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「寒いよー」
「頑張って、リナ」
ザークスロイド、城内。
ぱたぱたと走り回る、二人の可愛い娘の姿が見える。
銀というよりは本当に純白の雪が時折光る、その仄かな光を放つ長い髪の雪の精霊シュネリナ。
光の加減でブルーに見える、銀色の髪の闇エルフまぁる。
雪の精霊でありながら、実はシュネリナは寒さに対して酷く弱く、今も毛布を被りながら雪のちらつく城内を走り回っていた。
先日落城したザークスロイド、今は復興の最中であり、こうして夜中までかかっても大好きな国民の、そして自分の為に二人は城を直そうと必死だ。
冷たくなった手を温めながら、白い息を吐きつつ城壁の修正をしていく。
不意に何処かで音が聞こえた。
「?」
先にまぁるがその音に気づき、ゆっくりと音を探す。
首を傾げて震えながら、シュネリナが近づき二人して幾多の星が広がる夜空を見上げた。
「何か音が気こるー」
「・・・オカリナ、かなぁ]
決して上手いとは言えないのだが、確かにそれは奏でられている、音。
二人は音のする方向へとゆっくり歩いていく、特に邪気は感じられない。
「アサギちゃんだっ」
「ホントだ、アサギさんだー」
緑のドラゴンに乗って、オカリナを吹き鳴らすアサギの姿を見つけ、二人は大きく手を振った。
アサギがその声に驚いて振り返ると、戸惑いがちにそれでも嬉しそうに手を振り返す。
「入国が出来なかったので、この外で、見守っておくのです」
「・・・早く帰ってきて欲しいな」
シュネリナがそう寂しそうに呟いたので、アサギはちょっと泣きそうになった。
けれど、戻れないのだ。
「戻れるようになったらすぐ戻るので。それまで宜しくお願いしますです。美味しいお鍋、楽しみにしてるのですよ♪」
元気良く返事をしてくれた二人を名残惜しそうに見つめてから、アサギはドラゴンのクレシダに合図を送った。
小さく啼いて、クレシダが羽ばたく。
水から貰ったオカリナを、大きく育った芽は吹き続ける。
大事な大事な友達を励ます為に、無事であるようにと祈りを込めて。
傍には居られないけれど、心は共に。
「さ、がんばろっか、リナ!」
「うん、そうだねっ」
二人は手を繋いでオカリナの音を聞きながら、壊れた城に大事にそっと手を置く。
城壁は壊すことが出来ても、そこに存在する者達の絆とか心は、挫くことも壊すことも出来ない。
大事な大事な大事な人達。
「三回戦までに、間に合うかな」
「間に合うと良いですね」
アサギの呟きにクレシダが答える、アサギは薄く微笑むと、夫の待つ城へと舞い戻った。
頑張るのですよ、まぁるちゃん、シュネちゃん。
と、ギルザが抱きしめて言うので。
アサギはどーしようか迷いつつ、眠ることにしたのです。
一緒のとこに、竜を出したかったのは。
アサギのほうがレベルが低いから、狩られるならアサギ竜からになりますよね。
だから。
ギルザが竜を出したいのは知っていたし、それなら、アサギも出せば、少しでもギルザの竜が長生きできるじゃないですかー。
それだけ。
そして、お揃いが良いの。
それだけ。
一緒がいいの。
それだけ。
アサギ、ギルザがいないなら、生きていけないし、生きていくつもりも全くないので。
ギルザを、アサギから、持っていかないで。
だから、手を繋いで眠りにつくのです。
ぎゅってして、眠りにつくのです。
目が覚めて、消えていたら、今度こそホントに死んでしまう。
帝国とか、反とか、アサギにとっては、どうでもいいのです。
ギルザ=レイという存在だけが、アサギにとって、大事な大事な場所なのです。
・・・お友達も大好きですけどね。
「だから、無茶するなって言ったのに」
苦笑いして抱きしめたギルザに。
愛をこめて、口付けを。
アサギから、ギルザを、獲らないで。
アサギの、ギルザを、傷つけないで。
ギルザを、傷つける人は、大嫌い。
※特に意味はないのだけど。
書いていた文章が消えたのです。
もーいい、明後日書くー。
明日というか今夜はこれないので、おやすみなさいなのでした。(ぺこ
・・・昨日のブログカウンターが壊れているのか、タイトルのせいで人がたくさん来たのか、何故故に・・・・。
30人もいらしてくださったのかな(汗
おそるべし、SMバトン(汗
土曜日、日曜日に本編更新しつつ、トビィ君サイドのお話書きつつ、お絵かきしつつ。
ギルザにチョコ作るー。
えいえいおー!!
そうだ、みやちゃん。
今なら私動けるので(ある程度)、オフやるなら今のうちなのです(ぐっ
ふりふりオフでもなんでもっ(ぐぐぐっ
お会いできるといいな♪
※別に単独で行ってもいいのですが(笑
ビエル落城から数週間、大事な故郷が陥落したというのに、アサギは妙に浮かれている。
明らかに多すぎる食材、作る料理が一人分程多い。
ローストビーフのサンドイッチ、陶器のお皿にグラタンを詰め込んで、水筒に紅茶を注ぎいれる。
「誰が食べるんだ?」
トビィがそう切り出した、アサギは軽く微笑んで「みんな、なのです」と、返す。
「みんな? ユーリエルとか、ミヤチとか、哀とか、アリシアとか、か?」
「そうなのですよ♪ では、行って来るのです」
言うなり、アサギは笑顔を浮かべたまま家を出た。
トビィは険しい表情でそれを見つめていた。
小さく、違うだろ・・・と呟くトビィは、自分もマントを羽織ると庭にいたクレシダに飛び乗る。
「ユーリエル、アサギは来たか?」
「は?」
トビィからの唐突な質問に、闇天使のユーリエルが怪訝に返答する。
その表情で十分だ、アサギは来ていない。
「ユーリエルはバツ、と」
「どした、アサギがまた何かしでかしたのか?」
綺麗な長い髪を風に揺らしながら、溜息を吐きつつ苦笑いするユーリエル。
それにトビィも苦笑いで返した。
「アサギの好みっぽいものなぁ、あの男」
ぼそ、と漏らしたその言葉に、トビィも「だよな」と、同意する。
トビィはユーリエルと別れて、別の場所へ移動した。
「ふぇ? アサギちゃん? 今日は会ってないよ」
「アサギ様、ですかー、んー、んー、お会いしていないのです。どうかされたのですか?」
ミヤチも、駄目。
哀も、駄目。
残るは一人、アリシア。
「待ってよ、トビィさん。アサギちゃんがどうかしたの?」
「いや・・・二人に会いに行くと言っていたから」
不安そうに見つめる哀に、軽く動揺するミヤチに手を軽く振り、トビィは再びクレシダに飛び乗った。
十中八九アリシアにも会いに行っていないだろう、それをトビィも解っていた。
けれど、微かな望みを抱いて、アリシアへと会いに行く。
「アサギ様?」
「・・・来てないよな」
頷くアリシアに、自嘲気味に笑うとトビィはその場を去り自宅へと戻る。
微かに顔を赤らめながら、アサギはスキップ気味に歩いていた。
浮つく足取り、まるで恋人にでも会うかのような、そんな。
行き先は、何時もの所。
大事そうに篭を抱えながら、そっと、その人の庭先を見つめる。
居た。
素振りの練習中だった。
アサギは数分見れないように木陰から見守っていたが、ようやく深呼吸をすると声をかけた。
「こんにちは、なのですよー」
「ん? あぁ、アサギ」
素振りをやめて、一人の男が振り返る。
遠慮がちに、アサギは近寄ると取り出したハンドタオルで、その男の額の汗を軽く拭う。
無表情のその男、嬉しそうなアサギとは対照的だった。
それでも邪険にするわけでもなく、大人しく汗を拭かれている。
「えと、えと。お食事持ってきたのです」
「いつもすまない」
「いえ、アサギが好きでやってるので。ギルザさんのお口に合えばいーのですけど」
ギルザ、という男を見てからというもの、アサギは時間を作ってはこっそりと会いに来ていた。
そう、こっそりと。
誰にも知られないように、行き先を告げずに食事を作って自宅へと。
二人の間に特に会話はない。
けれども、アサギはギルザに自分の手料理を食べてもらえることが、この上なく幸せだった。
「ご馳走様」
軽く全てを平らげると、笑みを零しながら片づけをするアサギを不思議そうに見やる。
この娘は、何がそんなに楽しいのだろう。
ギルザは静かに見つめていたが、軽く首を傾げると躊躇いがちにアサギの頭に手を置いた。
驚いてギルザを見上げるアサギに、一言。
「美味しかった」
その一言を聞いて、アサギは思わずしゃがみ込む。
頬に両手を当てて、上がる体温を必死で堪えながら、口を鯉のようにぱくぱくさせた。
変な娘。
ギルザはそう思っていた。
「あ、あのっ」
「何だ」
「また、来ても、いーですか?」
搾り出すように聞き取れない程の小声で、アサギはそう言う。
両手を胸の前で握り締めて、切実に。
「・・・構わない」
ギルザの一言に、アサギは満面の笑みを浮かべ、何度も何度もお辞儀をした。
・・・変な、娘。
ギルザは剣の素振りを再開する。
アサギは邪魔にならないように、少し離れた場所からそれを見つめていた。
それが、当時のアサギにとって、最も幸せな時間だった。
翌日。
おにぎりを大量に握っているアサギにトビィは声をかける。
「今日も行くのか」
「はいなのです♪」
「ユーリエルと、ミヤチ、哀、アリシア、会いに行くんだな」
「そうなのです」
「その四人は今日ここへ来るから、別にアサギが行く必要はないんだぞ?」
「・・・」
むっとして、アサギはトビィを軽く睨む。
「行く必要は、ない」
「嘘なのです、そんなこと、アサギはみんなから聞いていないのです」
「その四人は昨日アサギに会っていない。から、聞いてなくて当然じゃないか?」
「・・・」
「オレが会ってる」
アサギは我武者羅におにぎりを、お茶の入った水筒を、鞄に詰め込むとトビィの顔を見ずに家を出ようとする。
「あの男は駄目だ、諦めろ、やめておけ。・・・二の舞だ。上手くいくとは思えない、釣り合わない」
「ギルザさんはそんな人ではないのですよ」
怒鳴り気味にそう言ってから、慌ててアサギは口を塞いだ、しかし遅い。
深い溜息を吐き、トビィは天井を見上げる。
「ギルザのところか」
「・・・」
「もう一度言う。これ以上傷つくと解っている男のもとへ行くのはやめろ。立場が違いすぎるだろう」
答えずに、アサギはそのまま家を出た。
言われなくても、知っている。
けれども、それでも。
数人に言われた、正反対の二人だと。
「あんた、バカ?」
爆笑されて、そうも言われた。
「アサギ、バカだから別にいーのですよ」
悔しそうに唇を噛み締めてアサギは走る。
悔しいのは、ギルザの事を悪く言われたから。
大人しく聞いているフリをしたけれど、腸が煮えくり返るってこいう時のことだろう。
アサギはギルザの家へ走る。
「こ、こんにちはなのですっ」
「そんなに慌ててどうした?」
不思議そうに話し掛けてきたギルザに、アサギは安堵する。
心が、震えて、温かくて、その存在を見ただけで、落ち着いた。
「なんでも、ないのですよー」
ギルザは、そんな様子のアサギを見て、眉を顰めた。
何かが、違う、いつもと、違う。
ぎこちなく、動揺しているアサギを静かに見る。
その日、アサギは帰りたくなかったので、ギルザの家に無理やり泊まらせてもらうことにした。
ベッドを貸してくれる、というギルザの申し出を丁重に断り、ソファの上に横になる。
「女の子だろ、オレがソファに寝るから」
「いえいえ、無理言って泊まらせていただいている身ですからー。お気遣いなく」
ソファで一向に構わない、寧ろギルザの家で眠れることが嬉しかった。
あやすみなさい、です。
アサギは笑顔で深くお辞儀をすると、瞳を閉じた。
ここに、居たい。
暫くして寝息が聞こえてきたので、ギルザはソファへと近づく。
深い眠りに入ったアサギに、首を傾げる。
「変な、女」
翌日も、その翌日も、アサギはギルザの家から出ようとしなかった。
「ここに居ていいのか?」
「あ、はい、大丈夫なのですよ」
「心配しているんじゃないのか、みんなが」
「大丈夫なのですよ」
すっかりソファで眠るのが慣れた頃だった、今日も毛布に包まって倒れ込む。
しかし、確かにギルザに迷惑をかけているかもしれない、一人になりたい時もあるだろう。
アサギは、そっと起き上がるとベッドで横になり窓から外の月を見つめていたギルザに近寄った。
「珍しいな、眠れないのか?」
「あの、アサギここにいては迷惑ですかー?」
「迷惑、ではない、かな」
言葉を詰まらせて、言い終えるギルザ。
「迷惑でないのなら、隣に居たいのですけれど」
そう呟いたアサギに、ギルザは溜息を吐いた。
その様子にアサギの背を嫌な汗が流れる。
「オレとアサギでは、立場が違う。住む世界が違う。解っているか?」
「違いませんです」
一呼吸して、ギルザが続ける。
「アサギの友達、心配しているんだろ」
「心配していないのです。・・・もう、寝るのです。おやすみなさい、ギルザさん」
泣きそうになりながら、ぎこちなく笑ったアサギに、ギルザは言葉を詰まらせた。
ソファには戻らず、ギルザのベッドにするり、と入り込むと唖然とするギルザを尻目にアサギは瞳を閉じる。
「こら、アサギ」
「おやすみなさいなのですよ」
苦笑いしながら、特に慌てるでもなくギルザはその様子を見ていた。
後ろを向いて、僅かに身体を震わせているアサギは、・・・多分泣いている。
ギルザは。
そっとアサギを抱き締めると耳元でこう囁いた。
「おやすみ、アサギ」
それだけ。
それだけ囁いて、眠りに就く。
おやすみなさい、ギルザさん。
暖かなギルザの腕の中、アサギは深い眠りに落ちていく。
満月に近い月を見上げながら、宙に浮かぶ一人のエンジェル。
黒くて小さな翼と、白い大きな翼を持つその女の姿を見つけると、トビィは足元に転がっている拳ほどの石を徐に拾い上げた。
二、三度手の中で遊ばせていたが、そのエンジェル目掛けて投げつけた。
「ごはぁっ」
見事に石はエンジェルに容赦なく叩き込まれた。
鈍い叫び声を上げて、憤慨して振り返る。
「何するでござりゅんか、トビィ君」
「お前なら出来るだろ、アサギを引かせろ。無理だ」
「なんのことでござりゅんかね」
「しらばっくれるな、アサギをギルザから離せと言っているんだ。まこ。これ以上アサギを傷つけるな」
トビィの問いには答えず、まこは再度月を見る。
怒鳴り気味に剣を構えるトビィに、まこは軽く振り返った。
「ギルザさんで最後でござりゅん。無理だったら、アサギちゃんを還すでござりゅん」
「還す?」
何処に、誰に。
そう問おうとしたトビィに、まこが珍しく真剣に語り出した。
「・・・ギルザさんに、かけるでござりゅん。アサギちゃんを救えるのは、彼しかいないと思うのでござりゅんよ」
「はっ、またお前の『予感』か? 無理だろ、どう考えても」
それには答えず、まこはそのままふらふらと消えていく。
舌打ちして、トビィは剣を握り締めた。
アサギの想いは成就されない。
トビィは力なく剣を鞘に戻した。
「どう思う、クレシダ」
「私はあまり、ギルザ殿を存じ上げておりませんゆえ」
「まぁ、そうだよな・・・ギルザのことなんてクレシダが知る由も・・・」
言葉を発してから、トビィは腑に落ちないという様に首を傾げる。
まてよ?
「・・・ギルザ? 何処かで聞いたような」
トビィは軽く頭を抱えた。
その名を何処かで聞いた、何時だったか・・・。
記憶を辿る、遡る。
―――「さっき、変な映像を見たの。『ギルザ』って知ってる? トビィお兄様」
唖然と、トビィはクレシダを見やる。
そうだ、あの日、アサギが呟いたじゃないか。
どんな映像を見たのかは知らない、けれども、観た映像にギルザが映っていたことは明白だ。
まさか・・・トビィは失笑し、それ以上何も語らない。
すっかりギルザの腕にすっぽり収まって眠ることが、幸せな日課だったアサギ。
嬉しそうに、無邪気に抱き締め返してくるアサギの髪を撫でることも、ギルザの日課になりつつある。
「好き、なのです」
腕の中でそう囁いて、ギルザの胸に額を押し付け、アサギはそのまま。
傍に置いてもらえれば、十分だった。
邪魔にならなければ、良いと思っていた。
けれど。
「オレにはお前が必要だ、アサギ」
始まりは落城後の城内。
一瞬で虜になった緑の髪の娘を、最初は戸惑い気味に観ていた紺の髪の男。
何があっても付いて来る、その娘を。
傍においておきたいと思った、見ていると心が妙に楽になれた。
そっと、そっと、口付けをする。
トビィは無理だと思っていた。
けれど、七夕のあの日のギルザの短冊を見て、にんやりと宙に浮かんで含み笑いを漏らすまこに。
「珍しく、勘当たったな」
「アサギちゃんの隣に居るのが、ギルザさんでよかったでござりゅん」
幸せそうなアサギを眩しそうに見つめながら、トビィは穏やかに笑っていた。
もう、大丈夫だよな、アサギ。
「ギルザーっ、ご飯出来たですよーっ!!」
「今日は何?」
「ギルザの大好きな焼きそばなのですよ♪ あと、明太子のおにぎりと、玉子たっぷりのスープ、ポテトサラダも作ったのです」
「良く出来ました」
忙しなく動くアサギを、退屈せずに見つめるギルザ。
アサギはふと立ち止まった。
その会話を何処かで聞いた気がしたからだった。
けれど、そんなことはどうでも良い。
ギルザの隣に、アサギがいる。
想いのカケラは集まって一つの輝く、愛という名の見えない宝へと。
好き、大好き、愛している。
いつまでも、いつまでも、このまま、このまま。
※眠い。本編更新無理ー(ばたり)
緑の髪の娘は、どうやら突破に出向いたらしい夫の後ろを、数年前から一緒に居るドラゴンのクレシダに乗って追っていた。
別に新婚ではないのだが、結婚して数年経った今でも、緑の髪の娘にとって、愛する夫は眩しい憧れの存在だった。
そう、初めて出会ったあの日から、今も変わらず、ずっと。
どきどきしながら後をつける。
綺麗な濃紺の柔らかなウェーブがかった髪を靡かせて、一言。
「混沌とか、好き」
夫は軽く邪悪な笑みを浮かべると、そのまま某国の正面突破を試みる。
瞳を輝かせながら、その様子を見つめる緑の髪の娘。
ちゃっかりデジカメ持参でバシャバシャ撮影中である。
「きゃー! きゃー! かっこいいのですよーっ!どーしよーっ。クレシダ、クレシダ、見てる? 見てる?」
ばしばしと興奮気味にドラゴンの背中を叩きつつ、シャッターを切るのを止めない娘。
出会った頃と何一つ変わっていない・・・というか、愛する男の為には何をするのも惜しまないところは以前より格段に上がっているのですね、とクレシダはぼんやりとそう思いつつ。
・・・デズデモーナ、交代してくれないだろうか。
と、別のドラゴンの名を小さく呟いた。
どうもクレシダに緑の髪の娘の世話は出来ないようで。
きゃーきゃー叫びながら背に乗っている緑の髪の娘に、項垂れる。
「殺戮も、好き」
夫が二人目に到達したらしい。
緑の髪の娘は、その夫の姿に見惚れて、暫く呆けていた。
「とても、大好き」
小さく呟いて、祈りながら見守る。
無駄のない動き、微笑したまま敵を斬るその凶悪な美しさ。
・・・出会った頃と変わっていない。
「とても、とても、大好きなのです」
けれど、緑の髪の娘は知っている。
夫が自分には優しいことを。
何時も傍に居てくれて、辛いときは何も言わず抱きしめてくれる。
好きすぎて、好きすぎて。
結婚して隣に居る今でも、夫は手が届かないような憧れの人。
だから。
「―――っ」
夫が微かに顔を顰め、その場を去った。
どうやら負けてしまったらしい。
緑の髪の娘は、慌てて夫に駆け寄ろうとしたのだが、そこを堪えた。
夫の性格からして、その姿を見られたくないかもしれないと思ったから。
代わりに。
「あの人、嫌いなのです。叩き潰すのです」
「アサギ様の力では無理だと思いますが。ギルザ殿が弾かれたのです、我慢して下さい。アサギ様が怪我をされますと、私が主に怒られますゆえ」
「でも、あの人嫌いなのです。よくもアサギのギルザにっ」
緑の髪の娘は、その名も無き防衛兵を叩き潰すことにした。
憎々しげに、その人を見つめる。
「クレシダ、アサギ行きます」
「・・・あー・・・」
いつも、一緒が良いのです。
どんな時でも、どんな場所でも、一緒に居たいのです。
これからも、傍に置いておいてね。
大好きな、大好きな、あなたへ。
「あ、その前に写真を現像するのですよーっ!!」
「・・・」
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
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