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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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街で、一組の恋人に出会った。
腕を組んで仲良さそうに買い物中である。
聞くつもりはなかったのだが、はしゃぐ声が大きくて、ガーベラの耳にも届いた。
 
「お揃いの食器も買いに行かなきゃね。あと、ウエディングドレスも見に行かなきゃ」
「はいはい、焦らずに欲しいものを取りこぼさないように買おうな」
 
結婚を控えている恋人同士らしい。
ガーベラはうっすらと口元に笑みを浮かべ、その微笑ましい光景を後にした。
数日後、ガーベラの娼館に数人の男性客がやってきた。
高級の部類に入る場所なので、年配が多い娼館だったが、来たのは若い男達。
興味ありげにこぞって娼婦達が顔を覗かせる。
そんな中で特にガーベラは興味を持たず、ぼんやりと紅茶を飲んでいた。
 
「ガーベラ、指名よ」
 
カップに残っていた紅茶を飲み干すと、気だるそうにガーベラは立ち上がり、部屋へと赴く。
数分後、入ってきた男を見てガーベラは軽く目を開いた。
何処かで見た気がすると思えば、先日街で婚約者と買い物をしていた男だ。
唖然と口を開いて相手を見つめるが、赤面しながら突っ立っている男に、せめて椅子に座るように声をかける。
硬直していた身体が、バランスを崩して床に倒れこんだ。
 
「す、すいませんっ、こ、こういった場所に来ることがはじ、初めてでっ」
 
しどろもどろに語りだす男。
ガーベラは近寄って手を差し伸べた。
 
「今日はどうして?」
 
婚約者はどうしたの? と続けようかとも思ったが、客のプライベートに関わることはこちらから聞いてはいけない。
出掛かった言葉を飲み込む。
気を悪くしないでください、と前置きしてから、男は差し伸べられた手につかまると、身体を起こす。
 
「結婚する前に、お前も一度体験しておいたほうがいいって友人達が言ったので。酒を飲んでいて売り言葉に買い言葉でここまで来てしまったんです。折角だから、とここで一番人気のあるあなたを、友人達が指名して・・・」
「筋書きはわかったわ」
 
ガーベラは呆れ返って、深い溜息を吐く。
婚約者と喧嘩して、というわけではないらしい。
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背後事情でぐだぐだしている場合ではなかったので、気合を入れて戻りましたです。
今月加護明け、今伝言を返し終えて、会議室を見て、心配な方々のブログトウヲ読み漁っていたところなのです。

大変なことに(汗)。

数日前、せめて会議室を見に行っておけば、と後悔。
お誕生日スレも単独で立ててくださってありがとなのです。
アサギは幸せものですねー・・・♪
ちょっと今から出掛けるので、今夜にでも色々と会議室で発言します♪
また、一緒に遊んでください。

です。

背後ごと。
ちょっと前向きに考えることにしました。
こんな馬鹿なことでうだうだしている場合ではなかったのです。
時間が出来たのだから、『結婚』したら出来なくなることを、今やってみようと思いました。
せっかくですもんね、時間は有効に使うのです。
また講○社の某絵のコンクールに応募してみるのです。
もし、また、担当者さんから連絡がきたら、また、私の作品が目に留まったのなら。
・・・やってみましょうか。
小説の試験(?)を受けることにしたのです。
時間は出来た(はず)、やれるとこまでやってみましょう。
あとアロマ一級と、リフレクの試験。
お金があったらやってみましょうか(笑)。

→小説&まんが投稿屋のほうでは、想音。終了させたのです。
想い出したよ、自分の気持ち。
だから大丈夫大丈夫。

一ヶ月ほど前、彼氏が言ったのです。
「今なら言えるよ、運命ってあるんだって。自信を持って言えるよ、オレとお前は運命の相手だと」
ならば、私が選ぶ道は唯一つ。
※言われて居たらのなら迷うな
誰か、助けて、と。

言葉を発せば多分誰かが助けてくれる
それは分かる
それが分かる
けれど

一番救ってくれそうな人に、助けを求めていいのかどうかが
私には分からない
というか、分からないフリをして
答えは出ている

「助けてと、彼に言ってはいけないのだ」

という答えが出ている
けれど何処かで、彼に助けを求めるのなら今しかないと
そう言っている自分が居て

どうすればいいのかが、分からない

随分と前から、緑の髪の娘が羨ましかった
とても、とても、羨ましかった
彼女のようになりたいのなら。
今は我慢をするべきだ

例え彼が自分を救ってくれる存在であっても
自分は緑の髪の娘ではないので
濃紺の青年に助けを求めてはいけないのだと
・・・そう思う。
彼に助けを求めたら。
求めたら?

※きー!!!←大丈夫じゃなくなってきたっぽい(激欝)
我慢をするのです
我慢していれば、時間が経てば
願った幸せが手に入るのです
あと少し、あと少し
頑張ってきた今までを思えば短いものです

普通よりも幸せなのです
恵まれているのです
だから我慢するのです
我慢できるはずなのです

ご飯を食べてる隣にあなたが居ない
お風呂を入ってもあなたが居ない
お布団はいつまでも冷たくて
あなたがいない、あなたが、いない

あなたが隣に居ないので
調子が全く出ないのです
でも、我慢するのです
二人の為に、未来の為に
願った未来を手に入れる為
ちゃんと私は大人しく
あなたを信じて待ち続ける

あなたが隣にずっと居る日を待ち続ける
・・・でもやっぱり、寂しいや。
舞踏会以降、急速に仲良くなったアースとリュウ。
校内でも常に共に行動する仲になった。
土の精霊はアースの隣にいる風の精霊を怪訝そうに、もしくは忌々しそうに見やる。
しかし、そんな周りの視線などリュウには全く関係のないことであった。
風の精霊の中にも、リュウとアースの交流を良く思わない者もいた。

「土の精霊の厄介者と一緒にいる」

という肩書きをもってしまったリュウを心配する、彼の友人達である。
もともとリュウはさほど有能な風の精霊ではない。
ただ、自由気ままに誰とでも隔てなく接する、気立てのいい精霊だ。
だから、友人も少なくはなかった。
学校でも勉強よりも遊びに励む。
テストの点にしても、赤点クラスのときもあれば、10位以内に入るときもある。
全て生活「風」任せ。
言うなれば、もっとも風の精霊らしい性格なのかもしれない。
そんな彼だからこそ、友人にアースとの仲をどんなに否定されようとも、リュウは特にその言葉を飲もうとしない。
リュウにとって、今までの友人も、そしてアースも大事な存在なのだ。
しかし、今はまだ、彼はアースに「恋心」を抱いていることなど知る由もなかった。

「アース! 今日はどの学科を受けるんだ?」

毎朝、アースの姿を校舎の中で見つけては、そう声をかける。
笑顔でアースも返答する。

「今日はね、植物について。この間受けたときに興味深かったから・・・。リュウは?」
「じゃあ、それにしようかな」

微笑み会う2人。 
リュウと出会ってから、アースの表情は温和になった。
もともと整った顔立ちであったが、笑顔を見せず、伏目がちだった為、どちらかというと近寄りがたい雰囲気であったのだが、今ではよく笑う健康的で明朗な少女になっていた。
ようやくここへ来て緊張が解れたのだろう、一人の友達という存在が大きくアースの考え方を変えた。
もう、学校も怖くない。
陰口を言われても、気にしないで前を向いて歩く。
最初は、リュウに遠慮がちに言ったのだ「私、みんなに嫌われてるんだよ。なんで仲良くしてくれるの?」。
そういうと一瞬驚いた顔をしてから、不機嫌そうにリュウは怒気を隠さずにアースに告げた。

「知らないよ、そんなの。僕にとってアースが仲良くしたい相手だからそうしてるだけで、みんなが嫌ってようがいまいが、アースはアースだろ? 人の目なんてイチイチ気にしてられないよ」

言ってから軽く額を指で撥ねる。

「くだらないこと言ってないでさ、この間の復習しようよ。僕次テストの点悪いと補修なんだよね」

額を押さえて恨めしそうに観ているアースに、リュウは笑った。

「アースは、アース。僕は僕。仲の良い友達。それ以外何者でもないよ」

リュウがそう言ったので、アースは思わず大粒の涙を零した。
泣くとは思わなかったリュウは慌てふためいたが、アースは泣きながら笑っていた。
産まれて初めて、心があたたかく感じられた。
大事な大事な友達。
思ったのだ、もし、倒れそうな程心が傷ついた時は、真っ先に彼に相談しようと。
彼ならば、笑い飛ばしてくれそうだったから。

精霊が住まう星は球体ではなく、半球体である。
中心部に神の住まう宮殿が聳えており、それを多い囲むようにして6種族の精霊たちが住んでいる。
南から時計回りに闇・土・風・光・水・火の精霊たちがそれぞれ部落を作って生活をしている。
多種族と結婚するか、もしくは宮殿で神の元で働く巫女や神官にならない限り、自分の部落を出ることはない。
そしてその精霊たちの土地の下にすぐ人間たちが住まう場所がある。
地下ではない、この星は二階建てのような構造になっており、上が精霊たち、下が人間たちの住まう星なのだ。
これが主星アイブライト。
人間たちから見れば、文字通り神や精霊は雲の上に住んでいるのである。
精霊界から人間界に流れ落ちる滝もあるし、鳥などは人間界から飛んでくることもある。
ただ、人間だけはこちらの世界へは侵入できないようになっている。
そういったシールドのようなものが張り巡らされているのだ。
これは、人間たちが自分たちにとって代わるような行動を起こさせないために、あえてしていることである。
「あの方々は自分とは違う」といった意識を常に人間たちには、植え付けておかねばいけない。
しかし、かといって交流がないわけでもなく、人間界の一番高い場所と、精霊界の一番低い場所は、手こそ触れ合えないが、普通に会話できるほどに密接している。
一番高い場所と一番低い場所、それはどちらの世界でも学生たちが勤勉に励む「学校」の裏庭にあった。 
 
アースとリュウは裏庭に位置する、噴水で一休みをしていた。
石灰石でできた、巨大な鳥の嘴から水が流れ出る仕組みになっているものだ。
その噴水の周りには木でできたベンチが五つほど置かれており、花壇には年中咲き誇る花が植えられている。
その噴水の周りに一角だけ、土地がくぼんだ場所がある。
真っ白に塗られた柵で覆われているのだが、そこを除くと、人間界が見えるのだ。
アースは人間を見るのが好きで良くこの裏庭を訪れた。
今日もリュウと片手に、ぶどうを持ってここから人間たちを覗いている。

「あ、アース様!」

人間の声と足音、走ってくるのは少年と少女が二人づつである。

「アース様、リュウ様こんにちは!」

勢いよく会釈をして、そばかすだらけの少女は微笑む。

「こんにちは! シャロン、エミュー、ルイス、ウェイト。またここにきちゃった」

アースは手を振り、舌を出して悪戯っぽく微笑んだ。
よほど必死になって走ったのだろう、火照った体を冷すように人間の少年・ルイスは噴水の中に入って、水浴びをする。
それを見たウェイトも真似して、続いて噴水に入っていった。

「もう! あんた達、アース様とリュウ様の前で変なことしないでよっ。品位が悪いと、アース様の星に移住できないじゃない」

膨れっ面で二人の少年を睨みつけるシャロン、見下ろしながらアースは首を振る。

「品位なんて関係ないよ。それに、私の星が完成するのにもまだ時間がかかるの。いつ頃完成するのかわからないし・・・もしかしたら、みんながおじいちゃん・おばあちゃんになった頃位かもしれないよ?」

笑うアースを、隣で眩しそうに見つめるリュウ。
変わったな、と率直な感想。
・・・最近、アースはとても活発だった。
他人と仲良くなりすぎて、嫉妬の念を抱いた時期もあったが、彼女に友達が増えることは良いことである。
リュウはそんなアースの変化を見るのが、つつましい事ながら幸せであった。

「早く頑張って星を創って下さいよ?」

水滴を煌かせながらルイスはガッツポーズをアースに向ける。
他の三人も大きくそれに頷いた。

「私たち、アース様の星に移住するのが夢なんです」
「これだけは、ゆずれねぇぜ! だから、俺は、がんばって勉強してるんです。いい成績で学校を過ごしていれば、きっと優先的にあなたの星に行ける筈なんだ」
「選ばれし者、という名目でね」
「アース様、星の名前はなんてつけるんですか?」

その質問に、アースは一呼吸してから口を開いた。
リュウは知っている、アースとの会話でよく出てくる単語がその星の名前。

「スクルド・・・土の精霊の言葉で『運命』という意味なんだよ」

人間の少年と少女達は心にその名前を刻み込んだ。

「スクルド。どうか、その星へ俺達が移住できますように」
「あ、そうだアース様。今度新しい友達連れてきてもいい? 新しく転校して来た子がいるの」
「もちろん! なんて名前なの? どんな子?」
「『カナ』って言う、神秘的な女の子」
「アース様の事を話してたら、会いたがってたんだよね。なんか『未来でまた逢えますけれど』とかなんとか言ってたけど」
 
アースの星・スクルドは殆ど完成していた。
創造主であるアース自身の力量も同期の土の精霊の中では、確実に差をつけて頂点に立っている。
地質学・生物学共に完璧な成績を収め、学校側も彼女に対してついに最終段階への指令を出そうというときであった。
星の育成についての最終確認、自然の四大元素である火・水・風・土の精霊たちが協力して初めて星は成長する。
その協力者を揃えなければいけない。
協力者は学校側から選出されるが、その土の精霊とある程度親しいものから順に選ばれる。
風の精霊は確実にリュウが選出されるだろうが、生憎火と水の精霊はこれといってアースに知り合いはいなかったので、学校側に全てを任せてあった。
協力者選出の日取りを数日後に控え、アースとリュウは夜道を歩いていた。
時折仄かに見える光は蛍である。
学校の周りには夜、年中通して蛍が浮遊する。
幻想的な光景だった。

「・・・私の星にも蛍さんがいるといいな」

近くに寄ってきた蛍の光を手の平で優しく受け止める。

「素晴らしい星にしような! 僕は精一杯頑張るよ。ただ・・・他の二人の精霊も仲良くやれそうな奴だといいんだけど」

軽く溜息を吐き、リュウは苦笑いをする。
彼にとって心配なのは、アースの敵になりそうな精霊が協力者に選ばれた場合のことだ。
そうなってはとても育成どころではない、学校側もその点は抜かりがないはずだが、気は抜けない。
リュウの募る慕情、自身でもそれはなんとなくわかっていた。
リュウの願いはただ一つ、アースが笑顔でいること、ただそれだけだった。
芽生えてしまった、確信した『アースへの恋心』。
それはどうにも出来ないものである。
友達の枠から、リュウだけが外れてしまった。
無気力な、大人しかった危なっかしい友達は、いつしか自分が与えた風を纏って穏やかな癒しの笑みを浮かべるようになった。
可愛いな、と思った。
一緒に居ると楽しい、から安らげる、に変わった。
笑顔を守り抜きたい、と思った。
彼女が笑うのが好きだ、だから傍にいて笑わせようと誓った。

「そういえば・・・。明後日なんだけど、武術大会があるんだ。見に行ってみるか? 気晴らしに」
「武術大会って何?」

首を傾げるアース。

「十年に一度開かれる、誰が一番強いかを決める大会さ。資格があるのは学校に通っている生徒、武器は特に限定されていないから、みんな自信のある武器で戦うんだ。今日明日が予選で明後日が本戦、一度くらい観てみるのもいいかなと思って」
「へぇ、そんなのあったんだー・・・。そうだね、行ってみたいな」
「話によると今回の勝ち抜き者は火の精霊と水の精霊だろうって。数年前から勃興してるらしいんだけど」
「うん、じゃあ明後日行ってみようね」

蛍を空中に送り出すと、アースはリュウに微笑んだ。
二人で他愛のない話をできることは、もう最後だろうからと、リュウはアースを瞳に焼き付ける。
もしかしたら、アースの協力者に選ばれないかもしれない、そんな不安を隠しつつ、リュウは心中を誰にも明かさなかった。
そうしたら当分お別れだ。
傍に居られない。
それがこんなにも苦しい、まだ確定していないけれど、苦しい。
どうか、僕が選定されますように。

本戦当日、アースはいつものように麻のワンピースを着て出かけようとしていた。
特に着飾ることもない、アースはそう思ったのだが。
母親が公の場に出るのだからと、いつのまに買い揃えたのか豪華な生地のワンピースが用意されていた。
落ち着いたダークブラウンのワンピースはロングで、足元にフリルが何段もついている。
ショールは透ける素材の淡いピンクで、鈴蘭のコサージュがついていた。
渋々とアースはそれに着替えると、目立ちはしないかと冷や冷やしながら、リュウとの待ち合わせ場所に向かった。

「・・・今日は妙に気合が入っているじゃないか」

呆れたように呟くリュウに、そっぽを向いてアースは小声で答えた。

「お母さんがこれを着ていけって」

アースが自ら着飾ることはないので、理由はわかっていたことなのだが。
不貞腐れるアースを笑い飛ばしながら、二人は手をつないで会場へと向かう。
ごった返した人ごみの中を、なんとか前へと進もうとするのだが、なかなか思うように体が動かない。
ひたすら広大な草原を進んでいくと、決戦となる会場が見えてくる。
会場は巨大な大木を切り落とし、それを寝かせた丸太の上で戦う。
足元が不安定で非常に戦いづらい。
初めてこのような実戦ではないとはいえ『戦闘』の場所を居訪れたアースは、物珍しそうに辺りをきょときょとと見回しながら、リュウに引っ張られつつ進む。
武術大会は全種族が一斉に参加する大会のため、風や土の精霊以外にも、もちろん火に水、光に闇の精霊も多く観覧にきていた。
特に光と闇の精霊はあまり他種族と交流しない為、アースは近くで見るのは初めてだ。
といっても、外見に差はないのだが。
身に纏う『オーラ』が種族によって変わるのだ。
会場の様子が遠くでは見えないので、一応草原にはいたるところに魔法で作られた鏡のようなものが設置されており、それに映像を写すためどこからでも見えるようには配慮されている。
しかし、折角だからとリュウは会場のすぐ近くまで行く気であった。
心が躍り、口元が思わず綻びるリュウ。
こういった祭りごとは彼は大好きなのだ。
学校での文化祭なども彼は先頭に立って奮闘していた。
人ごみは好きではないが、こういった「祭りごと」の人ごみは快感らしい。
堅苦しくなく、騒げることは大好きだ。

「アース、大丈夫か?」

我に返るリュウは、ふとアースに声をかける。
申し訳なさそうな声に、アースは吹き出した。

「全然平気! わくわくしてくるね」
「そか。じゃあ、もうちょっと前まで行こう」
 
朗らかな笑顔で、ぎゅっと手を握り締めると、再びリュウは会場目指して突き進んだ。
そんな彼を見ながら、いつも以上のはしゃぎぶりに、可笑しくてアースは小さく笑みをもらすのである。
不意に、その場に集まっている精霊たちが、一斉に歓声を上げた。
どうやら準決勝が終了したようだ。

「勝者! 火の精霊、トリプトル・ノートゥング! 決勝進出! 決勝戦は彼と、水の精霊、トロイ・ベルズングの両者に決定!」

わあああぁぁぁぁぁぁぁ・・・。
大歓声が巻き起こる。

「まずい! 決勝戦だ」
「立て続けに戦うの? 疲れていないの?」
「一応休憩があるけれど・・・」
「じゃあ、始まる前に、がんばって前に少しでも近づこう?」

相変わらず包容力のある言葉と声だ、とリュウは惚けた。
いつでも、アースは自分が失敗したり焦ったりしたときには隣で励ましてくれる。
なんともいえない安心感に包まれた。

「・・・そうだな、行こう!」

気を取り直して進む二人。
不意に、リュウの隣でアースは小さく胸を抑えた。
とくんとくん・・・、これが興奮というもの? 呼吸が乱れて顔が上気している。
味わったことない感覚。
周りの雰囲気に乗せられてこうなっているのか、それとも、それとも。

「火の精霊、トリプトル・ノートゥング」

小さくアースは呟いた、リュウにも聞き取れないほど小さく。
気になってしまったその名。

「トリプトル・ノートゥング。トリプトル・ノートゥング」

呪文のように小さく、繰り返し呟く。
その言葉に熱がこもっていることなど、全く知らずに。
虚ろな瞳でただ、呟き続ける。
・・・遠くで、アナウンスが流れる。

「決勝戦開始、五分前! 両者、入場!」

星が揺れる大歓声、その声と歓声が混ざり合う。
会場である丸太の上に二つの影が、踊り出た。

「南! 火の精霊、トリプトル・ノートゥング! ついに決勝戦進出です! 幾多の大会で惜しくも決勝戦には出ることなく敗退、しかし、今回ついにその因縁を断ち切りました! ライバルであり、しかして親友でもある相手との対決です!」

うおおぉぉぉぉぉ・・・

「北! 水の精霊、トロイ・ベルズング! 過去の大会において優秀な成績を収め、優勝回数なんと四回!今回勝利を収めれば最多記録の五回になります! そして対戦相手であり、親友でもあるトリプトル選手がここまで来るのを待ち侘びていた人物は、彼以外他に存在しません! 壮絶な、しかして爽やかな決闘が繰り広げられることでしょう!」

わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・

「二人は、親友なんだな・・・。知らなかった」

アナウンスを聞き、呟くリュウの傍ら、アースは眩しそうに大木の上の二人を見つめた。
二人が歩み寄って、中央で固い握手を交わす。
正々堂々戦闘することを誓ったのだ。
と。
ふと丸太の上にて握手を交わした二人は同時にゆっくりと、ある一点を見つめた。
盛大な拍手と歓声の渦の中でただ一箇所、暈される風景の中で一転だけ清明になる場所。

「・・・」
「・・・」

二人、その一点を見つめて言葉を失う。
そしてまた、その一点である者・・・アースもまた、二人を見つめて・・・いや正確には『火の精霊、トリプトル・ノートゥング』を見つめていた。
これが、二人の出会い。
永久かと思われた幾度の転生を繰り返し、絶望に打ちひしがれて、ついに想いが届かなかった二人の、始まりの瞬間である。
この場の優先席で何気に彼らを見やった光の精霊ベシュタも、リュウも、トロイも含め、彼らはどこかで歯車が回転する音を聞いた。
キィィィ・・・・カトン。
かすかに軋みながら、今はまだ穏やかに歯車は動き出す。
運命の歯車、始まりの音が聞える。
終焉を迎えるその日まで、休むことなく、回り続ける。
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