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トビィが髪を撫でながら耳元で囁いた。
「アサギの手料理が食べたい。最近口にしていなかったから」
最後の晩餐とは言わなかったが、そういうことだろう。
今晩が最後の二人の食事になることは、明白だ。
「では、キッチン借りて作りましょう。何が食べたいですか?」
アサギは軽く笑って、トビィの顔を覗き込んだ。
「いつもの、ポトフ、かな」
トビィがそう寂しそうに笑って注文したので、アサギは軽く眉間にしわを寄せる。
いつもの。
そう、いつもの。
分かりました、とアサギはゆっくり微笑むとその場を離れる。
「焼きたてのパンも必要だな、あと前菜。ワインはオレに任せておけ」
「お願いします、トビィお兄様」
一番最初にトビィ・・・もとい、遥か昔の過去のトロイという名のトビィに食べさせたのがポトフだった。
一瞬瞳を見開いて、トロイは弾かれたように叫んでいた。
「美味いっ」
その一言を、忘れることなく、何度転生してもトビィはアサギのポトフを真っ先に注文していた。
思い出してアサギは笑う、そんな自分の手料理を喜んで貰えて幸せだ。
エプロンなど持ってきていなかったので、巨大すぎるキッチンから料理人を追い出すと、そのままアサギは支度に入る。
幸い材料は揃っていた。
不慣れな場所で、慣れた手つきで野菜を切る。
「・・・」
失笑。
一度で良いから、一度で良かったから。
パステルカラーの可愛らしいフリルのついたエプロンを身に纏って、愛する旦那様に料理を作ってみたかった。
食べる前に、口付けを。
今日は何かと聞かれたら、笑顔で答えるのだ。
手を止めて、叶わぬ夢に情けなく笑う。
途中の料理の味見をすべく、小皿を取りに行く為振り返る。
『ギルザーっ、ご飯出来たですよーっ!!』
「!?」
誰も居ないはずのキッチンに、人物が二人。
可愛らしい赤のチェックのテーブルクロスがかけてある、二人用のテーブルに一人の男が席に着いていた。
傍らに嬉しそうに笑顔を振りまく女が居る。
「え」
緑の髪と瞳、あれは、自分だ。
唖然と、その光景を見つめた。
混乱し、頭を抑えるアサギ、目の前の不可思議な映像は、止まらない。
『今日は何?』
『ギルザの大好きな焼きそばなのですよ♪ あと、明太子のおにぎりと、玉子たっぷりのスープ、ポテトサラダも作ったのです』
『良く出来ました』
濃紺の緩いウェーブがかった髪の男は、優しくそう微笑むと、アサギらしき人物の頭を撫でた。
くすぐったそうに笑う、アサギらしき女。
多分、自分。
けれども、口調がどことなく違うし、何よりその男を知らない。
「・・・誰」
アサギは眩暈を覚えながらも、二人を見ていた。
自分らしき女は、淡い黄色のフリフリのレースが大量に使われているエプロンを着ている。
慌しく、けれどもそれが最大の喜びであるかのように動きながら、食事を運んだ。
『一緒に食べようか、アサギ』
「!?」
がくん、と腰が抜ける。
あの男は、あの女をアサギ、と呼んだ。
ということは、やはりあれは自分だ。
けれども、知らない。
あの男を知らない、あんな光景を知らない。
未来であるはずもない、何故ならば明日自分は存在自体を消滅させるのだから。
願った夢が、そこにあった。
女の表情を見ていれば分かる、愛する人と幸せな暮らしをしている、そんな夢心地の笑顔。
私じゃないのに、私のような姿の女が、望む暮らしをしている。
渇望した、夢。
知らず、アサギの頬を涙が伝った。
そこに、暖かで優しい空気が流れている。
目の前で繰り広げられる、平凡な、それでいて幸福に満ち足りた食事。
「私、また身勝手な妄想を見てる」
喉の奥で忌々しそうに笑うと、アサギは頭を激しく振った。
ギルザなどという男は、知らない。
あんな口調の自分も、知らない。
不意にアサギが顔を上げると、ギルザ、と呼ばれた端正な顔立ちの男と視線が交差した。
交差した瞬間、その男が穏やかに微笑む。
「っ!!」
アサギは思わず赤面し、身体が電撃が走ったかのように硬直した。
映像が消える。
・・・妄想と視線が交差した。
馬鹿な。
アサギは自嘲気味に溜息を吐くと、深呼吸をし、料理に戻る。
ギルザ。
綺麗な細長い瞳、形の良い唇。
妄想の自分に、惜しみなく笑みを零し、大事に扱っていた。
「・・・いいな」
知らず呟く。
アサギはぎこちなくなった手で料理を辛うじて完成させると、ワゴンに乗せてそれを運ぶ。
ワインを何本か用意して、トビィが部屋で待っていた。
他愛の無い昔話をしながら、思い出して自嘲気味にアサギはトビィに語る。
「さっき、変な映像を見たの。『ギルザ』って知ってる? トビィお兄様」
「ギルザ? 人名か?」
「知らない、よね」
それ切り、アサギはその名を口にすることなく。
運命の夜が明けて行く。
ギルザ。
トビィも忘れていた、その名。
トビィがその名を知るのはそれから数年先の事。
アサギが思い出すのも、それから数年先の事。
今はまだ、知らない自分の未来の姿。
渇望した夢が叶った、自分の未来の姿。
※本編進めましょう、私(倒
ネタバレ。
第4章、後半部より抜粋。
足音立てずに、真っ直ぐ歩く。
唇を噛み締め、額に汗をかきながら、歩いていた。
「あれ、アサギ様、どうかさ」
二人の天空人がアサギに声をかけようとしたが、その台詞は途中で止まった。
虚無の瞳で宙を見つめる二人の天空人に声をかけず、アサギはその脇をすり抜ける。
頑丈な扉に右手をかざして、何かを呟くと、扉が音を立てずにゆっくりと開いた。
微動だしない天空人を微かに見やってから、アサギは小さく「通させてもらうね」と、呟いた。
停止したまま、まるで壊れた人形のように、天空人は動かない。
扉の中には巨大な水晶が浮かんでいる。
この部屋は天空城の一角・過去映しの間。
見たい過去が、映像となって水晶に流れる。
この水晶を見るのは二度目だった。
一度目は城内見学でここを訪れた。
不意に見つめたその先は、トビィが倒れている映像だった。
この水晶では過去へ飛べない、あの時アサギは無我夢中で受け渡されたばかりの絶対無二の呪文で過去へと飛んだ。
トビィ・サング・レジョン、その人を助ける為だけに。
そして、現在二度目。
ひやり、とした水晶に手を当ててみる。
ぼんやりと、おぼろげに映像が流れ出した。
観たくないけれど、観るしかない。
過去の自分の過ちを観なければならない、苦しくても。
流れ出す、過去、見慣れたベッドの上、自分とトランシスが眠っていた。
「離れて」
映像が視界に入ると、アサギは反射的にそう叫んだ。
「その人から離れて! 分かるでしょ、その人、嫌そうな顔してるっ! 離れなさいっ」
過去の自分に叫び、水晶を強打した。
けれど、流れる映像にそんな言葉が伝わるわけも無く、静かに二人は眠り続ける。
トランシスの腕の中、安らかに眠る自分が腹立たしく、唇を噛み締める。
「嫌がってるのっ、その人あなたのこと好きじゃないの、嫌いなの! だから、離れなさいっ!」
―――お前の瞳に、オレが映るのが耐えられない、オレの耳に深いなお前の声が届くから吐き気がする、オレの隣にお前が居るのが、邪魔で面倒で仕方ない―――
ドクン
映像に映っていたトランシスが、憎悪の念を込めて隣で眠っている自分を見ていた。
全く気がつかなかった、そんなトランシスの思いに。
この当時は、想いが通じているものだと思っていた、同じだと思っていた。
違っていたのだ、最初から。
自分で自分の都合の良いように解釈して、トランシスを縛り付けていた。
トランシスはこんなにも、分かりやすく自分を憎んでいたというのに。
「うぁっ」
トランシスを見つめ、アサギは思わず水晶に倒れこんだ。
乱れる鼓動、震えが止まらない身体、あの目が、怖い。
―――お前が勇者にならなければ、死ななかったのに、みんな。―――
弾かれて水晶を見た。
映像が変わる、この、映像は。
―――さようなら、偽者の勇者―――
あの日の、自分。
数ヶ月前の、自分。
校庭で、朝礼中に倒れた、自分。
「あ・・・」
乾いた唇で、震える声を絞り出す。
『浅葱!!』
幼馴染のリョウがそう叫んで、自分を抱きとめている。
「・・・や」
ガクン、と膝を曲げて、アサギはその場に座り込んだ。
あの日。
あの日だ。
あの日の映像だ。
「やめて」
小さく、鋭く、そう零す。
「やめてぇぇぇぇ、勇者になっちゃダメーっ!!!!」
アサギは絶叫すると、苦しそうに胸を押さえてリョウの腕の中に居る自分に向かって呪文を繰り出した。
勇者に、ならなかったとしたら。
渾身の力で両腕から魔法を放つ。
けれども、水晶はゆっくりとその魔力を吸い込むばかりだった。
映像は流れ続ける、残酷に。
「ダメ、やめて、起きちゃ駄目! あなたは、勇者じゃないの、偽者なの! ホントの勇者は別にいるの!」
―――お前が勇者にならなければ、ハイも、アレクも、サイゴンも、マビルも、みんな、みんな、死ななかったのに、なぁ?―――
―――何より、お前が勇者にならなければ、お前に会うこともなかったのに―――
私が、勇者の道を選ばなければ。
トランシスに言われた言葉が甦る。
鋭利で細い、針のような、それでいて猛毒が染み込んでいる凶器の言葉が。
アサギの心に突き刺さった、それは、どう足掻いても抜けない。
「勇者になるなぁぁぁぁっ、私っ!!」
キィン
右手首に填めている4星クレオ、勇者の伝説の武器『セントラヴァーズ』、自分の代物ではないのに、アサギは未だそれを装着していた。
その武器が慣れ親しんだ片手剣へと変貌し、水晶を破壊すべく攻撃を繰り出す。
けれども水晶はそれを弾き、やはり過去の映像を流していた。
「お願い、勇者に、ならない、で」
涙声で、力なく剣を床に落とすと、水晶に倒れこんだ。
私が勇者にならなければ、あんなに優しい人達が死なずに済んだ。
何より、大事な大事なあの人を傷つけることも、苦しめることも、なかった。
・・・あの人に、嫌われることもなかったかもしれないのに。
「勇者になるなぁぁぁぁっ、田上浅葱っ!!」
過去の自分に、絶叫する。
映像の中の自分は反して、凛々しく、勇ましく、現われた魔物を倒していた。
そして、思い出したのだ。
倒れた時に声を聴いた。
何処かで聴いた声だった、でも、思い出せなかった。
今、甦る。
悲痛で、涙声で、怒気を含んでいた、あの声は。
「私の、声だ・・・」
虚ろに呟き、自嘲気味に大声で笑った。
未来からの、伝言。
そう、未来の自分も、アサギに向かってメッセージを残していたのだ。
『勇者になるな』
その一言を訴えていた。
けれども、それに気がつかずに勇者になった。
だから今もこうして過去の自分は当然、勇者になる。
過去は、変わらない。
絶対無二の呪文を使って、過去へ赴き自身を殺せば、変えられる。
けれども、それにはリスクが生じる、簡単には出来ないことだった。
それに何より、自分を殺しては意味が無い、『また生れ変わってしまう』から。
転生を止める必要がある、その為には自分のこの仮初のイノチを根源へと還さなければ。
「やらなくちゃ、早く、思い出さなくちゃ」
ゆらり、とアサギは立ち上がると、何も無い床に躓いて転びながら、扉を目指した。
思い出せ、転生を終わらせる為に。
本来の居場所へと向かう道を、思い出さなければ。
扉を出て、アサギは天空城を後にした。
二人の天空人が、先程と同じように見張りを続けている。
過去映しの間を、護り続ける。
部屋の中で、水晶が微かに淡く光った。
※というわけで、聴いた声はトビィの声でもトランシスの声でもなくて、アサギの声でしたー。
という、ネタバレ(笑)。
まこのほうで、思ったことを、つらつらと。
アサギじゃなくてね、まこのほうでござりゅんよ、まこのほう。
思うこと、特に・・・な・・・し?
強いて言うならば。
・アーヴァスに開戦している国が良く分かりません。
国を見たとき「愛」が連打されていたので、ちょっと気になっていたのですけど。
開戦理由に「愛」は?
アーヴァスが何処かに開戦していたのなら「愛」を理由に開戦出来たでしょう。
アーヴァスはザークスに支援してくださっていましたが・・・。
なんだか、ちょっとね、と思ったでござりゅんねぇ(笑顔)。
・ALTN
うん、素敵でござりゅんね。
とても良いと思う。
カムイ様、かっこいいです。
アサギちゃん、そちらに行かせたいのですけど、ギルザの隣が一番良いので、そちらには行けないの。
・ザークス7カ国攻撃され中
同盟だから仕方ないのだと思いますけど、叩かれることは分かっていましたけど。
いや・・・凄い数なんだなぁ、と思ったのです。
・・・そこまでして落とすんだなぁ、と。
そんなに来なくても、落とせるんじゃないのかな、と思ったのです。
「何をするにも全力で」
と、取らせていただいてますけど。
あ。
竜で国落ちたみたいですねー・・・。
呪竜ロドルフ=デス VS アサギ=レイの対戦が開始された!
アサギ=レイ「行きます(構)」
アサギ=レイは魔法優先の構えをとった!
呪竜ロドルフ=デスが先に行動をとった!!
第 1 ターン!
呪竜ロドルフ=デスの攻撃!
アサギ=レイに 12 のダメージ!
アサギ=レイの周辺に見えない力が集まり始める…
アサギ=レイは「last*waltz」を唱えた。
アサギ=レイは『天魔最終』を発動した。
呪竜ロドルフ=デスに 64 のダメージ!
第 2 ターン!
呪竜ロドルフ=デスの攻撃!
アサギ=レイは防御を固めた!!
アサギ=レイに 11 のダメージ!
アサギ=レイの攻撃!
呪竜ロドルフ=デスに 30 のダメージ!
第 3 ターン!
呪竜ロドルフ=デスの攻撃!
アサギ=レイは防御を固めた!!
アサギ=レイに 3 のダメージ!
アサギ=レイのクリティカル攻撃!!
呪竜ロドルフ=デスは防御を固めた!!
呪竜ロドルフ=デスに 13 のダメージ!
呪竜ロドルフ=デスのHP:3445
アサギ=レイのHP:9
戦闘終了
生き残れました♪
スズメ蜂が現れた!
スズメ蜂 は、興奮している
アサギ=レイ のHP : 14
スズメ蜂 のHP : ???
スズメ蜂 「………」
スズメ蜂 は、いきなり襲いかかってきた!
スズメ蜂 の攻撃!
アサギ=レイ は、ふいをつかれた。
しかし、 クレシダ は隙を見せない! スズメ蜂 を睨みつけている!
スズメ蜂 は、少しひるんだ。
アサギ=レイ の残りHP 14
アサギ=レイの周辺に見えない力が集まり始める…。
アサギ=レイは「破壊の姫君の嘆き」を唱えた。
アサギ=レイは『天魔最終』を発動した。
スズメ蜂に 79 のダメージ!
アサギ=レイ の残りHP 14
アサギ=レイ は スズメ蜂 を倒した!
アサギ=レイ は 2 点の経験値を得た!
今日の探索を終了した。
※産まれて初めてペットが役にたちましたです。
感動。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
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1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |