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この間のオフで、東京駅で購入したあれですが。
ユーリエル様と、私の背後友達、そして私が購入したフルーツ酢なんですが。
二本購入して、残り一本。
勿体無くて飲めないのです。
弟がもうすぐ東京へ出張で行くので、その際に買ってきてもらおうかと。
と、思って不意に製造者を見たら。
地元!!!(爆笑)
近すぎるっ!!(驚愕)
というトモマビ。
思いの外、マビルが終わりません。
そろそーろ、アサギが出てきます。
作者は、アサギ派なのですーよ。
毎晩、トモハルは部屋まで戻ってきてくれた。
でも。
あたし。
追い返したの。
だ、だってさ!
『私の部屋、来ます?』
って、メイドに言われているの、聞いたんだ。
そ、そっちで寝ればいーじゃんねっ。
とかさ、通りすがりでさ、メイド達が浮き足立って、こぞってトモハルのとこに寄って行くからさ。
い、何時見ても、誰かと一緒だしさっ。
なんか、あたし、馬鹿みたいじゃない???
と、思ったから。
ほ、ホントは。
一人じゃ大きすぎて、このベット。
寂しいから、クロロンとチャチャを連れてきて、一緒に寝てたんだけど。
ほ、ホントは。
ほん、ホントはね。
手を、手を。
手を繋いで欲しいんだ。
でも、あたしは、おねーちゃんと違うので。
『手を繋いで眠って欲しいナ♪ きゅるるん♪』
などとは、とても言えない。
トモハルは、毎日来てくれた。
来てくれたんだけど。
「一緒に、寝ようよマビル」
「うっさい! しつこいっ! 大嫌い! もう来んな! 本当に嫌がってるのっ」
言ってから後悔したの、ホントは言いたくないの。
でも、昼間とかメイドに囲まれてて別に不自由してないみたいだし。
あんな姿見たらさ、追い返したくなるよね。
だ、だってさ、肩とかに触れてさ、仕事してるしさ。
あたしなんて、手しか繋いで貰ってないのにさ。
今日なんかメイド達がトモハルにお菓子作ってたし、なんか数日後に出掛けるとかなんとかさ・・・。
・・・。
ちゃんと、明日も来てくれる?
あ、明日こそちゃんと、「戻っておいで」って言うから。
戻って、来てね?
戻って、来てね?
心配になって、トモハルを捜しに出掛けた。
小さな部屋があるから、そこで寝てるって聞いたんだ。
行く途中、メイド達の姿を見つけたから思わずカーテンに隠れる。
「ホント、マビル様最悪! どうしてトモハル様が追いやられるのかしらっ」
「でも、これでトモハル様のとこに通い易くなるよね」
「邪魔されないよね」
・・・。
行く気を失くした。
気持ち悪い。
あたし、部屋に戻ってごろごろ転がる。
手がない、手を繋いで欲しいのに。
クロロンとチャチャが心配してか、啼きながら傍に来てくれた。
二匹を抱き締めて眠るけど・・・違うの。
違うんだ。
いいね、お前達はいつも一緒でさ。
仲良くてさ、偶に喧嘩してるけど、結局一緒だよね。
明日こそ、明日こそ、明日こそ。
言わなくちゃ、もう、戻っていいよ、って。
一週間目、お昼に部屋に戻ったらトモハルの荷物が無くなってた。
もともと、あたしの荷物が多いから大した変化なんてないけど。
違和感を感じたの、慌てて部屋を飛び出した。
あたし達のこの部屋から離れた場所、小さな物置みたいな部屋。
簡素なベットでホント、眠るだけのトモハルの部屋が出来た。
「国王がそんな場所で寝なくともっ」
「え、いいよ。別に一日の半分以上をここで過ごすわけじゃないだろ」
笑いながら部屋を適当に片付けているトモハル、おろおろと周囲にメイドやら、家臣やら。
「遊びに来てもぉ、いいですかぁー?」
「はは、何にもないけど、別にいいよ」
「きゃーっ、ありがとうございますぅー」
・・・。
あたしがいなくても。
トモハルは楽しそうだった。
寧ろ、あたしの世話をしなくてもいいから、気楽なのかもしれない。
あたしは、本当に、一人ぼっちになった。
トモハルが買ってくれた大きなベットは、邪魔だ。
お姫様みたいなふりふりがついてるけど、邪魔だ。
邪魔以外の何者でもない。
・・・あたしは、少し、夢を見た。
夜、このふりふりのベットで眠っていたら、誰かが起こしに来てくれる。
そぉっと、ふりふりを開いて顔を覗かせて、笑った王子様が、キスをして起こしてくれるんだ。
あぁ、あれだ。
おねーちゃんが読んでくれた本で”眠り姫”ってのがあったね、あれ。
あたし、ふりふりのベットにクロロンとチャチャと。
ごろごろごろ。
眠らない眠り姫には、起こしに来てくれる王子様がいない。
・・・。
寂しい、な。
夜、そっと、トモハルの部屋へ出向いてみた。
うろうろと、ドアの前で行ったり来たり。
物音がしたからびっくりして、カーテンに隠れる。
部屋から、誰かが出てきたの。
メイドが二人、出てきたの。
なんだか顔を赤らめて楽しそうだったの。
そしたら、トモハルが顔を出して「おやすみ、ありがとう」って。
メイド達は深くお辞儀をして、嬉しそうに帰っていった。
・・・。
何を、していたんだろう。
トモハルは、そのままドアを閉めて部屋に戻る。
あたしも、お部屋に、帰ろうか、な・・・。
・・・。
ふらふらと、窓から外へ飛び出した。
困った、行くトコなんてあんまりない。
兄のアイセルは新婚で、あたしはお邪魔虫だし。
弟のトーマは、色々動き回ってて把握出来ないし。
奈留は、彼氏と一緒だし。
おねーちゃんの弟達も、学校が忙しいから寝ているだろうし。
あぁ、あたし、他に頼れる人がいない・・・。
・・・あ。
トビィを忘れてた。
ちょっと、遊びに行こうかな・・・。
「トビィー!」
「・・・なんなんだ、いきなり」
仏頂面で出迎えてきたトビィ、無視して脇を擦り抜けてオジャマシマス。
トビィは、贅沢にも自分の家を持っているから部屋は空いている筈。
というか、ベットだけならあたしのベットのほうが室が良くて気持ち良いから、そこは目的ではない。
「ねね、一緒に寝よっ」
「断る。他をあたれ」
即答。
面倒そうに部屋の奥へ消えて行って、一人ソファで雑誌を読みふけるトビィ、ワインを呑んでいた。
・・・なんて態度!
「あたし、眠い」
「自分の城で寝ろよ」
「豪華な生活に飽きたから、庶民の生活を堪能しに来たよ! トビィのベットも大きいよね、クイーンサイズだよね! あたし一人くらい、良いよねっ」
「忙しいんだが、オレは」
「雑誌読んでるだけでしょっ」
心底迷惑そうに大袈裟に溜息を吐いたトビィは、ドアを指した。
「クレシダ達が寝ているから、適当に遊んで来い」
「えー、トビィがいいのにー」
「あのな、マビル。あのベットはオレとアサギ専用なんだ」
「・・・なんて無駄なベット!」
ともかく、あたしは眠い。
仕方なく別の人物を探すべく、移動。
誰の部屋だ、ここ。
「やっほー! じゃーん、マビルちゃんですよーっ」
「・・・」
ぎゃぁ、クレシダ!
何を考えているか不明なんだよね、苦手。
静まり返る室内、クレシダは眠っていた、ベットから起き上がることなく、布団からじぃ、とこちらを見ている。
「隣で寝てもいいー? このマビルちゃんが添い寝してあげるよー」
「・・・遠慮いたしますゆえ」
ごろ。
クレシダ、反対を向いて眠り始める。
・・・殺す。
あたし、布団をはがして仁王立ち。
「あのねぇ、このあたしが隣で寝てあげる、って言ってんの! 飛び起きて出迎えくらいしなよ」
「遠慮いたしますゆえ」
「きーっ! いいでしょ、ちょっと中に入れてよ」
あたし、強引に隣に寝転ぶと布団を被る。
あ、あったかい。
人が寝てると、お布団暖かくていいよね。
いつもは、あたしが先に寝ててトモハルが後から来るから最初は冷たいんだけどさ、どんどんあったかくなるんだ。
「あの、マビル様」
「何?」
「・・・邪魔です」
「はぁ!?」
真顔で心底迷惑そうにこちらを向くと、いつもの無表情でそう言われた。
・・・何、この竜。
ってうかさ、竜だよね、今人型だけど。
「あのさ、クレシダ。じゃ、あたしがここで寝るから、あんた外で寝てなよ。竜の姿なら寒くないでしょ? 昔はそうやって寝てたんだよね?」
一分の沈黙、破られてクレシダのマシンガントークが始まった。
は、初めてここまで喋ってるの見たよ!
喋れたのか、クレシダ!
「趣味は昼寝ですが、夜こうして眠るのも好きです。
常日頃から眠りについていたのですが、こうして人型になり、ベットというもので柔らかで暖かなものに包まれて、ぬくぬくとして眠りに就くと・・・。
幸せを感じますゆえ。
今では竜の姿で眠るのが億劫になっております、ここは私の大事な場所に御座います。
・・・ゆえに、マビル様であれど、邪魔しないで頂きたく。
私が先ほどから満遍なく暖めたこのベット、勝手に入らないで下さい・・・」
ベットに対する愛情はよーく、解ったよクレシダ。
でもさ、ちょっと・・・。
ごろごろろ。
「痛い! 重い!」
呆れて動けなかったあたしに、急にクレシダが転がってきた。
な、なんなのー!?
押し潰す勢いというか、追い出す勢いで。
ごろろろろろろ・・・。
ぐいぐい。
「きゃー!」
あたし。
ベットから投げ出されて落下、床に転がった。
お、押し出された!
「く、クレシダっ! 表へ出ろっ!」
「・・・」
何事もなかったかのようにクレシダは眠りに入っている、し、信じられない!
・・・これは、別へ移動したほうが良さそうだ・・・。
あたしは、クレシダの頭部を叩いてから、部屋を出る。
さて、次は誰かなー?
せめてデズデモーナがいいんだけど、なー・・・。
と、思ったらオフィーリアが居た。
ベットに転がってお菓子を食べている、そういえばコイツ、超甘党だったっけ。
部屋には一丁前に加湿器、乾燥すると動けないんだよね、水竜だから。
うん、過ごし易そうだ、ここにしよう。
「ねぇ、一緒に寝ようよ」
「えー、やだよ、狭くなるじゃん」
・・・えぇい、このチビ竜がっ。
あたし、仕方なく大袈裟に大きく溜息を吐いて、オフィーリアの隣にゆっくりと座る。
「解ってないなぁ、このマビルちゃんの添い寝だよー? 食べると甘くて美味しい、極上スイーツのマビルちゃんと一緒だよー?」
「甘くて美味しいの?」
そこに食いついてきたオフィーリア、板チョコを手から離してあたしを見つめてきた。
大きくなればあたし好みの美青年に化けるかもしれないけど、今はまだあたしの範囲外だわー。
でも、キレーは、キレーだよね。
「甘くて美味しいんだから、見た目通りに。食べたいならどうぞー?」
ふふん、鼻で挑発的に笑って小さくウィンク。
目の前でオフィーリアは嬉しそうに瞳を輝かせて、一言。
「わーい、いただきまーす」
徐にあたしの左腕を取ると、そのまま大きく口を開ける。
へ?
止める間もなく、コイツ!
「いたあぁぁぁぁぁぁいいいいいいいいっ!」
思いっきり、噛み付いてきた! 何、コイツ!
「いたい、いたい、痛いーっ!!!」
思い切り腕を振り回し、剥がして見れば、あ、あたしの自慢の綺麗な腕に、歯型が・・・っ。
「ちょ、何すんだ、この馬鹿竜っ」
「美味しいって、食べてもいいって言ったじゃーん」
「そういう意味じゃないのっ! こ、このお子ちゃまめっ!」
冗談じゃない、あたし、腕を擦りながら部屋を出て、別の部屋へ。
・・・オフィーリアも、嫌い!
あーもー、次こそ、一番まともなデズデモーナ!・・・の、筈。
「いかがされました、マビル様」
あぁよかった、一番常識的な反応ありがとう、デズデモーナ。
あんたがナンバーワン、お利巧さん、素晴らしい、こんぐらっちれーしょん!
「一緒に寝よ。はい、おやすみ」
勝手に空いていたベットに入って瞳を閉じるあたし、慌てふためいてテーブルで何かしていたデズデモーナが飛んで来た。
「何事ですか!?」
「明日詳しく説明するからさ、今は眠らせてー」
「困ります、何故そんなことに!?」
イチイチ面倒だなぁ、いいじゃん、あたしが眠りたいって言ってるんだからさ。
耳元で喚きたてるデズデモーナにげんなりして、上半身だけ起したあたしは、舌打ちして頭をかく。
「もー、あたしに歯向かうとトビィにばらすよ?」
「・・・何をですか?」
「あんたが、おねーちゃんのこと好きだっていう事実を。
まずいよねぇ、トビィの相棒の竜のデズデモーナがさぁ、トビィの最愛のおねーちゃんのこと、好きだなんてさぁ」
うん、トビィ知らないもんね、この事実。
青褪めつつも冷静そうにデズデモーナは、弁解を始めた。
あっはっは、単純にひっかかってくれてありがとう、脅し成功ー♪
「好きとは恐れ多い! 私はアサギ様をお慕いしているだけでございますが。
ただ、只管護りたいと思っているだけで御座いまして、いや、好きとか嫌いとか、そういう部類分けは出来ませぬ」
「好きか嫌いか、って訊かれたら、好きなクセにー」
「それは当然に御座います」
あ、墓穴だデズデモーナ。
爆笑してたら、思いっきり睨まれたから、睨み返してやる。
まぁ、ともかく普通に会話も出来るし、ここで落ち着くとしようかな。
とにかく、喉乾いたー。
水分補給したい、いつものお水置いてきたし、でも、質の良いお水飲みたいし。
「お水持ってきて、デズデモーナ。美味しいやつね」
「・・・私は、召使ではありません」
「マビルちゃんの世話は、通常一時間で一万円支払って出来るものだよ、無料で世話させてあげるっていうんだから、快く引き受けなよ」
「五万円支払いますので、お引取り下さい」
真顔で言ったデズデモーナ、鼻で笑うとあたしはケータイを取り出す。
あて先、トビィ。
「えーっと。『トビィへ。デズデモーナがおねーちゃんにフォーリンラブしている模様。トビィが邪魔な様子、至急体罰を要請・・・』」
「わ、解りました、水ですね」
部屋を出て行こうとするデズデモーナを、笑顔で呼び止めた。
「クレシダがさ、水マニアだよね。一番美味しいお水、貰ってきてね」
「・・・」
ふふん、いいね、単純で。
・・・トモハルは毎晩、お水を用意してくれた。
毎晩というか、常時。
・・・。
「デズデモーナ、足揉んで、足。そこのオイル使って、丁寧にね」
「・・・」
お水飲みながら、次の指示。
眠気が覚めた、面白いからこのままデズデモーナと遊んであげよう。
「マビルちゃんの足を揉むのに、一万円必要だけど、デズデモーナだから特別に無料にしてあげるよ」
「誰が大金払ってこんなことするんですかね」
ぶつぶつ小声でそう言うデズデモーナ、反省の色ないな?
「ちーがーう、やり方が違う! 老廃物を押し出すように、こう!
・・・明日からリフレクの講座習いにいきなよ、開業も出来るし便利だよ」
「一応私、竜ですからそんなスキル必要ないかと」
・・・副職にいいと思うんだけどな。
「次、肩ね。肩を揉むのに更に一万円必要だけど、特別に無料にしてあげるからね。
あたし、ちょーやさしーっ」
「普段は誰がこんなことしてるんです?」
げんなりして肩を揉み出したデズデモーナ、あたし、我に返った。
・・・トモハルは。
言えばなんだってしてくれた。
最近は、してくれないけど。
昔は足が疲れたと言えば笑いながら丁寧にマッサージしてくれたし、多少無理な注文も必死でなんとかしてくれたっけ。
「・・・その人に頼めば良いのに」
「うっさい」
急に、気分が低下。
もーいいや、飽きた。
あたし、デズデモーナの部屋を出る。
出る直前で、振り返らずに訊いてみたの。
「ねぇ、デズデモーナ。おねーちゃんを好きで、良い事あった?」
一呼吸置いてから、後ろから声がする。
思いの外優しい声だったから、あたしは。
自分が何故か情けなくなったんだ。
何故かって?
・・・竜だって、誰かを好きで、その想いをちゃんと言葉に出来ると知ってしまったからよ。
100%報われないって、知っている筈なのにね。
あぁ、もう一人いるか。
「トビィー、一緒に寝てー」
「戻ってきたのか・・・」
まだワインを呑んでいたトビィ、機嫌悪そう・・・こわっ。
でも、無言でグラス片手にワインを差し出して来たから・・・追い返されないみたいだね。
有難く、グラスを受け取る。
トビィとワイン。
・・・と、言えば。
あの、トモハルの誕生日を思い出した。
もう、半年以上前の事だ、あの日。
あたし、今思えば酷い事をトモハルに言ってしまった。
ふと、そう思ってしまった。
思ったら、気持ちが悪くなってきた。
ちびちびワインを二人で無言で呑んでいたけど、どうも味がわかんない。
美味しくない。
色々とさ、考えすぎたのかもしれない。
やがてトビィがぽつり、と一言。
「呑んだら、帰れ」
「えー、泊めてよ。か弱い乙女をこんな夜空に放り出すって? 酷いー。
一緒に寝ようよ、きゃるるん♪」
「キモっ」
・・・うん、ごめん、あたしも今自分で自分がキモかった。
「それで、家出の原因は何だ」
「家出じゃないよ、男ばっかで寂しいだろうから、ぴちぴちぷりんぷりんの美少女マビルちゃんが会いに来てあげたんだよ、気を利かせて」
「そんな傍迷惑な気は要らん」
「むっ! このあたしが添い寝してあげるって言うんだから、有難く受け取りなよ。特別サービスでトビィなら相手してあげてもいーけどー?
顔は好みだから、顔は」
うん、暇だしね。
相手してあげよう。
うるとら出血、大サービス。
小首傾げて、軽く微笑んで上目遣い。
トビィは、失笑して黙々とワインを呑んでいる。
あたしの勘に触った、今の態度はなんだ。
意地でもこっち向かせてやるっ。
「おねーちゃんと大差ないと思うけど? 髪の色は違うけどさ」
言ったら、トビィは真顔であたしを見てきた。
「・・・アサギはもっと肌に潤いがあるし、若干、胸もアサギの方が大きい。ついでに恐らく感度もアサギの方が良いし・・・。
まぁ何より、マビルはオレ的”アウトオブ眼中”だから、無理。悪いな、他にしとけ。
まず、誘い方から間違ってる。アサギの名を出すなら相応の真似しろよ」
さらり。
言葉に詰まった。
ちょっと、待て。
すぐに視線をそらして、興味なさそうにあたしには目もくれない、冗談抜きであたしはアウトオブ眼中なわけね。
・・・ちょーっと、半殺しにしてもいーだろーか。
勢い余って魔法を発動するトコだった、けど、ここは我慢だ。
「据え膳喰わぬは男のなんたら、って言わない?」
顔を引き攣らせて仁王立ち、トビィを睨みつけたら、再度失笑される。
あぁもう、イチイチ態度がイラつく。
「あのな?
アサギ以外興味ないってマビルも知ってるだろ?
遊びで互いが合意の上で後腐れないなら、稀に相手するけどな、アサギじゃなくても」
「あぁ、それならあたしのことでしょ。遊びで合意の上、後腐れなし」
ここまで来たら、自棄。
ここまで貶されたの初めて・・・じゃないか、トランシスにも前なんか言われたね。
兄弟、二人揃ってこの双子、ほんっと、憎たらしい奴ら!
トビィは、深い溜息を吐いて、ワインのグラスをことん、ってテーブルに置いた。
ん、何、やる気?
受けて立つ。
・・・トビィは、綺麗だ、と思う。
あ、顔の話ね、顔の話。
今まで見た男の中で一番綺麗かもしれない。
顔は好きだ、身長も好みだ、でも、あたしの言う事全くきかないから、好きじゃない。
「合意の上、ねぇ」
何か文句あるの? って、言おうとしたんだ。
言おうとしたんだけどさ、いきなり。
トビィが。
背中に何か感触、近づいたトビィの顔。
心臓が、凍った。
背中に寒気が走った。
鳥肌が立った。
全身で拒否を。
気持ちが悪い、五感が拒絶を。
「っやー!」
反射的に、大きく叫んだあたしは、右手をトビィ向けてはなったの。
パシッて、トビィに難なく受け止められて。
我に返った。
息を大きく吸い込む。
吐き出す。
ぞわぞわ、肌に何かが纏わりついてて離れないみたいで。
目の前でトビィは無表情で、何も言わずに。
あたしを、見ていた。
ゆ、油断も、隙もない。
一瞬であたしをベットに押し倒しやがった、コイツ。
と、そんなことに感心している場合ではない。
今の、何?
物凄く、気持ちが悪いの。
気づけば、トビィに捕まれている手が、震えてた。
・・・なんだ、これは。
大きく唾を飲み込んだ、何故か足も震えている。
・・・なんだ、これは。
トビィが小さく溜息吐いて、あたしの手を解放し。
あたし。
ぼーっと、天井を見てた。
ベットに寝転がったまま、ぼけーっと。
身体が、動かない。
動かないっていうか、震えてて、額に嫌な汗が浮かぶ。
カタカタ、って、歯が鳴った。
少しづつ、感覚がはっきりしてきたから指を動かしてみた。
どうしたんだ、あたしの身体。
びょーき?
「ほら」
手首を掴まれて、起き上がる。
何かを目の前に差し出された、とても良い香りがする飲み物だ。
じーっと、湯気が立ち上るカップを見ていたら。
「アサギが好きで、一緒に良く飲んだ。
落ち着くぞ」
グレープフルーツ? フルーツ酢?
こくん。
飲んだら少し、落ち着いた。
ようやく身体が震えなくなった。
夢中で飲んでいたら、トビィがさ。
「何が同意の上、だ」
コン、って頭を小突くから。
「ど、同意だよっ」
「表情ガチガチ、あからさまに硬直して嫌悪感丸出し。
・・・あれで同意だって言われても、な」
そんな、馬鹿な。
思わず唇を噛み締める。
・・・別に。
大した事ではない、はず。
別に、今まで意識してきた事なんてない、はず。
トビィなら、顔もキレーだし。
・・・キレーだし。
肩を、叩かれる。
思わずトビィを見上げたら、カップに唇をつけて唇を濡らすように飲んでから。
「無理するな。自棄になる相手がオレでない場合がある、気をつけろよ」
ぽんぽん、って背中を叩かれる。
「無理してない! 自棄じゃない!」
「・・・抱かれたい男がいるんだろ? ちゃんとそこへ行け」
軽く睨むようにそう言われたから思わず、あたし顔が赤くなったんだ。
そんな男、いない。
別に、誰だって一緒だ。
そんな特別な男、いない。
「そういうとこだけ、アサギに似てるな」
似てない。
そこは似てない。
あたし、おねーちゃんと決定的にそこだけ、違う。
似てない、似てない。
・・・似て、ないんだから。
「・・・お代わり」
カップを差し出したら、トビィは苦笑いしたけど部屋を出て作りに行ってくれたみたい。
さっきも、部屋を出て行ったのか、全然気づかなかった・・・。
ぼけーっと突っ立っているあたし。
変だ、こんなのあたしじゃない。
あたしらしく、ない。
何処かで、あたしの身体、誰かと入れ替わったんだ。
でなきゃ、説明つかない。
あたし、あの時。
どうして一瞬トモハルを思い浮かべてしまったのだろう。
何故、トモハルの名を呼ぼうとしたのだろう。
なんで。
トビィは駄目で、トモハルは良いのだろう。
こんなのは、あたしじゃない。
何故、トモハルにならして欲しいと思ってしまっているのだろう。
あたしの身体、きっと、壊れたんだ。
トビィが戻ってきて、飲み物をくれた。
で、アルバムをたくさん出してきてくれた。
二人、床に転がってソレを見る。
小さい、おねーちゃんと、トモハル。
仲良し。
なかよ・・・し?
「あれ? ねぇ、なんでおねーちゃんの隣、ミノルばっかりなの?」
そうなのだ、トランシスがいない写真はどれもこれもおねーちゃんの隣にミノルが居る。
てっきり、いつもおねーちゃんとトモハルはセットだとばかり。
「アサギの元彼だからだろ」
「は、初耳!」
・・・複雑だね、トモハル。
親友と片思いの女の子が恋人だっただなんて、報われないね。
「なんでこの二人、別れたの?」
「ミノルの浮気」
「・・・へー・・・」
し、知らなかった。
おねーちゃん・・・。
ミノルといい、トランシスといい、趣味、悪い。
我が姉ながら、びっくりだ。
よかったー、異性のタイプは違うみたいー。
これなら、よっぽど、トモハルのほうがまだ・・・。
いや。
それは、違うか。
それにしても、トモハル。
へぇ、そっか、おねーちゃんの元彼って、ミノルだったのか。
おねーちゃんやめて、あたしにしとけばいーのに。
と、不意に思ったような気がした。
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