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物珍しいものがたくさんある、全部欲しい、あれも欲しい!
「船、最終便はこちらですよー! 乗船希望の方は早急に手続きをー!」
ふね? ・・・船ならなんとなくわかる、ぷかぷか浮くやつだよね。
楽しそうだし、並んでみた。
「10マリですよー、お手元に必ずお持ち下さいー!」
・・・10マリって何。
どうしよう、知らない単語が多すぎて、何をしたらいーのかわかんない。
仕方ないから、目の前に居た人に訊いてみた。
「あのさ、10マリって何」
振り向いた男は、あんまりキレーじゃなかったので、一歩後退。
そいつはあたしを見て、なんだか嬉しそうに笑った、それが気持ち悪いので、更に一歩後退。
「君、お金ないの? 船に乗るなら払ってあげるよ」
「・・・お金?」
どうしよう、お金ってなんだ。
困惑してたら、そいつは馴れ馴れしく肩を抱いてきた、殴ろうかと思ったけど、お金とやらの話を聞かなければならない。
そいつに連れられて、あたしは船に乗り込めたけど。
やたらニコニコしてるそいつが、妙に気分悪い。
「さぁ、旅は初めて? 好きなものを食べて好きなことをして遊ぶといいよ」
船というのはあたしの想像を遥かに越えていて。
美味しいものがたくさん食べられるし、本とかゲームとか、色々あるんだ。
退屈しないで済む。
あたしはひとしきり遊んで、遊び足りないくらいだったけど、例の妙な男が突然引っ張り出したので、軽く苛立ちながらも後をついていった。
大きな部屋があったんだ、ふかふかのベッドに綺麗な装飾品、わぁお、素敵!
面白くてベッドに乗っかって飛び跳ねていたら、男が咳をし始める。
・・・風邪?
うつったら困るから、と顔を思い切り顰めたら、次の瞬間。
「君、名前は? 可愛いよね」
・・・突然押し倒された。
・・・キモイ。
・・・嘗めてくれる、あたしを誰だと思ってるんだ。
炎を繰り出す、一気に奴に叩き込む。
・・・筈だったのに!
「君、魔力が異常に高いから、先に手を打たせてもらったよ」
呪文が発動しないんだ、あたしの喉元にぴたり、と添えられた剣が不気味に光る。
「もう一度言うよ、散々君お金使ったよね? 対価が必要だと思わない?」
・・・キモイ、キモイけど、駄目だ、何故か呪文が発動しないんだ。
でも。
「キレーなオモチャならいいけど、あんたはキレーじゃないからヤ」
あたしは、勢いに任せて滑り込むようにしゃがむとそいつの腹部に渾身の一撃を喰らわす。
・・・相手していられない、逃げよう。
魔法が使用不可ってどういうこと!?
悔しいけど、魔法以外の攻撃なんて、あたしは不得手だ。
だってあたし、か弱いもーん、重いもの持てないもーん、腕力ないもーん、可愛いから。
どこかに隠れていよう、あたしは船内を走り回って、微かに扉が開いていた部屋へとするり、と入り込む。
「!?」
「あ、よかった、今度はキレーなオモチャの部屋だ」
入った先には、非常にあたし好みのオモチャが一人、暢気にベッドに転がって読書中だった。
あたしを見て大口開けてぽかーん、としてたけど、無視してドアを勢い良く閉めると近づいてにっこり。
「ちょっとキモイ男に追われているから、匿って欲しいんだけど、いーかなー?」
「は? どちら様?」
「あたし、マビルっていうんだよ。・・・お願い、匿って」
起き上がって訝しげに見てくる男の両手を取ると、優しく握って潤んだ瞳で懇願してみる。
相手は顔を赤らめて頷いた、よっし、もう大丈夫だ!
さっきの部屋よりすっごく小さいけど、キレーなオモチャだから、許してあげる。
テーブルの上にあったお酒とおつまみを勝手に拝借して、あたしは一人安心して食べ始めた。
さて。
整理してみよう。
世の中、お金があればとりあえず何でも出来るらしい。
何をするにも、お金がいるらしい。
でも、あたしは可愛いからお金がなくても、代わりにお金を払ってくれる人がすぐ見つかるらしい。
でも、その対価が必要らしい。
対価。
この男も、あたしを匿う代わりに、何かを要求してくるんだろうか。
惹きつけられる真っ赤な髪に、濃い青色の瞳、年齢はあたしよりもずっと年上だろう。
あたしはお酒を飲み干すと、ゆっくりとその男に近づく。
「助けて貰える代わりに、何かしてあげようか?」
ぺたん、と座り込んで、男を見上げて挑戦的に軽く微笑んで、首を傾げた。
キレーだから、あたしに触る事、許可してあげる。
だから、あたしを匿って、あたしに食べ物頂戴、お金も頂戴。
約束ね。
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