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まぁるちゃんへ
コレ以後、泣かれるかもしれないので読むときはご注意を。
尚、書いている作者は今回の最後辺りで既に涙が(マテ)。
22~大変危険になっております。
マビルとトモハル、双方の食い違いを止められるアサギは当時OL大陸で記憶をなくしてビエル山脈に下りました。(推定)
人生の中で二度も人質に取られるのはあんまりないんだろうなぁ、と思いつつ。
泣きじゃくるマビルを抱きかかえてトビィ達と一旦天空城へ戻ったその日。
皆が泣き疲れて衰弱した状態で。
最も泣き喚きたかったのはトビィだったろうに、一番毅然とした態度だった気がする。
7月7日、七夕。
アサギが死んだ。
後で見つけた某お店の短冊に、アサギの字でこんな願いが書いてあったんだ。
『どうか、みんなが幸せに暮らせるように、私がすべき事が達成できますように』
馬鹿だなぁ、アサギ。
勝手に決めて、勝手に実行した結果が、これだよ。
アサギが死んだせいで、マビルは泣きじゃくって俺まで泣きそうだよ。
トビィとリョウとベルーガなんか落胆して、一言も口に出さない。
みんなぶっ倒れそうだ、ばーか。
・・・トランシスは、狂ってしまった。
トビィになんとか救われて、今は精神安定剤を飲んで眠っているけれど、発作的にいつ発狂する事か。
アサギのせいだ。
アサギが勝手に誰も望みもしなかったことをするから。
後に”歯車崩壊”と呼ばれる事になったその出来事。
俺含めて様々な人が人質としてアサギの元に集まっていた。
人間代表が俺、魔族代表が長であるナスタチューム、それに反する魔族の長のエルダ、おまけに神様のクレロまで人質だよ。
人質をとってアサギを攻撃させようとしたんだ、全種族に自分が敵だと思い知らせたんだ。
でも、攻撃できるわけがない、相手はアサギなんだ。
皆うろたえた、それに痺れを切らして球体の中に閉じ込められていた人質の俺達が傷つけられることに。
悲鳴が上がった、皆は俺達が死なない程度に生かされていると思ってたんだろう。
でも、違ったんだ。
その球体は不可思議な力が働いていて、アサギが攻撃すると同時に回復の魔法もかかっていた。
傍からみたら、一方的に攻撃を受けていたみたいだけど、違うんだ。
最初からアサギは誰も傷つける気なんかなかったんだ。
やがて、夜空の星が一斉に輝いた、天の川が美しく本当に波打つように光り輝いて、それで。
気がついたら、トビィがアサギを斬っていた。
まるでそれが合図みたいに。
涙を流して、苦悶の表情でアサギを後ろから斬っていたんだ。
満足そうに微笑んだアサギは、最期に。
俺を見たし、マビルを見たし、勿論トビィも見て、それで。
・・・トランシスを見て、穏やかに微笑んだんだ。
大好きだったんだろうな、あんなことされたのに。
それから各星で、死者が生き返った。
数年前に死んだはずの魔王ハイとか、マビルの兄さんのアイセルとか、命を落とした人が突如生き返ったんだ。
アサギの「ごめんなさい」という声を聞いて目が覚めた、というその人たちを集めて、天空城で説明が始まった。
トビィが、リョウが、ベルーガが。
思い出した過去からの出来事を踏まえて全部説明した。
トビィが一番知っている様子で、アサギの行動が何からきたのかも、きっちり説明してくれた。
「トビィがおねーちゃん刺さなきゃよかったんじゃないのっ!?」
食って掛かるマビルに、トビィは平然と言い放つ。
「すまない、オレの過去からの願いと存在意義が『アサギの願いを叶える事』なんだ。断れるわけないだろう」
・・・にしたって・・・。
けれども、トビィは諦めていなかった、流石だ。
「アサギの願いは叶えた。以後は追うなとも言われてないしな、アサギを迎えに行く」
最初から、トビィにはアサギと離れる気などサラサラないということだ。
深く大きく頷いたリョウにベルーガ、資料を皆に渡しながらベルーガからの説明が始まる。
「大体解っただろうが、これからアサギを探して迎え入れるため、まず場所を把握したい。
私が数年前から調査した結果がそれだ。
トビィ達にも協力してもらったのだが、星共通で何処かに必ず一人の『創造主』の存在をほのめかす記述が残っている。
創造主、つまりそれがアサギのことで、マリーゴールド、と呼ばれる宇宙の何処かにいるらしい」
大掛かりな話になってきた、が、皆真剣に聞き入る。
「・・・強制はしない。皆がアサギをこちらへ呼び戻したいと願うのなら共に協力してくれ」
答えはYES、だ。
皆立ち上がって大きく頷く。
話を全部聞いた、解る範囲で皆からの質問にもトビィ達が答えてくれた。
一人きりの宇宙の創造主、人の温もりに憧れて、惑星へと舞い降りる。
けれども創造主としての隠された力が巨大すぎて、毎回空回り。
創造主、いや、アサギの願いは”好きな人と幸せになること”。
それさえ成就出来れば良いらしいけれど、何度転生しても無理だったらしい。
今回が9回目の転生らしく、トビィ達は全部思い出していた。
「そういえば、あたしも前に、すっごい前に・・・」
マビルが小さく声を出し、トビィが深く頷いた。
「あぁ、マビルも過去にアサギと出会っている。ほとんどのメンバーが、何処かで繋がっている」
過去からの輪廻、未来への渇望。
創造主であることを忘れ、生きていたけれど、トランシスがきっかけで、ほんの一言がきっかけで思い出して、自分の存在が異物であると思い込んだアサギ。
隣でミノルが顔を赤らめた、後で教えてくれたけれどミノルも以前アサギに言ったらしいんだ。
『お前、人間じゃないだろう。消えちまえ』
と。
その一言を、実質2人の・・・ミノルとトランシスという、好きな男に言われたアサギは、その時点でもう消えるつもりだったのだろう。
全く。
本当に。
・・・。
救いようのない話だ。
アサギの、ばーか。
ともかく、俺達は高校生になった。
マビルをトビィに預けて、高校生活を愉しむ傍ら、休みになればマビルと図書館を駆け巡った。
古い神話や伝承を片っ端から読み漁った。
それぞれ三年間を過ごして、ある日、聞いたんだ。
空白になっているシポラ城を、どうするかという話を。
シポラ城っていうのは、以前邪教徒の本拠地だった曰くつきの城で、でも、崇めていたのは”破壊の姫君”つまりアサギのこと。
アサギの銅像(本人は嫌がっていたような・・・)みたいなのも残っているし、マビルにとっては住みやすいかもしれない。
俺は思ったんだ、立て直しに参加して、そこの国王になろうって。
そうすれば、城が手に入る。
つまり、マビルを城に住まわせてあげられるんだ!
城に住みたがっていたからなぁ、きっと喜ぶだろう。
俺は誰にも秘密で勝手に推し進めた、大学進学はパスだ、お袋が卒倒しそうだけど仕方ない。
「こぉら、トモハルー! お前、大学行かないってホントかよ!? うちの親にお前の両親が土下座して止めてほしいって来たんだけどっ」
「うん、ホント。シポラ城の国王になってマビルと住むんだよ」
「・・・ぐはー、それだけ!?」
「それだけじゃないよ、俺にとっては一番望んだことだ」
国王になるために、ミノル達の協力も得た。
住みやすい城下町、賑わう貿易を目指して歴史の本やらを引っ張り出して試行錯誤。
高校を卒業して泣きつく両親に爽やかに手を振って、俺は住処を地球からクレオへと移動。
もう、これで安心だ。
アサギと約束したとおり、マビルを護る事が出来る。
城の建設図を見ながら色々と相談した、マビルの部屋は大きいほうがいいだろう。
「マビルの部屋は、何処になります?」
「客室だとこの辺りですかね?」
「客室じゃなくて、マビルの部屋ですよ」
「・・・関係ない人を住まわせるわけには・・・いくらアサギ様の妹様でも」
「え」
・・・困ったな、それは非常に困る。
マビルの部屋は一番上等にしないといけない、お姫様みたいな部屋を与えてあげようと思ってたんだ。
隣でわくわくして城の完成を待っているマビルに、どう説明しようか。
俺の部屋は要らないのにやたら広い、ここをマビルの部屋にして・・・。
高校を出てから毎日マビルと一緒に居るわけだけど、そういえば付き合っているのか付き合っていないのか。
俺としてはずっと一緒に居たいから、結婚してお嫁さんになって貰えると非常に有難いのだけど・・・。
お嫁さん。
あ。
そうだ。
結婚してしまえばいいのか、そうすれば俺の妻だからこの城に住まわせてあげられる。
城の完成を待って、俺は密かに時間を作って結婚指輪を買いに行った。
物凄い高額の、マビルが好きなブランドの。
大きな薔薇の花束も注文したし、真っ白なタキシードも買ってみた。
よし、準備はばっちりだ。
うきうきしながらマビルを迎えに行くと、天空城で数人の女の子達と何か話しこんでいたマビル。
女の子同士の話に入るのは苦手だ、距離を置いて近づこうか迷っていたら。
「結婚って、するといいことあるの? 面倒そうー、ごろごろ出来る場所は欲しいけど、自由がいいからあたし、いーや」
・・・だろうなぁ。
手に入れた指輪や花束、そしてタキシード。
よく考えたらマビルが俺を好きな確証などないし、付き合っても居ないんだった。
一人で浮かれてここまで勝手に考えたけど、マビルにとっては・・・。
でも、俺はマビルと一緒に居たいし、困ったなぁ。
ごろごろ出来る場所なら、与えてあげられる、自由もあげよう。
マビルさえ良かったら、俺の傍にいてよ。
縛り付けないから、好きなときに出て行って構わないから。
でも、戻っておいで。
我侭を叶えてあげられる男は、俺しか居ないって思ったら、戻っておいで。
俺はいつでも待っているから。
・・・どうプロポーズをしていいのかわからなくなってきた。
買った花束は渡さずに部屋に飾っておいた。
タキシードは着ずにタンスの奥に押し込めた。
咳を一つして完成した城の俺とマビルの(予定の)部屋に案内する。
案の定喜んだマビル、それはそうだともー、一生懸命家具を選んだんだ。
好きそうな薔薇の家具で、天蓋つきのベッド、全部マビル好みにしてもらったんだ。
「凄いね、凄いね!」
うきゃーと転がるマビルに、咳を一つして紙を一枚、差し出す。
「? 何それ」
「えーっと」
婚姻届です。
「・・・一年間、この部屋にマビル専用の美容師とエステ姉さんとネイルアート、マッサージ師が来る契約書です」
「!? 凄い! いいの!?」
「ここにサインさえしてくれればー」
「きゃー、ありがとう、トモハル! サインする、サインする!!」
結婚してくれたらそれくらい、いつでも呼んであげるよ、だから嘘にはならない・・・わけないか。
喜んでサインするマビル、可愛いなぁ・・・。
さて、書いてくれたので地球とクレオに申請届けを出しに行かなければ。
地球ではマビルは「田上真昼」という名前で、アサギの自宅の養女になっている。
地球だとマビルは今日から「松下真昼」になるわけだ。
・・・じーん。
俺は喜んで微笑んでいるマビルにそっと指輪を差し出した、流石に首を傾げる。
「? 何これ」
「結婚指輪です」
「はー?」
「今書いてもらったのが婚姻届といって、2人が夫婦になるための申請書みたいなものなんだ」
「夫婦? 誰と誰が?」
「俺とマビル」
「・・・は?」
「いやだから」
「・・・ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」
「ごべばぁぁぁぁぁぁああああ!」
吹き飛んだ。
新築の城の窓からガラスを突き破って俺はマビルの魔法によって押し出されて、地上寸前でなんとか留まる。
わー、あのガラス幾らしたと思ってるんだ。
上からマビルの声が降り注ぐ。
「ばっかじゃないの!? 何考えてんの!? ばーかばーかばーか!!!」
城の者達に支えられて血まみれで部屋に戻ったら、マビルの姿が当然なかった。
苦笑いして部屋の掃除をする。
?
けれど、紙はそこにあった。
婚姻届。
捨てればよかったのに。
そして指輪が一つ・・・なくなっていた。
まぁ、好きなブランドのだから、持っていったんだろう。
婚姻届を拾い上げて小さく溜息。
本当はさ、雑誌を見てプロポーズの言葉とか練習したんだけど。
恥ずかしくていえなくて、それに、もし言ってもマビルがきっと受け入れてくれないだろうから。
・・・こうしてちゃかしてしか出来なくて。
これなら本気にとってもらえなくてさ、マビルが戸惑う事もないだろうし。
・・・本当は。
「結婚して欲しい、ずっと好きだから」
と。
・・・言いたかったんだ。
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