食べる羽目になる。
美味しいけどさ。
でも、鋤焼にもいい加減飽きてきてしまったの。
前で食べているトモハルの唇が、気になって仕方ない。
ねぇ。
また、メイドとキスの練習してたの?
しなくていいよ、下手じゃないから。
・・・嫌いだ、トモハルの唇は嫌いだ。

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…あ、ワイン贈ったのトビィか(爆

マビル可愛いなあ…
トモハルはあと一息だなあ…
落ち込みぶりが、まこにそっくりだなあ…(汗

からくりが気になるが…
トビィ(後 2008/09/15(Mon)00:09:19 編集
からくりはですね
絶対言わないのですよー(照)。
最後に言おうと思ってー。
解った人が居たら感謝感激、ちなみに、トモマビだけ読んでいると多分気がつかないのですー。
コロッセウム読んでると解るかもしれないのです。
えへへー・・・。

未成年うんぬんを言ったら、トビィお兄様はどうしたら(倒)。
クレオでは16歳で飲酒可能なのですよっ(強引設定)。

まこさんが、項垂れながら続きを書いていますです。
ふぁいと、おー・・・(アサギも項垂れ)。
アサギ 2008/09/15(Mon)00:18:20 編集
まだ大丈夫v
読み始めに 深呼吸してから読むからかな?
まだ 大丈夫v

まるの後ろの人は「胸が痛いー」と 苦しんでますが(笑)
マビルさんの態度に 心当たりが有りすぎるようでっ

一番好きな人とは 話が出来なくて、その他の人に告られて、一番の人とは友達で終わる事が多いらしい(苦笑

マビルさんー
がんばれーっ
まる 2008/09/15(Mon)08:14:45 編集
わー
なんというマビルのツンぶりー
うーん、えらいすれ違い。
だが、これはショックを受けざるをえないな、哀れトモハル。

まぁマビルもなんだがトモハルもにぶっ。
ユーリエル 2008/09/15(Mon)17:53:26 編集
にょろーん・・・
まぁるちゃん>
よかった、まだ大丈夫なのですね(安堵)。

というか、一番の人とは友達で、ですかー・・・。
はぁう、切なくて倒れそうなのですがっ。
・・・(ぎゅむり)←待て

ユーリエル様>
ツンツンなのですー。
とげとげなのですー。

うちのトモハルは、非常に鈍くさいのですよ。

上手く行くと、マビルはアル様に逢えないので、トモハルには悪いのですが、ちょっとこのまま(以下略)
アサギ 2008/09/17(Wed)00:23:51 編集
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