別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
×
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沸いて出てくる仲間達にトビィは心底呆れ返った、数人だと思っていたのだが結構な人数である。
ざっと目を通す、年齢も様々だ、どんな集まりなのか。
不意に視線が通り過ぎて止まる、先程倒した吸血鬼に似た男が、憮然とこちらを見ていた。
ざっと目を通す、年齢も様々だ、どんな集まりなのか。
不意に視線が通り過ぎて止まる、先程倒した吸血鬼に似た男が、憮然とこちらを見ていた。
「アサギ、あれは?」
トビィの小声にアサギが我に返った、ミノルの事を言っているのだ。
慌ててアサギは殺気を放ち始めたトビィを押し留める、あれはミノルだ、先程の吸血鬼ではない。
「あの人が本物なの。あの人に化けていたのですっ」
「成程? 知り合いに化けて油断させていたというわけか・・・」
若干違うが、まぁそんなところだろう。
トビィはすっ、と殺気を消すとわらわらと近寄ってくる仲間達に目を向ける。
「で。何故こんな大人数で旅を?」
「気がついたらこんな人数になっていたのです」
勇者が六人、仲間が九人、合計十五人。
あまり大人数で行動する事が好きではないトビィ、顔を顰めて面倒なのでこのままアサギだけつれて逃亡すべきか本気で悩んだ。
突破出来ると判断するが、アサギに何か言われそうだったので諦める。
肩を窄め観念して一言、かなりの妥協である。
「あまり強そうな奴がいない、な。アサギが心配だ、同行させてもらう」
さらり、と言い放つとすたすたと周りを無視してそのまま洞窟を進む。
呆気に取られ口を開いたまま立ち尽くす仲間達だが、先頭に居たマダーニに呼び止められた。
「お名前は?」
「トビィ。よろしく」
「私はマダーニ。よろしくね。顔は良いけど性格は良くなさそうね」
「初対面でそう言い放つ貴女ほど、悪くはないつもりですが」
立ち止まってトビィとマダーニはにっこりと爽やかに笑いあった、腹の中は全く持って黒いものが蠢いており爽やかではないが。
ライアンだけは軽やかに歓迎の笑みを浮かべて、握手を求める。
「オレはライアン。よろしく。見たところ剣士だろうか、オレも一応そうだ」
「あんたが一番まともそうだな、よかった」
会話を聞きつつ名前を確認するアサギ、そうか、この人の名前はトビィというらしい。
そう、名前を聞いていなかった。
でも何故だろう、トビィはアサギの名前を最初から知っていた。
アサギは腕の中で首を傾げる、そういえば、ずっと名前を呼ばれてた。
何故、知っていたんだろう。
何故、呼んでくれていたのだろう。
「強そうな奴がいないとは、心外ですね。トビィ殿がどれ程の腕前か存じませんが」
青筋引くつかせながら歩み寄るアーサー、彼は賢者だ、滅多に受け取る事が出来る称号ではない。
コイツが一番厄介そうだ、と深い溜息を吐くトビィ。
二人の間で火花が激突する、その中心にアリナがひょっこり顔を出した。
「ボクはアリナ。よろしくー。一度手合わせ願いたいな、腕に自信あるみたいだし」
「女と手合わせは苦手なんだ」
「あぁ、ボクのことは男扱いして貰ったほうが助かるかな。色々と」
言うなりアサギの頬に口付けるアリナ、女だからと気を抜いていたトビィを見上げて挑戦的に笑う。
こういうこと、と唇を小さく動かし、アリナはアサギの髪を撫でる。
喉の奥で笑うと不敵に笑い返したトビィは、そっとアリナの手を避けるように離れていく。
これまた、敵が多いことで。
小さく呟くトビィだが、特に敵視するつもりはない、負ける気がしないからだ。
「ジェノヴァに行くんだろ? 早くしろ」
洞窟の出口手前で踵を返し、軽く振り返っての一言。
行くぞーと楽しそうに叫んだライアンに、渋々同意する仲間達。
物凄く気に喰わない男が仲間に加わった・・・と、一部頭を抱える。
けれども、アサギは嬉しかった。
とても強そうだから、そして、共に居なければいけない気がするから。
共に、いなければいけない。
どうしても、そんな気がして仕方がない。
それはともかく、一向に下ろしてくれないトビィに、アサギは顔を赤らめてもそもそと動く。
いい加減下ろして貰えないだろうか、流石に恥ずかしい。
「あの、そろそろ自分で歩きます」
「無理はしないほうが良い。もう少し大人しくしてて」
「はぁ・・・い」
穏やかに微笑む、有無を言わせない態度にアサギは恐縮して返事をした。
全員が洞窟を出たところで、馬の体調管理をしつつ馬に乗り込む。
再び馬車の中での勇者達の魔法教育が始まった。
アサギの隣を離れようとしないトビィを、嫉妬の視線が幾つも襲うのだが、本人はお構いなしである。
アーサーとアリナが馬車操作に辺り、ライアンが軽い伸びをして馬車の中へと戻ってきた。
同じ剣士として気になるのか、トビィの隣に座り込むと、傍らの剣を指差す。
「その剣、凄いな。見せてもらっても良いだろうか」
「あぁ、どうぞ」
トビィはライアンに剣を手渡す、有難う、と笑みを浮かべてライアンは繁々とそれを見つめた。
見た時から興味をそそられたらしく、鞘から抜いて、瞳を細めて真剣に眺めた。
「これは・・・一体」
「水竜の一本角から出来ている、世界で一本しか存在しない剣だ。ブリュンヒルデ、という」
「水竜!? それで不可思議なモノを感じたのか・・・。ありがとう、一度手合わせ願いたいね」
「ライアンの剣は、何処かの王宮のものだな。その紋章は・・・」
「あぁ、元ジョリロシャの騎士だったんだ。剣だけは脱退した今も愛用しているよ。慣れているからな」
剣士同士の会話を楽しみつつ、ライアンはトビィに耳打ちした。
本人には聞こえないように、そっと。
「一つ訊きたい、あの剣はどう思う?」
「あの剣?」
ライアンの視線を追う、そこにはトモハルがブジャタと魔法の勉強中だ。
トモハルの傍らの剣を見つめる、瞳を細めて、ライアンに耳打ちを返す。
「別に? あれが何か」
「・・・あれは伝説の勇者の剣・セントガーディアン、らしいんだが」
「あれが? まさか。何も感じない」
「・・・だよな」
「というか、待て。何故勇者の剣が?」
「知らないのか、この子達は勇者なんだ」
「・・・アサギも?」
「そう。あの子が一番剣技にも魔法にも飛びぬけた才能を発揮している。アサギも4星の勇者の片割れだ」
絶句するトビィ、記憶の中のアサギと見比べた。
どちらかというと、勇者と言うよりはどこぞの貴族の娘にも思えるような雰囲気だったが・・・。
勇者、だって?
唖然とアサギを見つめる、勇者だとしたら尚更傍で護らなければいけない。
それで旅をしていたのか・・・納得できた。
「ともかく、神聖城クリストバルであれを受け取った。が、どうにも気に入らないんだよ」
「偽者、か」
「有り得るな。オレ1人の感覚なら間違いかと思っていたが、トビィ君もそう思うのなら・・・」
「何れにせよ、オレは伝説の剣について詳しくはないが。あれではそこらに売っている高値の張る剣と大差ない」
二人してトモハルの剣を再度見つめた、そんな様子に気がつかないままトモハルは懸命に魔導書に目を通している。
洞窟を出てジェノヴァまでは約三日、そろそろ夕刻である。
暗闇が辺りを覆い隠すが、松明で辺りを照らし進んだ。
どうも、辿り着きたい場所があるらしい。
「身体を清める温泉場があるんだよ」
温泉、と聞いて勇者達は盛大に喜んだ。
月が照らす森の中を馬車が駆け抜ける、やがて立ち上る煙が見え始めた。
硫黄の香り、嬉々として馬車から顔を覗かせる勇者達。
着いた先は旅人用に設備されているらしく、脱衣所もあれば焚き火を起こした形跡もあるキャンプ場の様な雰囲気だった。
伸びをして馬車から降り、一斉に伸びをする。
急いで夕食の支度に取り掛かる、薪を広い集め、火を起こしながら街まであと数日の為食材をほとんど使い切る勢いで、鍋に押し込む。
簡易な畑もあり、トマトとズッキーニが元気に熟れていた。
豪快にニンニクを使って、トマトとズッキーニ、干し肉のニンニク風味パスタをライアンが豪快に作る。
見ているだけで涎が垂れそうだ、勇者達は挙ってそれを平らげた。
食後は紅茶、こうしていると本当にキャンプに来たようである。
女性陣が温泉に浸かっている間、男性陣はライアンを筆頭に今後の作戦会議である。
「三日後ジェノヴァ到着予定。予定通り長旅の支度をし、ピョートルへアサギの武器を取りに出向く。滞在期間は到着時刻にも因るが大体一日、今のうちに皆で買い物リストを作りたい」
ライアンとアーサー、それにブジャタで薬草や食材の会話が始まった。
地図を広げ、途中に立ち寄る街を調べる。
それまでの期間を検討し、買い揃えるつもりだ。
不意にトビィが剣を引き抜いた、次いでアーサーとライアンが顔を上げる。
「構えろ。来る」
唖然としている勇者達に吐き捨てるように投げかけたトビィ、温泉の方向を見やり、そちらには存在を確認できなかった様で安堵した。
森の中から雄たけびも上げずに、小柄な二本足の生物が突進してきた。
「こ、今度はなんだよっ」
慌てて剣を構える勇者達、人型の魔物に悲鳴を上げる。
「ゴブリンですね、狡賢い岩山の洞窟などに住まう種族です。夜行性です。戦い易いと思いますよ」
淡々と説明するクラフト、闇の中で光る黄色い瞳の、自分達の腰ほどの背丈のゴブリンを見つめる勇者達。
ゴブリンといえば、RPGで下級の敵である。
勇者達は多少安堵した、暗くて良く見えないが、とりあえず黄色い瞳を狙えば良いだろう。
「魔法も使用してきません、魔法の耐久性もありません。ただ、集団で動く可能性があります」
言うが早いか黄色い瞳が多々増え始める、流石に闇夜にこれだけの数が押し寄せてくると恐怖以外の何者でもなく。
案の定悲鳴を上げる勇者達。
傍らのライアンにトビィは、怒気を含んで訊ねた。
「・・・本当に勇者なのか?」
「未だ戦闘に不慣れだ、守護しながら憶えさせる予定なんだよ。回数もこれで4度目だ」
舌打ちしてトビィは先制攻撃に出た、来るのを待つのは苦手だ、素早く剣を振ると数匹を吹き飛ばす。
勇者達の隣に1人ずつ立つ、極力援護に回り戦闘に慣れさせるつもりだ。
甘い、な。
トビィは面倒だったので剣を振るい続ける、勇者育成に構っていられない。
この道を突破されなければ、温泉へは行くことは出来ない、ここさえ守護すればアサギは安全だ。
闇夜に、冷気を漂わせる剣が白く発光しながら浮かび上がった。
素早く飛ぶように動く剣先、感嘆の溜息を思わず漏らしてしまう仲間達。
ここまでの剣技とは驚きだ、ライアンも斬りかかりながら見惚れてしまった。
剣の師が相当な腕前だろう、達人クラスといっても過言ではなさそうだ。
火の呪文で応戦し、辺りを明るくしながら戦い続ける。
思いの他沸いて出てくるゴブリンに、トビィは顔を顰めた。
幾らなんでも数が多すぎやしないだろうか、別に疲労もないし負ける気もないが妙だと直感が働いた。
「気に喰わない」
小さく零す、まるで力量を遠くで誰かが測っているようだ。
トビィは視線をゴブリンから他へと移した、何か、誰か、他に気配は?
森へは侵入しない程度で切り込んでいくトビィ、不意に背後からアサギの声が聞こえる。
「加勢しますっ」
温泉から戻ってきたらしく、トビィの隣まで駆け寄ってきてアサギは剣を軽やかに振るった。
確かにまだぎこちない、が、磨けば相当のものになるアサギの剣技、軽く笑うとトビィはアサギの肩を引き寄せる。
「無理はするな、だがオレの後についておいで」
「はいっ」
「良い返事だ」
成程、ただ護ってもらうだけではなさそうな子だ。
アサギを気遣いながら、トビィは剣を舞わせた、徹底的に援護に回る。
「敵の動きを読めば、自分がどう剣先を変えればよいかが解る。動きの法則を見破れ」
「はいっ」
「背後に気をつけろ、正面以上に気を許すな。二人居るならば背を預けるのが一番だ」
「はいっ」
「魔法は発動に時間を要する、剣に頼れ、魔法は万が一だ。間合いを見極めて唱えろ」
「はいっ」
アサギにゴブリンを任せつつ、トビィは様子を伺った。
不意に木の上に妙な気配を感じ、月明かりに照らされていた『モノ』を見つめる。
巨大な鳥が一羽、木の天辺に停まっていた、真紅の瞳をぎょろつかせ、じっとこちらを見つめている。
距離が遠い、弓矢か魔法の射程に入るか入らないか。
見渡してトビィはミシアが手にしていた弓矢に着目する、一か八かやってみる。
「おい」
「え?」
急に呼ばれて身体を硬直するミシア、顎で指図され木の上の鳥を視線に入れる。
「あれに弓を放て。届くか?」
「無理だと思います。けれど、一度やってみます」
「そうしてくれ」
緊張した面持ちでミシアはゆっくりと弓先を鳥へと合わせる、精一杯力を込めて。
震える腕、あの射程は狙ったことがない。
ヒュン、と小気味良い風を射る音、弓矢は高く高く木の上へと上っていく。
が、やはり標的には到達出来なかった、ミシアは悔しそうに弓矢を再度放つ。
二本目の弓矢も届かない、トビィは軽く溜息を吐きつつ鳥を睨み付けた。
鳥は。
一際耳障りな啼き声を発すると、そのまま翼を広げて浮かび上がる。
チチチチチ、と雀の様な啼き声だがもっと低く、可愛くない声だ。
「アサギ、あれまで魔法は届くか?」
「やってみますっ」
翼だけが妙に大きな奇怪な鳥だった、血走った真紅の瞳、月夜に浮かぶその姿は黄金。
蛇のように長い尻尾がついており、羽音が亡者の嘆きを連想させる。
「天より来たれ、我の手中に。その裁きの雷で、我の敵を貫きたまえっ。雷撃っ」
唱える事が出来る魔法で、最も遠くまで届きそうなものを選択して唱えたアサギ。
一筋の雷が、その鳥を貫く。
明るい笑顔を見せるアサギだが、ブジャタが舌打ちすると叫んだ。
「アレには雷系統が効きませんぞっ! タモトスズメ、他の魔物を呼び寄せる魔物ですじゃ!」
チチチチチチチ・・・啼き喚くタモトスズメ、ゴブリンは増えていく。
そういうことかっ! 舌打ちしてトビィは闇から湧き出るようなゴブリンに暇なく攻撃を与える。
森の番人、監視役といったところだろうか? あの鳥がここへゴブリンを呼び込んでいるのだろう。
「こうなると、クレシダ達が必要だな・・・」
ゴブリンの研ぎ澄まされた爪の攻撃を必死に受け止めていたアサギを抱えると、トビィは一旦後方へ下がった。
魔法でゴブリンを蹴散らし、なんとかあのタモトスズメの声を止めたほうが早そうだ。
魔法を得意とする仲間が横一列に並ぶ、迫り来るゴブリンを前に、一斉に強力な魔法を発動した。
アーサー、マダーニ、ムーン、ブジャタを筆頭に、勇者達も確実に発動する魔法を唱える。
トビィはミシアから弓を強引に借りると、一人タモトスズメ目掛けて矢を放った。
ミシアの力では無理でも、トビィの力ならば届くかも知れなかったのだ。
矢はタモトスズメを射抜きはしなかったが、それでも羽を翳めた。
驚いたらしく、羽を不器用にバタつかせて落下してくる。
弓矢をミシアに着き返すと、トビィは落下との時間差を計算し、岩に駆け上りそこから跳躍した。
「悪く思うな」
喉の奥で笑うと、計算通り落下してきたタモトスズメをそのまま剣で突き刺した。
小さい胴体を狙って確実に剣が捕らえる、チチチチチ・・・別の場所で遠ざかっていくもう一羽のタモトスズメ。
その声と同様に生き残りのゴブリンは戦意を喪失して、森の中へと慌てふためき戻っていった。
軽々と地面に着地し、突き刺さっていたタモトスズメを振り払うトビィ。
「想像以上強いな、トビィ君」
「これくらいは、当然」
ライアンが拍手し近寄ってきた、速度が飛びぬけて速い、そして状況判断が得意そうだ。
「何処かにもう一羽居た様だな、最後に啼いた」
「敵意を喪失したならばそれで良いさ。それにしても、ここも結界が崩れているようだな、一般人はとても先へ進めないだろう」
「いや、正確には崩されていないかもしれない、ここから先へはゴブリンが来ていないから」
言うなりトビィは木の棒を拾い上げると、地面に線を引いた。
攻防戦を繰り広げていた位置、阻まれるように近づいてきていないのだ。
成程ね、と大きく頷くライアン。
簡素な結界を念の為四方に張り巡らせると、男性陣が万が一に備えて交代で温泉に入り、その場で睡眠を取る。
一応交代で見張りをつけたが、朝まで何も来襲しなかった。
夜が、明ける。
アサギは早朝、スカートに入っていた小さな手帳を取り出した。
ペンが生憎なかったので、爪で印をつけている。
今日は6月29日のはずだ。
手帳に気がついた勇者達が代わる代わる覗き込み、六人同時にあることに気がつく。
「夏休みっ! 夏休みまでには帰らないとっ」
そう、このままいくと、夏休みである。
時間の流れが同じとは考えにくい・・・というか、きっと地球で時が止まっているだろうから大丈夫、と乾いた笑い声を出す勇者達。
「これで時が止まってなかったら、俺達行方不明の捜索願出されてるよ」
笑い転げて語るトモハル、だが地球は現実、そうなっていた。
・・・ということを、勇者達は知らない、知るはずもなかった。
地球日付、7月1日。
アサギの手帳に爪の印が増えていく、明るい早朝、遠くまで透き通って見える。
青空が広がり、真っ白な雲がふんわりと浮かんでいる快晴。
「お、城が観えたぞー」
馬車を操作していたライアンが嬉々として叫ぶ、こぞって歓声を上げると勇者達が馬車から顔を出した。
「すごーい、お城だお城っ」
「きゃー、おっきいいーっ」
アサギとユキが興奮気味に手を叩いて喜んだ、他の勇者達も感嘆の声を漏らしている。
遠くからでもはっきりと解る巨大さ、その威圧感にただただ声を張り上げる。
目前に迫る最初の城下町・ジェノヴァ。
「大きい公園が中心にあって、そこが憩いの場だな。飲食店が盛んで公園を中心にぐるりと店が立ち並ぶ。港街でも有るから、旅人も多く滞在する。自分の店を持ちたい人々がこぞって集まる場所だ。王宮も安定しており、王も好かれている、理想的な場所だな」
「そうね、世界一盛んかも知れないわね。劇場に闘技場、遊技場・・・面白いわよ」
胸が躍る、勇者達は魔道書を放り出して、馬車から外を見つめていた。
トビィの小声にアサギが我に返った、ミノルの事を言っているのだ。
慌ててアサギは殺気を放ち始めたトビィを押し留める、あれはミノルだ、先程の吸血鬼ではない。
「あの人が本物なの。あの人に化けていたのですっ」
「成程? 知り合いに化けて油断させていたというわけか・・・」
若干違うが、まぁそんなところだろう。
トビィはすっ、と殺気を消すとわらわらと近寄ってくる仲間達に目を向ける。
「で。何故こんな大人数で旅を?」
「気がついたらこんな人数になっていたのです」
勇者が六人、仲間が九人、合計十五人。
あまり大人数で行動する事が好きではないトビィ、顔を顰めて面倒なのでこのままアサギだけつれて逃亡すべきか本気で悩んだ。
突破出来ると判断するが、アサギに何か言われそうだったので諦める。
肩を窄め観念して一言、かなりの妥協である。
「あまり強そうな奴がいない、な。アサギが心配だ、同行させてもらう」
さらり、と言い放つとすたすたと周りを無視してそのまま洞窟を進む。
呆気に取られ口を開いたまま立ち尽くす仲間達だが、先頭に居たマダーニに呼び止められた。
「お名前は?」
「トビィ。よろしく」
「私はマダーニ。よろしくね。顔は良いけど性格は良くなさそうね」
「初対面でそう言い放つ貴女ほど、悪くはないつもりですが」
立ち止まってトビィとマダーニはにっこりと爽やかに笑いあった、腹の中は全く持って黒いものが蠢いており爽やかではないが。
ライアンだけは軽やかに歓迎の笑みを浮かべて、握手を求める。
「オレはライアン。よろしく。見たところ剣士だろうか、オレも一応そうだ」
「あんたが一番まともそうだな、よかった」
会話を聞きつつ名前を確認するアサギ、そうか、この人の名前はトビィというらしい。
そう、名前を聞いていなかった。
でも何故だろう、トビィはアサギの名前を最初から知っていた。
アサギは腕の中で首を傾げる、そういえば、ずっと名前を呼ばれてた。
何故、知っていたんだろう。
何故、呼んでくれていたのだろう。
「強そうな奴がいないとは、心外ですね。トビィ殿がどれ程の腕前か存じませんが」
青筋引くつかせながら歩み寄るアーサー、彼は賢者だ、滅多に受け取る事が出来る称号ではない。
コイツが一番厄介そうだ、と深い溜息を吐くトビィ。
二人の間で火花が激突する、その中心にアリナがひょっこり顔を出した。
「ボクはアリナ。よろしくー。一度手合わせ願いたいな、腕に自信あるみたいだし」
「女と手合わせは苦手なんだ」
「あぁ、ボクのことは男扱いして貰ったほうが助かるかな。色々と」
言うなりアサギの頬に口付けるアリナ、女だからと気を抜いていたトビィを見上げて挑戦的に笑う。
こういうこと、と唇を小さく動かし、アリナはアサギの髪を撫でる。
喉の奥で笑うと不敵に笑い返したトビィは、そっとアリナの手を避けるように離れていく。
これまた、敵が多いことで。
小さく呟くトビィだが、特に敵視するつもりはない、負ける気がしないからだ。
「ジェノヴァに行くんだろ? 早くしろ」
洞窟の出口手前で踵を返し、軽く振り返っての一言。
行くぞーと楽しそうに叫んだライアンに、渋々同意する仲間達。
物凄く気に喰わない男が仲間に加わった・・・と、一部頭を抱える。
けれども、アサギは嬉しかった。
とても強そうだから、そして、共に居なければいけない気がするから。
共に、いなければいけない。
どうしても、そんな気がして仕方がない。
それはともかく、一向に下ろしてくれないトビィに、アサギは顔を赤らめてもそもそと動く。
いい加減下ろして貰えないだろうか、流石に恥ずかしい。
「あの、そろそろ自分で歩きます」
「無理はしないほうが良い。もう少し大人しくしてて」
「はぁ・・・い」
穏やかに微笑む、有無を言わせない態度にアサギは恐縮して返事をした。
全員が洞窟を出たところで、馬の体調管理をしつつ馬に乗り込む。
再び馬車の中での勇者達の魔法教育が始まった。
アサギの隣を離れようとしないトビィを、嫉妬の視線が幾つも襲うのだが、本人はお構いなしである。
アーサーとアリナが馬車操作に辺り、ライアンが軽い伸びをして馬車の中へと戻ってきた。
同じ剣士として気になるのか、トビィの隣に座り込むと、傍らの剣を指差す。
「その剣、凄いな。見せてもらっても良いだろうか」
「あぁ、どうぞ」
トビィはライアンに剣を手渡す、有難う、と笑みを浮かべてライアンは繁々とそれを見つめた。
見た時から興味をそそられたらしく、鞘から抜いて、瞳を細めて真剣に眺めた。
「これは・・・一体」
「水竜の一本角から出来ている、世界で一本しか存在しない剣だ。ブリュンヒルデ、という」
「水竜!? それで不可思議なモノを感じたのか・・・。ありがとう、一度手合わせ願いたいね」
「ライアンの剣は、何処かの王宮のものだな。その紋章は・・・」
「あぁ、元ジョリロシャの騎士だったんだ。剣だけは脱退した今も愛用しているよ。慣れているからな」
剣士同士の会話を楽しみつつ、ライアンはトビィに耳打ちした。
本人には聞こえないように、そっと。
「一つ訊きたい、あの剣はどう思う?」
「あの剣?」
ライアンの視線を追う、そこにはトモハルがブジャタと魔法の勉強中だ。
トモハルの傍らの剣を見つめる、瞳を細めて、ライアンに耳打ちを返す。
「別に? あれが何か」
「・・・あれは伝説の勇者の剣・セントガーディアン、らしいんだが」
「あれが? まさか。何も感じない」
「・・・だよな」
「というか、待て。何故勇者の剣が?」
「知らないのか、この子達は勇者なんだ」
「・・・アサギも?」
「そう。あの子が一番剣技にも魔法にも飛びぬけた才能を発揮している。アサギも4星の勇者の片割れだ」
絶句するトビィ、記憶の中のアサギと見比べた。
どちらかというと、勇者と言うよりはどこぞの貴族の娘にも思えるような雰囲気だったが・・・。
勇者、だって?
唖然とアサギを見つめる、勇者だとしたら尚更傍で護らなければいけない。
それで旅をしていたのか・・・納得できた。
「ともかく、神聖城クリストバルであれを受け取った。が、どうにも気に入らないんだよ」
「偽者、か」
「有り得るな。オレ1人の感覚なら間違いかと思っていたが、トビィ君もそう思うのなら・・・」
「何れにせよ、オレは伝説の剣について詳しくはないが。あれではそこらに売っている高値の張る剣と大差ない」
二人してトモハルの剣を再度見つめた、そんな様子に気がつかないままトモハルは懸命に魔導書に目を通している。
洞窟を出てジェノヴァまでは約三日、そろそろ夕刻である。
暗闇が辺りを覆い隠すが、松明で辺りを照らし進んだ。
どうも、辿り着きたい場所があるらしい。
「身体を清める温泉場があるんだよ」
温泉、と聞いて勇者達は盛大に喜んだ。
月が照らす森の中を馬車が駆け抜ける、やがて立ち上る煙が見え始めた。
硫黄の香り、嬉々として馬車から顔を覗かせる勇者達。
着いた先は旅人用に設備されているらしく、脱衣所もあれば焚き火を起こした形跡もあるキャンプ場の様な雰囲気だった。
伸びをして馬車から降り、一斉に伸びをする。
急いで夕食の支度に取り掛かる、薪を広い集め、火を起こしながら街まであと数日の為食材をほとんど使い切る勢いで、鍋に押し込む。
簡易な畑もあり、トマトとズッキーニが元気に熟れていた。
豪快にニンニクを使って、トマトとズッキーニ、干し肉のニンニク風味パスタをライアンが豪快に作る。
見ているだけで涎が垂れそうだ、勇者達は挙ってそれを平らげた。
食後は紅茶、こうしていると本当にキャンプに来たようである。
女性陣が温泉に浸かっている間、男性陣はライアンを筆頭に今後の作戦会議である。
「三日後ジェノヴァ到着予定。予定通り長旅の支度をし、ピョートルへアサギの武器を取りに出向く。滞在期間は到着時刻にも因るが大体一日、今のうちに皆で買い物リストを作りたい」
ライアンとアーサー、それにブジャタで薬草や食材の会話が始まった。
地図を広げ、途中に立ち寄る街を調べる。
それまでの期間を検討し、買い揃えるつもりだ。
不意にトビィが剣を引き抜いた、次いでアーサーとライアンが顔を上げる。
「構えろ。来る」
唖然としている勇者達に吐き捨てるように投げかけたトビィ、温泉の方向を見やり、そちらには存在を確認できなかった様で安堵した。
森の中から雄たけびも上げずに、小柄な二本足の生物が突進してきた。
「こ、今度はなんだよっ」
慌てて剣を構える勇者達、人型の魔物に悲鳴を上げる。
「ゴブリンですね、狡賢い岩山の洞窟などに住まう種族です。夜行性です。戦い易いと思いますよ」
淡々と説明するクラフト、闇の中で光る黄色い瞳の、自分達の腰ほどの背丈のゴブリンを見つめる勇者達。
ゴブリンといえば、RPGで下級の敵である。
勇者達は多少安堵した、暗くて良く見えないが、とりあえず黄色い瞳を狙えば良いだろう。
「魔法も使用してきません、魔法の耐久性もありません。ただ、集団で動く可能性があります」
言うが早いか黄色い瞳が多々増え始める、流石に闇夜にこれだけの数が押し寄せてくると恐怖以外の何者でもなく。
案の定悲鳴を上げる勇者達。
傍らのライアンにトビィは、怒気を含んで訊ねた。
「・・・本当に勇者なのか?」
「未だ戦闘に不慣れだ、守護しながら憶えさせる予定なんだよ。回数もこれで4度目だ」
舌打ちしてトビィは先制攻撃に出た、来るのを待つのは苦手だ、素早く剣を振ると数匹を吹き飛ばす。
勇者達の隣に1人ずつ立つ、極力援護に回り戦闘に慣れさせるつもりだ。
甘い、な。
トビィは面倒だったので剣を振るい続ける、勇者育成に構っていられない。
この道を突破されなければ、温泉へは行くことは出来ない、ここさえ守護すればアサギは安全だ。
闇夜に、冷気を漂わせる剣が白く発光しながら浮かび上がった。
素早く飛ぶように動く剣先、感嘆の溜息を思わず漏らしてしまう仲間達。
ここまでの剣技とは驚きだ、ライアンも斬りかかりながら見惚れてしまった。
剣の師が相当な腕前だろう、達人クラスといっても過言ではなさそうだ。
火の呪文で応戦し、辺りを明るくしながら戦い続ける。
思いの他沸いて出てくるゴブリンに、トビィは顔を顰めた。
幾らなんでも数が多すぎやしないだろうか、別に疲労もないし負ける気もないが妙だと直感が働いた。
「気に喰わない」
小さく零す、まるで力量を遠くで誰かが測っているようだ。
トビィは視線をゴブリンから他へと移した、何か、誰か、他に気配は?
森へは侵入しない程度で切り込んでいくトビィ、不意に背後からアサギの声が聞こえる。
「加勢しますっ」
温泉から戻ってきたらしく、トビィの隣まで駆け寄ってきてアサギは剣を軽やかに振るった。
確かにまだぎこちない、が、磨けば相当のものになるアサギの剣技、軽く笑うとトビィはアサギの肩を引き寄せる。
「無理はするな、だがオレの後についておいで」
「はいっ」
「良い返事だ」
成程、ただ護ってもらうだけではなさそうな子だ。
アサギを気遣いながら、トビィは剣を舞わせた、徹底的に援護に回る。
「敵の動きを読めば、自分がどう剣先を変えればよいかが解る。動きの法則を見破れ」
「はいっ」
「背後に気をつけろ、正面以上に気を許すな。二人居るならば背を預けるのが一番だ」
「はいっ」
「魔法は発動に時間を要する、剣に頼れ、魔法は万が一だ。間合いを見極めて唱えろ」
「はいっ」
アサギにゴブリンを任せつつ、トビィは様子を伺った。
不意に木の上に妙な気配を感じ、月明かりに照らされていた『モノ』を見つめる。
巨大な鳥が一羽、木の天辺に停まっていた、真紅の瞳をぎょろつかせ、じっとこちらを見つめている。
距離が遠い、弓矢か魔法の射程に入るか入らないか。
見渡してトビィはミシアが手にしていた弓矢に着目する、一か八かやってみる。
「おい」
「え?」
急に呼ばれて身体を硬直するミシア、顎で指図され木の上の鳥を視線に入れる。
「あれに弓を放て。届くか?」
「無理だと思います。けれど、一度やってみます」
「そうしてくれ」
緊張した面持ちでミシアはゆっくりと弓先を鳥へと合わせる、精一杯力を込めて。
震える腕、あの射程は狙ったことがない。
ヒュン、と小気味良い風を射る音、弓矢は高く高く木の上へと上っていく。
が、やはり標的には到達出来なかった、ミシアは悔しそうに弓矢を再度放つ。
二本目の弓矢も届かない、トビィは軽く溜息を吐きつつ鳥を睨み付けた。
鳥は。
一際耳障りな啼き声を発すると、そのまま翼を広げて浮かび上がる。
チチチチチ、と雀の様な啼き声だがもっと低く、可愛くない声だ。
「アサギ、あれまで魔法は届くか?」
「やってみますっ」
翼だけが妙に大きな奇怪な鳥だった、血走った真紅の瞳、月夜に浮かぶその姿は黄金。
蛇のように長い尻尾がついており、羽音が亡者の嘆きを連想させる。
「天より来たれ、我の手中に。その裁きの雷で、我の敵を貫きたまえっ。雷撃っ」
唱える事が出来る魔法で、最も遠くまで届きそうなものを選択して唱えたアサギ。
一筋の雷が、その鳥を貫く。
明るい笑顔を見せるアサギだが、ブジャタが舌打ちすると叫んだ。
「アレには雷系統が効きませんぞっ! タモトスズメ、他の魔物を呼び寄せる魔物ですじゃ!」
チチチチチチチ・・・啼き喚くタモトスズメ、ゴブリンは増えていく。
そういうことかっ! 舌打ちしてトビィは闇から湧き出るようなゴブリンに暇なく攻撃を与える。
森の番人、監視役といったところだろうか? あの鳥がここへゴブリンを呼び込んでいるのだろう。
「こうなると、クレシダ達が必要だな・・・」
ゴブリンの研ぎ澄まされた爪の攻撃を必死に受け止めていたアサギを抱えると、トビィは一旦後方へ下がった。
魔法でゴブリンを蹴散らし、なんとかあのタモトスズメの声を止めたほうが早そうだ。
魔法を得意とする仲間が横一列に並ぶ、迫り来るゴブリンを前に、一斉に強力な魔法を発動した。
アーサー、マダーニ、ムーン、ブジャタを筆頭に、勇者達も確実に発動する魔法を唱える。
トビィはミシアから弓を強引に借りると、一人タモトスズメ目掛けて矢を放った。
ミシアの力では無理でも、トビィの力ならば届くかも知れなかったのだ。
矢はタモトスズメを射抜きはしなかったが、それでも羽を翳めた。
驚いたらしく、羽を不器用にバタつかせて落下してくる。
弓矢をミシアに着き返すと、トビィは落下との時間差を計算し、岩に駆け上りそこから跳躍した。
「悪く思うな」
喉の奥で笑うと、計算通り落下してきたタモトスズメをそのまま剣で突き刺した。
小さい胴体を狙って確実に剣が捕らえる、チチチチチ・・・別の場所で遠ざかっていくもう一羽のタモトスズメ。
その声と同様に生き残りのゴブリンは戦意を喪失して、森の中へと慌てふためき戻っていった。
軽々と地面に着地し、突き刺さっていたタモトスズメを振り払うトビィ。
「想像以上強いな、トビィ君」
「これくらいは、当然」
ライアンが拍手し近寄ってきた、速度が飛びぬけて速い、そして状況判断が得意そうだ。
「何処かにもう一羽居た様だな、最後に啼いた」
「敵意を喪失したならばそれで良いさ。それにしても、ここも結界が崩れているようだな、一般人はとても先へ進めないだろう」
「いや、正確には崩されていないかもしれない、ここから先へはゴブリンが来ていないから」
言うなりトビィは木の棒を拾い上げると、地面に線を引いた。
攻防戦を繰り広げていた位置、阻まれるように近づいてきていないのだ。
成程ね、と大きく頷くライアン。
簡素な結界を念の為四方に張り巡らせると、男性陣が万が一に備えて交代で温泉に入り、その場で睡眠を取る。
一応交代で見張りをつけたが、朝まで何も来襲しなかった。
夜が、明ける。
アサギは早朝、スカートに入っていた小さな手帳を取り出した。
ペンが生憎なかったので、爪で印をつけている。
今日は6月29日のはずだ。
手帳に気がついた勇者達が代わる代わる覗き込み、六人同時にあることに気がつく。
「夏休みっ! 夏休みまでには帰らないとっ」
そう、このままいくと、夏休みである。
時間の流れが同じとは考えにくい・・・というか、きっと地球で時が止まっているだろうから大丈夫、と乾いた笑い声を出す勇者達。
「これで時が止まってなかったら、俺達行方不明の捜索願出されてるよ」
笑い転げて語るトモハル、だが地球は現実、そうなっていた。
・・・ということを、勇者達は知らない、知るはずもなかった。
地球日付、7月1日。
アサギの手帳に爪の印が増えていく、明るい早朝、遠くまで透き通って見える。
青空が広がり、真っ白な雲がふんわりと浮かんでいる快晴。
「お、城が観えたぞー」
馬車を操作していたライアンが嬉々として叫ぶ、こぞって歓声を上げると勇者達が馬車から顔を出した。
「すごーい、お城だお城っ」
「きゃー、おっきいいーっ」
アサギとユキが興奮気味に手を叩いて喜んだ、他の勇者達も感嘆の声を漏らしている。
遠くからでもはっきりと解る巨大さ、その威圧感にただただ声を張り上げる。
目前に迫る最初の城下町・ジェノヴァ。
「大きい公園が中心にあって、そこが憩いの場だな。飲食店が盛んで公園を中心にぐるりと店が立ち並ぶ。港街でも有るから、旅人も多く滞在する。自分の店を持ちたい人々がこぞって集まる場所だ。王宮も安定しており、王も好かれている、理想的な場所だな」
「そうね、世界一盛んかも知れないわね。劇場に闘技場、遊技場・・・面白いわよ」
胸が躍る、勇者達は魔道書を放り出して、馬車から外を見つめていた。
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