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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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Image430.jpgあと、少しー。
本編進めたいのですがー。
今年中に第二章まで行きたいところー(無理)。

w-inds.の慶太を描こうとしたら失敗したので、トモハルにしてみた絵(おい。

話も終わった事ですし、トモマビから、ギルアサか、トラアサに戻さねばー。

LOVE IS THE GREATEST THING !

・・・を、BGMにして漫画も絵も全部描きましたともー。
※トモハル、テーマソング。

本音、嬉しかったりする自分に、嫌悪。
マビルが、熱を出していなければ有り得ない。
キスをしたら、風邪は俺に移るだろうか、マビルは治るだろうか。
・・・思ったけれど流石にそれは、出来ない。
代わりに、手の甲に口付けた。
・・・マビルが、微笑した気がした。
もぞもぞ動いて、きゅ、って。
背中に、手。
マビルが、しがみ付いたんだ、俺に。
反射的に、抱き締めてしまった。
強く抱き締めた、額がかなり熱い。
呼吸も苦しそうだ、けれど、顔を覗き込んだら・・・笑ってたから。
嬉しそうに、笑うから。
胸が、キリリと痛んだ。
マビル、相手を間違えているよ。
俺、マビルの彼氏じゃないよ。
あぁ、そういえば眠る時彼氏が始終こうして抱き締めていてくれるんだったね。
こうして、マビルは笑うらしい。
初めて見た、こんな表情。
息が、出来なくなりそうなんだ。
マビルが、俺に抱きついてくれててさ、嬉しそうに笑っているのに。
情けなくて涙が、止まらないんだ。
言ってやれよ俺、相手が違うと。
物凄く酷い事をしている、彼氏の振りしても仕方ないだろ、俺。
でも。
今日だけでいい、今だけでいい。
卑怯者でいいから、どうか。

「今日だけ、今だけ。・・・抱き締めさせて」

明日から、元の居場所へ帰すから。
唇を痛いくらいに噛み締める、それでも、痛いのは胸。
最低な事くらい、解っているよ、でも。

「・・・とても。大好きなんだ。誰のとこにも行かないで・・・欲しいんだ」

呟く、震えながら苦し紛れに声を出した。
届かない願いを、言えない言葉を衰弱しているマビルに投げかける。
こんな時位しか言えない自分に、笑えた。

「すーき」
「え?」

強く抱き締めて、馬鹿みたいにうわ言のように大好きなんだを繰り返したら、マビルが何か言うから。
何かを繰り返しているから、耳を唇に近づけた。
・・・好き、と言っているらしい。
マビルは、こういう声で『好き』というみたいだ。
初めて聞く、甘えたトーンのその声と言葉。

「・・・好きだよ」
「すーき」

間抜けで卑怯でどうしようもなく愚かな俺は、好きだと、返した。
キスしたいんだ。
でも、駄目なんだ。
決定的にキスだと、マビルの彼氏と仕方が・・・違う。
夢心地のマビルを、壊すわけにはいかない。
無邪気に笑っているマビル、なんて、可愛いんだろう。
相手の男が羨ましくて羨ましくて羨ましくて仕方ない、固く瞳を閉じて相手への嫉妬で胸が一杯になった。
自分の不甲斐無さにも嫌気がさして、気が狂いそうだ。

「・・・好きだよ。ずっと、きっと、これからも。・・・愛しているよ」

言ったら、マビル、微笑むんだ。
・・・やめろよ。
例えば、それはさ。
マビルと彼氏がこうして抱き合っているのを、傍から見るよりも辛い事な気がする。
俺が羨望して渇望して願い続けた居場所、こうして”体験している”けれど。
マビルの瞳には、俺が映っていないんだ。
熱が、下がるまで傍にいよう。
熱が下がったら、早く元の居場所に戻るんだ。
彼氏もきっと、心配している。
仲直りは出来たんだろうか、それが気がかりだ。
今日だけ、今だけ、恋人気分。
恋人の代わりを、振りを、してみよう。
寂しがり屋の可愛い黒猫、一人ぼっちにならないように傍に居よう。
片手で口を塞いで、自分の手の甲にキスをした。
何度も何度も、キスをした。
髪にキスを、頬にキスを、額にキスを、瞼にキスを。

「おやすみ、マビル」

ミノル達が買ってきてくれたスポーツドリンクを飲ませる、氷の上に乗っている苺を食べさせる。
湯煎にかけてあるけど、温くなったポタージュを飲ませてみる。
・・・薬を飲ませたら、苦そうに顔を歪めていた。
一緒に眠ろう、ちゃんと傍にいるよ。

「どうしてキスしてくれないの?」
「え?」

不意にマビルがそう言うから、驚いて顔を見た。
どうしてと言われても、俺、彼氏じゃないんだ。
どうもこうもないだろう、当然だ。
黙っていたら、マビルが泣き出すから。
泣き出して暴れるから、・・・どうすればいいんだ。
彼氏のところへ連れて行けばいい、そうすれば何も問題はない。
でも、今のマビルを外へ連れ出していいのかどうか以前に、俺はその人を知らない。
マビルの言いたい事は解るんだ、でも。
幾ら振りをするっていったって、して良い事と悪い事があるだろう。
眠らせようと思って強く抱き締めた、動かないように抱き締めた。
薬が効けば、眠くなる。
早くて30分、それまでの辛抱だ。
おやすみ、マビル。
目が覚めたら、きっと治っているから。
腕の中でマビルは始終、泣いていた。
何か言ってるから、必死で聞き取った。

「あたしのこと、好きじゃないの?」

好きだよ、大好きだよ、愛しているよ、でも俺はマビルの彼氏じゃないんだよ。
マビルが、泣き止まない。
大人しくしてくれないんだ。
希望に応えてあげたいのは、本音・・・正直、そうしてあげたいけれど。
抱いたら、俺以外の男の名前をきっと呼ぶんだ。
堪えられない。
名前を呼んで、嬉しそうに微笑むんだろう。
堪えられない。
大きく息を吐いた、耳元で囁いた。

「・・・熱が下がったら、治ったら。だから、おやすみ」

無難に。
お利巧さんに、してくれないかな。
動きが止まったから納得してくれたみたいだ、ほっと一息。
・・・したのも束の間っ。

「今。今して欲しいの」
「痛っ! いたたたたたたたたたたたたたたぁっ」

頭部に激痛、髪を、髪をマビルが思いっきり引っ張るからっ。
目が合った、怒気を含んだマビルの瞳、でも何故か泣きそうに顔が歪んでいる。

「ちゃんと、今して」

・・・何を。

きっと、多分、俺は。
それは数十秒だった、いや、数秒だったかもしれないけれど、一時間位見つめあった気がして。
マビルが、涙を浮かべながら好きとか、キスしてとか、抱き締めてとか言うから。
言うから。
震えながら言うから、弱々しく言うから、泣きながら言うから。
多分、人として最低な行為をしてしまうんだろう。
マビルが、正気に戻って事実を知ったらどうなるんだろう。
ショックで気を失うんだろうか、一生口も聞いてもらえなさそうだ。
・・・相手の男にだって申し訳ない。
けれど。
マビルが、瞳を薄っすら閉じるから。
・・・ごめん。
そっと、キスをした。

どのくらい転寝していたんだろう、床に寝ていたせいか身体が痛い。
マビルは腕の中ですやすや寝息を立てたままだ、額はそこまで熱くはない。
しがみ付いているマビルの腕を、起さないようにゆっくりすり抜けて毛布から這い出た。
溜息。
・・・やらかした。
・・・最低だ。
冷水を浴びたい気分だ。
転がっていた温い飲料水を一気飲み、足りない。
喉が痛い、微かに視界が夢の中にいるようにおぼろげで。
それでも加湿ついでに沸かしておいた鍋のお湯と氷で温度を調節して、タオルを浸す。
大丈夫だ、人肌、適温。
マビルの身体を丁寧に拭いた、なるべく見ないようにしたけど、・・・ごめん、もう覚えてる。
意識したわけじゃないんだ、でも、瞬時に脳に描いたらしくて、完璧に記憶してしまったらしい。
・・・最低だ。
汗を拭いて、ネグリジェを着せてベッドに運ぶ。

「おやすみ、マビル」

もう、夢の時間は終わったんだ。
後はマビルが目を覚まして、どう思うか、か。
覚えているだろうか、すり替えられているだろうか。
満足そうに、小さく頷いた気がする。
カーテンをしめた、もう夜だ。
適当にそこらにあった物を食べて、毛布に包まると床に座る。
マビルと、手を繋いだ。

「・・・ごめんな」

謝っても謝りきれない、俺は、・・・なんていうことを。
回避出来た筈だ、悪いとは解っていた、でも、代わりでもいいから。
望んでいたんだろうな、いたんだ。
眠れないのは、さっき寝ていたせいだろうか、罪悪感が込み上げて来たからか。
カーテンから朝日が差し込み始めたから、一本一本、マビルの指をそっとはがして。
固く握ってくれていたから、ゆっくりはがして。

「おやすみ」

危うく、さっきの延長でキスをするところだったけれど、寸でのところで我に返る。
もう、終わりだ。
恋人の振りは、終わったんだった。
額に手を置いた、大丈夫、下がっている。
さぁ、行こうか。
名残惜しく振り返った、足を止めた。
出て行きたくないらしい、でも、駄目だ。
ホント、情けないというか未練がましいというか、女々しいというか。
冷たいドアノブに手をかける、カチャ、音が遠くに聞こえた。
足を踏み出し、廊下に出て、一呼吸。
冷たい空気を肺に一杯吸い込んで、ドアを閉めた。
軽くドアにもたれて瞳を閉じる、涙が出てきたら慌てて上を向いた。
咳が込み上げた、冷たい空気で一気に身体が冷える、思わず震えて。
やけに寒いな・・・考えすぎたせいか、頭痛もしてきた。
早く部屋に戻って、休息しようか。
何故か、眩暈。
気持ちが悪い、吐きそう。
冗談じゃない、こんな早朝廊下で倒れている国王は間抜けだろう。
壁に手をついた、必死で震える足に力を込めて歩く。
歩け、何やってんだ、俺。

「おはようございます、トモハル様」

早いな、メイドさんだ。

「お、おはよ・・・」
「声、変ですよ? 大丈夫ですか・・・? って!」
「だいじょ、ぶ」
「きゃー! トモハル様ー!?」

そこから、覚えてない。
気がついたら地球の俺の家、俺の部屋。
一日経過、ミノル達が来ていて、ゲームしていた。
・・・おい、俺病人ですが。
マビルの風邪が移ったらしい、記憶ないけど病院で診察もしたそうだ。
身体中が軋む、久し振りの高熱だった。
マビルは、元気になったらしい。
よかった、それならいいんだ。

「国王急病、代わりにはならないけど僕とダイキでなんとかするからさ、一週間くらい休みなよ。
過労だよね」

ケンイチが苦笑いしている、ありがたく、頷いた。
罰があたったんだ。
あんなこと、したから。
・・・マビルに、逢いたいな。
覚えているんだろうか、覚えていたら一生会って貰えないのかな。
・・・マビルに、逢いたいんだ。
俺の部屋は、高校を卒業してクレオへ移住してからほとんど戻っていないけれど、そのままの状態で。
マビルと俺の写真が数枚飾ってあったりする。
・・・あの頃は、とても楽しかった。
何処へ行くにも一緒だった、サッカーの試合も観に来てくれた。
色んな奴に声をかけられていたから、慌てて連れ戻しに行った。
・・・マビルに、逢いたいんだ。
良く考えたら、マビルが居なくなったら俺は国王でいる必要ないんじゃないだろうか。
俺、今後何しようか。
必死で働いたけど、無意味になった。
・・・アサギ、交代してくれないかな。
地球の実家で、ごろごろする。
昼前に起きてテレビを見ながら、朝昼兼用の食事、テレビを見ながらうとうとして、夕飯を食べてまた眠る。
ひょっとすると熱なんかもうない、健康体かもしれないけれど、動きたくないんだ。
カレンダーを観て、いい加減戻る決意をした。
バレンタインから、二週間経過。
俺は、今後何をしたらいい? 何を目標にすればいい?
・・・動機が不純でも一応国王だ、俺は・・・やるしかないんだろう。

戻ったら戻ったで、ケンイチとダイキから二週間の出来事やら、会議の内容を聞いて慌しい毎日の開始。
マビルはやはり、もう居ない。
あの日の出来事を覚えているのか、いないのか知らないまま数日が経過した。

「体調管理くらい、ご自分でなさって下さい。家臣以下国民その他、迷惑しますんで」
「君、いちいち俺につっかかるね」

一人で夕食をとっていると、ぶっきらぼうに料理の皿を出してくるコック・・・見習い。
以前俺にマビルの様子を教えてくれた同い年くらいの奴だ、こいつは俺に対して全く遠慮がない。
一応敬語というか丁寧語を使ってくるけど、100%毒が織り込まれていたりする。
見習いの割には腕がいいのか、最近はまかない食だけでなくこうして俺の食事も作ってくれて話す機会が増えた。
あまりの口の悪さに一度料理長に叱られていたけど、俺的にはこういうのも悪くないから・・・というか、居て欲しいから仲裁した。
崇められるような男でもないし、こういう風に気兼ねなく接してくれる人も、正直欲しい人材だ。
コック兼、俺の身の回りの世話係、この世界での友人・・・みたいな人、になってくれるといいなとか思っていたりするかな。
コイツはどう思っているか知らないけど。

「それから、トモハル様。メイド達が浮き足立つので甘い言葉を連発なさらないで下さい」
「いつ俺がそんなことしたかな」
「自覚がないのでしょうが、女性の心理とは非常に複雑なもので、男が思っているより単純に錯覚から恋へと進展してしまう場合があります。
”私にだけ優しい”と思い込まれると、大参事ですがお気づきですか?」
「だから、いつ俺がそんなことしたかな? ・・・っていうか何、君の好きな女の子が俺に惚れているから毎回突っかかってくるわけ?」

ガシャン、皿のものがこぼれる勢いで二皿目がテーブルに置かれた、サラダだ。
トマトにアボガド、卵の角切りに色んな豆とチキン、ブラックオリーブが彩り良くレタスの上に並べられている。
美味しそうじゃないか、食べようとしたら手をはたかれた。
・・・なんだコイツはっ。
唖然と観ていたら、ドレッシングをかけて丁寧に混ぜ合わせてから小さな皿に取り分けしてくれた。

「どーぞ」
「・・・どうも」
「適当なまかないですが」
「ありがとう、コブサラダだよね、これ。結構好きだよ。チキンよりベーコンのほうが好きだけど」
「まかないです」
「すいません・・・」

オリーブオイルとビネガーが主のドレッシングだ、マビルも好きだったはず。
これにサーモンのソテーとコンソメスープだ、豪華だな。
黙々と食べていたら、始終コイツ舌打だよ。

「ともかく、トモハル様に本気で惚れてしまったメイドに悪いでしょう。以後、慎んでください」
「いや、だからね?」
「自覚はなくとも。
・・・基本的にあなたは誰にでも優しすぎるのですよ。だからマビル様に愛想つかされるのです」
「・・・それとこれとは」

物凄く機嫌が悪そうなコイツ、遠慮なさすぎじゃなかろーか。
大袈裟にあからさまに溜息、テーブルを指でコンコン、と叩きながら溜息連発。

「俺、好きな子いるから他の女の子は興味ないんだ」
「トモハル様はそうでも、メイドは違います。そもそも、その方とは不仲ですよね」
「う・・・」
「トモハル様の態度が、数人の女性を傷つけている事、いい加減自覚なさって頂きたいのですが」
「い、一応マビルと結婚しているんだ」

そうだよ、マビルとは結婚している、って形になっているんだ。
実際は違うけどさ。

「えぇ、でも”不仲”ですよね」
「う・・・」
「若くて器量の良い、元勇者の国王。あのアサギ様と親しく、かつその双子の妹マビル様を”妻”として。
けれども、マビル様とは”不仲”だ。そこを狙って自分がもしかしたら・・・と淡い想いを抱くメイド達が世の中には存在してしまいます」
「・・・気をつけるよ。具体的にどういうこと?」
「気安く身体に触れながら、微笑むのをおやめください」
「それだけじゃ普通人は惚れないよ」
「惚れる人間も存在します。中途半端にそこで終わるから、妄想が先走って期待するメイドがいます」
「ホントかよ・・・」

美味しかったから直ぐに皿は空になる、無造作に皿を片付け始めたソイツ。
変な奴。

「ところで君、名前、なんていう?」
「・・・ロバートと申しますが」
「教えてくれてありがとう、ロバート。あ、今度マビルにもさっきのサラダ出してやって、きっと気に入るから」
「マビル様が・・・。解りました」
「で、どのメイドさんに惚れているのか知らないけどさ、大丈夫だよ。
俺と恋仲になる可能性は0だから、振り向かせる努力しろよ」
「・・・トモハル様もそうしたらどうです?」
「俺は・・・」

俺の相手にはすでに恋人がいるんだ、どうにもならない。

「想いだけでも、言い続けるべきだと思いますが」
「・・・」

俺は、そのまま席を立った。
歩きながら、考える。
通り行くメイドさんに手を振った、擦れ違ってから二人組みのメイドさん、キャーって声を上げていた。
・・・これは惚れているとかではなくて、国王と話せたからというアイドル的な感覚なのではなかろーか。

「どうなされました、トモハル様」
「あー・・・うん、ちょっと」

一番親しい、年上のメイドさん。
落ち着いて微笑んで、思わず肩の力を抜く。

「俺、誤解されやすい?」
「唐突ですね」

話を聞いてもらった、ロバートに言われたことを告げてみる。
苦笑いしながら、軽く相槌を打つメイドさん。

「確かに、トモハル様を尊敬の眼差しで観ているメイドも居れば、仄かな恋心を抱いて観ているメイドもおりますよ」
「そ、そうだったんだ・・・」

知らなかった。
呆然としていたら、弟をあやすみたいに頭を撫でてくれる。

「もっと、冗談っぽく・・・接してはいかがでしょう?」

冗談っぽく?
玉座に座りながら考えた、意味を考えた。
・・・。
夕食後、メイドさん達と広間で遊んだ。
最近、ダンスが流行っているらしくてその練習だ。

「みんな上手だねー、可愛い可愛い」

くるくる廻るメイドさん達、みんなに平等に微笑む。

「あら、マビル様」

メイドさんの一人が、指差した方向に久し振りのマビル。
・・・マビルだ。
何故か、泣きたくなった。
怒っているだろうか、何を思っているんだろうか。
ロバートの言葉が、甦る。

「おかえり、マビル」
「ただいま・・・」

立ち去ろうとしたから、名前を呼んだ。

「マビル!」
「・・・? 何?」
「愛しているよ」

メイドさん達から、キャー、の悲鳴。
ざわめく中で、マビルは唖然と俺を見ている。
愛しているのは、マビルだ。
これで、メイドさん達に誤解されることもないだろう。
言いたいことだけ、伝えてみた。
笑顔でマビルに手を振る、硬直して突っ立っているマビル。

「一緒に、ダンスの練習しようよ。楽しいよ、ほら」

近くに居たメイドさんの手を取って、くるくる廻る。
マビルは、そのまま去っていった。
好きなら、好き、か。
言いたい言葉だけは、言ってもいいかもしれない。
どのみちマビルには届かないんだ、溜め込むより気が楽だ。
好きだと、言い続けてみよう。
そうしていれば、メイドさん達にも誤解されない。
極力、いい加減な男を振舞おう。
そうしたら、誰も誤解させずに済むだろう。
マビルだって、気が楽だろう。
ずっと自分を想い続けている俺がいたら、気味悪がりそうだ。

「女の子は、可愛いよね。みんな可愛いんだ、男は護るべきだよね」

でも、愛する護りたい女の子は唯一人だよ。
いつも、ずっと、マビルだけを想っているよ。

・・・マビルは、偶に城に帰ってきた。
だから、今まで通り何も変わらずに過ごすんだ。
欲しいものがあれば、全部買ってあげるよ。
何でも言えばいい。
大丈夫、”妻”なんだから、この城に居ればいいんだ。
何も変わっていない、俺とマビルの関係は。
もともと、・・・友達というか、姫と従者。

「やー、マビル、可愛いねぇ今日も。大好きだよー」
「煩い、チャラい、ウザイ」

気楽に好きだと言えるし、ロバートとあのメイドさん・・・シェリーさん曰く、メイドさん達も俺に対してキャーキャー色めきたつけれど恋心は抱かなくなったらしい。
良好。
バレンタインディナーの葉書が、地球に届いていたからマビルに手渡した。

「去年、美味しかったディナーだよ。これがあれば先行予約できるから、彼氏と行っておいで」
「・・・ありがとう」
「大事な愛する妻の為だからね、何でもするよ」
「妻って言ってもカタチだけの、でしょう? あたしは好きな事をしていればいいのよね?」
「うん、好きなときに戻っておいで」
「・・・そう」
「愛しているよ、マビル」
「ウルサイ」

数年後、『つまらないから、遊びに行く。当分帰らない、さよなら』という手紙が玉座に置いてあった。
束縛さえしなければ、マビルも戻ってくる。
暇が出来たら戻っておいで、俺、マビルに会えればそれでいいんだ。
あの日の出来事はマビルはやっぱり憶えていないみたいで、正直安堵している愚劣な自分がここにいる。
だから、いいんだ、俺。
もし、他に、マビル以外に誰か好きな子が出来たら。
その子の為に頑張ろう、その子の為に必死になろう。
でも、本当は待っているんだ、マビルが恋人と別れるのを。
例えば今の俺は、非常にナンパ師みたいなチャラ男なのかもしれないけれどさ。
・・・そのほうがね、誰も傷つかないで済むんだよ。
どのみち、マビルが俺に振り向く事はないのだろうし、いい加減な男を演じていても不都合はないさ。
だから、いなくならないで。
どんな関係でもいいんだ、・・・偶に、姿を見せて欲しい。
俺に微笑まなくてもいいよ、・・・幸せであってくれればそれでいいんだ。
彼氏とは上手くやっているんだろうな、実は少し心配してたんだ。
以前、「マビルさんくださいーっ」って入れ替わりに変な男達が来たんだよね。
マビルは心底嫌そうにして俺の背に隠れていたから、追い払っておいたけど。
・・・彼氏と上手く行ってなくて、適当に遊んでもらった結果なのか、ただのマビルのファンなのか。
詳細を話してくれないから、マビルが嫌がる男は国王の権力を持って廃除。
便利だ、国王。

「あぁっ、彼女がいないと俺は生きていけないというのにっ」
「煩いです」

マビルの手紙を握り締めながら、大袈裟に倒れて一芝居。
通り過ぎるメイドさん達がクスクス笑いながら、俺に声をかけてくれる。
メイドさん達が去って、箒を手にしたロバートが俺の頭部を殴りつけた。
・・・こうしてさ、いい加減な男を演じていたほうが気が楽だ。
ピエロみたいだろ、でも、これで丁度いい。

「・・・もう、誰もいないので。滑稽な男を演じる必要ないですよ。・・・あぁ、元々非常に滑稽ですがね」
「ロバート、俺、国王。愚弄しすぎ」
「えぇもう、本当に傾倒に値する国王様ですね」
「嫌味、ありがとう」

静まり返ったそこに、俺とロバート。
ロバートだけが、知っている俺の秘密、俺の完璧な演技。
そのままゆっくり身体を床に寝転ばせて、天井を見上げた。
何処に居て、誰と居てもいいんだ、でも。
偶に帰ってきて、姿を見せてくれ。
それでいいから、何処へも、行かないで。
彼氏を連れてきてもいいよ、笑顔で迎えるよ。
・・・マビルのこと、大事にしてくれる人なら、大歓迎だ。
我慢するよ、大丈夫だ、覚悟は出来ている。
猫が、鳴きながら俺に近寄ってきたから抱き寄せる。

「おいで、マジョルカ」

クロロンと、チャチャの子供だ。
クロロン譲りの黒い綺麗な瞳に、チャチャの茶色い毛、メス。
猫達は、上手く行ったんだ。
・・・よかった。

数日後、暇を貰って地球へ一人で遊びに行った。
マビルと出遭ったあの街で、一人でぶらつく。
小学生の頃は買えなかったバッグだって、買える大人になった。
マビルが良く立っていた場所、ビル同士の隙間に立って、行き交う人混みを眺める。
手にはマビルの好きなブランドのバッグ・・・が入った紙袋、つい癖でまた購入してしまったんだ。
帰ってきたら、渡そう。
マビルが好きだった洋梨のソフトクリームを食べながら暫し遠くを眺める。
明日はミノル達と遊びに行くんだ、まだ寒いけれど寒いながらに温泉に浸かってさ、他愛もない話をして。
冬も好きだけど、俺は春が好きだ。
春を待ち侘びて、春になったらまた来年の春を夢見て。
・・・だって、マビルと再会できたのは、春だった。
マビルはいないけれど、友達と春を待つ、ビルの隙間でぼんやりと考え願う事は。

「トモハル」

不意に声をかけられた、思わず大口をあけて返事できずに目を見開いて正面の相手を見つめる。

「アサ・・・ギ?」
「ちょっと、一緒に来て欲しい場所があるのですー。アサギの今いる世界に、コロッセウムという場所があってですね、参加すればとても今後の為になると思うのですよ。
皆さん、お強いのです」

と、唐突じゃないか、何だそれ。

「いや、でも・・・」
「忙しいですかー?」
「マビルが、今出掛けてるんだ。・・・何時帰ってくるかわからないから、あまり長期不在にしたくないんだよ。
その、帰ってきたときに城に居たいんだけど」
「・・・大丈夫なのです、問題ないのですよ」

アサギが、一瞬。
鋭く俺を見つめるから息が止まった。
目の前に現れたのは、マビルではなくてアサギだった。

「いいよ、付き合うよ」
「・・・出場するのは、トモハルですからね」
「はいはーい、やってみるよー」

‡The Colosseum‡――第二幕―― へ
(エレニエル=A=K様スレマス)
 

 

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読めた
携帯からだと、これ途中から文字が読めないんだが何故だ?(汗

お疲れサン、暫し休むと良い
トモハルが不憫で、まさか泣いてしまうとは不覚(笑

が、ガーベラとハイ&哀の話はどうする気だ(素
トビィの後ろ 2009/01/18(Sun)20:02:12 編集
あー・・・・・・・・
今、直すですー・・・。<読めないとか
えーっと。
えーっと。

DES自己犠牲レベルの高い順

アサギ

トモハル

トビィ

流石対(おぃ)。

ガーベラと、哀ちゃん&ハイ様をどうするべきが思案中なのですー・・・。
困ったーですねー・・・。
アサギ 2009/01/19(Mon)00:09:08 編集
久しぶりのコメント
が、これかいっ!!

と突っ込まれそうだ(笑)


久しぶりに読んだ~
本編の記憶が20話位で焦って
トモマビラストと書いてあったような気がして~



まぁ、なんつーか・・・


ある意味、トモハルって残酷だよね。


自分も傷付かない
相手も傷付かない
周りも傷付かない



そんな方法なんてないんだよ。


私がマビルだったら
『どうせ私だけじゃないんでしょ?それなら、もういい』
って言って出ていって戻らないね




って、その結果がコロッセウムか(苦笑)


まぁなんだ、ツケを頑張って払いなさいってとこかな?


なんつーか、極悪コメントだ(苦笑)
みやち 2009/01/26(Mon)09:27:25 編集
下手するとトランシスより性質が悪い残酷ぶり
アサギも似た様なことを本編でしていますがー。

一章すっとばして四章を今書きたい(ごごごごごごごごごごごごごごご)。←マテ。

・・・まこは、コロのアサギが心配で仕方ありませんでござりゅんよ。
まこ 2009/01/26(Mon)20:57:34 編集
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