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弟の友達から貰ったお茶(花梨)。
お湯入れるだけ。
本来、花梨は風邪を引いたときに私はよく飲む(というか、風邪を引くと花梨+生姜で乗り切る人)のですが、寒いので冬はやはり身体があったまる飲み物が良いですね♪
ジャムにも使えると書いてあるのですが、とても食べにくそうなので(花梨がごろごろしている・・・)
昨日はスパに行って堪能してきたので、元気な私です。
ともかく。
オフレポ京都と横浜書き上げよう・・・。
いそいそ。
「おじちゃーん、桃食べに来たー」
「マビルちゃんでねぇかぁ、よぉきた、よぉきたぁ!」
最近仲良しのおじちゃん、おじちゃんと呼んでいるけど実は26歳だと知った時には流石のあたしも眩暈。
いや、見た目も老けてるしさ、言葉遣いも最初何を言ってるのかわかんなかったし。
かなり田舎で育ってきたらしい、桃屋さんだ。
「マビルちゃんのおかげでぇ、わけぇ子が最近来てくれるんだべさぁ」
「よかったじゃん、でも、それあたしのおかげじゃないよ。桃が美味しいからだよ」
「んなことねぇべぇ、おらさ、こんな話かたしかできねぇもんで、わけぇ子、寄ってこなかったべぇ・・・。でもぉ、マビルちゃんが通いだしてからはぁ、人が来るんだべぇ。マビルちゃん、べっぴんさんだからなぁ、皆集まるんだー」
・・・ええぇっと、理解するのに時間がかかるんだよね。
ともかく、誉めてくれていることは解った。
うん、多分。
あたしはいつものカットされた桃を口に運びながら、通り過ぎる人を見つめる、ここは。
ここは、トモハルの国だ。
あたしの一応旦那の国だ。
あたしは、多分、ここのお姫様なんだ。
・・・そう、なんだよね。
でも、違和感がある。
こうして国を見てても実感が全くないのは、あたしが仕事をしてないからなんだろうな。
あたしは、おねーちゃんみたく頭も良くないし、世間知らず・・・らしい。
得意な事は自分の好きなこと。
あたしの好きなことは、国の為にはならないんだー。
「どしたぁ、元気ねぇべぇ・・・」
「ん、大丈夫だよ、あはは。・・・あたしがおねーちゃんだったら、もっとおじちゃんの店も流行るだろうに。ごめんね」
「はぁ~? 何言ってるべ? マビルちゃんが色々言ってくれたからぁ、こうなったんだべ。おらぁ、アサギ様は見たことないべぇ、ほだで、マビルちゃんの方が好きだべさ」
「あはは、ありがと、おじちゃん」
「何か、あっただか?」
「ふふ、桃食べたから元気でた。またね、おじちゃん」
「ま、マビルちゃん?」
次は何処へ行こうか、あそこへ行こう。
いつものルート、ここから右に曲がってちょこと歩いて・・・到着。
「マビル様ーっ」
「やっ。服見に来たー」
「新しいのデザインしたので、よければ着てくださいー」
「うむうむ、着てみるよ、着てみるよ!」
同じ歳くらいの子がデザイナーなんだ、このお店。
通りかかったら結構可愛かったから、最近あたしの服はここのが多いのだ。
お小遣いでちゃんと買えるし、ふりふりだけどピタ、としてるから好き。
「これ、ちょーだい」
「ありがとうございますーっ。マビル様に着てもらえるなら、作った甲斐があります」
「大袈裟だなぁ、うれしーけどさ」
あたしも、友達じゃないけど仲良くしてくれる人たちが出来た、実はちょっと嬉しかったりする。
お城より、街の方がみんな優しいし、楽しい。
・・・優しくしてくれるのは、あたしがお城のお姫様だからなのか、おねーちゃんの双子の妹だからなのか。
まぁ、別にいいんだけどさ。
「元気ないのは、何故ですか?」
「そんなことないよ、普段通り」
「・・・」
あたし。
欲しいものがあるの。
願い事があるの。
おねーちゃんに、会いたい。
あたしの、大好きな、大事な、おねーちゃん。
・・・あたし、人魚姫は嫌いだとあれだけ言ったのに。
イチゴのネックレス。
トモハルが買ってくれた安いオモチャみたいな、あれ。
あれね。
結構気に入ってたの。
あれが、ない。
どこにも、ないの。
トモハル。
あたしの言う事、ちゃんときいて。
前はなんでもしてくれた、きいてくれた。
最近、あたしはほったらかし。
高い服とか鞄とか。
美味しい食事に、素敵なお部屋。
違う、違う、今欲しいのはそんなんじゃない。
もっと小さな部屋でイイの。
もっと小さなベッドでイイの。
隣で、アンタが前みたくさ、手を繋いで「傍にいるよ」って言ってくれれば。
それでいいのに。
安心出来たし、嬉しかった。
何故かわかんないけど、楽しかった。
おねーちゃんは、一つの恋に破れて居なくなってしまったから、あたしは恋なんてしないんだ。
面倒だ。
あたしには、似合わない。
だからこの気持ちは「好き」じゃない。
傍に、いて。
ちゃんと、みてて。
あたしを、可愛がって。
あたしを、誉めて。
あたしを、好きだと言って。
何があっても、へこまないで。
何を言われても、ついてきて。
好きなら、ついてきて。
好きなら、止めて。
好きなら・・・。
あれ?
あたし、トモハルに好きだと言って欲しいの???
・・・。
あー、もう、気持ち悪い。
もやもやして、トモハルを捜したら、アイツ。
・・・楽しそうにメイド軍団に囲まれてた。
だから。
あたし。
ものすごく、ものすごーく。
気分悪いの。
何時見ても、トモハルは女の子に囲まれていたから。
無性にイライラが止まらない。
へらへらしてるのが、こう・・・潰したいくらい、大嫌いで。
おまけに、さ。
あたしには、さ。
もう、キスとかしてくれないのに、さ。
きっと、きっと、そのメイド達にはしてるんだ。
だってさ、信じられないけど。
メイド達の会話を聞いたんだ。
トモハルのファンクラブがあるんだってー。
わー、信じられないー。
あんなのの、何がいいわけー?
あたしとは好みが違うんだー。
立ち聞きしたの、たまたまね、たまたま。
あのトモハルが可愛いとか、さ。
偶に庭でクロロン達と遊んでる時の顔が、超やさしーとか、さ。
あの食べ物が好きとか、あれが嫌いとか。
・・・あ、あたし、そんなの、知らないもん・・・。
一緒にあそこへ行った、とか。
一緒にあれを考えた、とか。
・・・あたしは、そんなこと、してないもん・・・。
ふらり、とアイツに会いに行った。
トランシス・ライフ・ディアシュ。
おねーちゃんの、恋人。
あたしがむかーし、欲しいと思った、トビィに似た、きれーな男。
トランシスは、発狂して監禁されているからさ、会うのが大変だった。
けど、なんとなーく。
「ねぇ」
「・・・」
ぼーっとして、宙を見てるトランシスに声をかける。
反応、なし。
まぁいいや、ともかく。
「どーして、おねーちゃんが好きだったのに、酷い事したの?」
この男、酷いんだ。
おねーちゃんに、酷い事、いーっぱいしたんだ。
というか、殺しかけたんだよね。
返事は、ない。
じーっと、目の前のトランシスを見ていたら、不意に目が合った。
「なんだ、マビルか。・・・アサギは?」
「居ないよ」
「・・・そっか。トビィは?」
「なんか色々飛び回ってるよ」
「だろうな・・・」
それきり、何も言わず。
あたし、帰ろうと思ったの。
「大好きなんだ。だから、酷い事した」
「は?」
反応したよ、この人。
「大好きな人に、一番されたくないことって、なんだと思う? ・・・存在を忘れられることだろ? 酷い事したら、絶対に忘れずに、心に刻み込まれると思ったんだ。
独り占めしたいんだ、怖がられてもいいから、傍に置いておきたかったんだ」
「存在を、忘れられる?」
「マビルには、好きな男いないかもしれないけど。もし、そいつがさ、自分以外の誰かに優しくしてたら嫌だろ?」
・・・いないかもしれない、って、ちょっと。
や、いないよ、あーそーですよ、いないけどー。
黙っていたら、微かに笑った。
「自分に嫉妬してこない奴は、自分の事、好きじゃないんだ。どうでもいいんだよね。
それならさ、もっと自分を強烈に印象付けないと。
毎日毎日、どんな時も思い出させるんだ。
眠っていても、恐怖で飛び起きるくらいに、さ。
痛みを植えつける、首を絞めて死なない程度に剣を刺す。
頭を踏みつけて、腹部を蹴飛ばせば・・・。
罵倒し、全てを否定すれば・・・。
あはは、いいね、あぁ楽しいなぁ。
あの時は、楽しかったなぁ、恍惚だね、死ぬほどの快楽を味わった気がするね」
な、なんかおかしなこと言い出したぞ、この男。
「どうしてあの時、アサギを殺しておかなかったんだろ、それだけが悔やまれるかなぁ。
今からでも遅くないかなぁ・・・。
・・・で、マビル。
オレのアサギ、何処行った?」
声が、変わった。
マズい、トランシスが立ち上がってこっちに来るから思わずあたし、後方へ。
この男は、おねーちゃんとほぼ互角の力を持ってしまってるから、性質が悪い。
これが監禁されている理由だ、何かの拍子でこの男、狂ってしまう。
おねーちゃんと離れ離れになったものだから、恋焦がれてなのかなんなのか。
い、いやだなぁ、このあたしすら、蛇に睨まれた蛙みたく。
「答えろよ、マビル。オレのアサギ、何処に居る?」
「し、知らないっ」
「嘘だ、お前知ってるだろ」
「し、知らないってばっ」
これはまずい、逃げよう。
目の前に檻があるから、大丈夫だ。
大丈夫、簡単には出てこられない筈だもん、あたし、逃げなきゃ。
走り出したあたしの背に、トランシスの笑い声。
狂ってる、コイツ、まだ狂ってる!
「可哀想なマビル、アサギの影に埋もれて。
この先もずっと、アサギの存在が眩すぎてお前は一人ぼっち。
アサギが居れば、居るほどに、お前の存在は薄くて薄くて。
何をしても、アサギには勝てるわけもなく」
・・・そうだけど、さ。
だからどーした。
唇噛み締めて、それでも走る。
「オレとマビル、似てるんだよね。
構って欲しいんだ、でも上手く感情を表せない。
いつかお前、オレと同じ事をするよ?」
うっさいなぁ、トランシスみたく、なるもんかっ。
「嫉妬して欲しいのに、してこないのは。
トモハルがアサギを好きだからだよ」
思わず、足を止めた。
振り返って、しまった。
なんて言った、こいつ。
「知ってる通り、トモハルがマビルの傍にいるのは”アサギに頼まれたから”。
キスもしてこない、触れてもこない、それは興味の対象外だから。
好きじゃないんだ、所詮マビルはアサギの代わり。」
あたし、思わず踵を返したの。
トランシスのほうへ、寄って行ったの。
「好きだったら、マビルのことを放っておかないだろ?
傍に居ろ、って叱るだろ。
少しくらい強引に迫るだろ。
その指輪は偽りの指輪、本当の指輪はアサギのもの。
トモハルはマビルを通して、アサギを見てる。
・・・いい子だから、ここからオレを出せよ、助けてやる」
あたし、おねーちゃんの、代わり。
おねーちゃんの、代わり。
おねーちゃんの、かわ・・・
「馬鹿かマビル、目を覚ませ」
ふらふら、と、トランシスの檻に手を伸ばした。
目の前でトランシスは、きれーな笑顔を浮かべてた。
子供みたいに目を輝かせて、そっと指を檻から出して。
それに、触れようとしたら、後ろから抱きかかえられて・・・正気に戻ったの、あたし。
「トビィ?」
「マビルが入っていった、って聞いてオレも来てみたら・・・案の定。
しっかりしろ、耳を貸すな。デズ、マビルを連れて行け」
耳元で聴こえた声は、トモハルじゃなくてトビィだった。
見上げてみれば険しい顔でトランシスを睨んでる、あったかくて思わず足の力が抜けた。
あたし、緊張で身体が強張ってたみたい。
目の前でトランシスは、更に笑顔、子犬みたいに尻尾振るみたく手を伸ばす。
デズデモーナに抱きかかえられて、あたしはそんな二人を見送った。
ある意味、双子のこの二人。
双子、か。
あたしとおねーちゃんみたいなもんだ。
「おかえり、トビィ。で、どう? オレのアサギは見つかった?」
「見つからない、少し落ち着けないのか、お前は?」
「ここから出せよ、一緒に探すよ」
「・・・」
トビィがこちらに近づいてくる、後ろでトランシスが笑い転げる。
・・・うっさい。
あたし、思わず耳を塞いだ、あの笑い声、大嫌い。
「デズ、トモハルに連絡しろ、迎えに来て貰う」
部屋を離れてから、トビィが軽い溜息と共にそんな事言うから、あたし思わずデズデモーナを振り払う。
冗談じゃない。
「子供じゃないんだから、馬鹿にしないで!」
「だが、精神的にダメージが大きくないか?」
「平気っ、あんな奴の言葉なんか、別にどうにも・・・」
「・・・無理するな、少し休んで行け」
肩を叩いて立ち去るトビィ、その後ろをデズデモーナが忠実に歩いていく。
ゆっくり歩くその姿、思わず睨みつけたら。
「気をつけろ、マビル。最もアサギに近いのはお前なんだから」
妙に真剣な声でトビィが言ってきたから、あたし思わず口を噤んだの。
独りになって、散歩したらトランシスの言葉が甦ってきて、あたし。
駄目だ、ちょっと疲れた。
噴水に腰掛けて一休み、気持ちが悪い。
もし。
トモハルがあたしを好きだったら。
好きだったら。
嫉妬とか、する?
もし。
あたしがトモハルを好きなら。
好きだとしたら。
嫉妬とか、独占欲とか。
い、いやだ・・・。
これじゃ、あたしがトモハルを好きみたいじゃん。
で、あっちは好きじゃないんだ。
『好きなんだ、最初に見たときから、好きなんだ』
・・・って。
昔、昔、あたしが一回死ぬ前に、トモハルはそう言ってくれた・・・気が・・・するんだけど。
好きだったのかもしれない、その時は確かに。
でも、あたし、この間酷い事を言ってしまったかもしれないから、それで。
・・・好きでなくなったのかもしれない。
それより以前に。
あたしが居なかった空白の約、三年間。
その、間に。
トモハルとおねーちゃんは、更に親密な仲になっていたのかもしれない。
対の勇者様。
似て非なる武器を所持する、勇者の要。
狂ったトランシスより、何処か抜けてて馬鹿でお人よしそうなトモハルのほうが。
・・・いや、まてよ? 顔ならトビィのほうが・・・その他諸々、トビィが上か。
・・・でも、あれは”兄”だもんね。
あいつ、妙にアホみたいに優しいから、おねーちゃんのことも支えていたんだろうな・・・。
そもそも。
この指輪、くれた時もさ。
好きとか、何も言ってなかったしさ。
あたし、聞いたんだー、知ってるんだー。
あのお城、無関係なあたしは幾らおねーちゃんの妹でも、住めなかったんだよね。
それで、トモハル慌てたんだ。
あたしを住まわせる為には、唯一つ。
あたしがトモハルとなんらかの関係を持たねばならない、それはつまり。
嫁。
王妃。
つまり、トモハルと結婚する事。
そうすれば、お城であたしが暮らしても問題ない。
おねーちゃんにあたしのことを任されたトモハル、大事に裕福に育てるつもりだったんだろうか。
お城をくれたの。
でもさぁ、あたし。
・・・そうじゃ、なくて・・・。
噴水に手を差し伸べた、水が、冷たい。
不意に。
「あ、あれ?」
水面に映った自分が。
・・・おねーちゃんに見えた。
「へ? えええええ?」
思わず手を伸ばす、あたしの髪は真っ黒、緑じゃ、ないもの。
水面に映っているのは、緑の髪のあたし・・・じゃなくて、おねーちゃん。
ええええええええ。
『・・・、・・・。・・・』
おねーちゃん、何か、言った。
何を、言ったんだろう。
じっと、見てたけど・・・解んなかった。
あたし、そこで眠りに就いたの。
そして夢を見た。
おねーちゃんと、トモハルと、あたし。
三人一緒。
それは、とても贅沢な夢だったかもしれない、けど。
・・・とても、哀しい夢だったのは。
トモハルが、おねーちゃんを見ていたからだ。
城に戻ってみれば、そういえば最近さ、気がついたんだけど・・・。
メイドに声をかける。
「ねぇ、この城って、セミロングが流行ってんの?」
そうなのだ、ミディアムメイドが多すぎる。
聞いたら、苦笑いして小声で二人のメイドは顰めきあって。
「トモハル様の好みに合わせているんですけど・・・」
はぁ!? 何だそれ。
あまりにあたしが変な顔をしていたのか、メイド達は懐から何やら雑誌を取り出した。
表紙が、トモハル。
・・・何、それ???
「トモハル様のインタビュー記事で、ここに好きな女性のタイプが書いてあったものですから。
皆こぞってこの通りに」
思わず引っ手繰る様に奪い取った雑誌、食い入るように見つめたら。
『セミロングの女の子が可愛いと思うんだ。子猫みたいな感じの子が好き、あぁ、強気な子が好きだよ』
・・・な、何これ???
ばっかじゃないのー!? 何様ー!?
・・・国王様か。
唖然としてたら、メイドに雑誌を奪われた。
「マビル様、ご存知なかったんですか、この雑誌のこととか」
「本当にトモハル様に興味がないのですね」
・・・。
悪かったな、知らないよ、そんなくだらない雑誌。
あぁ、興味ないですよーだ、あんなへっぽこ勇者。
メイド達は意図的になのか、何なのか、雑誌を広げ始める。
思わず、気になってあたしも盗み見を。
・・・メイド達の中心で笑っているトモハルが、見えた。
死んでしまえっ!
・・・あーもー、すっごい、うざい!!!
部屋に戻って、適当に食事してお風呂もさっとすませて、肌のお手入れもそこそこに、ベッドに入って転がる。
・・・眠れない。
あーあーあーあーあーあーああああっ!
暫く、ごろごろしてたら数時間経過、トモハルがやってきた。
あたしの不機嫌、まっくす。
案の定、お布団持ち上げて入ってこようとしたから、さ。
「・・・一緒に寝るの?」
「え、そうだよ、何で?」
何でじゃないっつーの、そもそも、何で一緒に寝てるわけ?
頭にきた、きょとん、としてるコイツが、ホント、もー・・・。
手当たり次第、枕を投げた、といっても二つしかないけどさ。
「あたし、一緒に寝たくない」
子猫みたいなセミロングの勝気などこぞの女と、寝てればいいじゃないかっ。
悪いけど、あたしはっ。
「でも、ほら、手を繋がないと! マビル、手を繋いで眠ったほうが良いだろ?」
なんという、勘違い!
いつ、どこで、あたしはそんなことを言った?
あんたが勝手にそう思い込んで、手を繋ぎ始めたんでしょー!?
一緒に居たくないんだ、だって、あんたさ。
・・・あたしじゃなくても別にいいくせにー!
あたし、そこまで誰かの代わりになるような、お手軽な女じゃないんだっ。
どれだけ、罵倒しても。
どれだけ、必死に殴っても。
何も言わずにうろたえるだけのコイツ、思ったのあたし。
もし。
あたしのこと、好きなら。
違うだろ、って抱き締めるとかさ、他にすること、あるでしょう!?
部屋から、押し出したの。
呆然としてるトモハルを、追い出したの。
一人、ベッドに戻る。
あたし、間違ってない。
子供じゃない、一人で眠れる。
大丈夫。
居なくても、平気だ。
あぁもう、本当に。
このイライラは何処から来るんだろう?
あまりにもイライラしてたから、お水を飲んだ。
・・・トモハルが、取り寄せてくれてる、高いお水が部屋に置いてあるから、さ。
お肌にいいんだよね、これ。
一気に二杯、飲み干して身体中を冷たい水が駆け巡ったら、少し沸騰感が収まったから。
あたし、そっと。
ドアを開けてトモハルがいないか、捜してみた。
・・・いなかった。
土下座して、というか、外で待っててくれたらな、とか思ったんだけど。
・・・いなかった。
部屋に戻って深く溜息、気づけば部屋に、あの変な雑誌が置いてある。
趣味悪っ、自分で自分の特集を読むのか、アイツ。
パラパラ、と見ようとしたんだけど、さっきのさ、メイドに囲まれてデレデレしてるのを見たら、殺したくなりそうだったから、やめる。
表紙のトモハルは。
・・・首を締め上げたいくらい、笑顔だった。
キライだ。
・・・とても、キライ。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
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