別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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君を見守る空になろう
君が凍えないように陽で照らす
君が泣いていたら一緒に泣いて雨を降らす
君が落ち込んでいたら俺も翳って曇るだろう
君を傷つける奴は雷落としてあげる
君が寂しいときに見上げたら空がある
ずっと太陽は出ていないかもしれないけれど
俺は必ず君の近くに居るよ
煌く星から、優しさを
眩しい太陽から、明るさを
美しい純白の雲から、笑顔を
君に、君に、届けよう
俺から愛する君へ、届けよう
本編が進まないわけ→ユキがいるから。(完)
薔薇を見ていたの。
指に息を吹きかけながら、震えながら置かれた薔薇を見ていたの。
おねーちゃんを見上げたら、泣いてるみたいだったの。
寒くて、動けなくなったの。
でも、何処かへ行かないと、お城へ帰らないと寒いから一生懸命歩いたの。
手に力が入らなくてドアに体当たりした、ドアが、凍るように冷たくて。
外は誰も歩いていない、雪が降ってた、街の灯りもほとんど消えてて真っ暗。
さくさく、雪の中をお城を目指した。
頭、痛いよ。
とても、寒いよ。
喉、痛いよ。
目が、霞むよ。
お腹、痛いよ。
あたし、一生懸命歩いたの。
歩いたの。
そして、不思議な夢を見た。
トモハルが必死になってあたしを看病してくれていた。
嬉しくて、くすくす笑ってた。
ずっと傍に居て欲しかったから、抱きついたら、抱き締めてくれたの。
でも、キスはしてくれないんだ。
変な人。
でもね、髪の毛引っ張って必死にお願いしたらキスをそっとしてくれた。
触れているのか触れていないのか、わかんないキスを。
多分、きっとこれ、『好き』なんだよね。
あたし、きっと、トモハルが好きなんだよね。
良くわかんないけど、一緒に居たいと思うよ。
とても、優しく丁寧に抱いてくれたから。
とても、甘くて優しいキスしてくれたから。
とても、とても、幸せだったよ。
・・・?
目が覚めたら、お城のいつものあたしの部屋で、一人眠っていた。
枕元に、あのディナーで貰った花束が生けてあって、薬とか果物とか置いてある。
夢だった、凄く、変な夢を見た。
・・・変だけど、嬉しい夢だった。
『好きだよ』・・・トモハルが、そう言ってくれた夢だった。
寝返りを打ったら、何かが香る。
あたしの香りじゃない、お花の匂いじゃない。
何処から、香る?
あたしから、香っている。
・・・トモハルの、匂いだ???
思わず、唇に触れてみた。
夢なのか、夢じゃないのか。
ゆ、夢じゃないなら、あ、あたし達あれがそれであーなって、あれこれそれこれな事をしてしまったのだけど。
・・・そんなわけ、ない・・・よ・・・ね・・・?
頭を押さえて起き上がった、解け切った氷の中に入ってたマンゴージュースを瓶ごと飲み干して、ふらつく足でローブを羽織ると部屋を出て、彷徨う。
慌しいな、なんだろな。
「マビル様、お身体は大丈夫ですか?」
「んー・・・大丈夫じゃないけど、平気。お腹空いた」
「何か作りましょう、お部屋でお待ち下さい」
「ねぇ、どたばたしてるけど、なんかあるの?」
「何でもありませんよ、ただ、トモハル様が風邪を引いて倒れただけです」
「そ、そうなんだ。えーっと・・・サラダ食べたいから、お部屋に置いといてね」
「承知致しました、ロバートと申します」
「ん」
や、別にあなたの名前は要らないけれど。
トモハル、風邪なんだ。
し、仕方ないからお見舞いに行ってあげようかな。
足を何度か運んだトモハルの部屋へ向かった、場所は解るよ。
入った事ないけど。
歩きながら思ったんだけど、なんだか身体がダルい。
なんか背中も痛いし、まだ風邪治ってないのかな・・・。
部屋に行ったら、人だかり。
とても、あたしが入れる場所がない、元々狭い部屋だし。
突っ立っていたらメイドに声をかけられた、何処かで見た顔だ・・・あぁ、年増メイド。
「マビル様、皆の邪魔になりますのでお部屋に御戻り下さいませ」
「・・・」
「マビル様が出来ることなど、何もありませんよ?」
腹立つメイドだな、それくらい、知ってる・・・。
ただ、少し、顔が見たかったの。
少しばかり、年増メイドと睨み合いの攻防を繰り広げていたけど、立っているのが辛かったからお部屋に戻った。
サラダを運んできたロバートって人に、他にも色々頼んでみる。
目の前でサラダを混ぜ合わせて取り分けてくれたから、世話焼きさんかと思って。
「あ、これ美味しい」
「それはようございました」
「・・・トモハルと地球で良く食べたサラダに似てるかも。これ、多分トモハルも好きよ」
「そうですか、解りました」
トモハルはその日のうちに地球に運ばれたらしくて、あたしはお見舞いにもいけなかった。
身体が治ったから、地球のトモハルの家へ行ってみた。
けど、どうしても入れなくて宙に浮いて窓から中を覗いたの。
昔、ここから部屋に入ったね。
じっと、覗けば一人で、眠っていた。
あんまり良く見えないけど、苦しそう・・・。
「あれ、マビル?」
心臓が口から出るかと思った、下を見ればミノル。
「ここから入れよ、窓開かないと思うけど」
「か、風邪移されると困るから、いいっ」
「だろうなぁ」
大慌てであたし、その場を離れた。
仕方ないから奈留のトコ、遊びに行ったら。
取り込み中?
御客さんがぞろぞろと・・・。
「何してんの?」
「やほーぃ、真昼、良く来てくれたよねっ。一大事、ちょっと一緒に戦わない?」
「た、戦う?」
奈留の話によると・・・
「ストップ! ここでその話はしないでっ。これ以上レス数を伸ばすわけにはいかないのっ」
・・・レス数ってなんだ。
ともかく、あたしは奈留のトコで敵と戦闘を繰り広げて、一つの病院を破壊してみた。
思いの外、長引いたからトモハルの風邪はもう治ってるよね。
お城に戻ったら案の定メイド達と触れ合って楽しそうにしてたの、ホント・・・なんていうか・・・。
突っ立ってたら。
「マビル!」
「・・・? 何?」
あの日、真剣な瞳で告白していたトモハルみたいに。
思わず顔が熱くなる、胸がね、ドキドキしてしまった。
真っ直ぐにあたしを見て、とんでもない事を言い出した。
「愛しているよ」
はぁ?!
思わず硬直、思考回路停止。
何を言っているんだろう、コイツは。
おねーちゃんへの、あの日の熱い想いは何処へ行ったっ。
観れば、メイド達とくるくるなんか、馬鹿みたいに踊っているし。
気に食わない。
思ったんだけど。
「おねーちゃん、あたし、やっぱり『好き』って良く解んない」
写真を観ながら部屋でクロロンとチャチャと、おねーちゃんに語りかけた。
あたし、トモハルの事好きだった?
さっきの態度を見ていたら、あまりのいい加減さに嫌気が差してしまったの。
あんなのを一瞬でも好きだと思った自分が、情けない。
誰にでも愛しているなんて、好きだなんて言えるものなんだー。
ちょっと、かっこいいと思ったのに・・・一気に興醒めだ。
そんな、まどろっこしい感情は、あたしには要らない。
あたしも、一瞬好きと錯覚してしまったけど、もう、トモハルとメイド達を見ても苛立つ事もなく観ていられる。
・・・トビィが、おねーちゃんが結婚した事を教えてくれた。
ギルザさんという人らしくて、とても幸せにしているのだそーだ。
その話をトモハルと聞いて、トモハル、ショックで寝込まないか不安だったけどケロリ、としてて笑顔で始終よかったよかった相槌してた。
・・・あんたさ、ホントにおねーちゃんのこと、好きだったの?
ますます、好きの気持ちが良く解らなくなった。
物凄く、これまで損した気分。
地球で可愛い猫用のお出かけ籠を買ったから、それにクロロンとチャチャを入れて遊びに行く事が増えた。
街の公園で二匹を籠から出して、シートの上で転がっていたら。
「フランソワ!」
血相抱えた女の子が両親と一緒にこっちに走ってきたから、思わず・・・首傾げ。
クロロンを抱き抱えて泣いている女の子、説明してくれた、クロロン、この子の猫だったらしい。
嫌がるチャチャをあたしは必死で抱き締めて、クロロンを見送った。
ずっと、ずっと、鳴いているチャチャを観ていたの、ずっと、ずっと、鳴いているクロロンを観ていたの。
堪えられなくて、あたし。
「あ、あの! この子、チャチャっていうの。凄く仲が良いから、一緒に、一緒にいさせてあげてくれないかな・・・」
思わず、そう言った。
だ、だって。
この二匹は、一緒に居たいんだよ。
・・・可哀想だ。
チャチャを観て渋っている一同に、必死に言い続けた。
「俺からも宜しくお願いします」
隣で、何時の間に来たのかトモハルが頭を下げてる。
流石国王様だね、一発でOKだよ。
・・・あたしとは、違うね。
トモハルが、あたしの肩を叩いたから・・・あれ。
涙が出たよ。
「大丈夫だよ、きっとまたクロロンは遊びに来てくれるし。チャチャが一緒だから寂しくないからね」
「うん」
「チャチャがクロロンの傍にいるから、あの二匹は大丈夫だよ。マビルは・・・我慢しよう」
「うん」
その後、クロロンとチャチャの子猫が一匹、お城に届けられた。
トモハルがマジョルカ、と名付けてくれた。
バレンタインのディナーの招待状を、トモハルがくれたから奈留にあげた。
・・・あたしには、必要ない。
美味しかったかと訊かれたから、美味しかったよと答えておいた。
あたしは、このお城に居てもいいらしい。
トモハルとは結婚しているんだって。
結婚って、一人の人としか出来ないんだって。
いつになったらこの結婚とやらは解消されるのか、わかんないけど。
適当に、遊ぶ。
まぁいいや、だってあたし誰のことも好きにならないもーん。
おねーちゃんとはちがうもーん。
冗談じゃない、あたしは好きに生きるんだ。
あたし、可愛いしー、面倒なの大嫌いー。
トモハルも、他の男の人も色んなの買ってくれるんだー。
わーい。
わーい♪
・・・わーい。
なんだか良くわかんないけど。
急に、ぽっかり何かを失った気がした。
好きだ好きだと連呼するトモハル、それを軽く聞き流せれるようになって。
相変わらず女の子大好きトモハル国王様は、楽しそう。
ホント、変な奴。
「マビル、愛しているよ」
はいはいはいはい、解ったから。
笑顔でそう言って来るトモハル、もうなんなの。
あんたがそう言う度に、あたしが憧れていたおねーちゃんの像が崩れるからさ。
気楽に好きとか愛してるとか、言わないで。
手紙を、書いた。
欲しいものをたくさん書いて、トモハルに手渡した。
別に、そこまで欲しくないけど、ともかく色々。
トモハルは上機嫌で紙を持って地球へ出て行く、あたしに手を振りながら、去っていく。
いってらっしゃい。
例えば、高級バッグは、あたしに相応しい。
きらきらしたもの、ふりふりしたもの、高くて可愛いもの、全部あたしに相応しい。
だってあたし、可愛いしー、お姫様だしー。
美味しいものも、頂戴、たくさん色々食べたいわ。
好きに生きるの、あたし、自分の事大好き。
ただ。
不可解なことに。
偶に、仲良さそうな恋人を見ると、ボケーっと見つめてしまう癖が出来てしまった。
おねーちゃんから手紙が届くようになったから、読みながら・・・羨ましく感じた。
偶に、トモハルの夢を観た。
あの日のトモハルはとてもかっこよかったので、美化1億五千万なその夢のトモハルは。
・・・なんだろう、面倒だ、考えるのをここでいつも止める。
手紙を書いた。
『つまらないから、遊びに行く。当分帰らない、さよなら』
奈留のトコへ行こう。
以前、戦闘に巻き込まれたから、今度は武器を持参する。
おねーちゃんの武器・フィリコ。
を、入れるバッグを探していたら・・・。
『これ、はい』
数年前に、白鳥のボートに乗りながらトモハルがくれた、バッグが出てきた。
丁度、フィリコを入れるのにぴったりー。
思わず、それを眺める。
照れくさそうに、これをくれた。
あたしは、とても嬉しくて、何が嬉しかったか、思い出した。
トモハルが、約束したことをちゃんと護ってくれたから。
「ありが、とう」
小さく、呟いたら何故か、泣けてきたの。
あたしは、やっぱり、好きだったのかな。
・・・やめた、そういうことは、考えない。
頭痛くなる。
それを、握り締めてフィリコを入れて、適当な着替えを持参して。
奈留の家へ、行くんだ。
マジョルカはトモハルに任せればいいよね、あたしよりもトモハルに懐いている。
お城を飛び出した、あたしは自由だ。
奈留は上機嫌で鼻歌つきで、車に何かを押し込んでた。
・・・旅行か、マビルちゃんを置いて行くなんて、許さない。
助手席に乗り込んで。
「さて、出発進行ー。みゅーじっくぅぅ、スタート!」
「とりあえず、昼はフレンチ、夜は寿司」
驚愕して、顔が歪んで、ぶっさいくなことになっている奈留に、あたしは軽く笑った。
いってきまーす、またね、トモハル。
指に息を吹きかけながら、震えながら置かれた薔薇を見ていたの。
おねーちゃんを見上げたら、泣いてるみたいだったの。
寒くて、動けなくなったの。
でも、何処かへ行かないと、お城へ帰らないと寒いから一生懸命歩いたの。
手に力が入らなくてドアに体当たりした、ドアが、凍るように冷たくて。
外は誰も歩いていない、雪が降ってた、街の灯りもほとんど消えてて真っ暗。
さくさく、雪の中をお城を目指した。
頭、痛いよ。
とても、寒いよ。
喉、痛いよ。
目が、霞むよ。
お腹、痛いよ。
あたし、一生懸命歩いたの。
歩いたの。
そして、不思議な夢を見た。
トモハルが必死になってあたしを看病してくれていた。
嬉しくて、くすくす笑ってた。
ずっと傍に居て欲しかったから、抱きついたら、抱き締めてくれたの。
でも、キスはしてくれないんだ。
変な人。
でもね、髪の毛引っ張って必死にお願いしたらキスをそっとしてくれた。
触れているのか触れていないのか、わかんないキスを。
多分、きっとこれ、『好き』なんだよね。
あたし、きっと、トモハルが好きなんだよね。
良くわかんないけど、一緒に居たいと思うよ。
とても、優しく丁寧に抱いてくれたから。
とても、甘くて優しいキスしてくれたから。
とても、とても、幸せだったよ。
・・・?
目が覚めたら、お城のいつものあたしの部屋で、一人眠っていた。
枕元に、あのディナーで貰った花束が生けてあって、薬とか果物とか置いてある。
夢だった、凄く、変な夢を見た。
・・・変だけど、嬉しい夢だった。
『好きだよ』・・・トモハルが、そう言ってくれた夢だった。
寝返りを打ったら、何かが香る。
あたしの香りじゃない、お花の匂いじゃない。
何処から、香る?
あたしから、香っている。
・・・トモハルの、匂いだ???
思わず、唇に触れてみた。
夢なのか、夢じゃないのか。
ゆ、夢じゃないなら、あ、あたし達あれがそれであーなって、あれこれそれこれな事をしてしまったのだけど。
・・・そんなわけ、ない・・・よ・・・ね・・・?
頭を押さえて起き上がった、解け切った氷の中に入ってたマンゴージュースを瓶ごと飲み干して、ふらつく足でローブを羽織ると部屋を出て、彷徨う。
慌しいな、なんだろな。
「マビル様、お身体は大丈夫ですか?」
「んー・・・大丈夫じゃないけど、平気。お腹空いた」
「何か作りましょう、お部屋でお待ち下さい」
「ねぇ、どたばたしてるけど、なんかあるの?」
「何でもありませんよ、ただ、トモハル様が風邪を引いて倒れただけです」
「そ、そうなんだ。えーっと・・・サラダ食べたいから、お部屋に置いといてね」
「承知致しました、ロバートと申します」
「ん」
や、別にあなたの名前は要らないけれど。
トモハル、風邪なんだ。
し、仕方ないからお見舞いに行ってあげようかな。
足を何度か運んだトモハルの部屋へ向かった、場所は解るよ。
入った事ないけど。
歩きながら思ったんだけど、なんだか身体がダルい。
なんか背中も痛いし、まだ風邪治ってないのかな・・・。
部屋に行ったら、人だかり。
とても、あたしが入れる場所がない、元々狭い部屋だし。
突っ立っていたらメイドに声をかけられた、何処かで見た顔だ・・・あぁ、年増メイド。
「マビル様、皆の邪魔になりますのでお部屋に御戻り下さいませ」
「・・・」
「マビル様が出来ることなど、何もありませんよ?」
腹立つメイドだな、それくらい、知ってる・・・。
ただ、少し、顔が見たかったの。
少しばかり、年増メイドと睨み合いの攻防を繰り広げていたけど、立っているのが辛かったからお部屋に戻った。
サラダを運んできたロバートって人に、他にも色々頼んでみる。
目の前でサラダを混ぜ合わせて取り分けてくれたから、世話焼きさんかと思って。
「あ、これ美味しい」
「それはようございました」
「・・・トモハルと地球で良く食べたサラダに似てるかも。これ、多分トモハルも好きよ」
「そうですか、解りました」
トモハルはその日のうちに地球に運ばれたらしくて、あたしはお見舞いにもいけなかった。
身体が治ったから、地球のトモハルの家へ行ってみた。
けど、どうしても入れなくて宙に浮いて窓から中を覗いたの。
昔、ここから部屋に入ったね。
じっと、覗けば一人で、眠っていた。
あんまり良く見えないけど、苦しそう・・・。
「あれ、マビル?」
心臓が口から出るかと思った、下を見ればミノル。
「ここから入れよ、窓開かないと思うけど」
「か、風邪移されると困るから、いいっ」
「だろうなぁ」
大慌てであたし、その場を離れた。
仕方ないから奈留のトコ、遊びに行ったら。
取り込み中?
御客さんがぞろぞろと・・・。
「何してんの?」
「やほーぃ、真昼、良く来てくれたよねっ。一大事、ちょっと一緒に戦わない?」
「た、戦う?」
奈留の話によると・・・
「ストップ! ここでその話はしないでっ。これ以上レス数を伸ばすわけにはいかないのっ」
・・・レス数ってなんだ。
ともかく、あたしは奈留のトコで敵と戦闘を繰り広げて、一つの病院を破壊してみた。
思いの外、長引いたからトモハルの風邪はもう治ってるよね。
お城に戻ったら案の定メイド達と触れ合って楽しそうにしてたの、ホント・・・なんていうか・・・。
突っ立ってたら。
「マビル!」
「・・・? 何?」
あの日、真剣な瞳で告白していたトモハルみたいに。
思わず顔が熱くなる、胸がね、ドキドキしてしまった。
真っ直ぐにあたしを見て、とんでもない事を言い出した。
「愛しているよ」
はぁ?!
思わず硬直、思考回路停止。
何を言っているんだろう、コイツは。
おねーちゃんへの、あの日の熱い想いは何処へ行ったっ。
観れば、メイド達とくるくるなんか、馬鹿みたいに踊っているし。
気に食わない。
思ったんだけど。
「おねーちゃん、あたし、やっぱり『好き』って良く解んない」
写真を観ながら部屋でクロロンとチャチャと、おねーちゃんに語りかけた。
あたし、トモハルの事好きだった?
さっきの態度を見ていたら、あまりのいい加減さに嫌気が差してしまったの。
あんなのを一瞬でも好きだと思った自分が、情けない。
誰にでも愛しているなんて、好きだなんて言えるものなんだー。
ちょっと、かっこいいと思ったのに・・・一気に興醒めだ。
そんな、まどろっこしい感情は、あたしには要らない。
あたしも、一瞬好きと錯覚してしまったけど、もう、トモハルとメイド達を見ても苛立つ事もなく観ていられる。
・・・トビィが、おねーちゃんが結婚した事を教えてくれた。
ギルザさんという人らしくて、とても幸せにしているのだそーだ。
その話をトモハルと聞いて、トモハル、ショックで寝込まないか不安だったけどケロリ、としてて笑顔で始終よかったよかった相槌してた。
・・・あんたさ、ホントにおねーちゃんのこと、好きだったの?
ますます、好きの気持ちが良く解らなくなった。
物凄く、これまで損した気分。
地球で可愛い猫用のお出かけ籠を買ったから、それにクロロンとチャチャを入れて遊びに行く事が増えた。
街の公園で二匹を籠から出して、シートの上で転がっていたら。
「フランソワ!」
血相抱えた女の子が両親と一緒にこっちに走ってきたから、思わず・・・首傾げ。
クロロンを抱き抱えて泣いている女の子、説明してくれた、クロロン、この子の猫だったらしい。
嫌がるチャチャをあたしは必死で抱き締めて、クロロンを見送った。
ずっと、ずっと、鳴いているチャチャを観ていたの、ずっと、ずっと、鳴いているクロロンを観ていたの。
堪えられなくて、あたし。
「あ、あの! この子、チャチャっていうの。凄く仲が良いから、一緒に、一緒にいさせてあげてくれないかな・・・」
思わず、そう言った。
だ、だって。
この二匹は、一緒に居たいんだよ。
・・・可哀想だ。
チャチャを観て渋っている一同に、必死に言い続けた。
「俺からも宜しくお願いします」
隣で、何時の間に来たのかトモハルが頭を下げてる。
流石国王様だね、一発でOKだよ。
・・・あたしとは、違うね。
トモハルが、あたしの肩を叩いたから・・・あれ。
涙が出たよ。
「大丈夫だよ、きっとまたクロロンは遊びに来てくれるし。チャチャが一緒だから寂しくないからね」
「うん」
「チャチャがクロロンの傍にいるから、あの二匹は大丈夫だよ。マビルは・・・我慢しよう」
「うん」
その後、クロロンとチャチャの子猫が一匹、お城に届けられた。
トモハルがマジョルカ、と名付けてくれた。
バレンタインのディナーの招待状を、トモハルがくれたから奈留にあげた。
・・・あたしには、必要ない。
美味しかったかと訊かれたから、美味しかったよと答えておいた。
あたしは、このお城に居てもいいらしい。
トモハルとは結婚しているんだって。
結婚って、一人の人としか出来ないんだって。
いつになったらこの結婚とやらは解消されるのか、わかんないけど。
適当に、遊ぶ。
まぁいいや、だってあたし誰のことも好きにならないもーん。
おねーちゃんとはちがうもーん。
冗談じゃない、あたしは好きに生きるんだ。
あたし、可愛いしー、面倒なの大嫌いー。
トモハルも、他の男の人も色んなの買ってくれるんだー。
わーい。
わーい♪
・・・わーい。
なんだか良くわかんないけど。
急に、ぽっかり何かを失った気がした。
好きだ好きだと連呼するトモハル、それを軽く聞き流せれるようになって。
相変わらず女の子大好きトモハル国王様は、楽しそう。
ホント、変な奴。
「マビル、愛しているよ」
はいはいはいはい、解ったから。
笑顔でそう言って来るトモハル、もうなんなの。
あんたがそう言う度に、あたしが憧れていたおねーちゃんの像が崩れるからさ。
気楽に好きとか愛してるとか、言わないで。
手紙を、書いた。
欲しいものをたくさん書いて、トモハルに手渡した。
別に、そこまで欲しくないけど、ともかく色々。
トモハルは上機嫌で紙を持って地球へ出て行く、あたしに手を振りながら、去っていく。
いってらっしゃい。
例えば、高級バッグは、あたしに相応しい。
きらきらしたもの、ふりふりしたもの、高くて可愛いもの、全部あたしに相応しい。
だってあたし、可愛いしー、お姫様だしー。
美味しいものも、頂戴、たくさん色々食べたいわ。
好きに生きるの、あたし、自分の事大好き。
ただ。
不可解なことに。
偶に、仲良さそうな恋人を見ると、ボケーっと見つめてしまう癖が出来てしまった。
おねーちゃんから手紙が届くようになったから、読みながら・・・羨ましく感じた。
偶に、トモハルの夢を観た。
あの日のトモハルはとてもかっこよかったので、美化1億五千万なその夢のトモハルは。
・・・なんだろう、面倒だ、考えるのをここでいつも止める。
手紙を書いた。
『つまらないから、遊びに行く。当分帰らない、さよなら』
奈留のトコへ行こう。
以前、戦闘に巻き込まれたから、今度は武器を持参する。
おねーちゃんの武器・フィリコ。
を、入れるバッグを探していたら・・・。
『これ、はい』
数年前に、白鳥のボートに乗りながらトモハルがくれた、バッグが出てきた。
丁度、フィリコを入れるのにぴったりー。
思わず、それを眺める。
照れくさそうに、これをくれた。
あたしは、とても嬉しくて、何が嬉しかったか、思い出した。
トモハルが、約束したことをちゃんと護ってくれたから。
「ありが、とう」
小さく、呟いたら何故か、泣けてきたの。
あたしは、やっぱり、好きだったのかな。
・・・やめた、そういうことは、考えない。
頭痛くなる。
それを、握り締めてフィリコを入れて、適当な着替えを持参して。
奈留の家へ、行くんだ。
マジョルカはトモハルに任せればいいよね、あたしよりもトモハルに懐いている。
お城を飛び出した、あたしは自由だ。
奈留は上機嫌で鼻歌つきで、車に何かを押し込んでた。
・・・旅行か、マビルちゃんを置いて行くなんて、許さない。
助手席に乗り込んで。
「さて、出発進行ー。みゅーじっくぅぅ、スタート!」
「とりあえず、昼はフレンチ、夜は寿司」
驚愕して、顔が歪んで、ぶっさいくなことになっている奈留に、あたしは軽く笑った。
いってきまーす、またね、トモハル。
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