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12月、クリスマス、お金がない。
「きゃー」
城の中でアサギは小さな悲鳴を上げた。
見ないようにしていたカレンダー、見たら12月。
最愛の旦那様に買うプレゼントのお金がない。
早く資金調達しないと大変な事になる。
アサギは意を決して木で造った看板を手に取ると、一目散に城を飛び出した。
そう、買いたい物がある。
見つけてしまったのだ、欲しいものを。
金額500万、非常に高額である。
だが、旦那様に誂えた様に似合う代物だったので、絶対にそれを買うと決めたのだ。
立て札を二つ、用意した。
絵師の間と小説の間に、立て札を立てた。
「身売り中。そちらの言い値で何か書き・描きます」
そんな立て札。
目標金額300万、そうすればあの楯が買えるのだ。
ダンボール箱を置いて、立て札の隣に座ってみる。
ダンボール箱の上には紙とペン。
人々が行き買う中で、非常に浮いた場所である。
「誰か・・・来てくれるといいのですけど」
アサギは小さく呟くと、そわそわと辺りを見回した。
視線が合う度に、人々は慌てて遠巻きに去っていく。
不意に物陰から誰かに見られている気がしたが・・・気のせいだったかもしれない。
その場に居辛くてアサギは溜息吐きつつ立ち上がると、立て札をそのままに遊びに行くことにした。
誰か、依頼をしてくれると、いい、な・・・。
しょぼりんと項垂れながら、ゆっくり歩いていく。
数十分後。
その小説の間の立て札の前に一人の青年が立っていた。
通りすがりで歩みを止めて、じっとそれを見つめるようだ。
褐色、と呼ぶには薄いが、その肌の色から闇エルフを連想させた。
藍色のマントについたフードで表情を覆い隠すようにしているのだが、時折口元が覗く。
瞳は見えない。
青年は何か思案していたようだが、やがて立て札に書かれたアサギの自宅へと、足を進めた。
やがて青年はとある城の前に辿り着いた。
旦那様とアサギが二人で暮らすその城の呼び鈴を鳴らしてみるが、中から返答は無い。
「ふむ・・・手紙を、残していきましょうか」
小さな声、しかし明確な発音と、耳に心地よい実に澄んだ男の声だった。
男は懐から紙とペンを取り出すと、手短に用件を書き記す。
男らしくも、見やすい字である。
青年はそれを城のポストに入れると、小さく礼をしてその場から立ち去った。
それから数時間して、アサギは自宅の城へと戻る。
そういえば依頼はどうなったのだろう? 後で見に行ってみよう・・・。
怖いような、行きたくないような、でも行かないとプレゼントが買えない。
城のポストを何気なく開けると、そこには一通の手紙が入っていた。
アサギは特に何も思わずに自然とそれに手を伸ばし、紙を開いて文面を読む。
「・・・きゃー!!!」
感動と興奮と、驚愕の入り混じった叫び声。
依頼者様からの手紙である。
庭の木に止まっていた鳥が驚いて遠くへ飛び去っていった。
庭に居たドラゴンのクレシダが微かに首を動かし、アサギを見つめる。
手紙には、小説の依頼と、金額300万の文字が。
300万。
プレゼントの楯を購入できる金額だった。
依頼者の名前をアサギは涙目で見つめ、思わず嬉しくて紙をぎゅっと抱きしめる。
会話したことは無い相手だ。
しかし、一方的に名前を知っている相手でもあった。
小さく飛び跳ねているアサギに、後ろから声がかかった。
「アサギ? 何やってるんだ?」
「きゃー、ギルザっ」
肩を叩かれ、アサギは思わず手に持っていた手紙をポケットに隠した。
何時の間に帰宅したのか、ギルザが真後ろに立って首を傾げている。
あれだけ騒いでいれば当然か。
アサギの額に冷や汗が流れた、これを見られてしまったら、プレゼントを買うことがばれてしまう。
小さく悲鳴を上げて、慌てふためきながらアサギは首を横に振る。
「ち、違うのです。手紙ではないのです。これは夕飯の買い出しのメモなのです。決して依頼の手紙では」
「・・・はぁ・・・」
「と、というわけでアサギはちょっと急いで夕飯の支度をするのですっ!!」
逃げるようにして城の扉を勢い良く開くと、アサギはそのまま城の中へと消えて行った。
扉が音を立てて閉まるのを確認すると、先程から小刻みに身体を震わせていたギルザの唇から、笑い声が漏れる。
「・・・ぶ、あはははっ!」
腹を抱えて大声で笑い出した。
知ってるんだけどね、全部。
小さく呟いて、笑い続けるギルザ。
まぁ、今は知らないフリをしておこうか。
軽く頭をかきながら、一呼吸して自分も扉を開くと城の中へと入っていく。
そんな一部始終をクレシダは見終わると、また瞳を閉じて眠りについた。
翌日。
依頼者の元に紙とペンを持って、アサギはクレシダに乗り向かった。
青年の自宅の扉を開く。
「あ、あの、アサギですー。ご依頼、本当にありがとうございましたっ。早速ですけど・・・」
「いらっしゃいませ、よくお越しくださいましたね。宜しくお願いします」
丁寧な口調と仕草、目の前の青年は微かに笑みを浮かべてアサギを招き入れた。
ただ、何処と無くその青年は寂しそうな雰囲気で。
・・・儚い深夜の空に浮かぶ三日月のようで。
けれども鋭く光を放ち、存在感のあるその『月』は。
細く細く闇夜に溶けてしまいそうだけれども、光だけは眩いその月のような青年は。
「ええと。あ、アサギと同い年なんですねー」
「そうみたいですね」
薄く微笑む青年。
アサギは軽く瞳を閉じると小さく息を吸い込んだ。
・・・どうか。
どうか青年の・・・。
※ご依頼、ありがとうございますです。
そんな感じで精一杯書かせていただきますです(ぺこり)♪
闇夜の三日月は、プロフ及び顔絵からのアサギ的瞬間イメージなのです。
すっごく細い三日月。
イメージ色が黒・藍色なのですけど、それを背景に細い細いそれでも眩しい三日月のイメージが直感で浮かび上がりましたので。
ので、顔絵もバックは闇夜と三日月なのです。
おっきい三日月。
時間があれば、顔絵は今週日曜日に完成予定なのです(ぺこり)。
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