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キングベッドの上に二つの影。
未だ夜は蒸し暑く、窓は全開、風を部屋に送り込む。
純白のカーテンが揺れ、月の光が微かに部屋に入り込んだ。
ベッドの上で、男が本を読んでいる。
背に柔らかで大きなクッションを置き、熱心に何かを読んでいた。
傍らには飲み物が。
どうやら中身は焼酎らしい、ベッド付近のテーブルにボトルが置いてあった。
その男の膝には、女が寝転がっている。
腰に腕を回し、男の顔をじっと見ていた。
たまに、男の手が女の髪を撫でると、女は嬉しそうに腕に力を込めて、さらに密着する。
「この角度、好きなのですー」
下から夫の顔を見上げながら、アサギはそう呟いた。
そうか? 苦笑いしながらギルザが再度頭を撫でる。
うっとりと目を細めるアサギ。
「いつも見ているだろう、いい加減飽きないか?」
「飽きませんけど」
これでもアサギなりに、ギルザの読書の邪魔をしないようにしているつもりだ。
密着していないと耐えられないので、一番居心地の良い場所を探した結果が膝の上である。
小さく欠伸をしつつ、身動ぎして体勢を整える。
ぽつり、と出た言葉。
「アサギは、贅沢者ですよね」
「ん?」
小説からギルザが目を離し、傍らに置くと、アサギの身体を軽々と持ち上げ、抱きかかえて背中を優しく擦った。
「どうした?」
「んー・・・。友達にたくさん再会できたのです。失ったモノもあるけれど。新しい友達も出来たのです、みんな凄く可愛いのです」
「良いことじゃないか」
「うん。優しい友達がたくさん居るので、楽しいのです。それからギルザがいるから」
アサギはギルザの首に腕を回し、そのまま、ぽふん、と胸に顔を埋めて瞳を閉じる。
「アサギが羨ましいのだそうです。楽しそうだから、幸せそうだから」
言ってから、軽く胸が苦しくなった。
それが何故かなんて、分かっている。
ただ、言葉に出来ない。
人は誰でも、幸せになれる権利を持っているのに。
幸せの定義が人によって違うけれど、恋をする権利はみんな持っているのに。
ただ、みんなみんな、自分のようには動くことが出来ないのだと、最近痛感した。
「人それぞれ、だから。オレがオレで、アサギがアサギであるから一緒に居るわけであって。その子にも必ず誰かが存在する。それは焦って探すものでもないだろう?」
「そうなのですけど・・・」
羨ましいと、楽しそうだと、言われるのは嬉しいのだ。
ホントの事だから。
それを言われるということは、言った相手はそうではないということで。
どうにもならないのだけれど、苦しくなる。
早く彼女を救ってあげて、と。
「ゆっくり、見守るしかないだろ。恋は焦って探すものではない、と言ったのはアサギだ」
「うん・・・」
「その子に助けを求められた時、アサギが頑張ればいいから」
「うん・・・ありが・・・と」
ギルザにしがみ付いていた腕の力が軽く抜ける。
見ればアサギは寝息を立てていた。
「あ、寝た」
ギルザは苦笑いをすると、そのままアサギをゆっくりと寝かせる。
オレも寝るか、小さく呟くと、そのまま隣に倒れこんだ。
寝転び、ギルザはアサギを軽く見る。
何かを探してアサギが寝返りを打った。
決まった位置まで身体を動かし、ギルザにしがみ付いて、小さく笑う。
眠っていても、必ず探して動き回って、しがみ付くとようやく安堵するのだ。
「おやすみ、アサギ」
笑いを堪えながらギルザは呟く。
・・・また、明日。
耳元で囁いて額に口付けを。
仲良く二人で寄り添って、決して朝まで離れないように。
月の光が微かに二人を照らす。
おやすみなさい、また明日。
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