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コピックだと失敗の恐れがあったので、色鉛筆にて色づけしてみましたが。
ば、薔薇面倒・・・!!!
ヴィトンも初めて描いたけど案の定面倒・・・!(そりゃそうだ)
シャネルかプラダにしておくべきでしたな。
クロエとか。
トモハルは上手く描けたのですが、マビルが下絵のほうが可愛く(マビルっぽく)描けたので、ショックです。
これだと、アサギっぽい。
二枚目の絵が、下絵のマビルですー。
配置だけ適当に描いたのですが、(珍しく)こっちのほうがマビルだー・・・。
ちなみに、トモハルは非常にキモイことになりました(いやー)。
というか、祭壇の前にトモハルが居るはずなのですが、もう冗談抜きで面倒になり(なんてことだ)、居ませんが、ちゃんと居ますからー。
一生懸命描いたのですよ、私にしてはっ。
・・・。
お昼に書いた逆ソラとDES本編がデータぶっ飛び、眩暈を起しております。
・・・ちょっとー・・・。
今日も早朝起きて、自室へ戻る。
マビルと別れて、部屋に戻る。
軽く咳して、くしゃみして。
・・・やっぱ寒いよな、1月だしな。
朝までの数時間、冷え切った小さなベッドに潜りこんで手を見つめながら仮眠。
というのが、日課。
同じ城に居るはずなのになかなかマビルには・・・会えない。
向こうが避けているんだろう、当然か。
今日も街の発展について会議に視察、楽しいけど疲労感。
けれど、この計画を実行した以上、中途半端には出来ない。
するもんか。
と、思ったら今日はマビルと擦れ違えた。
嬉しくて声をかける、でも、無視して去っていくマビル。
・・・頭をかいて、不安そうに見ているメイド達に苦笑い。
肩を叩いてそんな顔しなくていいよ、と声をかけた。
そりゃ・・・不安だろうな。
『お出かけしてくる。・・・お空のお城に』
マビルの部屋に向かったら、そんな紙が置いてあった。
律儀に言った事を覚えていてくれたんだ、思わず笑みを浮かべる。
天空城のことだろう、あそこなら常に警備も万全だし安心だ。
他の街だと治安が悪い区域もある、特にマビルに対して恨みを持つ人間とて・・・少なくはないと知っているから。
そうなんだ。
マビルは、以前莫大な魔族や人間を殺害しているし、破壊もしている。
アサギ、という最強の勇者で救世主で絶対的存在である双子の妹。
・・・その肩書きだけで護られると思っていたら、大間違いだった。
そのアサギの双子の妹だから、罰を受けていない・・・と思う者達が存在する。
だから、俺には権力が必要だ。
マビルを護り抜く力が必要なんだ。
力はあるはずだ、この惑星なら五本の指に入るだろう。
一応勇者だ、トビィには勝てないだろうけど他なら・・・五分五分でいける。
そして国王になった、独裁するわけじゃないけど、マビルを悪く言うなら許さない。
俺は、今度こそマビルを護る。
・・・例え四六時中傍に居られなくても、護り抜く。
・・・アサギが言ったのは、そういうことだ。
窓から、空を見ていた。
澄み切った空に、大きな雲が一つ浮かぶ。
天空城があるのかもしれない、あそこに、マビルが。
・・・。
妙な胸騒ぎに、背筋が凍る。
な、なんだ・・・?
思わず俺は城から出て、天空城へ向かった。
爆音が響く天空城、何があったのか攻撃を受けていた。
内部から、だ。
馬鹿な!? 誰だっ。
そして視界に飛び込んできたのは、マビル。
前方に、トランシス。
トランシス。
あ、アイツ、封印破って出てきたのか!? どうして!?
思わず大声で怒鳴った。
「マビル、下がれ! 近寄るな!」
声が届いたのか、届かなかったのか、無視したのか。
マビルは無謀にもトランシスに攻撃を加えた、思わず舌打。
勝てない、今のマビルでは100%勝てない。
俺にだってそれくらいは感じ取れる、トランシスの魔力は以前のものと比べられないんだ、跳ね上がりすぎている。
どういうことだ、何故上がった!?
今はそれどころではない、マビルを救出しなければいけない。
周囲には俺以外に戦えそうな人物が見当たらない、一人でやるには相手が悪いが、・・・本気で行く。
「離せよ!」
首を締め付けられているマビル、愉快そうに手に力を籠めてトランシスは俺に微かに視線を投げかけた。
何だ、余裕か。
「マビルを、離せよ!」
剣を引き抜いた、その名を刻め”セントガーディアン”!
その武器の名において、俺はマビルを護らなければならない、大事なマビルを護らなければならないつっ。
トランシス目掛けて剣を突き出す、マビルを楯に取られているから本気と見せかけて途中で軌道を変えた。
「ようこそ、ナイト様。
成り上がりの勇者の要。惚れた女すら護れない腑抜けの国王様。
・・・最もアサギとマビルの二人に近い男」
顔を歪めて嘲り笑うトランシス、耳を貸すな、俺。
狂気の光を灯した瞳、監禁生活で精神崩壊したのか、そんな筈はないけど・・・。
手を狙う、マビルを掴んでいるあの手を狙う。
「助けたい気持ちは理解したけど、甘いよ、お前」
トランシスの突き出した手から、魔法が来ると直感。
相手の属性は炎だ、やり難い相手だが防御くらいなら出来る。
空気の温度が急上昇、っ! しまっ・・・!
感じた瞬間、全身に激痛が走った、壁に叩きつけられたようだ。
掌からの一撃を予測し、防御したけれど違った。
・・・周囲を炎で囲み、止めで直線攻撃、だった。
思わず背筋が凍りつく、とても精神を病んでいた人物の魔力とは思えない。
口々に名を呼ばれ、回復の魔法を施された。
攻撃は出来なくても、回復魔法なら得意な天空人が大勢いるから助かる。
マビルを、助けないと。
俺であの一撃だ、本気を出したらマビルの身体は・・・。
・・・全身に、嫌な汗が吹き出して体温を奪った。
想像するな、俺。
脳裏を過ぎったのは数年前、マビルの身体が目の前で砕け散ったあの光景。
冗談ではない、早く、早くマビルを・・・!
重いとは裏腹に、膝が上手く動かない。
何やってんだ、俺。
下唇を思いっきり噛み、血を吹き出させた、舐め取る。
腕に渾身の力、前を向けば何時の間にやらトビィが来ていた。
・・・助かった、これで五分五分でいけそうだ。
唇をぬぐって、剣を構える。
トビィにマビル、デズデモーナにオフィーリア、俺。
5人、か。
油断しなければどうにでも出来る筈・・・だ。
「・・・トビィにマビル、で、トモハル。申し分ないメンバーだ。
誰か一人、殺せば多分アサギが出てくるよね」
心底愉快そうに、笑いを含んだ声で告げるトランシス。
対面のトビィは表情を変えなかったが、露骨にマビルは忌々しそうに目を吊り上げる。
不安だ、酷く不安だ。
トビィ、マビルを押さえてくれ。
前に出させないでくれ、全く歯が立たないんだ。
プライドが高いし、自分に絶対の自信を持つマビルだからこそ、危険極まりない。
言ってる傍から、あぁ、マビルがっ。
自分からトランシスに飛び込んで、呆気なくまた、首を絞められている。
「・・・いい加減にしろっ」
トランシスの一連の行動が、アサギを呼ぶ為のものだとはさっきの台詞で理解した、けど。
何だっていうんだ。
狂気の沙汰、真の目的がそれかどうかすら怪しい気がする。
ともかく、マビルを救わなければいけない。
落ち着いて、狙う。
出来る筈だ、負けはしない。
一息、した。
右手にセントガーディアン、左手に魔力を籠めて。
殺すつもりがあるのかないのか、時折マビルの首を持つ手に力を籠めていた。
俺を待っている様子だ、何故か解らないけど。
一気に、ケリをつける。
目的はマビルの救出だ、それ以外は考えない。
剣先を回す、加速させながら正面へ走った。
「真っ向から勝負?」
笑いを含んだ声も、気にしない。
右手を大きく後方へ、突き出す勢いにのって身体も前へ。
「天より来たれ我の手中に、その裁きの雷で我の敵を貫きたまえ。眩き光と帯びる炎、互いに呼応し進化を遂げよ」
唱えたのは得意な雷系の魔法だ、だが直接は当てない。
トランシスの真後ろ目掛けて叩き落す、それが目的。
悟られないように詠唱を、この程度なら短時間で完成させることが出来るようになった。
舌打ちして直前に魔法に気づいたトランシス、魔法防御されるその瞬間に剣を突き出す。
マビルを掴んでいる右手を離すことはないだろう、ならば防御で左手を使うはずだった。
その隙間に剣をねじ込む、突き刺す。
・・・入った!
確かな手ごたえ、トランシスの絶叫で確信を持った。
回転が加わった力で、深く差し込めたようだけど、そのまま一気に引き抜いて傷口に蹴りを叩き込む。
マビルを掴んでいる右手の甲に剣を突き刺した、ようやく錆付いた鍵が取れたように、手がゆっくりと開いてマビルを解放した。
慌てて抱き留めると後方へ飛んで、名前を呼ぶ。
苦しそうに顔を歪めて、うっすら瞳に涙を滲ませて。
見た瞬間、トランシスに対して殺意が湧き上がった。
睨みつければ、現在トビィと交戦中だ。
今のうちにマビルの回復を試みる、トビィなら上手く時間を稼げるだろう。
トランシスを弱らせて、4人以上のメンバーで封印を再度試みるしか、あの暴走を止める手立てはない。
何故急に暴走したのかが俺には解らないけれど・・・不意にアサギの声がした気がしたんだ。
でも、きっと聞き間違いだろう、そんなわけは・・・ない。
雑念を払って、マビルだけを考える、外傷はないけれど首を捕まれた時点で精神的に恐怖感を覚えただろう。
元々マビルはアサギと違って、直接攻撃が不得手だし、寧ろ戦闘自体も苦手なんだ。
確かに魔力は高い、けれどそれは後方支援で初めて絶大な効果を発揮するのであってあんな前線では・・・無理なんだ。
瞳を開いたマビル、俺を突き飛ばす形で立ち上がった。
マビルの性格からして、再度交戦したがるだろうけど・・・止める。
勝てない。
ただ、マビルにはそれが解らないんだ。
腕を何度も掴んで止めた、が、自棄になっているところもあるんだろうな、振り払われる。
魔法の詠唱を試みているのだろうが、下手な魔法ではトランシスに軽く相殺だ。
おまけに得意な魔法の属性が二人は似ているし、大魔法では隙が出来すぎる。
「ウザっ! 離してよっ」
「いいから大人しく護られてろよ!」
俺を睨みつけて、敵意をむき出しにしているけど、ここで下がるわけにはいかないんだよ、マビル。
思わずこちらも怒鳴り声になってしまった、強引に引き寄せて右手で胸に押し付ける。
剣を、左手で構えた。
腕の中で暴れているマビルだけど、・・・悪いな、離せない。
あのトビィが弾かれて、一旦下がった。
俺に目配せをしていた、次は俺が時間稼ぎを、ってトコだろう。
トランシスを中心にして、トビィとデズデモーナ、オフィーリアが間隔を開けて取り囲み始める。
トーマの到着が近いのだろう、どうやらトビィを救う為に中に入ったオフィーリアが深手を負ったらしい。
そちらに専念している間の、時間稼ぎ。
右腕に力が籠もる、マビルにだけは、絶対に傷をつけさせない。
下唇を噛み締め、笑いながらこちらへ向かってきたトランシスを睨み付けた。
落ち着けば、五分五分でいける相手だと、思っている。
・・・あの日から俺だって必死で訓練した、マビルを再び見てから更に訓練した。
あぁ、二度もマビルを失う事がないように、今度こそ護り抜く為に。
大事な、子なんだ。
泣かせない、苦しい思いをさせない、痛い思いをさせない、我侭を叶えていく。
決めたんだ、絶対に。
アサギが出来ない分も、俺がマビルを護り続ける。
戦友として受け取った言葉、”自分が居られないからその分もマビルをよろしく”。
今後降りかかるかもしれない厄災から、マビルを護り抜いて欲しい。
あぁ、大丈夫だよアサギ。
俺は決して、大好きな女の子を二度と死なせやしないから。
キィィィ・・・カトン。
奇妙な音を聴きながら、俺は必死でトランシスと交戦した。
トランシスの手にしている剣が、まだ本来のものでなくて助かった。
本物は厳重に封印されている、あの武器を所持されると流石に拙い。
その剣なら、致命傷にはならない程度で傷を受けられる。
マビルを必要以上に狙ってくるから必死で庇った、なんなんだ、コイツ。
トランシスの武器には、アサギの加護がかけられているからVSアサギと言っても過言ではないんだ。
「大人しく、してろよ。マビルには二度と触れさせないっ!」
剣へ、魔力を送り込んで。
全ての俺の魔力を、流し込んで一撃で決める。
一呼吸、二呼吸、三呼吸。
俺の属性は、光。
眩い光を天から放ち、制裁を加える。
大それた技だけれど、取得出来たんだ。
「然るべき場所へと、還れ! 雷風鋭刃破っ」
剣に、魔力を。
鋭い突きの一撃を繰り出す、避けても無駄なんだ剣から放射線状に電撃が吹き荒れて標的に襲い掛かるから。
そして捕らえる、最終的に剣先で。
躊躇しない、例え元アサギの恋人であろうとも俺には関係のないことだ。
剣先から逃れたけれど、電撃が無数に伸びては逃れられない。
絶叫してその場で硬直したところで、トーマが駆けつけてきた。
「今だ!」
トビィの声に、右腕を緩めてマビルの肩を抱く。
嫌がって微かに暴れたけれど必死で押さえて、二人で同時に封印を施すんだ。
・・・アサギ、力を貸してくれないか。
トランシスを押さえ込みたいんだ、マビルが痛めつけられた。
二度と勝手に出てこられないように、封印したい。
何度でも、護り抜こう。
でも、極力怖い思いはさせたくないから、力を貸して欲しいんだ。
目の前でトランシスはそれでももがいてやはりマビルを狙っている、何故だ。
トビィの一撃でゆっくり沈んだトランシスを確認してから、俺は情けないけれどその場にひっくり返った。
いや、ちょっと体力消耗しすぎたかな、あはは。
結構斬られていたみたいだし、まぁどうってことないんだけど。
マビルが渋々だけど回復魔法をかけてくれた、嬉しくて、幸せで。
役得な感じ、へへ。
「よかった、無事で居てくれて」
言ったら、何処かへ去って行った。
マビルにしてみたら、プライドに傷がついたのかもしれないけれど・・・無事なほうがいいだろう?
俺はその後、トビィと只管会話した。
マビルも一緒に話を聞いていたけど、途中で抜けて何処かへ。
どうも、アサギの居場所が発覚したから・・・トランシスが動いたのではないか、と。
ある意味凄い、どうやって探知したんだろう。
求めすぎた結果が、これらしい。
その後、封印を強化すべく毎日交代で魔力を施す事になった。
封印の場所で、それ以来トランシスは大人しく眠っているけれどその様子がどうも恐ろしくて、願い出て監視もつけて貰う。
悪いけど、マビルに近づく危険因子は消しておきたいんだ。
一人でそこへ行ったら、不意にトランシスが瞳を開いてこちらを見た。
哀しそうに笑って項垂れて、また瞳を閉じる。
・・・何か、言いたいんだろうか?
城へ戻ると珍しい来客が来ていたので、思わず爆笑。
「ちーぃっす、お久し振り国王様」
親友のミノルが片手を振って立っている、彼は現在大学生活を満喫中だ。
客室に通して照れ笑いをしているミノルを座らせると、仕事を抜けさせてもらって会話。
来た理由は・・・。
「トモハル、これ買う気ねぇ? 一人3万」
「何だこれ?」
手渡された紙を広げる、それはバレンタインのディナーの知らせだった。
「大学の奴がさ、彼女の為に買ったのはいいけどフラれて必要がなくなったんだと。
で、俺がココと行こうと思ったんだけどほら、そのメニュー・・・。
メインが二種類とも食べれないらしくって、それの引き取り手を捜してるってわけ」
ココっていうのは、ミノルの彼女だ。
アサギとも仲が良かった、俺らより年上の人。
どういうわけか、気がついたら付き合っていたから周囲が驚いたっけ。
「メインって・・・オマール海老のローストと、仙台牛の炭火焼?」
「それは食べられるけど、それらのソースがなぁ・・・。
オマールのが黒トリュフで、仙台牛が黒胡麻。
それが駄目なんだってさ」
「そっちか」
メニューに最初から目を通す、マビルが・・・好きそうだ。
「ココって何でも食べそうだけど・・・。
これならマビルが好きなものが多いし、俺、買おうか」
「マジで!? 助かる!
誰も引き取り手がいないと、運が悪いと自腹になるっていうからさぁ。
アイツがキャンセルしてトモハルが買えば、誰も損はしないよな。
・・・マビルは好き嫌いないわけ? 」
と、思われがちだがマビルは好き嫌いがほとんどなかったりする。
同じものしか食べていなかったせいか、初めて見る食べ物はすぐに食べたがるし、不味くない限りちゃんと完食するんだ。
と、いうのも。
「ないよ。アサギがきっちり躾けていったし、美味しいものが好きだけど何でも食べられるんだ。
この鱧の大葉包みとか、鮑のバターソース、キャビア添えとか、物凄い好きだし・・・」
「じゃ、そういうことでー。
チケットの名前を松下朋玄にして、届き次第持って来るな」
6万を手渡す。
他愛のない話をして、日も暮れた頃ミノルは帰って行った。
貰った紙を良く見てみる為、食事後ベッドに転がる。
バレンタインに、音楽を聴きながらディナー、という洒落た趣向だ。
テーブルにはそれぞれ花が置かれるらしく、それは持ち帰り可能とのこと。
正装での出席に限られる、か。
写真を観る限り、会場もマビルが好きそうな豪華さ。
よかった、きっと喜んでくれる。
・・・バレンタイン、か。
昔はチョコを貰ったけど、高校出てからはずっとこっちの世界だし、貰ってない。
マビルはそんな習慣知らないだろうし、知っていても人にはあげないだろう。
いつか、マビルからチョコを貰ってみたいな。
・・・買うところとか予想出来ないけど。
まぁ、それはいいんだ。
何か喜ばせる事をしてあげたいと、思う。
喜ぶ顔が観たいから、喜ぶ事を、してあげたい。
よし、言いに行こう。
ベッドから起き上がって、部屋に向かった。
マビルは、居なかった。
深夜は戻ってきていたけれど、起すのも可哀想だったからそのまま。
言えないまま数日が過ぎる、ミノルがチケットを持ってきてくれた。
「言うの忘れてたけど、これさ、毎年人気なんだって。
なかなか予約が取れないから、欲しい人が居たら譲るってことだったみたい」
「必死で予約したけど、ミノルの連れは行けなかった、って事か・・・」
「ん、タイミングって難しいな」
そんなに人気なら、きっと美味しいだろう。
俺はようやく昼間にマビルを捕まえることが出来た、不機嫌そうだけど仕方ない。
案の定、マビルは行きたくないみたいだった。
・・・俺と一緒だし、当然かもしれない。
でも、きっと来てくれると思う。
じっと、メニューを見ていたし、きっと、一緒に行ってくれる。
そして俺は考えたんだ、突き飛ばして去っていったマビルを観て、思ったんだ。
仕事後、部屋のある場所から、封筒を取り出した。
取り出してそれを眺めて、また仕舞う。
封をする前に、封筒を傾けて中から落ちてきたものを受け止めた。
壊れた安物の苺のネックレス。
昔、俺がマビルにあげたものだ。
とても使えないからこうして俺が持っているけど、それを握り締める。
ドアがノックされた、慌てて封筒をしまって来客を招きいれた。
「お待たせいたしました、トモハル様。これが現段階での可能出荷表です」
「ありがとう。ええっと・・・」
メイドさん二人は、笑顔だった。
受け取った報告書に目を通し、思わず俺も笑みを浮かべる。
大丈夫だ、薔薇の出荷は完璧だ。
「着実に進んでいますね、計画」
「後は・・・ドレスですか。いい加減マビル様に採寸させていただかないと」
「・・・だから、秘密なんだよ、これ」
困惑して苦笑いしているメイドさんに、俺も困惑して苦笑い。
「建設はどうかな? 間に合いそう?」
「はい、そちらは滞りなく」
二人が去った後、机に報告書と計画図を並べて、コーヒーを煎れる。
と、言っても地球から持ってきたインスタントだけど。
封筒がしまってある場所を、見た。
思わず、息を大きく飲み込む。
緊張する、なぁ・・・。
一枚一枚、報告書に視線を落として最終チェックだ、時間は迫ってきている。
マビルは、知らない。
街に、一つ教会を模した結婚式場を建設している。
完成日は、2月14日地球でいうバレンタイン。
ここの町興しも兼ねているんだけど、恋人達の場にしようと思って。
メイドさん達と確認して、薔薇の花言葉や意味を聞いた。
赤にピンク、黄色にオレンジに白。
五色の五本の薔薇を、贈る日にしようと思ってね。
まだ初の試みだけれど、それが定着して、恋人や両親、友達など、自身にとって大切な人に贈られればいいな、と思ってさ。
だから今年はまず、街の花屋で試験的に一部を売り出し、俺からメイドさん達に贈り。
偶然その日訪れた来客にも、感謝の意を込めて贈り。
大量の薔薇の手配は整った、こういうイベントを作って、定期的に色んな店に仕事を振り分ける。
・・・元は、マビルが薔薇が好きだったから思いついたんだけど。
教会を模した式場も、薔薇を散りばめた。
瞳を閉じて、完成を思い浮かべる。
コーヒーを飲み干し、俺はいつか隠しておいた衣装を取り出した。
白のタキシード。
身に纏ってみる、気合入れて高いのを買ってしまったけれど・・・似合っているのか、これ?
鏡の前に立ち、瞳を閉じて咳をして。
「・・・結婚を前提に付き合ってくれないか、マビル」
ずっと、考えていた台詞を呟いた。
言ってから、床に蹲って一人で爆笑。
・・・これを本人を目の前にして、どう言えばいいんだろう。
耳が、熱い。
美味く言えるだろうか。
咳き込みながら、床に倒れて天井を見る。
このままでは、駄目だと思っていたんだ。
壁に飾ってある、マビルの写真を観た。
ずっと、好きだ。
アサギがいなくなって、マビルが頼れる人物がいなくなった。
アサギの次に親しい俺だから、一緒に居てくれた。
多分マビルは、都合の良い男くらいにしか見てないだろう。
願いを叶えると子供のとき約束したから、一つ、一つ叶えようとした。
難関は”城に住みたい”だ。
そしたら丁度、国王募集の会議があったから、夢中でそれに立候補し、城を手に入れた。
ただ、住む為には、豪華な部屋を用意するのは俺と何らかの形で繋がっていないと駄目だった。
だから。
結婚を持ちかけた。
断られるのが前提だ、けれども偽でも良いから証拠が必要だった。
他人が見て、納得出来る証拠を造らねばいけなかった。
普通に話しても却下されそうだったから、婚姻届にサインをしてもらって。
手に入れたんだ、俺とマビルの婚姻届。
提出してないけど、当然。
それを見せて、城の者を納得させた、だからそれはもう必要なかった。
一緒に居れば、少しは意識してくれると思って、願って。
けれど、元から俺の存在はマビルにとっては多分世話係。
そう恋愛に進展するようなものではない、それはマビルの好きなタイプの男が俺ではないから自分でも心得ている。
僅かな可能性にかけて、俺のこと、少しでも気にしてくれればいいなと思って。
俺は、マビルが好きだ。
好きだから、好きになってくれとはとても言えないけれど、せめて。
一緒に居たいと思ってくれたら、居て楽しいと思ってくれたら。
少しづつでいい、好きになって。
けれど、マビルと俺は離れて行くばかりだ。
この城の居場所は必要だけれど、俺は必要ではないのかもしれない。
せめて、もう少し、マビルの理想の顔立ちをしていれば。
でも、無理だから。
今回、告白をする。
食事で釣るわけではないけれど・・・ディナーをしてから、建設が終わった式場で、大量の薔薇の花束を添えて。
想いを解ってもらうために、上手くいかなくても、ほんの僅かな可能性にかけて。
「マビル、一緒にいようこれからも。好きなんだ、やっぱり、当然」
呟いた。
上手く行ったら、世界中の女の子が羨むドレスを作ろう。
何を着ても似合うけれど、やっぱり純白の薔薇を模したドレスだ。
マビルを思って、デザイナーの人に習ってデザインもした。
ウエディングドレスじゃないんだ、ただ、マビルに似合う、ドレスを。
問題は、サイズが・・・。
地球で買ってあげる服なら、解るんだけど、サイズ。
けれど、あれもブランドによって若干大きさが違うから試着して確かめる。
その人のサイズでも、ドレスのデザインが変わってくるっていうから・・・。
なんとかしないとなぁ・・・。
「あー、君君、ちょっと!」
「え? 私ですか? どうされました、トモハル様」
「ちょっとごめんね、失礼」
「!?」
新顔のメイドさんを抱く。
・・・うーん・・・。
「マビルのほうがもっと肩が華奢で、腰も細い、胸も大きい。
身長はこんな感じだけど、もっと腰の位置が高い」
後方のメイドさんにそう伝える、抱いていたメイドさんを放した。
「あぁごめんね、協力ありがとう」
「・・・」
惚けているメイドさん、うん、ごめん。
代わりに、深い溜息と共に採寸メイドさんが説明してくれる。
「ごめんなさいね。・・・マビル様の体型に近い人を捜しているの」
「・・・はぁ」
「これでもトモハル様必死だから、怒らないであげてね。
物凄く効率悪いけど」
「はぁ・・・」
マビルの体型に一番近いのは当然アサギなんだけど、トビィ曰くあの二人も若干違うらしい。
身体にフィットするデザインだから、正しい寸法じゃないとドレスが。
「トモハル様、諦めましょう。マビル様の身体を採寸します」
「だ、駄目だよ! もう少し待ってよ」
驚かせたいんだ、どうしても。
「あの。マビル様の体型なら測った事があるので解りますよ?」
控え目な声に思わず俺は聞き間違いかと思った、さっきの新人メイドさんがはにかんで笑っている。
「私、城下町の服屋にいたんです。
マビル様が常連のお客様でしたので、宣伝も兼ねてマビル様の寸法で服を作りました。
あのお店に行けば、まだ記入してあるノートがあるはずです」
「な、なんだってー!! ありがとう! 何処のお店!?」
「ええと、漣通りにあるお店で・・・」
彼女の両手を思わず握り締める、なんてことだ、助かった!
目の前の彼女が、神々しく見える。
不意に、後方に何か視線を感じたから見上げた。
マビルが観ていた、思わず手を振る。
けど、思い切り睨みつけられてそのまま消えていった。
・・・機嫌が良くないみたいだ。
「あのぉ、トモハル様」
「ん?」
「以前からお伝えしようと思って居たのですけど、マビル様ヤキモチやかれてますよね」
「ヤキモチ???」
焼き餅。
①焼いた餅
②嫉妬
ん・・・?
「マビルが俺に嫉妬しても仕方ないだろ」
「自分と親しい人物が、他人と仲良くしているのを穏便に見ていられない人種もいますよね、トモハル様。
恋愛感情の好きかどうかは別としまして」
「ヤキモチ・・・ねぇ」
メイドさんと俺が仲良くしているから? ヤキモチ?
・・・ははは、そんな馬鹿な。
でも、そうなら・・・。
「可愛い、なぁ・・・」
「・・・」
「凄く、可愛いよね、マビル」
「・・・」
「マビルしか観てないけど、やー、ヤキモチねぇ。可愛いなぁ・・・」
追いかけて、抱き締めたい衝動に駆られたけれど。
・・・やめておこう、そんなことしたら殴られる。
ともかく、城下町へ出向かないと!
思わず、嬉しくて、色々と嬉しくて顔がにやけた。
数日後だった、相談があると言われていつも世話してくれるメイドさんと歩く。
人気のない場所に来た時に、いつも気丈な彼女が突然泣き喚きながらしがみ付いて来た。
俺の従姉妹に似ている年上のメイドさん、頼りになる人が・・・。
「弟が、弟が! 殺されて・・・っ!」
「落ち着いて! 何が!?」
衝撃的、どういうことだ!?
彼女の背を撫でて、落ち着かせる。
むせて言葉が上手く出てきていないけれど、なんとか聞き取るんだ。
離れた場所で暮らしていた弟さんが、自宅で何者かに殺された・・・。
その自宅に、家族全員を殺すというメッセージが投げ込まれたらしい。
弟を失くした上に、自分も狙われていると知ったら普通は・・・耐えられないだろう。
「大丈夫、必ず護るから・・・!」
まず、家族をここへ呼び寄せよう。
「俺がついてる、そんなに泣かないで」
弟さんは・・・申し訳ないけれど無理だから、せめて。
護れるものは、護る。
悪質な犯人だ、一体何故彼女の弟さんを・・・?
そして何故、家族も・・・?
俺は彼女が落ち着くまで、傍に居た。
弟さんが大好きだった彼女、俺を弟のように可愛がってくれたんだ。
彼女の早退手続きをして、家が怖いというので城内の来客室に泊まらせて。
俺は仕事を続ける。
夜になって食事後に、例の14日の計画を食堂でメイドさん達としていた。
マビルは不在だったから大丈夫な筈だ。
花束のリボンについて、デザインや色を考えている。
そこへ、ドアが開いてマビルが入ってきたからメイドさん達は慌てて去っていった。
計画書を丸めて、そそくさと。
マビルは真っ直ぐに冷やしてある水のボトルを手にして、一気に飲み干している。
観ながら、何か・・・違和感。
「おかえり。遅かったね」
「うん、まぁね」
「・・・そんなバッグ、持ってた?」
言いながら、気づいたんだ。
見慣れないバッグを抱えていた、なんだ、あれ?
贈った覚えはないし、持っていた記憶もない。
自分で買ったんだろうか、嫌な予感が、した。
「これ? 可愛いでしょ、新作なの」
「そっか、新作かぁ・・・。言えば買ってあげたのに」
新作なら、見たことがない筈だ。
というか、ん?
「彼氏が買ってくれたの」
「え?」
マビルは、ぽつり、とそう言った。
聞き間違いかと思ったけれど、はっきりと耳に届いてしまった。
聴こえていたんだ、明確に。
マビルは、唇の端に笑みを浮かべて、バッグを抱えている。
聞こえた単語を聞かなかったことにしたくて、バッグを見た。
こういう場合、聞き間違いではなかった場合、人はどう反応すればいいんだろう。
今、俺はどんな顔をしている?
「・・・すごく、かっこいい人なの。サラサラの髪に鋭くて綺麗な瞳、唇の形が超好みでスラッとした長身、細身だけど筋肉質で逞しくて、足も長いグッドルッキングガイ」
「・・・」
「それにキスが蕩ける位に上手でー、・・・誰かさんと違ってさ。
もー、あたしメロメロー」
マビルの顔が上手く見えない、視界が妨げられた。
誰か、教えて欲しい。
好きな女の子が目の前でこう言っている場合、普通男はどう応対すればいい?
「えっちも上手なプレミア級のイイ男なのー」
確実に、言葉だけが脳に入ってくる。
押し込められるんだ、そして反響するんだ。
「眠るときなんて、ぎゅーって真正面から抱き締めて、あたしが眠るまで起きて頭を撫でていてくれるのー。
素敵でしょ? それがまた気持ちいいんだー。
手を繋がれるだけだとウザイけどさ、そうされると”大事にされてる”って感じるのー。
もー、あたし、彼氏、好き好きー、大好きー」
誰か。
夢だと言ってくれないだろうか。
マビルの声が、こだまして、脳内で痛いくらいに弾け飛ぶように。
初めてマビルの口から聞く単語が多すぎて、衝撃的で。
あぁ、理解している。
彼氏が出来たんだ、マビルに。
今までいなかったほうがおかしいだろう、別に、驚く事ではない。
想定内だ、落ち着こう。
いいじゃないか、マビル、嬉しそうだ。
マビル好みの男だ、あぁ、笑顔だ。
キスが上手いのか、・・・恋人とならキスくらいするだろう。
恋人で、好きな男とだから、マビルはキスをしているんだ。
良い事じゃないか、良い事だ。
「そうか」
色々と、想像した。
マビルが、とても楽しそうだから、それでいいんだ。
ようやく、搾り出した言葉はそれだけで。
他に何か言うべきだろう、俺。
どんな人だ、とか、色々聞くべきだろう。
去っていくマビル、恋人の下へと。
初めて見たよ、マビルのあんな表情。
マビルの唇から紡ぎ出された”好き””大好き”。
誰だろう、どんな男だろう。
地球の人だろうな、バッグ買って貰ったみたいだ。
新作なら高いだろう、金持ちなんだ。
相当良い男なんだろうな、どんな奴だろう。
・・・聞いたところで、どうにもならない。
力が抜けて、椅子に座る、テーブルに突っ伏す。
弱いな、俺。
想定内だろう、これは。
ただ、俺が告白する前に、マビルに恋人が居たというだけで。
・・・告白してから知るより、良い事だ。
告白だけは、してみようか、それとも。
好きな気持ちは変わらないし、伝えたい。
・・・でも、恋人同士の邪魔をするなんて。
邪魔も何も、何も変化はないだろうし、相手にとっては不愉快だろう。
しないほうが、良いに決まっている。
「解ってたことだし、うん」
目を閉じると、嬉しそうなマビル。
いいじゃないか、俺。
マビルのその笑顔が好きだ、その笑顔を作っているのは俺じゃなくてもさ。
「あー・・・思ったより、弱いな、俺」
駄目だ、どうしたらいいのか、解らない。
喜んであげよう、マビルは・・・幸せそうだった。
けれど。
けれども。
どうすればいい?
決まっている、このまま、マビルを見守ればいいんだ。
部屋にどうやって戻ったのか、ベッドに転がる。
壁にマビルの写真だ、可愛い。
いつか、居なくなる。
いつか、マビルの隣で誰かが歩く。
いつか。
・・・いつかが、今日来ただけで。
弱い、弱くて脆いな、俺。
アサギは・・・どうしてあんなに強かった?
何故あの時、笑っていた? 何故あの時、あの時、あの時。
頬を、涙が伝っていったから、情けなくて腕で瞳を覆い隠した。
泣いても仕方がない、仕方がないんだ。
解っているけれど、普通、こういうとき人はどうするんだろう。
翌日、マビルの言う通りどうにもならないヘタレな俺は、仕事を休んだ。
別に、熱が出たわけじゃない、ただ。
動きたく、ないんだ。
流石に二日も休めないから、仕事に出た。
目でマビルを探す、捜してもいないだろう。
彼氏は何をしている人だろう、今日は地球は平日だから、仕事だろうな。
仕事を終わるのを待っているんだろうか、一緒に暮らしていたりするんだろうか。
年上だろうか、そうだろうな。
旅商人が物売りに来た、歓迎して出迎えた。
マビルに似合いそうなピアスが売っていた、いつものクセで購入。
・・・あまり高価じゃなければ、あげてもいいだろう。
デートに行くのに、お洒落もしたいだろうし、買うだけなら、渡すだけなら。
邪魔にはならないだろう。
似合いそうな物を見つけたら、買ってしまっていた。
一種の病気かもしれないけれど、似合いそうだから。
会えないから部屋にこっそり置いておいた、使わなくてもいいんだ。
ただ、俺が買いたくて買っただけだから。
もう、マビルの手を握って眠る事もなくなった。
睡眠時間は増えたはずだけど、以前よりも朝が辛い。
部屋のマビルの写真は、外すべきだろうか。
けれど、誰にも迷惑をかけていないだろうからそのまま。
アサギとマビルの写真を、一つ壁に追加した。
アサギ、マビルに恋人が出来たんだ。
・・・幸せそうにしているよ、うん。
その日、メイドさん達がやたらとキャーキャー騒ぐから何事かと思えば。
映ったのは、トビィとデズデモーナだ。
別に手を振るわけでもなく、こちらへ向かってくるトビィ達。
思わず。
・・・マビルの恋人ってトビィじゃないかと思ってしまった。
全部理想像に当てはまるから、そう、思わず。
思わず剣を抜いて斬りかかってしまった、身体が勝手に。
「藪から棒になんなんだ、お前は」
「うるさいっ」
軽々と渾身の一撃を受け止めて弾かれる、デズデモーナが割って入ったから、頭が急に冷えた。
「ごめん、ちょっと」
剣を収めて、深く溜息。
・・・トビィだとしても、斬りかかって良い理由はない。
たださ、マビルとトビィを想像したら、頭に血が上ったんだ。
羨ましいね。
「何の用?」
「・・・いや、気にするな。顔を観に来ただけだ」
「・・・?」
トビィは何かを探しているように、城内を見ている。
時折鋭く瞳が光った、何だ?
暫くして、トビィ達は去っていく、特に何も告げぬまま。
「あぁ、トモハルそういえば」
「ん?」
「・・・アサギが心配してた」
「え」
思わず背筋が凍る、急に不安になる。
アサギが心配しているって・・・どう?
マビルは、今幸せだけど・・・何かあるのだろうか?
相手の男が、やはり・・・。
調べたほうが、いいのかな。
でも・・・マビルは・・・楽しそうだった。
マビルの事を、大事にしてくれる人であると、願おう。
問題は、14日だ。
どうすればいいんだろう。
今更キャンセルなんて出来ない、代わりの人が見つかればいいけれど・・・。
マビルはきっと恋人と過ごすだろうから、行けない。
お金は払ってあるんだ、連絡して欠席しよう。
それか・・・一応声をかけるか、か。
来てくれるかもしれない、美味しそうだったし。
一緒に行けたら、せめて想いだけでも、伝えようか。
言うだけ、言おうか。
玉砕覚悟というか、上手くいくわけないから、結果が解っていて寧ろ安堵出来る。
そのほうが、楽かもしれないと思い始めた。
よし、そうだ。
もし、この日マビルと出掛けられたら告白しよう。
「・・・それでも好きだよ」
鏡に映った自分の情けない顔をみて、呟いた。
夜になると、マビルと眠る男が気になって仕方がない。
昼になると、マビルと会話している男が気になって仕方がない。
「俺に、しないか?」
・・・とは、とても、言えない。
何もかもが劣っている俺のところに来る物好き、いるわけない。
言ったら、マビルはどうするんだろうか。
困るのか、怒るのか、相手にしないのか。
・・・言わないほうが良いかもしれないな、と思ってきた。
駄目だ、なんて・・・情けない。
1週間前だった、14日に、予定が入った。
会議だ、他国で。
ケンイチやダイキも参加する、大掛かりな会議だ。
欠席できるわけがない。
もし、マビルに恋人がいなかったら、この会議は無視していた。
けれど、マビルに恋人がいるんだ、自分の予定は消すべきだろう。
寧ろ、そうしたほうが身の為だと、天の救いなのかもしれない。
自嘲気味に笑って、チケットを見た。
マビルにこれを、渡そう。
行かなくてもいい、行くならそれでいい。
恋人と行って貰おう、この予約の名前が些か心配だけれど上手くごまかしてもらって。
・・・恋人と行かせればよかったんだ、最初から。
美味しい料理に恋人、マビルにとって望むことだろう。
渡そうと、思った。
マビルに会おうとした。
けれど、会えない。
部屋に置いておこうとも思ったけれど、説明しないといけない。
渡せないまま当日になった、会議へ参加するギリギリの時間まで、待った。
マビルは、朝から何処にも居ないから、もう今日は戻らないと思っていた。
朝から恋人と一緒なんだろう、こんな予定、覚えているわけもない。
けれど、待つ。
その時間が許すまで、待つ。
夕方になって、マビルは、可愛い服を着て、帰ってきた。
明らかに何かを意識している格好だ、着飾らなくても可愛いのに、ネイルもメイクも、完璧。
・・・恋人と過ごすんだろう、手の中のチケットが急に無意味に思えてくる。
けれど、会えたんだ、渡そう。
時間がない、走ってマビルの元へと。
「あ、あの、あのさ、トモハル」
「よかった、会えて! これ、なかなか渡せなくて。・・・楽しんでおいで」
強引にチケットを渡す、不思議そうに怪訝にそれをマビルは観ている。
当然か、覚えているわけない。
「渡そうか迷ったけど、お金払ってあるし・・・。
バレンタインならあんまり彼氏もディナーなんて、予約しないだろうからさ。
行く場所、あるのかもしれないけど、予約してないならこっちへ行っておいで。
きっと、美味しいから」
近くで見たら、マビルは本当に可愛かった。
というか、久し振りに見たんだ。
・・・幸せなんだろう、楽しいんだろう、・・・とても、良い事だ。
泣きたくなった、情けない俺はもう、行く。
「気をつけて、行ってくるんだよ。
・・・って、はは、護ってくれるから、大丈夫か」
もう、俺が護らなくてもマビルを護ってくれる人がずっと傍に居る。
気をつけるも何も、全力で護ってくれる・・・だろう。
いってらっしゃい、マビル。
楽しんでおいで、たくさん。
「待たせたね、行こうか」
マントを翻し、俯いているメイドさんの肩を叩いて、皆と・・・出掛けたんだ。
城内は、微かに薔薇の香り。
地下の一室にたくさん薔薇を用意してある、帰りに・・・メイドさん達に渡そう。
会議は長引いて、何度も飲み物が出されて。
気がついたら深夜に近い、城に戻ると急いでメイドさん達を帰宅させる。
その前に・・・花束だ。
計画を知っている子もいれば、全く知らない子も居て反応は様々だけれど、皆嬉しそうだ。
「来年は恋人に貰うと良いよ、女の子は恋人に護ってもらわないとね。
それまでは俺が護ろう、国王として」
いつか、俺にも誰か一人の子を護る時が来るんだろうか。
マビルがいいな、とは思う。
・・・と、思っているうちは無理なんだろう。
でも、それでいいんだ。
夜食というか軽食が会議では出たけれど、小腹が好いたので食堂で勝手に料理した。
コックに作ってもらうのは悪いし、一人で用意する。
こんな日だ、一応定着していなくてもイベントなんだし早めに皆を帰宅させる。
マビルは、楽しんでいるだろうか、時間からしたらもう終わって・・・。
眠っているんだろうか、何をしているんだろうか、こんな日だ。
・・・こんな日だ。
脳裏に、抱き合っているマビルと誰かが浮かんだからフォークを思い切りテーブルに突き刺した、フォークが、曲がった。
早く寝よう、あぁ、寝る前にあそこへ行かないと。
かたん、何か音がしたから視線を虚ろにドアに移す。
・・・マビルだ。
予想外、なんだ、これ。
「おみやげ、買ってきたから」
「あ、ありがとう・・・ご、ごめんな気を遣わせて」
紙袋を、手渡される。
おみやげ、と言った。
わざわざ、買って来てくれたのか。
俺が、支払っているから。
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