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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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Image491.jpg本編を書け、私よ。

ミノルの言ってる小六の時の彼女=アサギ
ミノルの言ってる勝てない男=トビィ

というわけで、絵は左から

ミノル、アサギ、トモハル

少女漫画的三人組。
・・・だってDESは一応恋愛ファンタジー。
現代版だと、この三人が最初の恋愛沙汰。
アサギが可愛く描けたので載せてみますが、ミノルが誰だかさっぱりですな・・・。

ちなみに、数ヶ月経過しますと
ミノル→トランシス
トモハル→トビィ
という配置に変わります(えー)。


名前、門脇 実。
カドワキ ミノル。
現在、16歳、高校一年。
彼女、貴美恵、同校二年の先輩。
きっかけ、告白されたから。
ちなみに相手の存在、知らなかった。
サッカー部所属、彼女は手芸部。
サッカーをしていた俺を見て、いつしか目で追いかけて、産まれて初めて告白してくれたんだそーだ。
貴美恵の髪型、ショート。
一見ボーイッシュ、性格は非常に乙女な感じ。

そんな俺の、独り言。
・・・を、どうして呟かなければいけないんだ?

一番最初に彼女が出来たのは、小六の時だった。
今の世の中、小学生で付き合うのなんざ当たり前的な世の中だけど、俺の時はまだそこまで浸透していなかったので鼻が高くて、偉ぶっていた。
と、いうのもその時の彼女というのが学校一番の・・・いや、恐らく美少女と名のつく大会に彼女が出れば優勝できる位、ずば抜けて可愛らしい子だったから。
俺、自惚れていたんだ。
で、馬鹿な事をした。

可愛い俺の彼女は、当然俺以外にも仲の良い男がたくさん居た。
その中の一人で、どうしても俺が「勝てない」って思っている奴がいて、そいつと一番仲が良かったから。

正直、今でも子供だけど子供の俺は彼女に八つ当たりをしたんだ。

その彼女と、プールへ行く約束をしていた、デートというやつだ。
俺が言い出した、互いの家から中間地点にプールがあるから待ち合わせは現地集合にしたんだ。
でも、俺、すっかりその日忘れていた。
忘れていたのは、他の女の子とデートしていたからだったなー。
憂美、っていう他校のタメの子だ。
サッカーの試合で俺を見て、一目惚れだといわれて、これまたその子も彼女には劣るけれど可愛い子だった。

自惚れてた。

その彼女とデートの日、憂美と手を繋いで買い物した。
女というやつはなんでもかんでも「可愛い」を連呼するので、イチイチ相槌打つのも面倒だったけど、告白されて好き好き言ってくれていたので、調子に乗って色んな店に付き合ったさ。
一個だけ、何か買ってやったな・・・。
小学生だから、街路の簡易なパラソルの下で昼食を食べた、クレープだ。

彼女と付き合い始めたのは、彼女が俺の事を好きだと言ったので、俺も、その、実際幼稚園の頃から彼女が好きだったから、大きく頷いて返事をしたんだ。
でも、俺は当時恥ずかしくて彼女に「好きだ」と一言も言わなかった。
その癖彼女は、大人の美形の足の長い男と仲が良くて四六時中一緒に居るだろ、憂美と一緒に居たほうが楽しかったんだ。

「実君、好き」

憂美が笑ってそう言って、俺の口元についていたクレープの中身の微塵切りの玉葱をさ、指でとってから嘗めて悪戯っぽく笑って。

「実君、私の事好き?」

瞬きしながら近寄ってきたから、その時、俺は。
そう、思わず、反射的に。

「あぁ、好きだよ」
「実君、すっごく可愛い彼女いるよね。私、彼女になれないよね」
「あぁ、なんだ、知ってたのか。でも、それ誤解。アイツ、彼女じゃないから、問題ない」
「そうなの? あの子だよ、この辺りで皆男の子虜にしちゃう、あの子だよ?」
「可愛いからっていい気になってるけど、俺は憂美のほうが好きだし、可愛いと思う」

そう、頭に乗ってたんだ。
口から、ぺらぺらと、多々言葉が飛び出した。
子供ながらに”何かを期待して”憂美の気を引こうと必死だった。
知らなかったんだ。

真正面に、俺の可愛い彼女が居たこと。
全く気づかないくらい、憂美に気を取られていた。
プールでの待ち合わせ時間が10時、そこから3時間彼女は待っていて、13時になって諦めて家へ引き返す途中だった。

「じゃあ、私実君の彼女だー」
「あぁ、カレカノ」
「ね、キスしよっか」

言葉を聞いた瞬間に、照れたように笑って言って来た憂美に。
心が上手く表現出来ないけど、躍って、ガッツポーズ。

目の前に、彼女が居た。
けれど、俺は、その時、憂美と、自然にキスをしてしまった。
・・・目の前に、彼女が居たんだ。

一度も、彼女には「好き」と言えないまま。
一度も、彼女とはキスをしないまま。

他の女に好きと言い、キスをした。
当然、ファーストキス。

次の日も、次の日も、彼女を置いて憂美と遊んだ。
数日経って、彼女を思い出したから、会いに行った。
大人の男になった気がして、肩に手を回してみたり顔を覗き込んだりしてみた。
けれど、元気が無かった。
つまらなそうに見えて、苛立った。
始終舌打ちしていた、こんな気分になるなら憂美と遊ぶんだった、と思って居た。
帰り際、壁に彼女を押し付けた、キスしようと思ったんだ。
何度もしたから、もう出来る。

そしたら。
目の前で彼女は身体を引き攣らせて、大粒の涙を零して、首を横に振るから。
苛立った、付き合ってるなら、キスくらいいーじゃん、って思ったんだ。
強引に顔を近づけたら。

「私、キスは彼氏としたいから、出来ないっ」

おぃおぃ、俺、彼氏だろ。
一気に頭が沸騰した、思わず胸倉掴んで、顎を強引に持って、キスを。
キスをしようとしたんだ。

「私、彼女じゃないって言ってたっ! ミノルそう言ってたっ!
私は、最初のキスは彼氏とするって決めてるもん、絶対絶対、彼氏とするんだもん」

彼女がそう叫んだ、泣きながら叫んだから手を緩めた、そして、当然そのまま走り去って。

「私、あの子みたいに可愛くないもん!」

そこで初めて気づいたんだ、俺の彼女が憂美の存在を知っていたことを。
血の気が引いた、一気に足元が真っ暗になった、視界が奪われた。
けれども、俺は開き直ったんだ。

じゃあ、要らない。
逆切れしてたんだな、俺。
憂美だったらもっと可愛いことを言ってくれる、と思ってたんだ。
あんな女、もう、要らない。
憂美が居るから、彼女は要らない。

憂美に会いに行った、家までの道程で女が数人爆笑してた。
中心に憂美が居たけれど、雰囲気が怖くて近づけずに遠目で見ていた。

「どうよ、あの女、フラれた?」
「ばっかだよねー、実君もさ。ホイホイ騙されちゃって」
「憂美の演技が上手なんだよ、女優になったら?」

・・・隣の家のトモハルという間抜けな腐れ縁の男に後日殴られて、話を聞いた。
俺の可愛い彼女は何もしていないのに、憂美の彼氏が彼女に一目惚れして、憂美を振ったんだと。
その腹癒せに、俺と彼女をぶち壊す計画だったんだとよ。
寄りを戻したかったから、必死に彼女に会いに行ったけど、静かに哀しそうに微笑むばかりで話を聞いてくれない。
普通に、俺に接するんだ「おはよう、ミノル」ってさ。
あまりにも態度が普通で、俺のこと怒鳴ればよかったのに。
また、苛立ってきて。
俺、言ったんだ。

「お前、人間じゃないから、人に何言われても何されても平気なんだよな? ちったぁ俺が謝ってんだから、泣くとか喜ぶとかさ、作り笑い浮かべてないで何か言えよ。ほんっと、可愛げないな、お前」

子供の、子供特有のわけのわからん他人を愚弄する言葉。
彼女は、何も悪くなかったんだ。
で、特に意味もなく俺はそう言った。
まさか。
その一言で。
彼女があんな思いを抱いたなんて、俺は、思わなくて。

今でも忘れられなくて、夢に見る。
硬直して、大きな目をもっと開いて俺を見た、俺の可愛い初恋の彼女は。
『ごめんなさい』
俺にそう告げて、泣きもせずに、横を通り過ぎて行ってしまった。
あの時の、表情が。
泣きそうなんだけど、笑っているようにもとれて、でも、口元は固く結んで、力なくだけど腕に爪を立てて。
忘れられない。
それから、離れられない関係だったから一緒に居たけれど、俺と接することを極端に怖がるようになったみたいで、さ。
前みたいに笑ってくれなくなった、遠慮がちに話しかけてくるようになった。

初恋、終了。

暫くして、彼女は五個も年上の彼氏が出来た。
全然俺と似ていないと思ったけど、トモハルいわく。
「自惚れ高くて、目つきの悪いところがそっくり」
なんだとよ。

「・・・くん、実君! 聞いてる?」
「あ、あぁ、わりぃ」

貴美恵の声に現実に引き戻される、そうだった、俺の初恋のあの子はもう居ないんだった。

「ね、明日の日曜日何処行く?」
「んー、何処でもいいけど、あんま金ないからなー。
どっか行きたいとこでもあるわけ?」
「・・・実君、私の事、本当に好き?」

溜息を吐いた、女はどうしてこうも『好き』を言わせたがるんだ。

「あぁ、好きだけど」

俺はそう返した。
告白されたら、その子と付き合う、でも、同時は懲りたからもうしない。
二股かけないんだぜ、俺、立派だろ?
けれどもまあ、返答が気に食わなかったんだろう、貴美恵は怒って一人で帰った。

・・・女、面倒だ。
好きだって言ってやったろ、今。
面倒だけど、何故か彼女は作るんだよな、俺。
寂しいんだろうかね、俺。

え、何この話、まだ続くって?
・・・面倒だ。
とりあえず、続くってよ。

はいはい、続きね。

「今日から親、旅行でいないんだ。うち、来る?」

と、貴美恵からのメールが授業中に来た。
唐突だな、おぃ。
ともあれ、その日は一旦家に帰ってなんかまぁ、色々と”色々と”支度をして貴美恵の家に行く事に。
夕飯も作ってくれるってよ、いいね、流石手芸部、家庭的だ。
トモハルと部活後並んで門を出ようとしたら、妙に門が騒がしい。
隣で悲鳴を上げて、トモハルはそこへ突っ込んだ。

「駄目じゃないか! 危ないから家にいないと」
「だって、暇だもん」

解っていたから別に驚かないけど、そこには俺の元カノの双子の妹が立っていた。
手にトリプルアイスクリーム、二つ。
周囲の男に買ってもらったんだろう、安易に想像できる。

「ええい、お前ら、散れ、散れ!」

トモハルは必死で群がってい男達を追い払い、マビルの頭を軽く撫でている。
あぁ、そう、名前マビルっていうんだ。

「食べる? 買ってもらったの」
「そんなアイスばっか食べたらお腹壊すだろ・・・。一個貰う」
「だって、六種類食べたくて、これ以上選べなかったんだもん」
「じゃあ、一緒に少しづつ食べようね」

過保護、万歳。
トモハルは俺に嬉しそうに手を振ると、手招き。
深い溜息で俺は歩み寄った、嫌なんだよ、この二人。

「で、なんでここにいるわけ?」

俺の問いにマビルはアイスを嘗めながら、俺には目もくれずに返答。

「トモハル。おば様達が町内の寄り合いで飲み会だから、ご飯一緒に食べてきなさいって。お金貰ったの」
「そういうことか・・・。何が食べたい?」
「パスタ」
「ん。というわけで、ミノル。またなー。・・・一緒に喰うか?」

この二人と食べていたら、消化不良を起しそうだったので、丁重に遠慮しておく。
トモハル、異常に過保護なんだよな。
気持ちは、解らんでもないが。
二人は仲良さそうに手を繋いで、そのまま消えていった。
周囲の男達がそろそろ俺に尋問を始めるだろうな、と思ってたら案の定だ。

「あの子、誰?」

いい加減、聞きなれた質問。

「トモハルの家に住んでる子」
「ど、同棲!? なんて羨ましい・・・!」

俺はマビルの性格とか好きじゃないが、容姿だけならピカイチだから、気持ちは解らんでもない。
横目で騒いでいる男達を見ながら、爆弾でも、一つ。

「同じ部屋で、同じベッドで、手を繋いで眠ってんよ。あいつら」

別に何もないみたいだけど、な。
絶叫の中、俺は帰宅。
着替えとか”色々”用意して、行きのコンビニで菓子とかも買って貴美恵の家へ。
玄関を開けると、途端に良い香りが鼻へと流れ込んできた。

「いらっしゃい!」

エプロン姿で出迎えてくれた貴美恵に、思わず後退した、想像以上に、可愛かったから。
右往左往している俺の手を引いて、キッチンへと案内してくれた。
すでに夕飯は出来上がっていた、驚いた、本格的な和食だ。
てっきり、カレーとか定番のものだと思ったのに。

「前、和食が好きって言ってたから」

はにかんだ笑顔、こういうのは嬉しい。
手を洗って席に着けば、暖かい味噌汁にご飯が出てきた。
蕪のひき肉あんかけに、出汁巻き卵がおかずか、悪くない。
何より、一生懸命作ってくれたことが嬉しかった。
お代わりしたら、喜んでくれたが、美味しいから当然だ。
・・・あの元カノも、料理が上手だった・・・。
俺の為に作ってくれたクッキーは、食べてあげられなくてトモハルが食べたんだったか。
二人でテレビを見ながら、買ってきた菓子をつまむ。
家にあったビールも拝借した、ワインも焼酎も日本酒もあったが二人ともビール。
未成年とか言わない、そこ。
明日は学校も休みだし、夜中まで愉しむ。
朝方、隣で眠っている貴美恵に布団をかけた。
軽く伸び、流石に裸で外に居られる程暖かい空気じゃねぇから、布団に再び潜りこんで瞳を閉じる。
布団の中で、手を繋いでみた。
特に何も感じない、当然か。
出会ってまだ三ヶ月程度、相手は俺を知っていても俺は知らなかった。
トモハルみたいに四六時中一緒に居るわけでもないし、知らないことのほうが多い。
まぁ、一緒に居ろと言われても今は無理だぞ・・・そう思えないんだから。
それでも、俺を好きだと言ってくれたから、懸命に喜ばせようとしてくれるから。
応えてやりたいと、思う。
好きになれたらいいなと、思う。
好きだと口で言うけれど、彼女だから”好き”なんだろうけれど。

「好き、か・・・」

天井を見つめて思い出すのは、あの日のことだ。
小六の時の彼女の、事だ。

「い、一緒にプール行かないか?」

照れて、どもりながら俺が言ったら、一瞬驚いて硬直していた、その後直ぐに綺麗な歯を見せて笑ってくれた。

「行く!」

大きく頷いてくれた、で、その後。

「ミノルは、甘いものあんまり好きじゃないよね」
「良く知ってるな・・・」
「甘さ控え目のクッキーなら、食べてもらえる?」
「控え目じゃなくても、食べるよ」
「ふぇ?」
「お前が俺に作ってくれたなら、な、何でも食べるって言ってんの! 当たり前だろ、嬉しいんだから」

手にしていたペットボトルを、彼女は落としそうになったから思わず受け止めた。
顔を真っ赤にして口をパクパクしていたから、可愛くて可愛くて。
手から零れ落ちたペットボトルを、そっと手の中に戻そうとしたら手と手が触れたんだ。
びっくりして、柔らかくて、なんだか熱く感じて二人して手を離したもんだから、盛大に音を立ててペットボトルが床に転がった。
炭酸だったから、ボトルの中でシュワシュワと泡が出てた。
慌てて拾って、もう一度手渡した。

「落とすなよ、開けると噴き出て来るぞ」
「あ、ありがと・・・はぁう」

手がまた触れたから、また彼女は驚いて落としそうになったから、強引に手を握って持たせた。
なんだか触れたそこが熱くて、でも、心地良くて暫し照れながら見つめあったな、と。
もじもじ俯いたり、俺を見たり、落ち着きの無い彼女が可愛くて、頭を撫でた。
飛び上がるくらい驚いて、また「はぁうー」って妙な声を出してたから爆笑。
腹を抱えて、爆笑。
笑いながら、まだもじもじしている彼女の手をとって散歩に出た。
その辺を歩いただけだけど、満足だった。
夕日を見ながら思ったんだ、早くまた会いたい、と。
ちらりと振り返ったら、微笑して夕日の赤で頬を染めている彼女を目が合った。
穏やかに微笑むから、手を強く握って走り出した。
可愛すぎて、恥ずかしくて、照れくさくて、でも手は離したくなくて。
「好きだー!」と、叫びたい衝動に駆られたんだ、子供だったけどさ。

・・・もし、あの時の俺の感情を”好き”だというのなら、今、貴美恵に抱いている想いは残念ながら”好き”じゃない。

こうして手を繋いでみても、キスをしても、抱いてみたって、あの時のなんだ・・・胸が熱くなって思わず笑顔になって、無性に走り回りたいような高ぶりには・・・ならない。
けれど、そんな想いを貴美恵に抱きたいとは思う。
好きになりたい。
今日、エプロンで出てきた貴美恵を見て、少し、あの時の感情が湧き上がった気がした。
貴美恵を、好きになりたい。
そうしたら、喜んでくれるだろうし、何より。
トモハルじゃないけどさ、好き同士って・・・いいもんだ。
誕生日が来月だと聞いたし、近いうちに、何かプレゼントでも選びに行ってみるか。

と、そんな俺の想いとは裏腹にー。
数週間後、破局した。
わけもわからず、一方的に振られた。
別にショックは受けなかったが、意味がわからん。

「何したわけ、ミノル。先輩方の噂になってるよ、『門脇実はヤリ逃げ常習犯だ』って」

ケンイチが血相抱えて隣のクラスからやってきて、トモハルと牛乳を飲んでいた俺は思わずむせ返る。
哀れむような目で見るな、トモハル。

「どーでもいい」

面倒だ。
何がどうなってそんな噂が流れているのかさっっっぱり理解不能、だがどうでもいい。
んなもん、そんな噂の出何処なんて一人しかいねぇだろ。
そんでもって、先輩方に呼び出された、三人ばかり女。

「貴美恵、泣いてたよ?」

と、第一声。
は?
フラれたのは、俺だ。
ふてぶてしい態度をとっていた為か、あちらが逆ギレしてしてたが、関係ない。
頭を掻いて、面倒だからもう帰ろうかと。
女の友情は恐ろしい、誰かが男に泣かされると集団で仕返しに来る。

「あのな。ヤリ逃げした憶えは全くないんだけど。
それでもいいけど、アイツと関わるのは今後マジ勘弁。
・・・あのさ、友達思いの先輩方。
貴美恵に『誕生日おめでとう』つっといて、明後日だろ」

それだけ告げて立ち去るつもりだったんだが、引き止められた。

「なんで知ってるの!?」

「元カノの誕生日くらい、知ってて何が悪い」
「だって・・・、ねぇ?」
「貴美恵が、ねぇ・・・?」

・・・あれだけ山姥の如く三人で追撃していたのに、突如大人しくなった先輩方。
なんなんだ、一体。
急に借りてきた猫の如く、しゅん、となって三人して小声で相談。
イラつくな、おぃ。

「じゃ」
「あー、ちょっと、待って!!」

腕まで引っ張られて、引き止める理由はなんだ!?
まさか、寄りを戻せとか言い出したりしないよな!?

「初めてだったの、貴美恵」
「はぁ」

だから、何。

「それから、実君の態度が変なんだって」
「はぁ」

それはないだろ。

「アイツは目的さえ達成できればいい男だから、って」
「中学でもそうだったって!」
「彼女が常に5人は居て、中学ではその中の一人が妊娠して大騒ぎに・・・」

誰の話だ、それは。
頭痛。
・・・恐ろしい、女子の噂話。
全く身に覚えがないんだが、貴美恵、何が言いたいんだ?

「・・・って、他校の子から貴美恵、聞いたんだよね・・・」

聞いた途端、頭の中で何かが弾け飛んだ。
つまり、なんだ。
誰か知らない奴がそういう噂を流していて、貴美恵は真に受けた、ということか。
プチ、と線が切れた音。
俺よりも、風の噂を信じたのか、へぇー、そーですかー。

「面倒だから、それでいーわ。じゃ!」

弁解する気も失せた、どうして俺に直接聞かない。

「というか、それならもっと巨乳で美少女を狙うけどね、俺なら」

本音。
関わるのも、マジ面倒。
呆気にとられて何も言い返せなかった先輩方を尻目に、帰宅。

「でも、実君には他に好きな子がいる、って言ってたよ!」
「寝言で名前を呟いた、って言ってた!」

と、大声で言われたもんだから、急に頭が冷えた、急速冷凍。
名前を呟いた、は、ひょっとすると有り得るかも知れない。
振り返って、怒鳴りつけてやった。

「好きな女が居たけど、本当ならここに一緒に通っているはずだったけど、死んだ!
貴美恵の想いに応えて、好きになりたかった!
けど、もう無理! そゆことで」

・・・数日後、今度は貴美恵から連絡が来たわけで。
さっぱり、理解不能。
一回目は無視した、二回目も無視した、三回目は家に押しかけてきた。
から、仕方なく部屋に入れた。
玄関で騒がれても困る、非常に。
幸い両親は今不在だし、隣の家のトモハルに見られると、何処となく気まずいが、まぁ・・・。

「ごめんね・・・!」

泣かれていきなり抱きつかれましたー、何だこれ。
ふざけるな、と怒りで身体を震わしたよ。
 貴美恵、泣き止むまで30分。
その間俺は立ちっぱなし、頭を撫でるとか器用な真似は出来ないからとりあえず胸だけ貸しといた。
ようやく鼻水をすすりつつ、顔を上げて一言。

「ホントに、ごめんね」

何が。
嘘八百な噂を信じた事なのか、急に振った事なのか。

「私の友達、みんなすっごく私を大事に思ってくれてて、まさか実君に言いに行くなんて思わなくて」

そっちか。
溜息が出た、歯軋りして苛立ちを抑える。
思った、とりあえず早く追い出すべきだ。
復縁の意志はないと言い聞かせて、ここで縁を切るべきだ。

「あのさ」
「誕生日、覚えててくれてありがと・・・。すごく、嬉しかった」

潤んだ瞳で笑顔、思わず胸がドキッと鳴ったが落ち着け、俺。
騙されるな。
耳を貸さないようにした、気になったが聴かない事にした。
・・・聴こえてたけどさ。

「だって、実君好きな子いるでしょ?」
「別に」

思わず返事をしてから、舌打ち。
別に、元カノが忘れられないわけじゃない。
ただ。
謝りたいだけだ、それだけ。

「実君が他の子を好きでも、私良いの。だって、私が好きだから」

はにかんだ笑顔を見せる貴美恵、思わず視線を逸らさず見つめ返す。
傍からみたら、そりゃろまんてぃっくなシーンだったかもな。
貴美恵は瞳を閉じたし、何、キスシーンですか。
だがな、悪りぃ、俺は。

「気持ちだけは受け取るけど、とりあえず、帰ってくんない?
俺には全くその気がないんだよね、悪いけど」

告げたら、鬼の形相で俺を見てきた。
本性、出たー。
・・・貴美恵、本当に俺の事好きか?
ギャーギャー室内で騒ぎ立てるから、煩くて耳を塞ぐ。
最悪な事に向かいの窓から、トモハルとマビルがこちらを見てた。
カーテン閉め忘れた。
マビルは興味なさそうにアイスを食べてるが、トモハル・・・その半開きの口に哀れみの瞳はやめろ。
思わずカーテンを閉めたが、それはそれで誤解を招きそうだ。

「俺の事信じずに、他を信じて自滅しただけだろ? 不安になったら俺に直接聞けばよかったんだ。
・・・誕生日、おめでと、な」

好きに、なりたかった。
けれど、もう好きになれなさそうだった。
一緒に居ると嫌なところばかりが目立ちそうだった、俺が、嫌だ。
貴美恵が一緒に居たいと思ってくれても、無理だと直感した。
暫く泣き喚いていたけど、二時間後ようやく帰ってくれたわけで。
明日からは先輩後輩、何の関わりもない。

ただ。

「憂美の奴・・・許さないんだから! 友紀も、大嫌い・・・!」

吐き捨てるように呟いた貴美恵、道路が沈むような勢いで歩き去ったが、ちょっと待て。
何だ、その聞き覚えMAXな名前はっ。
呼び止めて聞き出そうかとも思った、が。

悪寒、高速で身体を通り抜けた。

何を思ったのか、自宅へ戻らず隣のトモハルの家へ。
玄関開けて、二階の奥の部屋へと侵入。
ドアを開ければ仲良く隣に座って、アイスを食べているトモハルとマビルが目に飛び込む。
・・・いつまでアイス食ってんだ、こいつらは。
あからさまに嫌そうな顔をした二人、構わず突き進んで正面にどっかり座り込む。
相手が口を開く前に、こちらから。

「貴美恵に妙な事吹き込んだの、憂美と友紀だとよ」

だからどーした、というわけでもないが。
憶えてるか?
憂美というのは俺が小学校の時に騙された、あの女で。
友紀というのは、俺が小学校の時に大好きだった彼女の親友だった女だ。
・・・最凶コンビ、俺がお前らに何をした。

「でも、友紀の記憶は消えてる筈だ。それに、ミノルの悪評を流しても得しない」
「でも、貴美恵は名前を呟いたぞ」

トモハルと話してたらアイスを食い終わったマビルが、髪を指で捻りながらぼそっと。

「・・・友紀? 誰?」

あぁ、知らないかもしれない。
トモハルが説明を終えると、マビルは爽やかな笑顔を浮かべて小首傾げて、一言。
・・・頼むからその笑顔はやめてくれ、俺の好きな元カノに似てるんだ。

「ちょっと叩き潰してきてイイかなー?
思い出した、おねーちゃん苛めた女だよね」

駄目だ、やめろ。
慌ててトモハルがしがみ付いて必死に宥める、大きな溜息をついて俺は床に寝転がった。
噂を流されても気にしないから、どーでもいいんだけどさ。
何か、すっきりしないものが心に残った。
好きだというなら、貴美恵。
俺の事、信じればよかったのに。
不安なら、訊いてくれればよかったのに。

「俺、友紀に会いに行ってみようか?」
「余計な事すんな、バーカ」

トモハルが控え目に言うからさ、不貞腐れてそっぽを向いてぶっきらぼうに返事。
お前が行くと、マビルがついて行く。
マビルが行くと、後は言わずもがな。
・・・瞬殺しそうなんだよな、うん。

「でもミノルはそんなことしてないじゃないか、何処かで正さないと・・・」
「いーよ、別に。そういう男に見えるんだろ? 好きじゃなかったのは事実だしさ。
そんな噂を跳ね除けられる女じゃないと、俺にはつり合わないと思うし。好都合かもな」

押し黙ったトモハル、気まずい空気が漂い始めたから俺は退散、退散、っと。
起き上がって手を振って、家に帰った。

ゲームやりながら考えた、あぁそういえば、数年前俺もこのゲームの主人公のように魔王を倒しに行ったんだった。
あの時はどうしてこの俺が、命を張ってまでして勇者にならねばならなかったのか、本当に悔やんだもんだ。
・・・でも、こうしてみると。
楽しかったんだよ、な。
あれがなかったら、きっと僅かでも俺の大好きだった彼女とは恋人になれなかっただろうし。
トモハルともここまで親しくなってないだろうし、他の奴らだってそうだ。

ただ。
勇者にならなければ、今も俺の大好きな彼女は生きていたんじゃないかと思う。
同じ高校に通っていたんじゃないかと思う、会話できなくても。
あー、やだやだ。

結局俺は、どーやら未練たらたら、忘れていないらしい。
と、気づいたっつーの。
まぁ。
・・・机の上に、汚い机の上に。
ガラでもなく写真立てが置いてあるんだが、何気に勇者一同で買ったものなんだが。
勇者一同が写っている写真なんだが、その裏に。
・・・俺と当時の恋人だった頃の大好きな彼女が二人で、一緒に写っている写真がさ。
隠してあるんだよなー、馬鹿みてぇ。

あぁそうか、俺は。
・・・まだやっぱり好きなのか。
引き抜くのが面倒で、というわけじゃないんだ、どうしてもそこから外す事が出来ない。
時折、不意にそれを手にとって眺めている自分がいる。
どうにもならないけど、な。
どうにもならないけど、謝りたい。
ゲームを中断、立ち上がって写真立てから写真を引き抜いて眺めてみる。
照れくさそうに強張った顔つきの、お世辞にもかっこいいとは言えない俺と、その隣に。
とても不似合いな美少女が、頬を赤くして笑ってた。

「・・・あの時、本当にごめんな」

妙な意地を張らずにあの時、俺が謝ってたら、多分。
・・・許してくれたんだろう。
そうしたら、もしかして、また笑ってくれたんだろうか。
そのまま写真を持ってベッドに転がり込む、腕を伸ばして電気に透かしながらぼっけぇ、と見つめていた。
知らず、口が動いて名前を呟いていた。
一度さ、勇者になる前。
彼女と、友紀がこの部屋に来たんだ。
トモハルも一緒に、四人で社会の研究文を作った。
何故俺の家になったのか記憶がないが・・・小4の時だな。
班が一緒になってさ、緊張して出迎えた。
いつもスカートなのにその時はジーパンで、ぴったりしてて、新鮮な印象を受けたんだ。
・・・そこに目が行った俺は、脚フェチなんだろーか、どーでもいいけど。
おやつに、二人が好きなケーキ屋のケーキを買ってきてくれて甘すぎて文句を言いながら食べた記憶がある。
結局トモハルが率先して彼女にくっついて、勝手に盛り上がって進行してたから俺は何もしなかったような。
ずっとさ、トモハルと会話している彼女を見てたんだ。
楽しそうに笑いながら、教科書を開いて頭の良い優秀三人組はどんどん研究文を完成させて。
俺、居なくてもいいだろ。
壁にくっついて、蚊帳の外の俺はじっとしてたっけ。
暇つぶしに階段を下りて、ジュースのお代わりを取りに行った。
面倒だからペットボトルごと手にして階段を上がろうと思ったら、彼女が下りてきたから言葉に詰まった。
言葉が出ない。

「あの」

控え目の小さな声。

「何」

唐突な出来事にぶっきらぼうに、怒鳴りつける声で睨みながら言ってから、後悔した。
口が悪い俺は、自覚してるがどうにも出来ない。
でも、嫌な顔一つせず、両腕を伸ばしてきたから反射的に後退。

「お手伝い、します。場所、借りてしまっているし」
「ホントだよ、なんで俺んちなんだよ。
トモハルとかお前の家とかのほうが絶対でかいだろ、広いだろ」
「ごめんなさい・・・」

口から出る言葉は、不服ばかりでこのままだと彼女は泣いてしまうんじゃないかと思って冷や汗が出たが、しゅん、としている姿を見ると申し訳ないと思いつつも悪態つくことしか出来なくて。

「いいよ、別に俺んちなんだから。
さっさとトモハルと仕上げてくれよ、早いトコ終わらせてくれたほうが嬉しいね。
俺暇だから、下でゲームしてていいだろ? いなくてもやれるよな、学年トップクラスが三人もいるんだしー」
「で、出来れば一緒に居て貰いたいです」

消え入りそうな声でそう言ったから、そうなんだ、あの時も。

「優秀な学級委員様は、問題児の俺を手懐けに入りましたかー。
それとも、あれか。班での共同作業だから一人抜けられると困るって?」
「ち、違います、そうじゃ、なくって、その」
「じゃあ、部屋には居るけど漫画読んでるから」

狭い階段、擦れ違えないから睨みつけて上へ退かせようとした。
・・・スカートだったら覗けたのに、ってどんだけ俺は煩悩が。
気を遣ってくれたんだろうけど、どうも照れくさくて上手く言葉が出なかった。
トモハルだったら階段を下りてきてもらって、下で二人で何か会話したりして、こう、なんだ・・・。
・・・喜ばせて上げられるんだろう。

「こら、ミノル! 酷い事いうなよ!」
「だ、大丈夫だよトモハル。何も言われてないよ」

上からトモハルが顔を覗かせてそう言うから、俺はますます機嫌が悪くて本当に一人漫画を読んでたっけ。
でも漫画に集中できなくて、聴こえてくるトモハルの声がウザくて、それで彼女を見たら。
目が、合った。
慌てて逸らした、驚いて鼓動が早まって急いで本をめくる。

「ああああああああ!?」

と、いう回想で思い出した!
起き上がって写真を再度見つめる、そうだ、どうして俺の家になったのか思い出した!
夕方になって、三人が帰ってから数時間後、飯を食ってゲームをしていたら電話がかかってきたんだ。

「ミノルー! 可愛い声の女の子からよ、田上さんって子」

加えていた煎餅を吹き出し、怒鳴って返答、「居留守にしてくれ」!
予期せぬ電話に何故か胸がばくばくして、母親の声を耳を広げて聞いていた。
翌日、何度か喋りかけられたが、照れくさいというかどうしていいやら解らなくて、無視してた。
授業中に、なにやら小さなメモが飛んで来たから、思わず広げたら見慣れた字で俺宛の手紙が。

『昨日はありがとうございました、場所をお借りしてしまって、本当にごめんなさい。次にやる時は、よければ私の家に来てください。楽しかったです』

なんだこりゃ。
思わず握り潰した、後ろの席から投げ込んだんだろう。
知ってる、彼女の字だこれは。
握り潰して捨てようと思った、昨日の電話の内容はこれだ。
何度も謝らなくてもいいっつーの、苛々して無意味に貧乏揺すり。
でも、そのメモは捨てられず家に持って帰って今みたいに天井の電気に透かして見てたんだ。
で、気づいた。
消しゴムで消した跡があったから、鉛筆で塗り潰したんだ、いや、気になるだろ。

『本当はトモハルの家だったのですが、私が行ってみたいとわがままを言ってしまったんです。お部屋がどんな感じか、見てみたくて。本当にごめんなさい』

大口開けて、ひらひらと顔面に降って来たメモを乗せたまま俺は。
絶叫。
そうだ、彼女が俺の家に行きたいと、ダダを捏ねたんだ。
恥ずかしくて、思わず口元を手で覆う、耳が熱いくらいに痛い。

「お前・・・いつから俺の事気になってたわけ?」

と、問いかけても彼女はもう、いない。
そして、更に思った。

駄目だ、当分彼女の事を忘れられそうにない。


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