別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
白亜の王宮が山の麓にに聳え建っている。
山天候の影響だろうか、雷鳴が聞こえるその城は近寄りがたい。
迷い込もうものならば、重々しい扉を叩こうか迷ってしまうほどの威圧感。
上空では蝙蝠が飛び交い、多少の勇気あるものならば財宝探しに足を踏み入れそうだ。
他からの進入を許さない雰囲気の、その城の中。
一人の緑の髪の少女が、ベッドに転がっていた。
外見とは裏腹に、少女の部屋は非常に可愛らしいもので、赤いソファーにちょこん、と座っている黒ウサギのぬいぐるみが少女を見ている。
色とりどりの花に、観葉植物。
カーテンはピンクのフリフリレース。
外観からは見えない位置にある少女の部屋は、明らかに城の雰囲気を損なっていた。
この巨大な城には、2人しか住んでいなかった。
もちろん、この少女が城の持ち主なわけがなく、少女の愛する人が持ち主なわけで。
これだけ大きいと掃除も大変だろうが、少女は日中嬉しそうに掃除をしていた。
どうやら少女にとって、誰かに仕事を手伝われるくらいなら、自分でやりたいようだ。
というか、城に誰も入れたくないのかもしれない。
掃除を終えて、近所で夕食の買い物をした後、少女は決まってベッドに転がる。
昼寝ではなくて、ベッドの枕元に置いてある宝石箱を開くために転がっているのだ。
深く深呼吸、ぎゅっと瞳を閉じて手を胸の前で組み合わせる。
「開きますよー」
これが日課、一日三回以上。
宝石箱を開くと、中には指輪が二つ入っている。
どちらも宝石の色は緑色だ。
エメラルドとぺリドットだろうか?
途端、少女は初めて見つけた宝物のように顔を輝かせ、指にそっと填める。
その指を見つめる。
光る指輪は何時見ても美しい。
二つとも愛する人から貰ったものだった。
ずっと身に着けておきたいが、失くしたり傷をつけたりでもしたら大変なので、こうして宝石箱の中に保管しているようだ。
部屋の中で、小さな緑のドラゴンが啼いた。
城の持ち主である少女の愛する人は、銀髪が闇に映える魔族だ。
もとは彼は魔族ではなく、人間の騎士だったのだが。
少女は懐かしそうに片方の指輪を見つめた。
話は時を遡る。
緑の髪の少女に心に刺さっていたモノ。
好きな人を癒すことが出来ないということ
好きな人を不幸にするということ
強いては好きな人を作ってはいけないということ
欠陥だらけの存在に嫌気が差していた少女。
なんとか人の役に立とうと考えられる限りの事をしてみた。
・・・恋というのは非常に単純で、また不可解なもので。
この緑の少女は、暫くしてから恋してはならない男に恋をした。
少女の瞳に映ったその男の印象。
他を圧倒する存在感、瞳を奪われた。
深藍色の瞳とゆるやかなウェーブを描く髪。
白い鎧を身に纏った、明らかに身分が高そうな男だった。
声は低くもなく、高くもなく心地良い音程で。
威圧感ある口調と、好戦的な態度、明らかに少女とは人種が違っていた。
正反対なところに惹かれたのか、なんのか、少女は知らず男に興味を持つ。
そこから、少女はその男の自宅へと足を運んだ。
身分が違う、立場が違う、許されない恋だった。
それを自覚しながらも、少女は止めることが出来ずに、何かと言い訳を作って男に会いに行く。
時間はない、いい加減諦めなければいけない。
諦めようと一旦は思った。
少女は直感したのだ、確実にこの人は不幸になる、と。
今までがそうだった、自分の想いが深ければ深いほど、相手を傷つける。
それ以前に、その男が自分などを選ぶはずもないと諦めても居た。
それでも。
僅かな可能性にかけて、最後の手段に出た。
「この恋を、最後にしよう」
少女の心に突き刺さった「モノ」を取り除いたその光の騎士に。
振り払われない限り、捨てられない限り、疎まれない限り。
夢中でついていくことを決意した。
その騎士の存在が、少女の存在でもあり。
その騎士が消えれば、少女もまた消える。
何故ならば少女にとって、騎士が存在しない世界は意味を成さなかった。
少女は薄々感じていた。
騎士が自分の目の前から消えてしまうことを。
それでも、怖くて言い出せなかった。
ぽつり、と友達には言葉を吐いたかもしれない。
「判るのですー、悪い予感だけは当たるのですー・・・」
言葉通り、騎士は忽然と姿を消す。
的中した未来、少女は笑うほかなく。
心を暗黒が多い尽くして、飲み込まれた。
何も言わずに消えた騎士の、幻影を探し続ける。
探したところで会える訳がないと、そう思った。
口に出せなかった自分の思い、言いたくなかった思い。
「多分きっと、不要だったのです」
騎士にとって自分は暇つぶしの相手であった、と。
少女はそう思っていた、ずっと。
自分でなくとも良かったのではないか、と思っていた。
だから、再会したくはなかった。
きっと、不要だと言われるだろうから。
自分に自信がない少女は、そう思うことで逃げ道を作る。
「これでよかったのですー」、と。
過去と同じ逃げ。
少女は怯えていた、この世界に一人取り残って、数年後に騎士に再会したら?
その時、何を言われるのか予測し、それを恐怖した。
「お前は不要な存在だったんだよ」
その一言を告げられるのが怖くて、少女は逃げ出した。
「不要」「目障り」「邪魔」「消えろ」
これ以上傷つかない為に出来ること、それは『騎士の後を追うこと』。
文字通り、世界から消えてしまおう。
しかしここで、少女はふと足を止めた。
友達に最期の言葉を残す、躊躇いがちに、震える声で。
それは少女にとって、とても勇気がいることだった。
「もし、騎士様が戻ってきて、必要としてくださっていたのなら、呼んでください」
きっと、騎士は帰ってこない。
帰ってきたとしても、きっと、自分は必要とされない。
つまりその約束が果たされる可能性は、100%ありえない。
だから、この世界に生を受けることはない。
・・・はずだったのだが。
宝石箱に指輪を丁重に片付ける。
知らず、少女の頬を涙が伝った。
嬉し涙。
拭うのも忘れて、宝石箱を見つめ続ける。
自分を必要としてくれる存在が。
自分を包んでくれる存在が。
自分を愛してくれる存在が。
自分が必要とされている存在を。
自分が包み込めるという存在を。
自分が愛しているという存在を。
・・・見つけた。
その人は今日も城に帰ってくる。
眩しい銀髪、赤き瞳、闇の衣を纏った愛しい人。
少女の存在=彼の存在であり。
何人たりともそれを壊すことができず。
光の騎士に心奪われた、緑の髪の娘。
運命の悪戯かなんなのか。
魔族となった元騎士に、緑の髪の娘は再会する。
少女の最期の願いは成就された。
一階で物音がした。
少女はベッドから弾かれたように飛び起きると、急いで自室から転がり出た。
笑顔のまま、階段を駆け下りる。
外は激しい雨だったのだろう、見慣れた漆黒のマントは濡れていて重そうだ。
「おかえりなさいなのですーっ」
少女はそう叫ぶと全力疾走で駆け寄り、そのまま彼を抱きしめる。
マントが雨で濡れていようが関係ない、ぎゅ、と抱きしめた。
「大好きなのですよー、ずっと一緒に居てください・・・」
愛する人の存在が、自分を変える。
愛する人の為に、自分を変える。
とある少女の物語。
過去からの因縁を打破してくれた最愛の夫ギルザを、今日もアサギは待ち続ける。
いつも一緒、いつでも一緒、これからも一緒、ずっと一緒。
とても、とても、大好きな人。
2004/05
↑昔のHPで見つけたのでちょっと直して乗っけてみました。
おぉぅ、新鮮なのです。
山天候の影響だろうか、雷鳴が聞こえるその城は近寄りがたい。
迷い込もうものならば、重々しい扉を叩こうか迷ってしまうほどの威圧感。
上空では蝙蝠が飛び交い、多少の勇気あるものならば財宝探しに足を踏み入れそうだ。
他からの進入を許さない雰囲気の、その城の中。
一人の緑の髪の少女が、ベッドに転がっていた。
外見とは裏腹に、少女の部屋は非常に可愛らしいもので、赤いソファーにちょこん、と座っている黒ウサギのぬいぐるみが少女を見ている。
色とりどりの花に、観葉植物。
カーテンはピンクのフリフリレース。
外観からは見えない位置にある少女の部屋は、明らかに城の雰囲気を損なっていた。
この巨大な城には、2人しか住んでいなかった。
もちろん、この少女が城の持ち主なわけがなく、少女の愛する人が持ち主なわけで。
これだけ大きいと掃除も大変だろうが、少女は日中嬉しそうに掃除をしていた。
どうやら少女にとって、誰かに仕事を手伝われるくらいなら、自分でやりたいようだ。
というか、城に誰も入れたくないのかもしれない。
掃除を終えて、近所で夕食の買い物をした後、少女は決まってベッドに転がる。
昼寝ではなくて、ベッドの枕元に置いてある宝石箱を開くために転がっているのだ。
深く深呼吸、ぎゅっと瞳を閉じて手を胸の前で組み合わせる。
「開きますよー」
これが日課、一日三回以上。
宝石箱を開くと、中には指輪が二つ入っている。
どちらも宝石の色は緑色だ。
エメラルドとぺリドットだろうか?
途端、少女は初めて見つけた宝物のように顔を輝かせ、指にそっと填める。
その指を見つめる。
光る指輪は何時見ても美しい。
二つとも愛する人から貰ったものだった。
ずっと身に着けておきたいが、失くしたり傷をつけたりでもしたら大変なので、こうして宝石箱の中に保管しているようだ。
部屋の中で、小さな緑のドラゴンが啼いた。
城の持ち主である少女の愛する人は、銀髪が闇に映える魔族だ。
もとは彼は魔族ではなく、人間の騎士だったのだが。
少女は懐かしそうに片方の指輪を見つめた。
話は時を遡る。
緑の髪の少女に心に刺さっていたモノ。
好きな人を癒すことが出来ないということ
好きな人を不幸にするということ
強いては好きな人を作ってはいけないということ
欠陥だらけの存在に嫌気が差していた少女。
なんとか人の役に立とうと考えられる限りの事をしてみた。
・・・恋というのは非常に単純で、また不可解なもので。
この緑の少女は、暫くしてから恋してはならない男に恋をした。
少女の瞳に映ったその男の印象。
他を圧倒する存在感、瞳を奪われた。
深藍色の瞳とゆるやかなウェーブを描く髪。
白い鎧を身に纏った、明らかに身分が高そうな男だった。
声は低くもなく、高くもなく心地良い音程で。
威圧感ある口調と、好戦的な態度、明らかに少女とは人種が違っていた。
正反対なところに惹かれたのか、なんのか、少女は知らず男に興味を持つ。
そこから、少女はその男の自宅へと足を運んだ。
身分が違う、立場が違う、許されない恋だった。
それを自覚しながらも、少女は止めることが出来ずに、何かと言い訳を作って男に会いに行く。
時間はない、いい加減諦めなければいけない。
諦めようと一旦は思った。
少女は直感したのだ、確実にこの人は不幸になる、と。
今までがそうだった、自分の想いが深ければ深いほど、相手を傷つける。
それ以前に、その男が自分などを選ぶはずもないと諦めても居た。
それでも。
僅かな可能性にかけて、最後の手段に出た。
「この恋を、最後にしよう」
少女の心に突き刺さった「モノ」を取り除いたその光の騎士に。
振り払われない限り、捨てられない限り、疎まれない限り。
夢中でついていくことを決意した。
その騎士の存在が、少女の存在でもあり。
その騎士が消えれば、少女もまた消える。
何故ならば少女にとって、騎士が存在しない世界は意味を成さなかった。
少女は薄々感じていた。
騎士が自分の目の前から消えてしまうことを。
それでも、怖くて言い出せなかった。
ぽつり、と友達には言葉を吐いたかもしれない。
「判るのですー、悪い予感だけは当たるのですー・・・」
言葉通り、騎士は忽然と姿を消す。
的中した未来、少女は笑うほかなく。
心を暗黒が多い尽くして、飲み込まれた。
何も言わずに消えた騎士の、幻影を探し続ける。
探したところで会える訳がないと、そう思った。
口に出せなかった自分の思い、言いたくなかった思い。
「多分きっと、不要だったのです」
騎士にとって自分は暇つぶしの相手であった、と。
少女はそう思っていた、ずっと。
自分でなくとも良かったのではないか、と思っていた。
だから、再会したくはなかった。
きっと、不要だと言われるだろうから。
自分に自信がない少女は、そう思うことで逃げ道を作る。
「これでよかったのですー」、と。
過去と同じ逃げ。
少女は怯えていた、この世界に一人取り残って、数年後に騎士に再会したら?
その時、何を言われるのか予測し、それを恐怖した。
「お前は不要な存在だったんだよ」
その一言を告げられるのが怖くて、少女は逃げ出した。
「不要」「目障り」「邪魔」「消えろ」
これ以上傷つかない為に出来ること、それは『騎士の後を追うこと』。
文字通り、世界から消えてしまおう。
しかしここで、少女はふと足を止めた。
友達に最期の言葉を残す、躊躇いがちに、震える声で。
それは少女にとって、とても勇気がいることだった。
「もし、騎士様が戻ってきて、必要としてくださっていたのなら、呼んでください」
きっと、騎士は帰ってこない。
帰ってきたとしても、きっと、自分は必要とされない。
つまりその約束が果たされる可能性は、100%ありえない。
だから、この世界に生を受けることはない。
・・・はずだったのだが。
宝石箱に指輪を丁重に片付ける。
知らず、少女の頬を涙が伝った。
嬉し涙。
拭うのも忘れて、宝石箱を見つめ続ける。
自分を必要としてくれる存在が。
自分を包んでくれる存在が。
自分を愛してくれる存在が。
自分が必要とされている存在を。
自分が包み込めるという存在を。
自分が愛しているという存在を。
・・・見つけた。
その人は今日も城に帰ってくる。
眩しい銀髪、赤き瞳、闇の衣を纏った愛しい人。
少女の存在=彼の存在であり。
何人たりともそれを壊すことができず。
光の騎士に心奪われた、緑の髪の娘。
運命の悪戯かなんなのか。
魔族となった元騎士に、緑の髪の娘は再会する。
少女の最期の願いは成就された。
一階で物音がした。
少女はベッドから弾かれたように飛び起きると、急いで自室から転がり出た。
笑顔のまま、階段を駆け下りる。
外は激しい雨だったのだろう、見慣れた漆黒のマントは濡れていて重そうだ。
「おかえりなさいなのですーっ」
少女はそう叫ぶと全力疾走で駆け寄り、そのまま彼を抱きしめる。
マントが雨で濡れていようが関係ない、ぎゅ、と抱きしめた。
「大好きなのですよー、ずっと一緒に居てください・・・」
愛する人の存在が、自分を変える。
愛する人の為に、自分を変える。
とある少女の物語。
過去からの因縁を打破してくれた最愛の夫ギルザを、今日もアサギは待ち続ける。
いつも一緒、いつでも一緒、これからも一緒、ずっと一緒。
とても、とても、大好きな人。
2004/05
↑昔のHPで見つけたのでちょっと直して乗っけてみました。
おぉぅ、新鮮なのです。
PR
この記事にコメントする
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
最新コメント
[10/05 たまこ]
[08/11 たまこ]
[08/11 たまこ]
[05/06 たまこ]
[01/24 たまこ]
[01/07 たまこ]
[12/26 たまこ]
[11/19 たまこ]
[08/18 たまこ]
[07/22 たまこ]
カテゴリー
フリーエリア
フリーエリア
リンク
最新トラックバック
プロフィール
HN:
把 多摩子
性別:
女性
ブログ内検索
カウンター