[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
乾いた大地から一つの小さな芽が生まれました
まだまだ小さいけれど頑張って大きくなろうと一生懸命
その芽を輝かせる為に、応援する為に、みんなが力を貸しました
水は優しく芽を撫でるように降り注ぎ、潤いを与えました
その水のおかげで芽は元気に育ちました
水を頼って、不安な時は水を呼びました
水はいつでも近くに居ました
風は爽やかに芽の近くを通り抜けます
時折芽が揺れて、風と一緒に踊りました
風を頼って、落ち込んだ時は風と遊びました
風はいつでも近くに居ました
光は多少遠慮がちに遠くから芽に光を与えました
その光のおかげで芽は素直に伸びていきました
光を頼って、困ったときは光を身に一身に浴びました
光はたまに雲に隠れましたが、遠くからでも見守っていました
火は芽を暖めようと努力しました
暖かい火のおかげで、芽は明るく大きくなりました
火を頼って、寂しいときはいつもいつも呼びました
火は、自分のその熱い身体で芽を燃やさないように一定の距離を保っていました
けれども火は、水と風と光が羨ましくなりました
自分は芽に触れられないのに
水は優しく芽を撫でて、風は包むように流れて、光は粒子を芽に降り注ぐのに
火は空気を暖めて間接的にしか芽に近寄れません
それが嫌で嫌で、火は芽に触れたくて触れたくて
遠くから水と風と光が芽を慈しむのを見つめていました
やがて火はそれが耐えられなくて、嫉妬の業火となりました
水を蒸発させ、風を押さえ込み、光を遮って、芽に近づきました
「嫌なんだ、嫌なんだ、耐えられないんだ。僕の傍に居てよ。僕だけにしてよ。苦しいんだ」
火は、水と風と光が止めるのも無視して、芽に触れて、そのまま抱きしめました
全てのものから芽を覆い隠す形で、火は芽を包み込みました
この瞬間、芽は火のものになりました
満足して火が我に返ると、芽は、自分の火で焼け落ちて、消えていました
後には微かに黒い燃えカスが残っていました
芽を大事に守り抜きたいと思っていた火は、いつしか願いが変わって
芽を誰の目にも触れさせないように自分のものにしたいと願った時に
火の中で何かがコトン、音を立てて外れたのです
芽が消えて、自分のものになったのだと満足したのも束の間
消えたということは、二度と芽を見られないということで
芽は大きくならないということで
芽を暖めたときに嬉しそうに笑う姿が好きだったはずなのに
・・・火はようやく過ちに気がつきました
けれども、芽はもう戻れません
火は知りませんでした
芽が、火をずっとずっと見ていたことに
火が一番安心できて好きだったことに
ずっと、火に触れて欲しいと思っていたことに
水と風と光はそれを知っていたけれど
当の火だけが知りませんでした
けれども、芽はもう、戻りません
大地は再び、乾いた大地に戻りました
地が揺れて芽は何処か知らない場所に根を張りました
暫くして水が芽を探し出し、また一緒に暮らし始めました
けれども芽には記憶がありません
大きくなった頃、目の前を一人の男が通りかかりました
男は芽を大事に根ごと持ち帰り、部屋で育てました
「オレにはお前が必要なんだよ」
そう語りかけられて、芽は嬉しくなりました
水の優しさ、風の流れ、光の眩さ・・・火の暖かさ
寂しそうな闇のその男に、芽は一生ついていくと決めました
芽は、大きくなって、今でもその男の隣にずっと、ずっといるみたいです
それはそれは、嬉しそうに、幸せそうに、ずっと。
終わる。
哀ちゃん>
そんな感じでござりゅん(笑)
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |