[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「まこさん、まこさん? このトモハルのお城で働いている二人の中年男性ですけどー。
・・・今何処にいらっしゃいますかー?」
アサギの声だった、が、知っている人は知っている、これは非常に天変地異を起こしかねない緊迫感溢れる大惨事的(以下略)。
あれですよ、某ESで旦那のギルザが人質に取られた時のアサギと同一の怒り。
「殺サナイデネ、あさぎチャン。うちの看板娘主人公ダカラネ? 人殺し、ダメよ?」
「殺さないですー、ただ、ちょっとお話がー」
氷の微笑万歳。
うん、でもね、アサギちゃん。
その2人の中年の人はね。
→NEXT
・・・という話な感じでござりゅんよ。
勇者時代の、トモハルとアサギを描いてみました。
仲良し勇者。
セントラヴァーズとセントガーディアン。
「マビル、誕生日に2人で旅行に行こう! ほら、このホテルで」
「か、勝手に決めるなーっ。それに、寒いんだもんっ」
あたしの誕生日は1月11日。
12月に入ったら、トモハルが笑顔でそう話しかけてきたから、嬉しかったけど照れくさかったから、逃げた。
ちらっ、と見たけど高級ホテルだった。
あたしは、逃げて部屋に戻ってから雑誌を手にしてトモハルの元へと戻る。
この間地球へ行ったときに、本屋さんで雑誌を買ったら、気になる情報があったのだ。
「トモハル、あたし、行きたいとこあるの! もうすぐ終わるから今行きたい、今日行きたいっ」
期間限定イベントらしーのだ。
そしたらトモハル、困った顔して首を横に振ってきた。
「今日は無理だよ・・・。会議が入ってるんだ」
「休んでよ、終わっちゃうよっ。面白そうなの、これ、行きたいのっ」
「次の休みまで待てない? なんとか早急に休みを」
「・・・もー、いいっ! 他の人と行くっ」
昔は、あたしの言う事なんでも聞いてくれたのに。
仕事仕事であたしのこと、ほったらかし。
あたし、これ、行きたいの。
仕方ないから、奈留の家に遊びに行った。
や、他に適当な人物がいなかったの。
「奈留ー! ここ、行きたいのーっ!!」
「わー、真昼ちゃん、お久し振りーってごはぁー」
家に到着したら、エプロン着て何かしてた奈留に雑誌を叩き付けた。
「? 何? 何処に行きたいって?」
「これ! ここっ」
作ってたサラダを食べながら、あたしは奈留に行きたいページを開いて見せる。
頷きながら見ていた奈留、苦笑いでテーブルに雑誌を広げた。
「・・・連れて行ってあげてもいいんだけどさ、これ、カップル専用だよね? 私と真昼じゃちょっと・・・」
「う」
言われて思わずレタスを喉に詰まらせた、そうなの。
雑誌には、期間限定で遊園地で、カップル専用の変なイベントが開催される知らせがあった。
楽しそうだな、と思ったんだ。
なんか、紙に書いてある指示をこなしていくんだって。
・・・カップルで、やるんだって。
・・・だって。
トモハル、行ってくれないんだもん。
あたし、やってみたいけど、やれないもん、これ。
一人じゃ出来ないんだって。
2人じゃないと、ダメなんだって。
「一緒に行きたい人がいるんだね?」
「うん、より取りみどり、イケメン軍団の中から選抜した人と行く予定なの」
「じゃあ、私じゃなくて、その人のとこ行って頼んでおいでよ」
「今日は忙しいんだって!」
「他の人にしなよ、軍団っていうくらいだから、たくさん居るんでしょ」
「・・・う、うるさいなぁ、ばーか、ばーかーっ! ふ、ふん、もうこんな美味しくないサラダ要らないっ」
サラダのお皿をテーブルに叩きつけたら、ドレッシングが零れて、キューリが飛び出して、トマトが床に落ちて。
あ・・・。
・・・。
奈留は、苦笑いしてそれらを片付ける。
・・・ふ、ふん!
奈留がいちいちつっかかるからいけないんだ。
「ダメだよ、真昼。サラダを不味くしたのは私かもしれないけれど、野菜にはなーんの罪もないから、八つ当たりしちゃダメだよ」
「う、うるさいなぁ! か、可哀想な野菜っ。奈留に買われたばっかりにっ」
なーんにも言わない奈留がムカついた、から、仰け反って言いたい放題言ったんだ。
それは、多分。
トモハルに言ったのと同じように、あたしは。
相手を傷つけるだろうな、って解ったんだけど。
・・・言ってしまうのだ。
「あたしは、忙しいんだからー。おねーちゃんがいなくて寂しがってるかと思って、わざわざ来てあげたのにさー。不味い食べ物でしか御持て成し出来ないなんてっ、最悪。・・・もう帰る」
静かに聞いていた奈留は、片付け終わると一向に動かないあたしを見て。
一言。
「嫌なことがあったんだね」
「う」
「八つ当たりに来たんだねー。・・・今お茶煎れてあげるね」
「う、うるさいなぁっ。もう帰るのっ」
「お茶くらい飲んでいきなよ。寒いでしょ」
「・・・ふ、ふん。そこまで言うなら飲んであげるっ」
大人しく待っていたら、ホットカルピスミルクが出てきた。
一口、飲む。
美味しい。
「奈留は、さ。あたしになんか言われてさ、ぐさーって凹んだりしないの?」
気が緩んだから、ぼそっと独り言のように呟く。
小さく笑って、あたしの傍に来た奈留は、跪いてあたしの手を握って、覗き込んできた。
「ぐさーってなる時もあるけど、真昼は機嫌が悪いと思ってないこと言う節があるよね。照れてる時もそうだよね」
・・・は?
「ばっかじゃないの!? 違うもんっ」
「うん、うん、わかった。当ててくれてありがとう、ってことだよね」
「なんつー、お気楽な頭してるの!? 違うよっ」
超ぽじてぃぶしんきんぐ。
羨ましいくらいだ、すっごいよねっ。
「うん、うん、わかった。当てられてびっくりしてるんだね」
「だからっ」
反論しようとしたら、奈留が真顔で首を傾げた。
「私は良いんだよ、なんとなくだけど解るから。ホントは違う事言いたいのに、言えない真昼を知ってるから。言ってから後悔するけど、謝れない真昼を知ってるから。怒るのは、上手く自分の気持ちを伝えられないから。自分の望む結果にならないから、泣く替わりに怒るんだよね」
・・・多分、そう。
奈留の言う事は幾分か正しい、悔しいけど。
「真昼を理解してる私はいいの、何を言われても聞き流せるから。でもね、真昼。それを知らない人はね、すっごく傷つくと思うんだよ。解ってる私でも、時折へこむんだから、知らない人は尚更だよ。特に真昼の事を好きな人は、相当べこーっ、だよ。何か、言う前に。少し呼吸してごらん?」
「・・・奈留よりも長く一緒に居るのに、アイツはあたしのこと、解らないっていうの?」
奈留みたいに、解ってくれればいいのに。
怒るあたしの気持ちに気がついて。
不貞腐れるあたしの気持ちをちゃんと見抜いて。
あたしが、怒ってもむくれても、諦めないで追いかけてきて。
・・・ちゃんと、あたしのこと、見て。
「今日は、一緒にスイーツ食べに行こう。このイベントはまだ数日やってるみたいだから、”一緒に行きたい人”と行っておいで」
「・・・うん、解った。た、たまには奈留も良い事言うじゃんっ。たまにはね、たまにはっ」
「うん、うん。『ありがとう、大好き奈留』ってことだね」
「・・・ぜえったい、違う・・・」
奈留は、解ってくれたよ。
だから、トモハル。
ちゃんと、解って。
照れてるって、解って。
ずっと一緒に居たんだから、あたしの性格、解って。
離れて行かないで。
他の人と仲良くしないで。
・・・そう言えないって、解って。
もっと遊んで。
もっと、構って。
隣に、居て。
よし、ちゃんとここへ行きたいって言おうっ。
雑誌を片手にバカ奈留に見送られて、お城へ戻った。
トモハルは何処に居るのかな、お部屋かな?
「もー、トモハル様ったらっ」
・・・居た。
正面玄関、入って直ぐの広い廊下の中心に、居た。
メイド軍団に囲まれて、デレデレダラダラしながら、大馬鹿野郎トモハルが、居た。
「あ、マビル! おかえり」
にへらにへらしながら、こちらへ走ってきたけれど、なんなの。
何故、腕を組ませているの。
イライラする。
むかむかする。
・・・ちょっと、目の前から消えて。
「マビル、行きたいとこあるんだろ? 明日休みを」
「今日、もう行って来た! トモハルとなんて、行きたくないっ」
「じゃ、じゃあ他のとこ行こうよ。明日・・・」
「うっさいなぁ! 明日はもう予定があるし、アンタとは行きたくないって言ってるじゃんっ」
トモハルを睨みつけて、あたしは床を潰す勢いで歩いた。
硬直したメイド達の脇をすり抜けて、部屋に戻ると雑誌を破り捨てる。
・・・キライだ。
気持ち悪いんだ。
この感情が何かわかんないんだ。
絶対に行かない、トモハルなんて、嫌いだよ。
・・・デレデレしちゃってさ、何あの顔。
ベッドに寝転んだ。
爪を噛む。
「・・・行きたかった、な」
驚くほど自分でもバカみたいに。
破れた雑誌を見て、何故か、・・・泣いた。
あたしの誕生日、トモハルは色々連れて行ってくれた。
正直、楽しかった。
色々買ってくれた、高いものばーっかり。
でも、違うの。
あたし、欲しいものがあるの。
お金じゃ買えないの。
ねぇ、昔さ、トモハルが買ってくれてつけてくれたネックレス。
あの苺のネックレス。
あれ、何処にある?
あたしが死んだあの時に、あたし実は持ってたの。
恥ずかしくてつけてなかったけど、持って歩いていたの。
あれが、欲しい。
トモハルが一生懸命あたしに選んでくれた、あれが欲しいの。
ホテルについて部屋に入って思わず、愕然。
・・・ベッドが二つ。
一つじゃない。
当然、離れ離れで寝ることになった。
おねーちゃんなら、きっと、ここで。
『一緒に、寝よ? 一つのベッドで一緒に寝よ?』
って言えるんだろう、でもあたしは、言えない。
言えなかったから、冷たいベッドに一人で入り込んだ。
遠い、遠い、トモハルが遠い。
あたしの誕生日、同じ部屋に居るのに、一人ぼっちみたい。
手は、手は? どうしてベッドが二つなの?
疲れているのかトモハルの寝息がすぐに聞こえてきた、あたしはそっとベッドから這い出て近寄っていく。
見下ろす。
可愛い寝顔だ。
憎たらしいくらい、可愛い顔をしている。
あたしの好みでは、ない。
ないけれど、結構好きかも知れない。
思わずしゃがみ込んで。
・・・。
!?
思わず悲鳴を上げた、今あたし、何した!?
思わず右手で唇を押さえる、今、あたし、トモハルにキスしたっ!
・・・わぁ。
顔が熱くて、恥ずかしい。
誰も見てないのに、恥ずかしい。
わあああああああ。
けれど、冷えた室内は寒くて、大きく震えが来る。
あたし。
そっと寒いのに羽織っていたローブを脱ぎ捨てた、そのままふらふらとトモハルのベッドへ入り込む。
手を繋ぐの。
邪魔だったから、トモハルが着ていたローブも強引に剥ぎ取って、背中にくっついた。
あったかい。
あったかい。
・・・おやすみ、なさい。
朝方、目が覚めたらトモハルが居なくて。
びっくりして起き上がったら、あたしが寝ていたベッドに移動してた。
何故逃げる。
どうして、離れたの?
あたしは迷うことなくそちらへ移動した、布団を剥ぎ取るとトモハル、ローブを着込んでいる。
・・・そんなに、あたしと触れ合うのが嫌?
何、それ。
むかついたので、ローブを剥ぎ取って、隣にくっついてまた寝る。
あったかいでしょ、2人だと。
・・・逃げないでよ。
何してもいいから、逃げないでよ。
そんな気も起きないって?
あたし達、大人になったんだ。
子供じゃないもん、一応大人だもん。
手を繋ぐ。
手を繋いで眠るの。
あたしの誕生日でしょ、トモハル。
じゃあ、欲しいもの、ちょうだい。
願いを聴いて、叶えて。
「逃げないでよ・・・キスしてよ。好きって言ってよ、ちゃんと抱き締めてよ」
・・・2人で、居てよ。
でも、朝起きたらトモハルは。
やっぱりまた逃げるところだった。
深い溜息、呆れたといわんばかりの苦笑い。
こそこそと逃げて行くトモハルを、眺める。
・・・あたし、裸なんだけど。
こんな魅力的なあたしが隣に居るのに。
というか、そうじゃない。
「おはよう」は? 軽くキスして、ぎゅ、ってして。
頭を撫でて、ベッドの中でごろごろしよう。
・・・ごろごろ、しようよ。
逃げるように出て行かないでよ、違うでしょう?
トモハルの浴びているシャワーの音を聴きながら、のろのろと支度をした。
・・・あたしの誕生日。
「キスして、ぎゅってして、好きって言って」
・・・欲しいものは。
欲しいものはトモハルの笑顔と、あたしを呼ぶ声と。
キスとハグと、「好き」の言葉だ、ばーか!!!!!!!
帰りの車内で、あたし呟いたの。
「た、楽しかったよ、ありがと・・・。で、でも、欲しかったのは・・・」
トモハル、アンタだ。
あたしらしくないけど、けど。
・・・欲しいと思う。
好きじゃないからね、違うからね!
それでも、欲しいと思う。
近くに居たくてあたしも会議に出ようと思って、頼み込んで初めて会議に出た。
トモハルの隣で大人しく話を聞いていた、今日の議題は街を何処まで拡大するか、とか拡大するなら何のお店を入れるか、とか。
「個人的にだけど。大都市ジェノヴァにはそう簡単に追いつけない。から、あそこにないものを導入したいんだ。同じものを入れても人は集まらないだろう」
ジェノヴァには劇場もあるし娯楽が揃ってる、グルメの街でもあるのは海にも山にも面してて食材が豊富。
ここ、シポラ城下町をどう発展させていくかが今後の課題なんだよね。
「アサギ様の美術館や資料館はすでに準備は整っております、それを目玉にして遠方から訪れる客用に宿泊施設を造るべきだと」
「あちらが娯楽の遊戯ならばこちらは癒しに力を入れませんか? 温泉を掘り起こせば良いのではないかと」
「うん、そうだね。俺の案だとこんな感じかな・・・」
トモハルの横顔を見ていた、とても真面目で熱心に語っている。
城の門を越えた左側におねーちゃんの美術館、それがここの目玉。
城下町は入り口近辺に宿を中心に設置、城付近に飲食店、宿近辺にアパレル関係。
宿でひと段落して貰って、観光に来たお客が美術館帰りに買い物、ならば増えた荷物をすぐに部屋に戻せたほうが良いだろう、という考え。
若者向け、年配向けのお店も作るけれど、位置は話さずに交互に店を置くらしい。
そうすることで老若男女親しむ事が出来るようにしたとか、なんとか。
温泉を掘り起こすまでは、薬草の湯とか人工的にだけどお風呂も工夫して、エステやマッサージも出来るスパリゾートみたいなのも建設予定らしい。
その辺りはあたしの得意分野。
昼食を皆で食べて(今日は名物となるらしい、地鶏のつくね丼)、再度会議。
あたしは大人しく聞いていた、意見できるとすればアパレル関係とスパぐらいかな。
「あ、あと宿周辺に居酒屋も持ってきたいね。まぁ、俺がこういう位置関係だと旅行先で楽かな、っていうのを前提に案を出したわけだけど・・・」
「いえ、良いと思います。出店者を募ってすぐにでも再建を始めたいところですな」
「若造の俺についてきて頂き、常に感謝しています。やるからには世界1を目指したいので。これからも宜しくお願い致します」
深々と頭を下げるトモハル、普段はにへらにへらしている癖に、ホント、こういう時は人格が違うくらい真面目だ。
すでに他国から出店希望も多々来ているし、上々。
あたしは、お腹も一杯だし、ちょっと眠くて話し声がまた眠気を誘って・・・。
すぴー・・・。
起きたら、部屋に寝かされていた。
あ、ヤバイ。
お腹が空いたからもう夕飯時刻はすでに回ったんだろう、あたしは食堂に向かった。
一応、あたしも意見を言おうとしてまとめたプランがあったのだ、お披露目出来なかった・・・。
頑張ったんだけどな、一応あたし王妃だよね?
偉い人は、下の人の為に頑張るものだっておねーちゃんが言ってたもん。
不甲斐無くて、珍しく気落ちして歩いていたら、前方をさっき会議に出てたおっさん二人が歩いてた。
寝ててごめんなさい、って謝るべきかと思ってたら・・・。
「全く、トモハル様は真面目で一本気なお方だが、マビル様は本当に国の為にならなそうなお方ですなぁ。何故お傍に置かれているのか」
・・・嫌だな、あたしの悪口だよ。
思わず、立ち止まる。
確かに、さっきまで寝てたけど。
「アサギ様の妹様とはいえ・・・寝て食べるだけ、我侭を言って王を困らせているとも聞きます」
失礼だな。
色々考えてるよ、発表してないだけで。
悪いけど、舌には自信あるし、ファッションセンスだって飛びぬけてると思うんだけど。
「どうせならアサギ様が残られて、マビル様が犠牲になって欲しかったものですな。もともと王と親しかったのはアサギ様であろう? 双方が揃えば無敵の国になったものを・・・」
・・・。
今。
何言った、この親父共。
おねーちゃんと比べられても困るんだけど。
あっちは勇者様でしょ? そんなコト言われても・・・。
「同意ですなぁ。そもそも、王がマビル様を傍に置かれるのは、アサギ様の願いだからですよ」
・・・え?
血の気が、引いた気がする。
足から力が抜けた気がする。
「マビル様を護るように、アサギ様に言われたのだそうです。でなければあんな金食い虫、誰が好き好んで傍に置きますか。確かに可愛らしい容姿ですが、王の誕生日に祝いもしない、ふてぶてしいお方ですぞ」
かねくいむし? あたし、いつ国のお金使った?
というか、ちょっと待って。
・・・トモハル、おねーちゃんにあたしのこと頼まれたの?
「まぁ、アサギ様に頼まれては王も無下には出来ますまい。そもそもマビル様、数年前まで少しでも気に入らなければ人を殺していたのであろう? おぉ、クワバラクワバラ・・・」
「何か事件が起きたら、犯人はマビル様でしょうなぁ・・・怖や怖や」
過去、・・・人を殺した事は認めよう、街も破壊した、それも認める。
でも、あたし、もう・・・。
何も、しないよ。
そんなこと、しないよ。
しないよ・・・。
「邪魔ですなぁ」
「今日も寝てましたしねぇ、全く、いい加減な。あれでは王の威厳も落ちますぞ」
「アサギ様であればよかったのに」
「アサギ様の代わりに消えてくれればよかったですなぁ・・・」
「全く」
「・・・我が国には不要ですなぁ・・・」
・・・。
言い返せなかった。
追いかけて、スパーン! って殴りつけようかとも思ったけど。
おねーちゃんのほうが、確かに、当然、あたしよりも。
・・・欲しい人材だろうけれど。
そうじゃない、そうじゃなくて。
トモハル、ねぇ。
おねーちゃんに頼まれたの?
おねーちゃん、ねぇ。
どうしてあたしのこと、トモハルに頼んだの?
・・・。
おなか、すいたけど、ごはん、いらない。
おへや、もどる。
おへや、いたくない。
おしろ、いたくない。
まどから、でてく。
・・・なるに、あいにいこうかな。
あたし、メーワク? ジャマ?
確かに、昔悪い事をした。いっぱい人を殺した。
その事実は消えないんだ、でも。
もう、おねーちゃんに誓って人、殺さないもの、我侭だってあんまり言わない。
頑張ってるんだ、これでも。
ただ、ただ、あたし・・・。
前みたく、トモハルと一緒に居たいだけだよ。
優秀すぎる双子の姉の、出来損ないの双子の妹は。
何でも出来る光の双子の姉の影で、ひっそりと。
おねーちゃんに護って貰って生きていく、おねーちゃんの近くに居た光の勇者の傍で生きていく。
光の勇者も、おねーちゃんみたく優秀なものだから、ひっそりあたしは近くで生きていく。
影は、光がないと生きていけないんだー。
・・・おなか、すいた。
ふらふらと、お城を出て、街を出て、空を飛んで、別の街へ。
おなか、すいた。
迎えに来て、迎えに来て。
トモハル、迎えに来て。
いつか出遭った街のビルの隙間で立ち尽くす。
数年前、トモハルと出遭ったその場所で、あたしは。
一人空を見上げて降り出した雪を見ていた。
おねーちゃん、おねーちゃん。
・・・助けて。
トモハル、トモハル。
・・・助けて。
翌日、城に戻ったら血相変えてトモハルがすっ飛んできた。
ちょっと風邪気味のあたし、なぁんにもする気が起きなくて一人でファミレスでだらだらしてたんだー。
「よ、よかった、無事で」
「無事だよ・・・あたしがそこら辺のに負けると思うの?」
「女の子じゃないか、負けるよ」
怒り口調でそう言われたから、むっときたんだけど、どうにも身体がダルイ。
反論する気もなくって、視線をトモハルから逸らす。
入って直ぐの銅像がなんか粉砕されてるのが目に入った、なんだ、ありゃ?
「ねぇ、あれ、どうしたの? 強盗かなんか来たわけ?」
「え、あ、あぁ、あれね。うん、新しいメイドさんにさ、こう、頑張れよ、ってぽん、って触ったらさ、『セクハラ』って叫ばれて、あそこに俺が叩きつけられたんだ」
「なんつー怪力メイド。っていうか、バカじゃないの、あんた」
「ははは・・・。
あのさ、マビル。何処へ行ってもいいんだけど、出掛けるときはメモでいいから教えてほしいんだ」
不意に真剣に言ってきたから、思わず目を吊り上げる。
迷子の猫じゃないんだから、そんなことしなくても。
あたし、ちゃんと一人で帰ってこれるし、迷子になんかならないしー。
それとも、あれだ。
・・・おねーちゃんに言われているから、あたしを護るって?
保護者か、トモハル、あたしの保護者なのか。
なんだか熱っぽい、声も出すと喉が痛いし。
イライラする、イライラする。
「約束して、マビル。束縛はしないよ、でも行き先だけは必ず教えて」
「・・・あーもー、煩いなぁっ! 分かったよ、ちゃんと言うよっ」
言ったらトモハル。
大きく溜息を吐いて笑顔であたしの頭を撫でた。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |