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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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Image567.JPG衣替えが終わらない、土曜日。

ALL”ト”inDESTINY

左から
トモハル→トビィ→トランシス→トーマ

四人とも、ト。
そして主要人物。
・・・私、トが好きなんだろうか・・・。

話の進み具合によって、タイトルが決定するというアバウトな49話。
アサギ編が何処まで書けるかー・・・。

アサギ、アサギっ。
は、50話にしますー。
ダイキで終わらせて、アサギにしようっ。
うん。

「ダイキは・・・どうしたいですか?」

クラフトの問いに、腕を組んで深く考え込んでいたダイキはゆっくりと顔を上げる。
3星チュザーレの勇者は、臆することなく口を開き、シポラを見つめながら語る。

「『探る』。・・・出発時に任された事。落ち着いて、皆で今この場所へ来るまでの情報をもう一度、洗ってみよう。そうすれば、何を次にするべきか見えてくるような気がする。順番に、話そう」

ダイキはサマルトとアリナに視線を投げかけ話を促した、軽く頷いてじっと見つめている。
頭を掻きながら、土の上で胡坐をかいているアリナに代わり、サマルトが口を開いた。

「あそこに、牢獄があると聞いて。二人で出掛けた」

悲鳴を上げたクラフトの口を、思わずミシアが塞ぐ。
話が、台無しだ。
ちなみに叫んだのは、無論自分が書いた「大人しく」というメモが当然のように守られていなかったからで。

「牢獄には、誰も居なかった・・・。囚人達は、そこのシポラに送られたんだそうだ。悔い改めるべく毎日祈りを捧げて、働いているとか。美男子だから女性のファンも多い、と聞かされた。賛否両論なのかな、感謝している人物と、悲観している人物の温度差が激しすぎる気がする」

横目でアリナに視線を送るが、話す気がないようだ。
軽く溜息を吐いて、サマルトは続ける。

「そのもぬけの殻の牢獄を二回、調査したんだけど。今は観光名所になっていて、誰でも見学できるんだ。ただ、そこの地下牢に『破壊の姫君』への想いを綴った妙な言葉が残されていたり」

破壊の姫君。
単語を聞いて全員が顔を上げる、ミシアもひっそりと眉を顰めて面を上げた。

「俺達はここまで、かな」
「シポラを絶賛している人達は、息がかかった人達やもしれませんね・・・。私達は」

クラフトが語り出した、破壊の姫君と教祖達について語っているその傍らで。
額を押さえて蹲り始めるミシア、心配されてサマルトに毛布をマントを羽織らせてもらい、焚き火で沸かした茶を啜る。
岩に横になって話を聞くミシア、話題は『破壊の姫君』。

「ここにいるわよ」

小声で呟くと、アリナを見つめる。
そう、ここにいる。
噂の渦中の破壊の姫君は、ここにいる。
自分の話題で持ちきりなのでミシアは上機嫌だった、表情には出さないが満足で。
高笑いしたい気分である、が、大人しく。
今はまだ、正体を明かすべきではないといわれているのだから我慢した。

「・・・アリナを抹殺する部隊はまだかしら? 絶好の機会なのに」

それがこないと、ここから離れられない。
アイ、タイからの指示では合流したのを見計らい手下が襲い掛かる筈・・・だった。

「破壊の姫君を信仰している人物達は、以前の生活に嫌気が差していたようにも思えました。全てを消去したい、という願いがより深く依存する形になっているのではないかと。
美しい、全てを魅了する姫ならばこの世を浄化する・・・破壊であろうとも楽に天へと昇れる、というような」
「何、つまり自殺出来ないから楽に殺してくれ、ってコト?」

クラフトの話に、仏頂面のアリナがようやく声を出した。
表情は相変わらず不機嫌そのものだが、一応話は聞いていたようだ。
苦笑いでクラフトは答える、肩を竦めてサマルトがクラフトに目配せした。

「そういう考えの人間もいるかもしれませんね。人間、何かにすがって生きたいものです、例えその対象が何であろうとも。天界の神が信じられないのならば、破壊の姫君を選ぶのも必然かもしれません。
かつて信じていた天界の神、心に痛みを受けて信じることが出来ずに、代わりに新たな姫君を知れば。
・・・苦しみから解き放ってくれるのではないか、と。そして同じ様な痛みを持つ人々でシポラに居られればそれで良い、と」
「弱いなー」
「人間、弱くて強いものですよ。信じる対象が危険ですが、切り離すためには時間を要すでしょうね」
「っていうか、そこで団体生活出来るなら別場所で、破壊の姫君とやらを信仰しなくても上手く出来るだろうに」

大きく伸びをし、アリナは立ち上がると屈伸、前屈を繰り返している。
右足で空を蹴り上げると、暗雲立ち込める空睨みつけて小さく呟いた。

「で。どーすんの。時間の無駄だ、ここに居ても。少しでも多くの人を救出するなら、今から突撃しよう」

軽くダイキに視線を投げかける、勇者の判断を待つつもりだ。
ダイキはシポラを見つめ、数分考えていた。
手から汗が吹き出し、手袋が湿っている。
皆の視線が、痛かった。
本音を言えば、突撃なのは間違いないのだが・・・。
あまりに、無防備ではなかろうか、そして突撃してしまえば数日見かけていた信者達と剣を交えなければいけないのではないか・・・。
そう思うと、決断が出来ないのだ。

「俺は・・・無事にみんなと合流することが最重要だと思う。突撃、したいけれど・・・命の保障がない気がして」

一旦、引き下がるということだろう。
それにクラフトもサマルトも同意し、深く頷いた。
アリナは舌打ちしたが、鬱憤を晴らすようにその場でシャドーボクシングを始めた。
暴れたい衝動を必死に堪えているのだろう、話しかけないほうが良さそうだった。
ミシアは。

「そうですわよね・・・。皆で揃って来たほうが良いと思いますの。姫君とてまだあの場には居ないらしいですし、出現してからでも良いと思いますわ」

そう弱々しく呟くと、再び毛布に包まる。
咳き込みながら、駆け寄ってきたサマルトに大人しく背中を擦られ。
五人は、シポラを見つめた。
次に来た時も先程の抜け道を利用出来る、その発見だけでも成果は十分だろう。
ただ、去る前に五人で近寄る事にした、念の為。
城壁で囲まれているのだが、正面の門がどうなっているのか、見張りはいるのか。
ダイキ達が先に調査しているが、更に慎重に。
夕暮れになり、周囲が薄暗くなった頃五人はそっと歩み寄る。
明るいと何処かで監視されていた場合、攻撃を受ける恐れがあるからだった。
あまり暗いと、灯りを使わなければならないので余計目立つだろう。
先程侵入した洞窟を確認、この中に小屋があることをアリナ、サマルトに説明。
ぐるり、と壁をつたって歩いてみたが、結構な広さである。
周囲は静かだった、特に物音は聞こえてこない。
一周に要した時間は、約二時間だろう相当広い。
五人は先程の場所へと戻った、連れ出した二人組みが居るのだ、連れて帰らねばならない。
が。

「なっ!」

木に縛り付けておいた二人が、心臓を一突きにされて息絶えている。
唖然と立ちすくむダイキの脇を、クラフトがすり抜け傷口を見ればまだ・・・血液が暖かい。
死後硬直も当然始まっていない、殺されたのはつい先程だ。
思わず皆武器を構えた、獣が相手ではないのは承知、凶器こそないものの明らかに人の手だろう。
高等な頭脳を持ち得た魔族や、二足歩行の魔物でも・・・可能だ。
森で、梟が鳴いた。
森で、狼が吼えた。
月が、雲に隠れた。

ガサガサッ

木の葉が揺れる音、思わず五人が一斉に上空を見上げれば先程の梟が飛び立ったところだ。
胸を撫で下ろす、ともかく木に縛り付けておいた二人の遺体を地面に寝かせ、丁重に葬ることにする。
火を焚けば、獣からは安全だろうが敵には見つかり易いのは解っていたが近辺で見張られているかもしれないのだ、考えても無駄なので五人で火葬をした。
遺体の損傷がそこまで酷くなかったので、ダイキとて足は震えたものの燃え盛る火の前で彼なりに懸命に祈っている。
祖父が亡くなった時、火葬場へ行ったが呆然と立ち尽くしていた記憶が甦った。
人は、死ぬ。
時期が違うだけで、死ぬ。
それは必然で、解りきったことだが。

「痛かったろうね」

ぼそ、っと呟いた言葉を、サマルトが聞いていたが何も言わず。
そして皆後悔した、”何故二人を置いて偵察へ行ってしまったのか”。
傍に居るべきだった、と唇を噛んだ。
迷わず引き返せば誰も死ななかったのではないかー、そう、思ってしまった。

思ってしまった。

シュルル・・・

その音に気づいたのはミシアだった、不意に横目で森を見た際に何かが蠢いていた気がして。
眉を顰める、弓矢を構えなおす。
敵か、味方か。
つまり、魔物か、シポラからの使者か。
心臓を一突きにしたのは、信者二人に口外させない為だろうからまず、シポラ関係の者の仕業だろう。
だが、今の音は。

ペキ

枯れ枝が、踏まれた音だった。
皆一斉に森を見つめる、火はまだ耐えていないが恐れずにこちらへ何かが向かってきていた。
それぞれ武器を手にし、気持ちを切り替え構えるのだが周囲の闇で気づくことに些か遅れたのだ。

―――あぁ、離れたからこの二人は死んだのだ・・・。離れなければ、助けられたのに―――

声が上空から降ってきた、弾かれたようにクラフトが耳を塞ぎ怒鳴りつける。

「聞いてはなりません! 幻覚へと誘い精神を追い込む呪言の一種です!」

だが、すでにサマルトが誘われたようだ、突然叫ぶと地面に突っ伏している。
辛うじてアリナは無事な様子、どうも頬を自身で思い切り叩いたのだ、痛みで戻ったらしい。
慌ててダイキを探した、苦悶の表情で立ち尽くしているが名を叫べば振り返ると弱々しく手を振ったので・・・無事である。
ミシアは、頭部を押さえて蹲っている。
・・・無論、フリなのだが。
叫びながら地面を転がるサマルトに近寄ったクラフトは、懸命に呼びかけるが全く聞いていない。
トラウマを、先程殺された二人を媒介にして呼び起こされたのだ。
最も深いトラウマを所持しているのは紛れもなくサマルト、国内どころか、ほぼ全世界が死滅し大事な人とて亡くなっている。
もっと、自分に力があれば助けられた。
あの時、逃げていれば助けられた。
後悔が津波となってサマルトを包み込んだのだ、心に沈めておいたものが浮上した。
どうにも出来ないことだった、サマルトの責任ではないのだが自責の念は深く重く、凶悪だ。

―――破壊の姫君に、仕えよ。全ての苦悩を取り払ってくださる―――

ダイキも必死にサマルトを揺すった、だが絶叫し続けるだけで瞳を開かず丸くなったままである。
アリナは声の主を探した、その人物さえ倒せばサマルトも解放されるだろうと踏んだのだ。
しかし、森から現れたのは長すぎる百足。
何メートルあるのだろうか、裕に二十メートルはありそうだが、幅は15センチ程で木にも隠れられる。
それが・・・五匹程森から這い出てきた。
舌打ちし、アリナは手身近な太い木の枝を火に突っ込むと松明代わりに装備、両手に木を五本ほど火をつけて持つとサマルトを軽く見てから百足に立ち向かう。
サマルトはクラフトがどうにかしてくれるだろう、一人で百足を倒したほうが都合が良い。
火には弱い筈だ、アリナは火を正面に突き出しながら百足の動きを瞳を細めて見極める。
確かに、怯えているが逃げはしない。
鋭い牙が見え隠れしている、あれに噛まれると・・・痛手だ。
ミシアも辛うじて立ち上がってきたので、胸を軽く撫で下ろしたがそれはアリナにとって敵を増やしただけの事。
弓矢を構え、一匹の百足に火付きの矢を放ったミシアだがアリナを孤立させるつもりだ。
当然、これは自分の意図を汲み込んだ計画の一部であり、シポラからの手配だろう。
アリナだけ、この場で抹殺する・・・その手筈。
声の主が誰かは不明だった、タイ・アイ、どの声でもない。
だが、味方で間違いないのだからミシアは悠然と気持ちを落ち着かせ弓を放ち続ける。
無論百足に矢が刺さる事はなかった、ワザと外しているのだから簡単だ。
火を警戒し、なかなかアリナに近寄らない百足を、自分の火の矢で操作しアリナへと向かわせる・・・。
ある意味、高度な技術である。

「アリナ一人じゃ無理だ、行って来る」

ダイキが剣を抜き、猛然と百足へ向かったのでクラフトは舌打ちしダイキへと簡易な防御魔法を詠唱。
サマルトさえ戻れば、火炎の魔法で焼き尽くせるのだが。
アリナの隣に立ち火炎の魔法を唱えたダイキ、発動時間が長くとも的確に百足へ攻撃を食らわせるように慎重に。

「たすかったー! 何処を狙うべきか」
「百足って、火で頭を燃やすと効果的って言わない?」
「おっし!」

ダイキの提案にアリナは松明を何個も掲げながら突進、起き上がって威嚇してきた百足の腹に松明を当てる。
熱さで暴れ出したところを、頭部を押さえ込むように数本の松明で地面に押し付け、その隙にダイキが長い胴体にももう一度食らわせる・・・という作戦である。
確実に、一匹倒してから、次へ。
瞳を細め、危うくミシアはアリナに標準を定めたが、流石に思い止まり百足へと。
自分で手を汚すわけにはいかない、あくまで敵からの攻撃でアリナを抹殺しなければ。
百足ごときではアリナとダイキを止められないだろう、声の主がアリナを操ってくれさえすれば。
上手く進まない事態に、ミシアは歯軋りをし矢を射続けた。
ここへ来て、サマルトにクラフトが参戦すれば機会はなくなるだろう。

「が、がはっ」

後方で、呻き声。
思わず三人は振り返った、クラフトを地面にねじ伏せサマルトが無表情で宙を見ている。

「ちっ、まずい!」

瞬時に理解した、サマルトが正気を失ったのだ。
アリナはダイキに戻るように告げ、百足の前に松明を数個投げつけると簡易な足止め。
クラフトの救出に向かう。
跳躍し、とび蹴りをサマルトに喰らわせたアリナ、クラフトから引き離した。

「大丈夫か!」
「な、あんとか・・・、がっ」

むせ返り、上手く言葉が話せないクラフトの前にアリナとダイキが立ちはだかるがどうやってサマルトを正気に戻すべきか。
説得出来るものなのだろうか。
ミシアは後方で見ていた、なるほど、サマルトにアリナを殺させるのだろうか。
それならばアリナとて容赦なく攻撃できないだろうから、隙が大いに生じる。
後方に控えている百足四匹を使ってもいいだろう、ミシアは弓を射るフリをしている。
剣で斬りかかってきたサマルト、ダイキを突き飛ばし真っ向からアリナが対峙した。

「甘いね、遅いよ!」

後方に回り込み、背中を思い切り蹴り上げる。
地面にねじ伏せ、面倒くさそうに笑った。

「悪いね、ボクのほうが強いから」

胸を撫で下ろしたダイキだが、百足が俊敏な動きでこちらへと向かってくるではないか。
ダイキの叫び声に我に返ったアリナ、サマルトを掴んで百足の体当たりを避ける。
火が弱まり、何も邪魔をするものがなくなったのだろう。
ミシアは懸命に一匹と対峙していた、残りは三匹。
地面を引き摺っていたサマルト、急に強い力でアリナを押しのけて再び剣を振り回し始める。
遠慮がない分、サマルトのほうが優勢なのかもしれない、そして正気でない分、力とて。

「あー、ホント、面倒っ」

高く右足を掲げる、もう失神させるしか大人しくさせる方法がない。
というか、そのほうが楽だろう。
その隙に敵を全滅させれば、治るだろう・・・と思った。

「アリナ、百足を任せる。俺がサマルトはなんとかしてみせる」

輪って入ってくるとは思わなかったが、ダイキがアリナの足をそっと右手で下ろさせる。
些か顔に不機嫌さを出したアリナ、だがダイキの視線に思わず頷くと足を地面に下ろし、代わりに百足に向き直った。
思わず、口の端に笑みを浮かべたアリナ。
ダイキの視線が、いやに頼もしく感じられたからで。
とても最初に出会った時と、比べられない。
短期間で、それ相応の度胸がついたのだろうか嫌いではない視線だった。
ご期待に、備えますよ勇者様。
小声で笑いながら言うと、駆け出し地面を這っている百足の胴体を踏み潰し。
痛みで胴体をくねらせれば尾っぽに注意しながら頭部を強打。
やはり潰すには火が簡単だろう、燃え残りの松明を拾い上げ、瞳を焼く。
回復したクラフトが援護についた、動きを鈍くするための影縛りを唱える。
一方、ダイキと向かっているサマルト、両手で剣を振り回すが狙えないのか避けるのは簡単だった。
が、下手に攻撃も出来ずに呼びかけることに専念。

「起きろよ! アサギを捜しに行くためには、そんな状態じゃ無理なんだ」

船で、世話してもらえたから恩返しに、とダイキの意気込みである。
真っ先にダイキが精神攻撃に耐えられなさそうだが、ダイキはそこまで辛い思いをしていない。
捕らわれるものが、なかったのだ。
アリナとて、クラフトとて。
悔しい思いはしていても、心を挫かれるほどではない。
だが、サマルトは。
話だけならば聞いている、壊滅状態のサマルトの星。
想像なんて出来ないが、それは想像したくもないほど、荒れているのだろう。
そこからサマルトとムーンは逃げてきた、犠牲も当然計り知れないだろう。
そこを付け込まれたことは大体想像出来た、ならば、どうにか説得出来ないかと思ったのだ。
剣の攻防、必死で受け止めながら叫ぶように言葉を投げかけるダイキ。
しかし、耳に声が届いていないのだろう無反応。
不意にサマルトの鋭い突きにダイキが対応出来ず、その心臓を一突きにされた。

「ダイキ!」

クラフトの悲鳴に似た声、最後の百足を撃破しアリナが顔面蒼白で向かったが、ダイキは平然としていた。
確かに胸元の服には突き刺された剣の跡・・・穴が。
だが、血液は噴き出していないし、ダイキも首を傾げて立っている。
驚いただけで、怪我はなさそうなのだ。
それは、クラフトの先程唱えた防御壁のおかげでもあり、そして。

「あぁ、これ、か・・・」

胸元から手を入れて、何かを取り出したダイキは、それをサマルトに見せて微笑。

「御守り」

それは、サマルトが見てもクラフトが見ても、当然アリナが見ても解らなかった。
地球製の品物で、鉄製の名刺入れである。
名刺を入れているわけではない、母親から貰った御守りが入っているのだが、それと同時に。

「無事だった」

御守りには穴が空いていたが、肌に近いほうに入れていたので貫通を免れたらしい。
一枚の写真である。
昨年の運動会で、応援団であったダイキとアサギ二人の写真である。
持ち歩いていたのだ、これが幸いした。
ダイキは苦笑いで写真を見せた、サマルトに、見せた。

「アサギの加護? なんて」
「うああああああああああああっ!」

見せた途端にサマルトから悲鳴、そして木の上からも絶叫。
サマルトは剣を手から離し、地面に崩れ落ちると駆け寄ったクラフトの腕のなかでぴくり、とも動かなくなる。
が、息はある。
顔色も普通だ、呼吸も荒くはない。
まるで、眠っているようで。

「サマルト殿、しっかり!」

クラフトの揺さ振りに回復魔法、サマルトは数分後何事もなかったように欠伸をして目を覚ます。

「あ、あれ?」

脱力感でクラフトが代わりに倒れこんだが、アリナは声の主を探し気の上を何度も見直している。
何故か、サマルトが戻った。
ふと、ダイキはアサギの写真を見て、サマルトがアサギに好感を抱いているから起きた現象であると・・・錯覚。
そうでは、ないのだが。

「おい、ミシア! 手当たり次第弓を射れ! 引き摺り下ろす」
「・・・えぇ、そうね」

青筋立てながらミシアは弓を放った、怒りを込めて。
失敗しているのだから仕方ない、なんて役立たず、サマルトも正気になった、百足とていない。
・・・死んで当然。
ミシアは、冷え切った目つきで無造作に矢を放ち続けた。
自分の配下なのだろうが、一度たりとも失敗など許されないのである。
自分の下した命を護れぬ配下など、不要。
だが、もはや何かが潜んでいる気配すらその場にはなく。
掻き消えたように、声の主は出てこなかった。
当番制で仮眠もとったが、やはり仕掛けてこない。
非常に不愉快で、気がかりだが朝、五人はその場を立ち去る事にした。
馬は二頭、交代で乗っていく。
笑みが消えたミシア、手綱を力強く握り締めながら唇を噛み続ける。
アリナは、生きている。
無傷だ、歩いている。
破壊の姫君の、命も護れないなんて、無能がいるとは・・・。
あまり闇の気を放つとクラフト辺りに警戒されるので、必死にミシアは押さえ込んだ。
五人は、街に戻ると船の手配をしつつ空いた時間で再度街を調査。
ともかく、シポラへ行った者のその後を誰も知らないので、これ以上ここでは詮索も出来ない。
ジェノヴァへの帰路、皆ほぼ無言であった。
上手く行けば、ライアン組が武器を授かり戻ってきている予定であり。
合流に、願いを。

そしてそれは、あの日の事。
木の上で絶叫した人物は、確かにまだ、そこに居たのだ。
死体だったが。
サマルトの精神を破壊し、操っていた。
決して解かれることはないと思っていた、だが。

「・・・お強い”気”、ですね」

空中に浮遊し、同胞の成れの果てを見ていたタイは静かにそう漏らすとその死体をそのままに。
やがてカラスや空の魔物が餌として、死体を貪るだろう。

「やれやれ・・・この場に居ないのに」

タイは喉の奥で笑うと、シポラへと。

「破壊の姫君様は、優秀であられる」

嬉しそうに、呟いた。

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主要だからなんだろうが、全員アサギ・マビル共に関係が深いんだな

トビィとトモハルとトーマは好き(ぁ
トビィの後ろ 2009/03/23(Mon)11:04:44 編集
一人抜けてる(激震)
主人公の彼氏がスルーされているのです(爆死)。
本気でトランシスの好感度を上げるべく、必死に書いてやるーっ(叫)。
まこ 2009/03/23(Mon)22:21:50 編集
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