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私、セントガーディアンを。
細身長剣にしてる・・・!
だからアル様がっ(遅)←コロッセウム
・・・知らなかった、細身長剣だったのか・・・(えぇ)。
小・中学生の頃、DESを書きながら某まこさんは思っていました。
①アサギ→魔界で楽しく暮らしてます(酷)
②ケンイチ&ユキ→地味に頑張ってます
③ダイキ→トビィとアリナの影で懸命に生きています
④トモハル&ミノル→一番、まともです
そう。
トモハル組が
トモハル(勇者)
ミノル(勇者)
ライアン(剣士)※トビィより劣るがそれでも人間の中では相当強い
マダーニ(魔術師)※火の魔法において、4星で右に出るものがいない(人間では)
という、やたらめった強いパーティなのです。
しかし、まこ、数年の時を経て気づいてしまったのでござりゅんよ!
「あ、これ、回復係がトモハルだ」←えぇぇ
ミノル→初歩治癒魔法しか使用できず
マダーニ→同上。なので、二人に教えられない
ライアン→問題外
トモハル→そんな状態だったので、必死に自力で会得し、回復魔法を次々に・・・(笑)
勇者なのに! 勇者なのに、常に後方支援っ!
・・・だからあんなんになったんだね、トモハル。
ちなみに、本編だとまだあれですが、アサギは後方支援どころではなく、最前線組、むしろトビィと互角なのですー。
アサギ&トモハルが揃うと、二人の戦いぶりが逆っぽくて面白いかもしれませんー。
頑張れトモハル。
少しトモハルの作者お気に入り度が上がりました、あとで・・・直すよ2→4に(飛躍)。
画は元IF社員の友人様。
誰かといいますと・・・。
中央の子が「マジョルカ」といって、トモハルとマビルの娘でした(過去形)。
すっかり彼女の存在を忘れていて、トビィ君に言われて気づいたのですがっ。
ESにマビルが行かないとトモハルが自力でマビルとの誤解を解くので、こういう結末が待っていたらしーです。
流石に10年以上も前の話を覚えていられるほど、お利巧さんではないのでござりゅんよ、まこは(瀕死)。
・・・みんなに言ったかどうか記憶がないのですが、私エビちゃんとタメですからねー。
42→ケンイチ編、開始。
怪しい二人組みの追跡、及び魔物との戦闘
43→ザーク、死亡。
死因を探るべく、調査。
44→なんかユキがケンイチを気にし始めた今日この頃、いかがお過ごしですか(おい)、な話。
道場に出向き訓練をする日々。
45→頻繁に街で起こる強盗や殺人を突き止め、裏と対峙
46→アリナ達、船から降りる。
シポラ城へ
47→ミシア、魔族2人に崇められ「破壊の姫君」であると告げられる
何食わぬ顔で仲間達と合流
48→ジェノヴァへ戻り、集結
49→アサギ・トモハル編開始
ライアン、マダーニ、トモハル、ミノル。
当初の道を進むのはこの四人である、沈黙しかないその馬車の中、目立つ空席が寂しい気持ちに拍車を掛けた。
行き先は”ピョートル”という名の国家、そこにはアサギの武器が保管されている筈だ、だが肝心のアサギが・・・いない。
直には辿り着けないので、途中で”ジョアン”という街に立ち寄るわけだが、そこまでの道程は非常に安全である。
商人達が行き交う為、大きくはないが古びた石畳の街道が延々と造られているのだ、馬にも負担が軽い。
ライアンが当然馬車を操作し、マダーニが勇者二人の魔法について指導。
無言で本を読み老けている勇者二人を瞳を細めて見守る、マダーニはトモハルを観た。
アサギに次いで優秀だと思われるトモハル、魔力も高いし何より覚えも早い。
問題はミノルだった、他の勇者に比べて格段に低いことが一目瞭然、それは魔法にしても剣技においても、である。
勇者達が離れ離れになった為、比較出来るのがトモハルとミノルになった事もあるだろうが、力の差が現時点で開き過ぎている。
溜息を吐くマダーニ、ミノルは勇者としての自覚がないのだと思われる、そればかりはどうしようもない。
元々、ミノルはこちらの世界へ来る事に反対していた、それをトモハルの挑発により売り言葉に買い言葉で参加したのだ。
本来は他の勇者同様、素質のある子かもしれないが、やはり重要なのは本人の意志。
それは勇者になりたいと願う想いであり、誰かを救いたいという想いでもあり。
もし、ミノルがアサギを救出すべく強い思いを明確にしてくれたらば、上手く行きそうな気がして。
けれども現時点では全く無理だ、救いたいという思い以前にアサギが不在でミノルが塞ぎ込んでいるのだ。
動揺している、心配しているのだろうが、気迫が全くない。
それを観てマダーニは思った、単に仲間を心配しているだけではない、と。
アサギが稀にミノルにしたたかな視線を送っていたことは、マダーニとて気づいている。
ミノルはそんな素振りを全く見せずに、むしろ邪険にアサギを扱っているようにも思えたが・・・ひょっとすると照れ隠しの裏返しだろうか。
居るはずの存在が、消えた。
トモハルは、アサギを救出すべく強い意思を持って必死に出来る限りの努力をしている。
ミノルは、アサギの身が心配で何も手につかない、という状態だろうか。
これでは再び、二人の間に差が出来てしまう。
それに気づき、自分の考えを改める事が出来るだろうか、マダーニは自分からミノルへそれを伝える事はしない。
・・・あんたは、出来る、がんばりなさい・・・ミノルを見つめながらマダーニはそう願った。
そんな視線に気づくわけもなく、ミノルは馬車から外へと視線を移していた。
陽は高く、太陽が残酷な強い光を放ち空気の温度が上昇。
周囲はオリーブの木々が生い茂り、ゴツゴツとした岩が転がっていた。
初めて観る風景だ、印象的だがあまり視界には映っていない。
遠くを見つめるミノルの瞳にぼんやりと小学校が映し出された、今頃面倒な授業を受けていただろうか、休み時間でサッカーをしていただろうか。
心の中でアサギの名を呟く、顔を顰めて俯いた、胸が痛い。
もし。
アサギが死んでしまったらどうすれば良いのだろうか、とミノルは思ったのだ。
何故、こんなことになったのだろうか、と思ったのだ。
・・・どうすればいい?
・・・今ここで、何をしているんだろう?
・・・ここへ来て、何をする気だったんだろう?
・・・アサギが、勇者になるっていうからみんなでついてきた。
・・・? 勇者って、何だ?
例えばこれがゲームの中ならば、ミノルは得意だった。
死んでも誰かの魔法で、道具で生き返る。
全滅したとしても、リセット、という心強い味方がいるわけで。
けれど、それは出来ない、これはゲームではない現実だ。
勇者とは。
定められた血筋の正統なる勇者。
立派な働きをした勇敢なる者。
選定され、否応なしに動く勇者。
大まかに分けるとこの三種に分類されると、ミノルは思っている。
当然ミノル達は最後の”選定された”勇者だ。
・・・何故、選ばれた?
・・・もし、全員が勇者を放棄していたらどうなったんだろうか?
「何を基準に選んだ、何故俺達なんだ」
ぼそり、とミノルは吐き捨てるように言い放つ、それは恐らく勇者を決めた誰かに向けて。
”勇者”と後に呼ばれる者には、プレッシャーがかからない。
周囲から見れば異端児で、その時誰も彼が勇者になるとは思っても居ないだろうから馬鹿にもするだろう。
実際、地球上でも死して後の世になってから功績が認められ、当時は見向きもされなかった偉大な芸術家に学者達が多く存在する。
それなら良いのだ、偉業を成し遂げたのだから、例え生前認められなくとも。
だが、勝手に選定された勇者は。
自分の意志とは裏腹に期待を受け、強制的に旅立ち、いつ命を落としても仕方がない戦いへと誘われる。
運命とは残酷で、誰が決めたのか知らないが勝手に作られた脚本通りに進むしかないのだろうか。
「俺は。操り人形じゃないからな」
ぼそり、呟く。
その言葉はトモハルにも、マダーニにも、ライアンにも当然届かない。
”運命に踊らされている”。
運命とは、何か。
誰が決めるのかなんて、それは神しかないだろう。
神とは、何か。
神ならば、神が本当に存在するのならば勇者ではなくて魔王に挑むのは神が妥当ではないのか。
人々の運命を位置づけているだけの、神、何もしない、神。
ミノルは苛立ちを覚え、手の魔道書を硬く握り締める。
怒りをぶつける様に思い切り掴んだ、ぐしゃり、と紙が曲がる。
神という誰でも知っている単語の人物に、けれども誰も正体を知らない人物に。
道の傍を、小川が流れていた。
光の反射する青く透き通った水が、さらさらと流れていく。
不意にアサギを思い出した、とてもこういう風景が好きそうだな、とミノルは思った。
魔道書に目を落とす、観ないとは自分でも解っていたがそれでも、形だけでも。
大きな浮かぶ球体を見つめながら、男が一人苦笑いしている。
「子供は素直だな、まいった」
透き通った淡い青の、その球体。
そこに映っていたのは先程から勇者とは何か、神とは何かと、ひたすら考えていた実るが映っている。
濃紺の流れるような髪、神々しい光を放つ金の瞳の、凡人ではない気配を漂わせている男が、その球体に手を触れて困っていた。
彼の名は”クレロ”という。
先程までミノルが文句を言っていた相手だ、そう、神。
耳が長い以外、特に人間と大差ない容姿だった。
二十代後半に見える、少し垂れ目で気弱な感じがする。
クレロが現在居る部屋は何で出来ているのか理解出来ない、不思議な琥珀色の鉱物で出来ている。
水滴が水に広がりを見せる際の神秘的な音が、時折どこからともなく聞こえてくる。
かなり広そうな空間だが、クレロと球体以外は何もない。
魔王ハイが似た様な部屋を所持しているが、部屋の明るさ及び雰囲気が全く違うのはやはり神と魔王だからか。
クレロが踵を返し、そのまま壁に突き進むと、すっと、ドアが出現しクレロを飲み込むように開く。
躊躇することなく歩き続け部屋から出た、不意に耳に聴きなれた音が届いたので足先を変えてそちらへと向かう。
美しい声、そしてハープの音色に、優しげな笑みを浮かべると心休まる天使の歌声へと近づいていく。
明るい光の差し込む、真っ白な通路を進む、植物が生い茂る庭が見え始めた。
花盛りのティユールが甘い芳香を運び、蒼海波のようなラベンダーが風に揺れ、スパニッシュブルームが黄色い花を散りばめ咲き乱れ、噴水周囲にはディルの花が受ける水飛沫に不思議な色彩を放ち。
四季、というものが存在しないこの場所、温度も通年同じである。
故に、何種類もの花達が百貨絢爛咲き誇っているのだ。
この場所、神の住まう”天界”、中心部”インバアネス”。
雨すら降らず、しかし水不足には決してならない、非常に快適な温度の文字通り楽園。
地所では花の命は短い、しかし天界では当然のように毎日咲き誇っていた。
青い空から降り注ぐ陽光、爽やかな大気、風と共に常に花の香りを運んでくれる。
細かい花の集まりが見事な、黄色い花のレディスベッドストロー、薄紫の小さな花を咲かせるバーベイン。
天界人、と人間からは呼ばれている背に純白の羽根を所持する有翼人達が愛でる為に咲かせている花々。
クレロはそんな花たちの中を優雅に進んでいった、惹かれるように。
「何もなき宇宙の果て 何かを思い起こさせる
向こうで何かが叫ぶ 悲しみの旋律を奏でる
夢の中に落ちていく 光る湖畔闇に見つける
緑の杭に繋がれた私 現実を覆い隠したまま
薄闇押し寄せ 霧が心覆い 全て消えた
目覚めの時に 心晴れ渡り 現実を知る
そこに待つのは 生か死か」
拍手を高らかに、クレロは歩み寄るとハープを奏でていた少女が満足そうに微笑んで一礼する。
「どうされました、クレロ様。お顔の色が優れておりませんが・・・」
苦笑いし、クレロは隣に腰掛けるとかなわんなぁ、と小さく漏らして溜息。
それには答えず、クレロは口を徐に開く。
「今の歌は? やはり地上の?」
「えぇ。つい先日三星チュザーレを見つめていた際に、少女が奏でておりましたので」
「吟遊詩人か?」
「いいえ、普通の一般的な少女です。・・・というか、売春婦ですわね。カーツという名の街で一人、海に向かって歌っておりました」
瞳を閉じ、胸でハープを抱き留めると風景を思い出しているのか眉を顰める。
「あまりにも印象深く、寂しげで不安げ、つい覚えてしまいましたの。自分の今の存在が嫌なのでしょうか」
「あぁ、確かになんとも言えぬ寂しげな・・・。・・・カーツの、売春婦か」
「? 何か」
「いや・・・気がかりだ、私も彼女を調べるとしようか。上手く言えぬがどうも、ひかっかる」
「何かを感じたのですね? 私も調べましょう。名は”ガーベラ”、捨て子だそうです」
翳ったクレロの表情に、同じ様に少女も翳らせて遠慮勝ちに立ち上がると遠くを見据えてそう言った。
はっきりと、少女の胸に陰鬱な霧が広がっていく。
「いや、よい・・・。それよりソレル、勇者の一人が”神””勇者”に疑問を思い始めている。それは良い事なのかもしれんが、やはり・・・」
ソレル、という名の少女、漆黒に近い深緑の髪と瞳の天界人はクレロに跪き恭しく手を取った。
「マグワートに報告致します、神と勇者、双方の位置関係。・・・私達は世界を救うことだけ、考えましょう」
「・・・それで、良いのだろうか」
「・・・私達の為にも、気弱にならないで下さいまし・・・」
花咲き乱れる天界の楽園で。
神と天界人が溜息を零した。
それは。
今のところ魔物に遭遇していないライアン達、このままであるならば非常に好調である。
そう上手く行くはずもないが、暫しの休息だ。
今魔物に奇襲をかけられても動けるメンバーはライアンを筆頭にマダーニが後方で支援、トモハルも前線だろうがミノルは馬車から出てこられなさそうだった。
この機に先まで突き進みたかったが、ライアンとマダーニは目配せすると馬車を止める。
「よし、夕食の準備でもしようか」
トモハルとミノルの肩を叩く、ライアンが豪快に笑うと二人を押して外へ出した。
簡易な夕食で済ませようと思っていたのだが少しでもミノルの気分を上げようと、会話を交えて暖かい食事をすることにしたのだ。
干し肉に干し魚、パンを四人分取り出し鍋やら器具も持ち出して。
本来ならば大人数での旅だった、今となっては多すぎる食材に軽く苦笑いするマダーニである。
日持ちしなさそうな食材から順に使おうと、野菜も出してきた。
「茸、探してきてくれないかしら? 遠くまで行かないでね。薪はそこらのを使うから大丈夫」
マダーニに籠を渡されたトモハルとミノルは、互いに顔を見合わせて万が一にと武器を所持し歩き出す。
手を振られながら茸探しに出掛けた二人の勇者は、それでも会話がなかった。
トモハルは不服なのだ、一刻も早く先に進みたかったので食事は適当に馬車内で済ませる予定だった。
「いいかー! 絶対に生で食べるなよーっ」
ライアンの声を背に受けて、「誰が生で茸を食うかーっ」と心で叫びつつ森へと入る。
茸狩りなど、したことがない二人。
松明も念の為所持した、獣ならば火で追い払えるだろうから。
「おい、ミノル。山火事にならないように松明の扱いには十分注意をして・・・」
「それくらいわかるっつーの」
げんなりとミノルは妙に張り切るトモハルを見た、常に優等生、仕切らないと気がすまないという性格は昔から知っている。
舌打ちして、気分下がる中松明で地面を照らして歩いた。
乾いている木の枝を踏むと、パキ、と小気味良い音を出した。
木の根元を注意深く見れば、しめじらしき茸が大量に生えていた、思わず見つけたミノルは笑みを浮かべる。
先に見つけられたことが嬉しかったようだ、自身有り気にうろついているトモハルを見つめながらしめじもどきを籠へ。
「おーい、ミノル! ちょっとちょっと!」
かなり前方でしゃがんで何かしているトモハル、ミノルは意気揚々とそちらへ向かった。
小走りになり駆け寄れば、ひょろ長い薄茶の茸、真剣にトモハルが見入っている。
詰まらなさそうに声を出すミノルだったが、妙にトモハルの様子がおかしい。
「? 何。さっさとこれも採って戻ろうぜ。俺しめじみたいな茸見つけたからさ」
引き抜こうとしたミノルに、慌ててトモハルが止めに入った、怪訝に睨まれたが、傍らの木の枝を徐に手に取りトモハルはそっと茸をつつく。
「見てろよミノル・・・」
松明を掲げて真剣に茸をつつくべく、トモハルは緊張した面持ちで棒を動かした。
何事かと思わず固唾を飲んで見守るミノル。
棒が茸をつついた瞬間。
「ぎゃー!」
「毒毒毒!!」
すっとんきょうな声を上げてその場から飛び去るミノルと、トモハル。
茸から突如煙が吹き出してきたのだ、色合いも非常に不気味だ。
再度勢い良く空中に吹き上がったその煙に、二人は軽い悲鳴を上げてその場から遠ざかる。
沈黙後、二人は声を出さずとも顔を見合わせてその場を立ち去った。
あれを食べる気は全くしない。
順調に茸を採り続けて二人は適当なところで戻る事にした、離れては危ない。
トモハルが木に目印をつけていたので、難なく戻れる筈なのだが。
「あれ?」
木につけた、剣での刻みを見ていたトモハルが出した声、ミノルも近寄れば。
・・・傷が明らかに増えているのだ、トモハルは一本の木に一箇所しか傷をつけていない。
けれども、そのトモハルがつけた傷の周囲に複数細かい傷が。
「これは・・・」
思わずトモハルは左手で松明を掲げて、右手で剣を引き抜いた。
伝説の剣が松明の光によって光る、木を背にして周囲の様子を窺う。
「・・・どうする、ミノル。何か居るぞ」
無言で同じ様に剣を構えたミノル、二人は木を背にして湧き出る汗を拭うことなく暫し森の中を見つめる。
ガサガサ・・・何かが、動いた。
身体を引き攣らせてそちらを見れば、確かに何かが動いている。
叫びたい気持ちを抑えながら、ミノルは震える足で立っていた。
トモハルが妙に落ち着き、耳を頼りに音を追っている。
徐に地面に合った小石を拾い上げ、それを音がしたほうへと投げる、やはり何かが動いた。
「動物だといいな」
小さく零し、松明を更に掲げれば。
真上で何かの鳴声、驚いて木から転がるように離れた二人は成るべく寄り添い、木に向かって松明を。
・・・猿だ。
猿が数匹木に居る、魔物では・・・なさそうだが。
胸を撫で下ろしたミノルと、それでも用心深く周囲に気を張り詰めるトモハル。
「・・・木は猿だけど、森の中に居たのが何か解らない」
そういうことだ、それでも一向に動かないので二人は歩き出す。
ミノルを先に、トモハルが後ろを向きながらゆっくりと引き返す。
火があるお蔭で近寄ってこないのかもしれないな、と思った。
こうなると、茸の籠が邪魔である。
突如、ミノルが立ち止まったので後ろを向いていたトモハルは足元に籠を置いた。
立ち止まった時点で何かがあるのだろう、剣を構える。
「どうした、ミノル」
「・・・」
「落ち着け、何が見えるんだ?」
「いや、それが」
軽く振り返ったトモハルは、一瞬何がいるのか解らなかったが・・・足元を見てようやく気づいた。
ウサギ。
ウサギが、5羽。
当然、ウサギではないのだが、二人は知らない。
アサギが襲われた魔物と同じだ、ウサギの姿を模した魔物である。
トモハルは前に出ると松明を近づけてみた、逃げて行くだろうと思ったのだ。
だが、逃げることなくそこに居るウサギ、退いてくれれば良いのだが、何をするでもなくじっとしている。
剣を突きつけてみた、が、微動だしない。
「弱ったな・・・」
何故かその場を動かないウサギに困り果てたトモハルは、それでも決して手も足もださなかった。
足元の石を転がしてみる、ようやくウサギが石に反応して動いた、微かに。
低く、唸る。
5羽で、唸る。
「ちょ、トモハル、これマズいだろ・・・?」
「構えろ、ミノル。解っていると思うけどこれはウサギじゃないよ」
森の中、逃げないウサギが存在するほうが妙だ。
一羽が跳躍して二人に襲い掛かる、思わず目を閉じたミノルだが、トモハルは剣ではなく松明を突き出した。
案の定火に直撃、焦げた匂いを撒き散らしながら地面に落下するウサギ。
「剣で攻撃しなくても、例えばボールだと思って蹴っても戦えると思うんだけど」
言いながら前に出て、背を護るようにミノルに促し、ウサギ達とトモハルが真っ向から向き合った。
不慣れな剣より、慣れた武器・・・己の足。
剣を仕舞うと松明を構えて左足を軸にいつでも右足を出せる状態へ、と。
次々と飛んでくるウサギを右足で蹴り飛ばした、色も白い事だ、ボールだと思えば。
その間、ミノルはじっとしていた、思うように身体が動かないのだ。
森は、暗くなる一方。
手にしている松明の灯りだけが頼みの綱。
けれども逃げることなく、背をトモハルに預けて正面に睨みをきかせてた。
それしか、出来ない。
背で動くトモハルの気配、大丈夫だと言い聞かせながら松明を掲げて。
「出来る事を、すればいいと思うんだ」
小さくトモハルがそう呟いた、それはミノルに言ったのかもしれないしトモハル自身に言い聞かせたのかもしれないし。
ようやく、肩で大きく息をしながらトモハルが地面にしゃがみ込んだので、呪縛から解き放たれたかのようにミノルも座り込む。
「怪我ない?」
「ねぇよ」
「そ、ならいいや」
笑ったトモハルも無傷のようだ、二人は暫し休憩をしてから小走りに戻っていく。
微かに。
トモハルの剣が微妙に光を帯びている、それは暗闇だから解ることであって、光の下に曝されれば気づかないような、仄かなもので。
合流すれば焚き火の火によって、当然その剣の輝きは消えた。
マダーニとライアンに駆け寄ると、籠を差し出した二人、ともかく小川で手を洗う。
ライアンに茸を判別してもらい、沸騰している鍋に茸を切って入れてパンを食べながら干し肉を食べつつ出来上がりを待った。
暖かいお茶にほっと息をつく、薬草が煎じてあるのだ、疲労が取れる。
やがて鍋の蓋が外された、魚の出汁の茸スープである。
見かけによらず、マダーニは料理が上手いようだった。
四人で談笑しながら食事を取る、これだけで気分もほぐれるだろう。
ミノルが些か元気がない気がしたが、愉しませようと会話を盛り上げるマダーニ。
考えていたのだ、ミノルは。
隣で意気揚々と話すトモハルの傍ら、先程とて敵を倒したのはトモハルで、自分ではない。
情けないとは思うが、身体が思うように動かない。
何故、勇者に。
アサギを救いたい気持ちはあるのだが、素質がないのではないか、とミノルは思う。
救えるのはトモハルだろう、既に伝説の剣も所持しているのだから、難なくアサギを助けるだろう。
そう思い、恨めしく剣を見たミノル、気づいているのかいないのか、トモハルは自分の剣をそっと引き抜いた。
「これさ・・・。偽者だよね」
唐突なトモハルのその言葉に、唖然とライアンは口を開く。
確かに、偽者ではないか、とトビィと会話もした。
沈黙している中、トモハルが苦笑いで剣を月に掲げて目を細め。
「・・・なんだろう、上手く言えないけど・・・。何かが違うんだ、この剣。俺の剣じゃないよ、そう思うんだ」
驚いたのはライアンだ、何故気づいたのか、勇者だからか。
感じていた違和感、トモハルは先ほどの戦いで確信したのだ。
「本物かもしれない、自分がまだこの剣を上手く使いこなせていないだけかもしれない。でも、今は・・・普通の剣だよね、これ」
笑って剣をしまったトモハルは、最後のスープを飲み干し立ち上がる。
「行こうよ、時間はないんだ。俺はアサギを救う為になんだってするよ」
月の光に、焚き火の灯り。
立ち上がって手を伸ばしたトモハルの姿に、軽く笑みを浮かべたライアンとマダーニだが。
そう。
マダーニは気づいた、トモハルが掴んでいた剣が淡く光っていた事に。
思わず息を飲む、トモハルは気づいていないようだ。
ひょっとして、その剣・・・。
言いかけた言葉を飲み込むと、マダーニも立ち上がる。
「そうね。行きましょうか」
軽くトモハルの肩を叩いて再度、剣を見た。
微かに魔力を放つその剣、トモハルはまだ気づいていないのだろう。
偽者か、本物か。
多分、それは所持する者が見極めること。
才能溢れる一人の勇者、対である勇者を攫われて。
目指す先は奪還であり、そして。
「俺さ、明日から回復魔法に専念するよ。欠けている部分を補っていかないとね。
ライアンに馬車も習いたいし、マダーニに魔法も習いたい。俺はなんとなく雷系の魔法が得意な気がするからそこを強化して・・・」
語りだすトモハル、ライアンとマダーニは聞いていた。
勇者の一人は攫われた、対である目の前の勇者は。
・・・現時点で輝きを増す、それはまだ見ぬ先の未来であれども。
”勇者の要”として力を発揮すべく。
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